第六話 天都へ
いよいよ天都に出発です。
転移48日目
魔族の王子と会ってから一か月、天都へ行く準備は着々と進んでいた。
この一か月の出来事は、
黒狼族の村長が村から追放されて、村人は将軍に怒られた。まあ、そんなもんだ。
熊は、剥製と毛皮が王城に飾られ、竜王様は鼻高々だ。
革鎧はうまく出来て、ヒイは大喜びで外出時は、必ず着けてる。
車とボートは、改造がうまくいった。試験も上々だ。リョウカ様が天都へ車で行きたいと言ってきた。乗り心地も速度もゴーレム馬車より、はるかに良いのだから。
ブラハは毎日のように押しかけ、カクタスと二人訓練している。王城では二人に敵う者はいないと言う。
魔族の話はしたが返事はない。ハイジ以降動きが無いので、放置されているのだろう。
ハイジは魔力の管理が出来るようになり大きさを子犬状態から子牛位に変化出来るようになった。
散歩では子牛の大きさで、ヒイを乗せて街中を闊歩している。王都の新しい名物だ。
天都へは、俺の車で行くことになり、15万デムを交通費・飲食費・宿泊費として貰った。
まあ、中古で揃えたとはいえ、車とボートで10万デム、ヒイの家の改装費2万デル掛かっているし、食費が別途で、あまり儲かった感じはしない。
メンバーは、こうなった
俺 運転手 兼 護衛 兼 調理人、 運転席
ヒイ 護衛 兼 調理人、 最後列右
ハイジ(子犬状態) 護衛、 最後列左
カクタス 護衛 兼 道案内、 助手席
アンナ リョウカ様のお付、 中列右
リョウカ様 中列左
兼任が多いのは、経費をケチるためだ。大体、15万デムって半額以下だよな。
噂では熊を買うのに旅費に手を付けたとか。まあ、車とボートと家は残るから良いけど。
行程1日目(転移48日目)
良い日を選んで、朝8時出発だ。
9時 ヨコハマの近くでトイレ休憩。俺とカクタスで穴を掘って簡易トイレを置けば完成だ。
竜王国の人口は少ない。八百万人程しかいない。ということで周りに人家はない。舗装した道があるだけだ。行きかう人も少ない。
ハイジは子犬状態は嫌なのか子牛の大きさになっている。
休憩後トイレを収納、穴を埋めて出発だ。
10時 チガサキの近くでトイレ休憩。
地名が漢字でないのは、竜王国では、国名・王都以外は、漢字を使わないからである。
11時 オダワラ トイレ休憩
12時 ハコネ 以前、炊いたご飯が次元収納に一食毎に入れてあるので、それとインスタントの味噌汁、茹でた野菜にドレッシングをかけたもの、温めた冷凍食品のハンバーグが今日の昼御飯だ。
アシノコの見える草むらに茣蓙を広げて食べた。野菜を茹でたのは、この世界の野菜は寄生虫の心配があるからだ。温めるのはカセットコンロを使う。魔道具より場所を取らないが火力は弱い。
概ね、好評だ。特にハンバーグは、食べたことが無かったのか、おいしいってびっくりしてた。
ハイジはハンバーグを食べたそうにしてたけど子犬用のドックフードだ。人間の食事は塩分が多いからね。
御飯と野菜とお湯は竜王様持ちだ。野菜はこの季節だから、行程の半分も用意できなかった。
なるべく、食費にお金を掛けないようにしないと足が出てしまう。
カクタスがハンバーグをお替りしたそうにしていたが当然無視だ。御飯はお替りしてあげたよ。
プラスチックのワンディッシュとカップなのですぐに洗える。残り物はトイレに埋める。
13時 出発
14時 ミシマ トイレ休憩
15時 フジガワ トイレ休憩
16時 シズオカを過ぎて夜営地を探す。小さな河原に平たい所があったので土台にブロックを置いていく、色々な厚さの板を使って高さを合わせる。ヒイの家を出して置く。今晩の宿の出来上がりだ。ヒイの家は6.3m×6.3mの正方形で正面右側に玄関、その右簡易トイレへの入り口、玄関奥に風呂、左側ダイニングキッチン兼護衛の寝室、奥に主寝室がある。
