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第五十九話 ナータの帰還

ナータを護衛して魔王国に行きます。

 転移234日目

 7時 寮 食堂

 雨が上がり良い天気になった。

 ナータがライヤと階段を降りてきた。

 二人が朝食を持って俺の前に座った。

「おはようございます」「おはよう」

「おはよう、よく眠れたかな?」

「昨日、死にかけて。よく眠れるほど豪胆じゃないよ」

 眠そうに眼を擦っている。

「そうか、じゃあ寝てても良いぞ」

「そうもしてられないよ」


「今日は目玉焼きだ。ゆっくり食ってくれ」

「このパンは2次発酵させてあるね。あんた飲んでるのってコーヒーじゃない」

 パンを焼くのに当然指導して日本の品質に近づけた。コーヒーはネットで買った。

「パンは管理棟で焼いてる。コーヒーは俺個人のだ」

「私にもコーヒーちょうだいよ」

 俺はいつも5杯分を淹れて収納に入れておく。そうすると劣化しないし、バラツキも小さい。

 俺がコーヒーカップにコーヒーを注ぎ、砂糖を添えて渡した。


「ミルクは自分のを使ってくれ」

「僕、母乳はまだ出ないけど」

 こんにゃろ、面白いネタ振りやがって。

「朝食についてるだろ、ミルク」

「ああ、これね。あれ、これコーヒーなの、香りはコーヒーだけど。そうかトルココーヒーだね」

「いや、これはブラジル産の豆。ああ、淹れ方かドリップだ」

「ブラジルってどこ?」

 しまった。まだ南北アメリカは発見されてない。

「場所は良く知らない」

 蒼伊が興味津々って顔してる。お前にそっくりだな。オイ。

「おいしいね。ドリップってやり方教えてよ」

「ああ、後でな」

 ドリップはこっちでも開発されてるよな?これ以上話してると転移者とバレそうだ。


 9時 寮 執務室

 ミヤを残して他の従者は出て行った。

 ミヤを残したのは空間転移が出来るからだ。

 部屋には俺、ミヤ、ナータがいる。

 ナータが切り出した。

「僕と一緒に魔国に行って欲しい」

「で俺に何をしろと?」

「僕の護衛。僕は魔国がどうなってるか確認しないといけないんだ」


 扉がガチャと空いた。

「私を置いて行っちゃ、嫌です」

 ヒイだ。君はマールたちと出て行ったんじゃなかったっけ。

「ここでちょっと待っててね」

 ヒイをミヤの横に座らせて、どうしようかな。まあ、話を進めよう。

「しかし、俺は魔国の地図を持っていない。転移できない」

「君の場合、従者にすると地図を共有出来るんだろう。従者にしてよ」

 ライヤから漏れたかな。後でお仕置きだ。


「いや、従者にするとこちらの秘密が漏れてしまう」

「そこんとこはうまくやってよ」

『お任せください。リシュの時も成功しています』

「出来るみたいだ。ちょっと待ってくれ」

「君、誰かと話してる?」

 感の良い奴だな。無視だ無視。

「ちょっと、今集中してるから黙って」

「ごめん」


『まず空間制御の異能をヒイに移してください』

 空間制御ヒイに移すっと。

 ヒイがビクっとした。よし移った。

『ナータに従属の回路が形成されました。空間制御と重力制御の異能がコピーされました。インストール、マップ、念話、身体強化が使用可能です』

『インストールと身体強化が制限されています』

 空間制御を一つ余分に手に入れて、さらに重力制御を手に入れちゃったよ。流石、ナビさん。


 どれどれマップをってなんじゃこれ。アフリカ大陸、ユーラシア大陸、日本列島までを網羅している。

「このマップどうやって作ったんだ」

「あ、これ。僕が浮かべるの知ってるでしょ。息の出来る限界位まで上がって見えるギリギリに転移するんだ。これを何回か繰り返すと1万キロ位すぐだよ」

 そうか、昔の飛行機で測量してた時と同じ原理か。今は衛星だけど。

「ねえねえ、ずっと高く上がると空気が薄くなるの知ってる?」

「知ってるよ。人の住めるのなんて5000m位までだろう。気温も下がるしな」

「なんで知ってるんだよ。僕なんか上がり過ぎて死ぬとこだったんだよ」

 大体理系の人間なら知ってるんじゃないかと思うよ。


「でどこに行くんだ?」

「マークを付けたよ。魔王城の近くだよ」

 マークを確認したエジプトのカイロの辺りだ。

「ミヤ、ヒイ行けるか」

「ヒイ、分かんない教えて」

「ミヤ、教えてあげて」

 ヒイも解ったみたいだ。


「時差は5、6時間ってところか」

「時差って何ですか」(ミヤ)

 ミヤが聞いて来た。手を握って説明する。

「地球は丸くて回ってるだろ。太陽は右手で今、天都は朝だから左手で言うと親指の付け根辺りだ。じゃあ裏のここは?」

「お日様が当たってないので夜です」(ミヤ)

