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第六十二話 キキョウ

キキョウに迫られます。

 私はキキョウ、いつも頭の中が靄が掛かったみたいになってる。

 周りの人は私が馬鹿だと言うの。

 私を馬鹿にしないのはサイゾウだけ。

 お父さん、お母さんどこにいったの。


 猫の耳を付けた女の子が言うの。

「お昼御飯です。食べてください」

 目の前に見たこともないごちそうがある。

 食べていいの。本当に?

「大丈夫ですか」

 これ、綺麗に食べないと怒られるんだ。

 でもお箸使えない。

「スプーン下さい」

 言えた。ほめてくれるかな。


 ミヤはスプーンを取りに台所に行く。

「はい、スプーン」

 目の前の女の子キキョウは幼い子供みたいだ。

 危険を感じた時や試合の時の鋭さは全くない。

 今もスプーンで不器用にご飯を食べてる。

 でもおいしそうで嬉しそうだ。

「おいしい?」

「うん」

 この子は大人になりたくないんだ。


 お腹がこなれて来たころ。

「私と試合する?」

 ミヤはキキョウに聞いてみた

「うん、する」

 ミヤは運動しやすい服に着替えさせて一緒に外に出た。

 マールがついて来たので言ってみた。

「審判頼める?」

「おう、まかせとけ」

 マールも自分が何をするのか決めていない。

 貴族の出身だけど親に殆ど構って貰えず、弓だけが友達みたいな育ち方をしているので、人の輪に入れないでいる。

 一度、恭平様に相談してみよう。


「お互い、けがの無いようにしましょう」

「おう、わかった」

 やっぱり変わった。大人のキキョウが顔を出した。

「始め」

 マールの声が掛かる。

 まずは様子見。

 キキョウの鋭い連続攻撃がミヤを襲う。ミヤは木刀を下げたまますべて避ける。

 そろそろかな、来た。キキョウが横に払いながら後ろ回し蹴りが飛んでくる。

 一歩飛び込みながら姿勢を低くして軸足を右足で払う。

 キキョウの体は宙に浮き、お尻から落下する。

「いってぇ」


「不用意に蹴りを出さない。昨日痛い目に会ったでしょ」

「はい、分かりました」

 素直だ。

「まだ続ける?」

「お願いします」

 それから1時間位続けて試合をした。

「キキョウさんは素直だから強くなるのが早そうね」

「ホントに!!嬉しい」

 4つも下の女の子に褒められて、こんなに喜ぶなんて本当に素直だわ。

「シャワー浴びて着替えましょ」

「はい」

「マールも行くよ」

「オウ」


 18時 寮 食堂

 俺は夕食の用意をしている所へ帰って来た。

「ただいま」

「おかえりなさい」×12

「キキョウ、どうだった」

「楽しかったです」

 あれ、まともだ。

『ミヤの努力で大人の精神が表に出て、それを固定しました。まだ、不自然な部分もありますがおいおい慣れていくでしょう』

『ご苦労様』


 20時 執務室

 工房の日報を読んでいるとミヤが入って来た。

「どうした」

「マールの事ですが」

「ああ」

 言いたいことは分かる。

「俺は強制的にやらせるのは嫌なんだ」

「では役割を与えてください」

「ふむ、ちょっといい手が浮かんだぞ」

「なんですか」

「内緒だ。ミヤ、すまないな面倒を掛ける」

「いえ、何でもありません」

 ミヤは皆のお母さんになって来てるな。


 その夜、キキョウはミヤと同じベッドで寝たらしい。


 転移239日目

 7時 寮 食堂

 俺はマールとリシュを見つけ呼ぶ。

「マール、リシュちょっとこっちへ」

「なに」

「マールにお仕事をお願いする」

「へ、何をしろと」

「1カ月後、モンゴルから移民と研修生が来ます。それから竜王国から移民が来ます。その対応をマールにお願いします」

「どうすれば良いのか分んないよ」

 マールの困った顔は初めてかな。なかなか可愛いぞ


「モンゴルについてはリシュに、竜王国については煙台に迎えと住居の整備だな」

「フォローはするからやれるだけやって見な」

「うん」

「まずは住居だな、これは新しく忍猫村、勇犬村、に続く村を作ります」

「迎えは時期が近いから重ならないように注意して」

「リシュは今度行くときに孫従者を作って、連絡が取れるようにして」

 一通り説明するとそれぞれが実現の為に動き出す。


「キキョウ」

「はい」

「お前は生活の実務経験が皆無だ。ミヤとヒイに着いて日常生活を覚えろ」

「はい、分かりました」

「一か月後にサイゾウをびっくりさせてやれ」

「はい」

 素直なエエ子や。


 転移242日目

 サイゾウからナンバヅを出港したと連絡が有った。

 驚いたことに剣姫印の船外機が付いているらしい。