各部屋には灯の魔道具が設置されている。
警備上、窓は偵察用、弓矢の攻撃用、換気用の小さなものだけだ。夜しか使わないしね。壁は鉄板が貼ってある。
水とお湯のタンクをお風呂横に設置、風呂と台所には床下を通して配管してある。
17時 食事の準備 台所には魔道具のコンロが備え付けだ。麻婆豆腐と五目チャーハンとほうれん草みたいな野菜のお浸し、鶏がらスープ。中華で攻めてみた。
18時 食事 皆、楽しそうに食ってたよ。ハイジは玄関でドックフードだ。
19時 食事片付け、風呂準備 食事の片づけはヒイに頼んで、風呂の準備を始める。
日本のようにボタンを押せば、勝手に入れてくれる機能はない。混合栓を買ってあるので一定の温度のお湯は出せる。風呂桶や周囲の空気に冷やされるので、熱めのお湯を入れる。
大きめの風呂桶なので時間がかかる。
リョウカ様→カクタス→アンナ→俺→ヒイとハイジの順番で入る。アンナさんは湯上りのリョウカ様の世話をしなければならないのでカクタスが先。ハイジは良く絞ったタオルで拭く位だ。
21時 風呂の後片付けと掃除、お湯を抜いて川に流し、風呂桶、床、洗い桶等を掃除する。
川の水が飲料に適していたのでタンクを満タンにして次元収納に入れておく。
22時 布団を敷いて就寝する。奥の6畳にリョウカ様、アンナさん、ヒイ、手前の部屋に俺とカクタスが寝る。ハイジは玄関のマットの上だ。
行程二日目(転移49日目)
6時 俺とヒイ、ハイジが起きる。湯を沸かし、顔を洗う。俺とヒイは、朝食の準備を始める。
うるさかったのかカクタスが起きてきた、洗面器にお湯を張り、風呂で顔を洗うように指示する。
7時 リョウカ様、アンナさん起床 顔を洗いに行く。ヒイは、明るくなったのでハイジを散歩に連れて行く。ヒイが帰ってきたら朝食をとる。
8時 出発
9時 フクロイ、カケガワ辺り トイレ休憩
10時 ハマナコ 湖畔 トイレ休憩
11時 オカザキ トイレ休憩
12時 アツタ 手早く出来るもので昼食をとる。港に行き、車を次元収納にしまう。
ボートを次元収納から出して海に浮かべる。この先は木曽三川と呼ばれる大きな川があり、まだ橋が掛かっていない。クワナまでは、船で行くこととなる。
ヒイは当初、船の上ではしゃいでいたが、10分もしないうちに飽きたようだ。
13時30分 クワナ 船をしまい、トイレ休憩、車を出す。
14時30分 カメヤマ トイレ休憩
15時 ツチヤマ~ クサツへ向かう途中、草むらから白い足が出ていた。
車を止めてカクタスが確認に出る。
「俺が確認するから、もしものために出発できるようにしておけ」
山賊を警戒しているみたいだ。
『周りに人影は確認できません』
ナビさんは、こちらを伺う者が居たら見逃さない。
「女の子が倒れている。病気かなんかだ」
「カクタスは触るな、うつるかもしれない」
俺は車を降りて女の子の倒れている所へ向かう。
『ご主人様とヒイは身体強化があるので病気がうつるということはありません』
インストールで内科医を選び女の子を診る。女の子は貫頭衣を着ており、黒い髪に猫の耳があった。年の頃はヒイと同じくらいだ。呼吸が荒く、すごい熱だ。多分40度はある。
ヒイとハイジを呼び、家を建てる場所を探させる。
「カクタス、クサツまであと少しだ。お前が運転してクサツで宿をとってくれ」
カクタスに練習させておいて良かったよ。
「お前はどうするんだ」
「この子はインフルエンザだ。すぐ直る。明日中にクサツに行くから待っていてくれ。うつる病気だから一緒には行けない。俺たちにはうつらないから大丈夫だ」
カクタスはリョウカ様に状況を説明して出発した。
これから数話、旅の話です。