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第六十一話 イガの里へ

忍者をスカウトします。

 カクタスとキキョウの試合はキキョウの勝ちで終わった。

 俺と見ていた茜が言った。

「何か不自然だったわよね」

「目つぶしだ」

「反則じゃない。目に証拠が残ってるでしょ」

「多分、塩とかを使ったんじゃないか。すぐに無くなってしまう」

「ほら、目を調べてるわ」

「見つからなかったようだな」

「汚いわね。こんな子剣姫にするつもり」

「いや、しないよ」


 20時 寮 居間

 リシュとミヤがモンゴルから帰って来た。

「遅くまでご苦労さん。どうだった?」

「うまく行ったわ。一か月後にしてくれってさ」

「君の方は?」

「今のところ20人位、3週間後位に最終確認をするわ。研修生を合わせてね」

 リシュはモンゴルに製鉄・服飾の研修生、及び自身の伝手で工房の幹部候補生・工員を受け入れる許可を貰いに行っていた。ミヤはその護衛だ。


「ミヤもご苦労さん。ありがとうね」

「いえ、特にやることも無かったです」

「ミヤは居るだけで抑止力になるんだよ」

「ヨクシリョクって何ですか」

「ミヤが可愛いから乱暴はやめようって思うことだよ」

「もう恭平様、からかわないでください」

 頬を膨らましているミヤも可愛い。

「ご飯はもう食べた」

「「はい」」


「じゃあ、お風呂へ行きなさい」

「はい」

「待ってヒイも行く」

「ヒイまだだったの」

「うん、ミヤちゃん待ってたの」

「そお、ありがと」

「リシュ様、ミノンも行きます」

「おい、俺も行くぞ」

 ありゃ、マールも待ってたのか。


 転移237日目

 10時 天都競技場

 今日は皆で応援に来た。やっぱり一番いい席だ。

 午前中に準決勝2試合、午後から決勝が行われる。

 準決勝の第一試合は副隊長と竜王国代表ブラハ。

 ブラハの指導をしてから半年近く経っている。何処まで腕を上げられたのか。


 試合開始だ。副隊長の流麗な剣とブラハの鬼族特有の剛剣の戦いだ。

 ブラハの連続攻撃の剛剣の力を副隊長がうまく流している。

 攻撃はいつまでも連続は出来ない。

 攻撃の止まったブラハに副隊長も剛の剣を打ち込む。

 辛うじて受け止めたブラハだが切り返した剣に胴を払われる。

 勝者副隊長だ。

 ブラハも腕を上げていたが、恐らく稽古相手に恵まれなかった。

 攻撃が単調で読みやすかった。


 第二試合は竜王国代表キキョウと鳳王国代表だ。

 蹴りも目つぶしも使わずにすんなりキキョウが勝った。


 決勝は13時からだ。

 昼食にしよう。

 ミヤとヒイが空間転移で寮に戻って昼食を収納に入れる。

 食堂のおばさんは収納を扱えないのだ。

 ミヤとヒイは俺の身の回りの世話が本職なので、こういう雑用は率先してやってくれる。


 昼食後、雑談をしていると決勝の時間となった。

 両者進み出て中央で構える。

 審判が始めの号令を掛ける。

 決勝が始まった。


 俺(副隊長)は正眼、相手キキョウも正眼だ。

 俺は小手を狙って一歩踏み出した。

 剣の腹で躱され、面を狙われる。

 剣を上げ防御して体を捻り、相手の剣を外す。

 俺が肩から斬り下げると相手は後ろに引いて躱す。


 剣を正眼に戻し、相手の出方を見る。

 相手が小手から面の攻撃を仕掛けて来た。

 剣の腹で脇に流しそのまま袈裟切りに移る。

 相手は体を捻りながら倒し、左後ろ蹴りを放つ。

 柄で思い切り蹴りを打ち落とす。


 相手は離れようとするが、左足に力が入らず倒れてしまう。

 相手の背中に剣を置く。


 審判が俺の勝利を宣言する。


 副隊長の優勝だ。


 大声援が送られる。


 その日の夜には祝勝会が開かれた。


 転移238日目

 10時 寮 執務室

 今日はあの爺さんとキキョウが来ることになっている。

 門番が爺さんと孫を連れて来た。

 キキョウはまだ足を引きずっている。

 爺さんが挨拶をする。

 キキョウも挨拶をする。

「孫の桔梗と申します。何卒、剣姫にして頂きたくお願いいたします」


 俺はそれに対して返事をせずに言った。

「足を見せてみろ」

 キキョウの裳を捲ると青あざになっていた。

 再生を掛けるとあざが消えて行った。

「足痛くない」

 キキョウが喜んで言った。


 俺は二人を対面に座らせる。

「お前たちは何者だ。なぜ俺を狙う?」

 俺の言葉に爺さんが訳が分からないというジェスチャーをした。

「この間も言いましたが竜王様の紹介で‥」