「そうだね。じゃあ天都を昼にしてみよう」

 手を90度捻って見せる。

「じゃあさっきの場所は?」

「朝になった」(ヒイ)


「そうだね、天都とこの場所が同じ太陽の位置に来る時間の差が時差って言うんだ」

「このマークの場所の時間は天都より5、6時間遅いと言うことですね」

「だから今、転移すると?ヒイちゃん」

「お日様が上がってないから夜です」

「良く出来ました」

 二人の頭を撫でてやる。二人とも満足そうだ。

「君、すごいね。僕は今まで転移するとどうして時間がずれるのか不思議だったんだ」

「地球が丸くて、一日で一周すること位知ってるだろ」

「知識としては知っていたけど実感できていなかった。君の説明でやっと解ったよ」

「だから昼食食べてから行くぞ」

 この世界の知識レベルは低いな。ナータなんてしっかりした教育を受けていそうなのに。


 魔族のおさらいをしておこう。

 肌は褐色、髪の毛は白銀、種族の特長として異能を持つ確率が高い。そのために魔族と呼ばれる。

 アフリカ大陸北部ナイル川流域に住む。魔王の治める比較的豊かな国だ。

 アフリカ大陸にはいまだに恐竜がいるらしい。


 昼食時に魔国に行くと皆に告げた。ヒイとミヤを連れて行く。

 良かった、茜と真白がいないからヒイのわがままを聞いちゃ駄目って言われずに済んだ。

 古参の子には睨まれて、新参にはなんでヒイには甘いのって顔をされるが知らん顔をした。

「恭平はヒイに甘すぎ、もっと毅然とやれよな」

 マールに言われちゃった。


 お昼過ぎ、念のためナビさんに転移ポイントを4人とも少しずつずらして設定してもらう。

 魔王城の近くの人の居ない場所に転移した。

「頼むよ僕は戦闘力皆無だからね」

「でも何もなさそう」

 人々は平然と街を歩いている。兵がそこいらに居ると言うこともない。

「どこに行く?」

「この先に僕の家庭教師だった人の家がある。そこに行こう」

 ナータは顔が見られないように俺の後ろを歩く。

「ここか」

「そうここ」

「門番は知った顔か?」

「うん、こんな顔だったと思う」

「ちょっと待ってな」


 門番の所に行きナータ姫が来たと伝えてくれと頼んだ。

 門番はナータの顔を確認し、家に入っていった。

 家の中から何かをひっくり返す音が聞こえて、男が飛び出て来た。

「ナータ様、ご無事でしたか。左手は何ともございませんね?」

 俺達は紹介して貰って挨拶した。

「左手はこの恭平さんに治して貰ったのよ」

「ではあなたの部屋の前に落ちていたのは、やはりナータ様の手でしたか」

「魔王様が待ち焦がれております。城に行きましょう」


 道々、昨日の出来事を聞いた。

 将軍の一人が私腹を肥やし、追及した所、いきなり兵をあげ、ナータの部屋のある一角を占拠して立てこもった。そこに居たものは逃げて無事だったが。反乱兵を排除した所、ナータの手らしきものが落ちていたので大騒ぎとなった。

 と言うのが事の顛末らしい。

「俺達はもういいか」

「いいえ、恭平殿がいなければナータ様は確実に死んでいたはず、ぜひ魔王様にお目通りをお願いします」

 城に入ると兵が「ナータ様が!」と叫んで奥に入っていった。

「何かはずかしい」

 ナータが照れていた。


 奥からちょっと肥満の多分魔王様が走って来た。

「ナータ無事であったか。良かった」

 元家庭教師がかくかくしかじかと説明すると

「そなたがナータの命の恩人であったか。ありがとう」

 涙ボロボロ、鼻水ズルズルで抱き着かないで。


 ここでは何だと言うことで魔王の執務室に入った。

「そなたが恭平殿、こちらの様子が解らぬからと護衛まで、護衛?」

 ミヤとヒイを見て目をぱちくりしている。

「この子たちはかの有名な剣姫だよ」

 ナータがそう言うと魔王は

「竜40頭を倒した剣姫とな。にわかには信じがたいが」

 仕方ないな、いつもの事だ。

「其処の衛兵の人、この子達を捕まえてみてください」

 一人が面白いとばかりにミヤに覆いかぶさったと思ったら俯せに倒れ腕を極められていた。

 も一人の兵はヒイの後から近付き、抱き着いたそのまま相手の右手首を極めて捩じって後ろに回る。

「いててて、ごめんなさい離してください」

「これで護衛として何ら問題がないと信じて頂けましたか?」

「驚いたな、こんな小さな子が」


 その後、悪魔のことについて聞いた。

 ナータの兄は1万の軍でイタリアから攻め上がりフランス、ドイツと攻めあがっているらしい。

 悪魔は殆ど応戦せずに逃げているようだ。

 

 俺はナータの従者契約を解除しようとした。

「もうちょっとそのままにしといて、研究したいから」

 マップが使えるからいいかと思って許可した。

 遅くならないうちに帰った。



次回 またも忍者?です。

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