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第五十八話 ナータ受難

ナータが大けがをして飛び込んできます。

 干支座の事件は天帝様を怒らせていたため、徹底的に捜査が行われ、2カ月後までの逮捕者が300人を超えた。

 鼠と呼ばれた首班は伯爵位の貴族で当然財産没収の上、改易だ。

 今回の事件の首謀者達は小物の割に没収された財産は巨額に上り、こちらへの投資も増えたほどだ。

 やっぱり、千年の時間はすごいなと思った。

 目の保養をさせてくれた彼女の罪が軽いと良いな、と思ったのは内緒だ。

 ライヤ辺りはMっけがあるから縛ってとか言いかねない。


 転移233日目

 11時 寮

 最近、悪魔がちょっかいを掛けてこないので平和だ。

 そう言えばもうすぐ体育大会だ。茜が忙しく立ち回っている。

 そんなある日のことだ。寮に居ると懐かしい顔が尋ねて来た。

 真っ黒い服装の魔族の王子ナータだ。

 執務室に招き入れて話をする。

「久しぶりだね。恭平」

「虎の一件以来か、本当に久しぶりだ」

「恭平が来てくれないから来たよ」

「無茶言うなよ。アフリカまで行く力はまだ無いからな」


「君が恐竜魔獣をやっつけたって噂を聞いてやって来たんだ」

 ソファーの上に浮いていやがる。

「確かに西域で恐竜魔獣と戦ったよ」

 俺は気功の刃の事を隠して話した。

 そして悪魔の種類について話した。


「成程、僕たちは知能の高い悪魔人間の事を真なる悪魔と呼んでいるんだ」

 真なる悪魔はヨーロッパの戦争で数を減らしたらしい。

 肉体を持った悪魔や人間と共存を図る悪魔についての情報は無かった。

「君達は魔獣に対して決定的な武器を持ったのだろう?」

「確かに魔獣に有効な武器は開発した」

「教えてくれ」

「俺はお前は信頼できると考えている。しかし他の魔族がこの武器で攻めて来るかもしれない」

「確かに魔族とて一枚岩ではない。他を攻めない保証がいるのか」

「そう言うことだ。自分の武器で攻められる愚は犯したくない」

「魔族が他の部族に信頼される日は遠いのだろうな・・・ありがとう。随分参考になった」

 フッと消えた。空間移動の異能だ。

 俺は気功の刃は魔族の方が習得しやすいと思っている。そういう奴が何百人も攻めてくることを考えると寒気がする。


「誰か居られたのですか?」

 居間に行くとミノンがいた。

「もう帰ったよ。ミノン今日は早いね、まだお昼までには時間があるのに」

「はい、車体工場で機械が壊れましたので、皆さん修理に出向きました」

「そう、進み具合はどう?」

「紡績機、自動織機はほぼ目処が着きました。縫製機ミシンは人の作業に合わせるのが難しいです」

 インストールで縫製機の達人を入れるようにアドバイスした。

「それでは自分がやったという気になれないのです」

「君は機械をいじりたいって言ってたけど面白い?」

「はい、モーターの回転がカムやいろいろな歯車で、違う動きになるのが一日見てても飽きないのです。エヘっ」

 良い笑顔を見せてくれる。

「これ見てくれますか、リシュ様にお願いされたタータンチェックです」

 緑色を基調にした上品な模様だ。

「綺麗に織れてるね。すぐに商品化できそうだよ」

「えへへへ。ありがとうございます」

 笑顔の可愛い子だ。頭を撫でてやる。


「あ、ヒイも撫でて欲しい」

 ヒイたちが帰って来た。

「雨が降りそうです」(ミヤ)

 そう言えば朝からどんよりしてたなあ。

「ただいま、雨降りそうだから今日は昼まで」(茜)

「私も雨が降ると運転が怖いので終了です」(真白)

 今日は珍しく全員揃いそうだ。

「そうだ、明日は蒼伊の誕生日だろ。今日パーティーやっちゃおう」

「「賛成」」

「タンジョウビって何ですか?」(ミヤ)

「生まれた日、何月何日ってこっちの人は数えだから分からないか」

 誕生月は分かったのでこれから誕生月でやることになった。

 今年この月以降に誕生日を迎えるのはマールと真白だ

「不公平だからもうみんなの誕生日で良くない。来年からちゃんとやりましょう」(蒼伊)

 皆が賛成した。ケーキも3つ、後コーラやポテチ、パーティ用の皿盛などを買いまくって、クラッカーを鳴らした。

 それから2時間大騒ぎをした。

「はしゃぎ疲れたな、よしお開きだ」

「恭平はこれから何かするの?」(茜)