 体育大会が始まった。茜が見に来いとうるさい。


 転移245日目

 ハカタを出港したと連絡が有った。順調そうだ。

 新村の基礎が終わった。この分だとサイゾウ達が着く方が早そうだ。

 その日の夕方俺はキキョウを執務室へ呼んだ。

「どうだ、まだ、剣姫になりたいか?」

「分かりません。私が何をしたいのかが分からないのです」

 応答は年相応になって来ているが、まだ自分が何者なのかを探っているような感じだ。

「途中でやめて良いから、興味のあることがあったら言ってみろ」

「ありがとうございます。ここの人達は何で、私なんかに優しくしてくれるんですか?」

「お前は自分の失った時間を取り戻すのに必死で頑張っている。俺達はそういう人を応援したいんだよ」

「もう少しで追いつけそうな気がします。頑張りますのでよろしくお願いします」

「うん、でもあまり焦らずにな」

「はい」


 うん、なんだ、この違和感は・・・・。

「ああ、もういいぞ」

 キキョウを下がらせる。

 そうだ、茜が良い。茜を呼ぶ。


 ドアを開けて茜が入ってくる。

「何の用、大会にも来ないで」

「茜、俺今、キキョウに滅茶苦茶優しい言葉をかけた」

「それがどうしたのよ」

「俺ってこんな奴じゃなかったはずだ」

「どういうことよ」

「俺は信帝国に来た時には、ヒイとミヤがいれば良かったんだ」

「そうだったわね」

「なんで俺、頼まれてもいないのにキキョウを助けようとしてるんだろ」

「そんなこと言ったらミヤちゃんを助けた時もそうでしょ」

「いや、ミヤは俺が見捨てたら死んでた」

「うーん、結局私達も助けたし、あんたはそれで良いのよ」

「自分が自分でないような感じがするんだ」

「解った、あんたね、守らなきゃいけない人が増えすぎて不安になってるのよ」

 茜は俺を抱きしめ、頭を撫でる。

「甘えたい時はいつでも言ってね。あんたはあんたの思う通りやればいいんだから」

 俺は胸に顔を埋めようとしたが埋まらなかった。

 今度、真白に頼むか。俺は吹っ切れたようだ。


 転移246日目

 サイゾウたちがツシマを出港、難関のツシマ海峡だ。いい天気が続いているので大丈夫だろう。


 9時 寮 居間

 今日で体育大会も終わりだ。従者たちは全員見物に行った。

 あれ、キキョウが残ってる。

「どうした。皆と行かなかったのか?」

「ちょっと、体の調子がおかしいんです」

 顔が赤く、息が荒い、熱は無さそうだけど。


『精神が大人になる反動でしょうか、性的衝動が抑えられないようです』

 ナビさんと話してる間に抱き着いてきた。

『つまり、発情しています』

「恭平様、好き」

 目が潤んでる。ヤバイ、我慢できるか。

 真白ほどではないが豊満な胸を押し付けてくる。

 ましろがボヨンボヨンだとするとキキョウはバインバインって何を考えている。


 俺は女の子とそういうことをするのは嫌いではない。と言うか好きだ。

 流石に子供では自制心は働くが、大人の体になってる女性は拒み切れない。

 此間もリシュに迫られてやっちゃったしな。

 でもこの娘は精神年齢がまだ大人になってない。


『ご主人様、この娘となさると依存症になる可能性があります』

『どういうこと』

『四六時中、ご主人様べったりになるかもです』

 俺の欲情は急速に冷めて行った。それは嫌だった。


 俺はキキョウを膝の上に置いて頭を撫でてやる。

「恭平様、好き」

「俺も好きだよ」

「本当に?」

「ああ」

「じゃあ、お嫁さんにしてくれる?」

「お前がちゃんと大人になってからな」

「嬉しい」

 胸にしがみ付いてくる。俺は頭を撫でているだけだ。

 その状態で1時間、キキョウの発情は収まった。


「落ち着いたか」

「はい、その、ありがとうございました」

 恥ずかしくなってきたのか茜の部屋に戻っていった。

 俺は執務室で次の飛行機の設計を続ける。


 12時 食堂

 今日は他の従者が競技場でお昼を食べているので、またキキョウと二人だ。

 やはり、恥ずかしいのだろう。キキョウは離れて座り、こちらを見ない。


「キキョウ、お昼食べたら皆の所へ行くか?」

「はい!」

 良い返事だ。俺は、バイクで競技場に行く。

 まだ茜もみんなと一緒に居た。

「何よ今頃。来るならもっと早く来なさいよ」

 相変わらず辛らつだ。

「キキョウが気分が良くなったから連れて来たんだ」

 キキョウは皆に受け入れられ、午後の競技を見物している。


 キキョウはどうなるのか。サイゾウとも話し合わねばな。


次回、ナータの貞操に危機。

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