「この紹介状は偽物だ」

「何をおっしゃっているのか。よく分かりませんが」


「天都の帝城には竜王の娘がいる」

 俺の座るソファーの後ろからミヤ、ミノン、ヒイが武器を持って出てくる。

 ドアの前にはドーテ、ジュレイ武器を持って立つ。


「バレちゃあ、仕方がねえ」

 爺さんの変装を外すと30代の男の姿になる。

 キキョウは武器を出そうと背中に手を回す。

「やめとけ、殺されるぞ」

 男が言う。


「もう一度聞く、何の為にこんな回りくどいことをした?」

「俺達は忍者だ。あんたに使ってほしい」

「忍者、忍者が今もいるというのか」


「オウいるよ。細々とだけどな。俺達は村の掟で忍者として鍛え上げられた。しかし、世の中平和だ、誰も使っちゃあくれない。スカウトに来るのは犯罪組織だけだ」

「犯罪組織の仕事をしているのか?」

「まあ、最後まで聞いてくれ。スカウトされて一人減り二人減り、しまいには忍者として働けるギリギリになっちまった。金も続かねえ」


「じり貧って奴だな。そんな時にあんたの話を聞いた。国のため、人の為に働くあんたの噂を聞いてあんたに雇ってほしいと思ったのさ。それには剣姫を送り込んで、その縁者ってことで皆雇ってもらおうと考えたわけだ。ちょうどキキョウが剣術大会に勝ってたからな」


「ドーテの事を調べたのか」

「ああ、台湾のお嬢さんの線で行けば確実かなと思ったんだけど、不安だったので偽の紹介状を作った。まさか平民のあんたが竜王様の娘に会いに行くとは思わなかったぜ」

 まあ竜王国で活動してたのならわからなくて当然か。


「犯罪にかかわった奴は要らんぞ」

「大丈夫だ。そんな奴はもういない」

「何が出来る?」

「得意なのは情報取集、荒事が得意な奴はスカウトされて、残ってるのはキキョウと俺ぐらいだ」

「人数は」

「28人、爺と婆は、留守番しかできない。使えるのは20人位だ」

『ナビさんこいつは本当の事を言っているか?』

『はい、嘘を吐く異能とかない限りは。娘にも質問して下さい』


「キキョウ、お前はなぜカクタスに目つぶしをした。そんな奴は剣姫に成れないぞ」

「え、カクタス・・ああ、あいつ強かった、決勝いけ、言われたから」

「すまねえ、こいつは幼い頃、敵対組織に両親を目の前で殺されて、それ以来頭が成長していない。あまり難しいことは聞かないでやってくれ。荒事だけは覚えが良くて里一番だけどな」

 それがスカウトされなかった理由か。

『大丈夫かと考えます』


「よし、仮採用だ。経費は出してやるから信帝国に呼べ。本採用は悪魔のラッソを探せ、3月以内に探せたら本採用だ」

「行って帰るだけで3月かかる無理だ。」

「心配するな、行くのは一日だ」

「お前の名前は?」

「サイゾウだ」

「お前とキキョウは仮従者だ。使えるのは念話とマップだけだ」


「ミヤ、キキョウを世話してやってくれ。夜は茜に頼む」

「サイゾウ行くぞ」

「行くぞってどこへ」

「イガに決まってるだろ」

「トイレをしてこれを履け」

「なにこれ」

「オムツだ」


 12時 徐州を過ぎた。


 14時 朝鮮半島南端


 16時 イガ

「ここなんか見覚えがってイガだ」

「ここって川は細いし、灌漑用の池も小さい、ちょっと遠いけどあの池に降りよう」


「ここから岸に上がるぞ」

 サイゾウはまだポカンとしている。

 はやぶさ号をしまって岸に上がる。

 あぜ道に出たらバイクを出してと。

「サイゾウ、後に乗れ」

「おい、どうした」

「俺、さっきまで天都に居たのに、何でイガにいるの???」

「早く後ろに乗って案内しろ」


 ようやく我に返ったサイゾウの案内で忍者の里へ。

 15分程で到着した。

 里に着くと早速、皆を集めて貰い説明することにした。


「・・・・と言うことであなた方を雇う事となりました。詳しいことはサイゾウさんに確認してください」


 集会後、サイゾウに金を渡して説明した。

「煙台に着く日を連絡しろ。迎えに行く。一週間前で良い。それと皆には言わなかったが、もし課題が出来なくても工場で雇ってやるから心配するな。じゃあな」

「ちょ、ちょっとどこに行くんです?」

「帰るんだよ。こう見えて結構忙しいんだぞ」

「どうやってって聞くだけ野暮なんでしょうね」

「おまえ敬語喋れるんだ」

「喋れますよ。仮とはいえご主人ですから」

「なんかあったら念話で知らせてくれ」


 俺は誰もいない所まで来て、空間移動で帰った。


キキョウの主人公回です。

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