「14人乗りの飛行機の設計だ」

 俺は執務室に入った。


 黒ずくめの子供がいる。ナータだ。

「グッ 恭平」

「どうした。けがをしているのか?」

 左腕がひじの上から千切れている。

「ちょっと待ってろ。すぐ直してやる」

 意識を失ってしまった。

 再生を掛ける。

「恭平、どうしたの?」

 茜が心配して覗きに来た。

「満タンの魔力石を持ってきてくれ!!、早く」

「はい!」

 腹にも大きな穴が開いてる。血もかなり失っているようだ。

 欠損部位が多ければ、それだけ多くの魔力を必要とする。

 魔力が無くなりそうだ。

「魔力石だよ」

 蒼伊が持ってきた魔力石のソケットから魔力を吸い上げる。

 魔力が戻ってくる感触がある。もう大丈夫だ。


「どういうことなの。この子は一体どこの誰なのよ?」

 再生治療が終わってナータはソファーに寝かせた。今は眠っている。

「この子はナータ、魔族の王子だ。ヒイは会ったことがあるだろ」

 ヒイとナータと俺はハイジの魔獣化の瞬間に立ち会っている。

「あ、この子竜王国に居た。・・けど消えた子供???」

 ヒイは首を捻っている。あの時は唐突だったから詳しく覚えてないか。

「この子は空間移動が出来る。午前中に情報交換に来ていて一旦帰ったんだが」

「今、入ったら居たということ?」

「そうだ」


「真白、適当に服買って着替えさせてやってくれ」

「はーい、まずは綺麗にしてあげるねえ」

 お湯を持ってきて服を脱がしている。

「恭平さん!!この子、女の子だよ」

 見るとヒイよりも大きく、ミヤより小さい乳房が見えた。

「スケベは駄目です」

 ヒイが顔に張り付いて目隠しする。

 君どこから現れた?


 ナータについては謎が深まるばかりだ。

 魔族の王子という名乗りも嘘だった。

 しかし、大けがをしてここへ転移したのは、平凡な生まれではない証拠だろう。

 起きるまで待つしかないか。


 19時 寮 執務室

「恭平さん、ナータさんが目を覚ましたよ」

 真白が俺を呼んだ。

「済まない、部屋を出ていてくれるか」

「はい」

 俺はナータの向かい側に座った。

「自分が誰か解るか?」

「魔族の王子ナータ」

「俺の名前は?」

「恭平」


 ナータは周囲と自身を眺めて回している。

「頭は大丈夫そうだ。説明して貰おうか」

「城に帰ったら急に襲われて・・・あれ、左手、腹も」

 Tシャツを大きくまくり上げたのでふくらみが確認できた。

「俺が直したよ」

「ありがとう。でも見たね」

「仕方ねーだろ、お前血まみれだったんだぞ」


「すごいね、傷跡もない」

「俺の異能だ」

「ここから中央アジアの拠点に跳んだら、兄上が悪魔に反撃に出たって連絡が来て、確認に魔王城に行ったんだよ」

 話が飛びまくりだ、大丈夫か?

「自分の部屋に跳んで、部屋から出たら、兵隊に襲い掛かられて、一番安全そうなここに跳んだんだよ」

「何が起きてるんだ」

「分からないよ。ところで下も見たの?」

「見てないよ。女の子に体を綺麗にして、着替えをして貰った」

「良かった」


「で、お前は何者なんだ?」

「魔族の王女だよ。女だと馬鹿にされるから男の振りをしていたんだ」

「お前みたいな神出鬼没の怪しい奴、誰も馬鹿にしないよ」

「なんだよ、人をお化けみたいに」

「突然現れて忽然と姿を消す。お化けみたいじゃないか」

「王女様に失礼とは思わないのかい」

「うちにもいるんだよ。王女に皇女。珍しくもない」

「君の所はどうなっているんだい。理解に苦しむよ」

 頭を抱える真似をするナータ。


「うちの事はどうでもいいんだよ。お前はどうするんだ?」

「ちょっと考えるよ。一晩泊めてくれない?」

「それは構わないが。・・今日は帰るなよ」

「解ってるよ。向こうも警戒してると思うし」

「ああ、そう言えば、ナータは本名なのか」

「まさか、ニックネームだよ。本名はナータ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だよ」

 名前言うのに10秒近く掛かったぞ。

「覚えらんないよ。ナータでいいか?」

「いいよ。本名で呼ぶ人いないし」

 リシュの本名も長かったが倍以上だ。


「歳は?」

「14歳だよ」

 なんで俺の周りには少女しか集まらないのか?たまには20台後半の女性が・・いかんいかん。

『こちらの世界では18歳を過ぎると独身女性は売れ残りと見られるので殆ど外に出ません』

 ナビさん解説有難う。成程、だから日本でいう結婚適齢期の女性を見ないのか。

「今、胸のこと考えてたよね。これでも魔族ではある方なんだからね」

「いいえ、全然」

 胸と言えばアンナさん元気でやってるかな。あなた以上の胸は未だに現れません。

「なら良いけど」


「そうだ、腹減ってるだろう」

「うん」

「こっちに来い」

 食堂に案内して、今日の昼食を入れ替えた鍋を収納から出す。今日は誕生会で食べなかったからな。

 ミヤ、ヒイ、リシュ、ミノンは風呂か?ずーと見回して。

「ライヤ、この子泊めてやってくれ」

「はい、分かりました」

 ご飯を食べ終わったナータを風呂に連れて行った。


ナータを魔王国に返す。大けがの謎は?

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