表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/83

第六十三話 ナータ危機一髪

ナータが拉致されます。

 転移247日目

 7時 寮 食堂

 それはいきなりだった。

『恭平、助けて!!僕、捕まっちゃった』

『ナータか、どうした?』

 場所は、ヨーロッパ?パリ?

『悪魔に捕まってるの。結界張られて空間移動が出来ないんだよ』

『魔力も抜かれてるから念話もあまり続けられな・・』

 切れた。

 皆にこの事を伝え、ミヤとヒイに空間移動、結界を再生を茜に移す。

「まず、俺が行って戦闘になりそうなら呼ぶかも知れない。準備しておいてくれ」

「「はい」」


 パリの郊外にある小さな城に捕らわれてるらしい。

 この世界のヨーロッパは1000年以上前から小国の覇権争いが続いており、キリスト教も貴族文化も無い世界だ。もちろん、ヴェルサイユ宮殿もノートルダム寺院もない。


 ナータの視線で相手の内容は分かって居る。従属の回路超便利。 

 ここには9人の真なる悪魔人間と下位の悪魔人間が18人、魔獣が百頭位いる。

 ちょっとヒイとミヤだけで対処できる数じゃないな。

 ナータに近い、悪魔の居ない所を探す。ナータの居る部屋は吹き抜けで二階の部屋に転移した。真っ暗だ。そうだこっちは真夜中だ。


 そっとドアの隙間から一階を見る。ナータの居る部屋は何カ所か魔法の灯がともされていた。

 ナータは一糸まとわぬ姿で両足は床に着いているが両手を縛られ、上からぶら下がるような格好だ。

 どういうことなのか聞き耳を立ててみる。


 ・・・・・・・・・・・・・・

「この娘にも誰か憑依しないといけないのでは?」

「まあ、時間はある。誰か出来る状態になれば考えよう」

「誰しも女に憑依するのは嫌ですからな」

「最悪、下位の悪魔にやらせればいい」

「そうですな今日は寝ましょうか」

「人間の体は寝ないと持たんから面倒臭い」

「娘の魔力は空になっていますから結界は外しますよ」

「見張りに下位の悪魔を4人置いておけ」

 真なる悪魔は退室したようだ。代わりに下位の悪魔が見張りに立つ。


『満タンの魔力石を持って俺の近くに転移してくれ』

 ミヤとヒイに念話を送る。二人が俺のそばに転移して来た。

『いいか、ヒイはここから見える二人の見張りを矢で倒せ。魔石を壊せば死ぬ』

『ミヤは左側の下にいる見張りを倒せ。俺は右側の見張りを倒す』

『危なくなりそうなら寮に転移しろ。決して死ぬな」

「「はい」」

 悪魔の魔石は胸の真ん中、左右の肺の間にある。骨に守られているが気功の刃で問題ない。

『せーの』

 二階から飛び降りた俺は右の見張りを唐竹割にする。

 ミヤは下位悪魔の後ろに音もなく降り立ち、そこから回した剣で胸を貫く。

 ヒイの矢は胸を貫いていく。


 ヒイの倒した一人が、そこにあった机に倒れて大きな音が出る。

 俺はナータを縛ったロープを斬り、魔力石を渡す。

 其処へ駆けつけた下位の悪魔が斬りかかってくる。袈裟切りに魔石ごと斬り落とす。

 ヒイ、ミヤもすでに戦闘に巻き込まれており、こうなれば仕方が無い、斬って斬って斬り殺すだけだ。


 こんな部屋の中に魔獣を入れないはずだ。それなら目はある。

 二階にも何人か上がっているので、ヒイが心配だが危ないようなら転移するだろう。


 ヒイは恭平やミヤが上から攻撃されないように二階を守っていた。念の為、刀を収納から出して背中に差しておく。

 階段を登ってくる悪魔を矢で撃ち落とす。6人倒した後は登って来なくなった。

 階段をナビさんに見張って貰って階下の悪魔を狙い撃つ。


 ミヤは千本の間合いが取れず、代わりにもう一本の刀を出す。

 狭く障害物が多い場所では、避けるより止める方が安全だ。

 死体が邪魔で動きにくくなってきた。


 俺は6人目を倒した後、間が空いたのでナータを振り返る。

 魔力石を両手で持ってキョトンとしていた。使い方が分からないのか。言えよな。

「白い所に手を当てろ。魔力が戻る」


「誰か槍を持ってこい」

 真なる悪魔の一人が言った。

 まずい、この動きにくい場所で槍を使われると負ける。


 俺は振り返ってナータに叫んだ。

「魔力が戻ったら跳べ」

 ナータはうんうんと頷いて転移した。

「ヒイ、ミヤ!!転移だ!」


 悪魔が槍を持って突いて来た。払って斬り下げた。ヒイとミヤは転移したみたいだ。

 俺も寮に転移した。


 寮に帰ると皆が心配そうな顔をしていた。

 ヒイは綺麗だったがミヤと俺は返り血で真っ赤だ。

「ミヤ、先にシャワー浴びといで」

「私、着替え用意するね」

「ありがと」

 ヒイは2階に駆けあがっていった。


「ところでなんでお前がここにいるの?」

 裸で魔力石を抱えた少女に言った。

「怖かったぁ、怖かったのにぃ。わぁあ」

 ビックリした、ナータが突如泣き始めた。

「恭平、怖い思いした子に可哀そうでしょう」

 茜と蒼伊がナータを2階に連れて行った。


「俺が悪かったの?」

 皆に聞くとうんうんと頷いた。


 ミヤに替わってシャワーを浴びる。ミヤが俺の着替えを用意する。

 ミヤとヒイは俺のお世話係を自任しているので俺の着替えも用意できる。


 シャワーを浴びて戻ると服を着せてもらったナータが居た。

「状況を話せるか?」

「うん」


 執務室に移った。

「ぼくはね。・・・・

 ナータの話では、今日の昼頃、兄に合うために一週間前に連絡のあったあの城に転移した。

 しかし、城はすでに悪魔の手に落ちていた。

 転移で姿を現した時に、近くにいた悪魔に捕えられ結界に閉じ込められた。

 悪魔はナータが異能を持っていることに興味を持ち。異能を移せるか聞いてきた。

 ナータが移せないと言うと手を縛って、吊り下げ、魔力を抜く魔物を繋がれて、暫く放置された。

 ラッソと言う悪魔が異能を移す異能を手に入れていれば良かったが、この際どうしようもない。

 誰かナータに憑依しないかと言うと口々に”異能を持った娘とは言え、私は嫌です”と言った。

 この娘と子供を作って見る者はいないかと一人が言い出し、子供に異能が遺伝するのかと言う話になった。

 そのうちに裸にしたら欲情するのではないか。少なくとも人間の体なのだからと言いだした。

 そしてナータは裸にされた。

 人間の男は女の裸を見たら欲情するのではなかったのかとか言って、色々見られた。

 しかし、悪魔は欲情せず明日もう一度調べようと言って寝に行った。

 と言うことだった。


「そうか、気の毒だったな。そう言えば寝てないのだろう。うちで寝るか?」

「ううん、怖くて寝れそうもない」

「横になるだけでも随分楽になると思うぞ」

「うん、でも横に居てね。どっか行っちゃやだよ」

「分かった」

 ナータは目を閉じるとすぐに寝てしまった。

 あの、憎たらしいガキがこんなに可愛くなるなんてな。


 悪魔が女に憑依したくないとは初めて知った。今まで女に憑依した悪魔はマールの時ぐらいか。

 でもあれは、下位悪魔だしな。

 なら、マインを産んだ女は誰だ。

 話の内容では女も憑依する必要があるみたいだし。


 ミヤが顔を出した。

「寝たのですか」

「タオルケットか何か、掛ける物を持ってきてくれるか」

「はい」

 暫くするとタオルケットを持って戻って来た。ヒイも一緒だ

 ああ、今日の事、褒めてなかったな。

「ヒイ、ミヤこっちにお出で」

 二人を左右に座らせると肩を抱き寄せた。

「今日は良くやってくれた。ありがとう」

 頭を撫でてやる。

「「えへへへ」」

 二人は上機嫌になってくれた。


 そのうちに二人も眠ってしまった。今日は朝からハードだったからな。


 マールがやって来た。

「サイゾウさん達のお迎えなんですけど誰に行って貰ったら良いですか」

 おお、ちゃんと敬語話せてるじゃないか。

「ドーテに頼もう。あいつも暇だろう」

「分かりました。頼みます」

「キキョウも連れて行ってくれ」

「はい」

「あとこの二人に掛ける物を」

「はーい」


 今度はリシュだ。

「空間移動を移して貰えないかしら」

「もう行くのか」

「孫従者を作るって言ってじゃない。早い方が良いと思って」

「分かった」

 寝ているヒイから移してやる。

「早速行って来るわ。ありがとう」


 騒がしかったのかミヤが起きた。

「いっけない。洗濯物干さないと」

「ヒイも行く」

 ミヤが出ていき、その後を寝ぼけたヒイがついて行く。


 昼食の時間になった。

 俺の分とナータの分もミヤとヒイが運んできてくれた。

 俺が食べ始めようとした時、ナータが起きた。

「腹減ったか?」

「昨日の夕食食べてないから、あっ時差があるのか。ああもう分からない。とにかくお腹が空いた」

「君の前のは、ナータの分だから食べていいよ」

「ありがとう。ここのご飯おいしいから好き」

「しかしあの憎たらしかったナータがこんなに可愛くなるなんてな」

「あら、可愛いなんて本気」

「ああ、ぶっきらぼうな話し方しかしなかったろ」

「ああ、男の子の振りをしている時ね。あれはバレない様にわざとしてたのよ」


 昼食後、ナータに聞いた

「これからどうするんだ?」

「どうするって?」

「兄さん負けたんだろ。見に行かなくていいのかよ」

「暫くあそこの近くには行きたくない」

「じゃあ、魔王城に帰るのか」

「父上から逃げて来たのになんで魔王城に行くのよ」

「なんで逃げてるんだよ」


「私、もうじき15でしょう。結婚させたいのよ」

「それはおめでとう」

「何がめでたいのよ。飛び回れなくなるのよ。母上みたいにお城の中で干からびてしまうのよ」

「じゃあ、どうするんだ」

「暫く、ここに置いて」

「駄目です」

「なんでよ?」

「魔王様が心配するだろ、そんなの片棒担げるか」

「じゃあ、父上にここに残りますって言って来て」

「なんで俺が?」

「私の裸見たでしょ」

「そんなの不可抗力だ」

 また居候が増えるみたいだ。


次回、なつかしい訪問者です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