第五十五話 ミノン
ミノンの主役回です
転移210日目
私はリシュ様のメイドを首になった金羊族のミノンです。巻毛の金髪と巻角がチャームポイントです。
6時半だ。起きなくては。この寮は6時半に起床、着替えて7時から朝食、顔を洗って8時出発が基本なんだって言ってた。
ヒイ様、ヒイ様って言っちゃ駄目なんだわ。剣姫にヒイって人がいるもの。
「リシュ様、起きてください。朝ですよ」
リシュ様は寝起きが悪い、今日もなかなか起きてくれない。私は自分は着替えつつ、リシュ様の着替えを出しながら、リシュ様を起こさないといけない。毎日の日課だ。
「リシュ様、リシュ様、起きてください。朝ですよ。恭平様が起こしに来ますよ」
リシュ様が飛び起きた。
「二段ベッドの上なんだから、静かに起きて下さい」
「私、なんでこんな所に寝てるの?」
「リシュ様が恭平様の従者になるって言って、寮に入ったんじゃないですか」
暫く上を見て考えていらしたわ
「そうだったわ、無理やり押し掛けといて、朝寝するところだったわ」
「降りて着替えてください。下着とかはこの袋に入れてください。洗濯してくれます」
私、ミノンなしでやっていけるのかしら?と思ったリシュでした。
階段の横にあるトイレで用を足して、階段を一階まで降ります。
301って書いてある洗濯袋を洗面所にある洗濯籠に入れていたら、お風呂場から人が出て来た。
確か真白さんだ。おはようございますって挨拶したらニコッと笑って挨拶を返してくれたわ。
「私、朝シャン、分からないか。朝、髪を洗うのが趣味なの」
「そうなんですか?」
この人の胸はすごいんです。超美人なんですけど、胸に目が行ってしまうので損をしています。
「リシュ様、食堂に行きますよ」
「大丈夫よ、ちゃんと起きてるから」
欠伸をしながらリシュ様が返事をした。
「あら、おはよう。早いのね」
茜さんだ。背が高くって細くって、それでいてすごく女性らしいんです。憧れます。
「おはようございます」
「ほら、蒼伊、リシュちゃん達がいるわよ。しゃんとして」
「ああ、おはよう。無理言わないでよ。朝はしゃんとできない」
蒼伊さんです。背はあまり高くないけどグラマーな美人です。天才なんだそうです。
朝ごはんは食堂に入ってすぐのカウンターに並べてあります。
パンとバター、スクランブルエッグ、サラダ、ミルク、今日の朝食です。
恭平様はコメのご飯がいいと言ったらしいのですが、女性達が洋食が良いと押し切ったそうです。
まあ洋食の方が食べ易いので私も賛成です。従者って何、と言う感じはしますが。
奥の方で恭平様が呼んでます。
「おはよう、どう眠れた?」
「おはようございます。急なことで気が動転して、あまり」(ミノン)
「おはようございます。私は大丈夫です」(リシュ)
「「おはようございます」」
恭平様の右にはヒイちゃんが左にはミヤちゃんが座ってます。
3人はすでにご飯を食べ終わってます。
「ヒイ、ケチャップが付いてるよ」
「拭いて」(ヒイ)
恭平様の方に顔を突き出します。
「ヒイ、自分で拭きなさい」(ミヤ)
ヒイちゃんはむすっとして自分で顔を拭いています。恭平様に甘えたかったのでしょう。
ヒイちゃんはたれ耳の犬人族かと思ったら黒狼族というオオカミの種族だそうです。
金色の髪の毛でものすごくかわいい子で一番先に従者になったそうです。
ミヤちゃんは真っ黒な髪の毛に猫の耳が生えた猫人族。
この子は本当に美少女って感じで二番目に従者になったそうです。
「ほら、混まないうちに顔を洗っておいで」
「「はーい」」
二人は仲良く3人分のトレーを片付けて洗面所に行きました。
「母ちゃん、ご飯」
ハイジが追い掛けていきます。
ハイジはオオカミの魔獣ですがヒイちゃんの従者で、まだ生まれて半年ですが喋れます。
「「おはようございます」」
振り向いて挨拶を返すとジュレイさんとドーテさんでした。
「昨日はごめんなさいね」(リシュ)
「気にしなくていいって、気持ちはわかるから」(ドーテ)
背は高めで黒い髪、褐色の肌をした犬人族がドーテさんです。少しきつめの顔ですが整った顔立ちです。
「私も押しかけましたから」
と笑うのはジュレイさんです。ドーテさんと対照的で雪の様に白い肌、白い髪、豹の耳、雪豹族と言うそうです。お姫様と言う感じの美人です。
「「おはようございます」」
最後はライヤさんとマールさんです。
ライヤさんは茶色の髪の猫人族で可愛くて優しい感じのお姉さんです。
マールさんは薄い金色の髪の毛で耳が横に長い耳長族、しゃべらないと可愛いんですが。
ここで気が付きました。ここには美人しかいない。私が居て良いのでしょうか。
リシュ様に耳打ちすると
「何言ってるの。あなたの可愛さは私が保障するから」
と言ってくれました。自信は無いけどここで諦めたら駄目だわ。
真白さんがスクーターで出かけ、続いて茜さんもスクーターで出かけました。
暫くして、蒼伊さんとライヤさんが歩いて出かけました。
マールさんとヒイちゃんはスクーターで帝城の近衛に弓と剣の訓練に行きました。
ジュレイさんは軽と言う小さな車でドーテさんとミヤさんを連れて警らに訓練に行きました。
皆、それぞれでお金を稼いでいるそうです。
リシュ様はライヤさんが戻ってきてくれたので工房の見学に行きました。私はまだ従者になっていないので秘密の多い工房には行けないそうです。仕方ないですよね。
昨日の引っ越しが慌ただしかったので荷物の整理や部屋の掃除でお昼まで掛かってしまいました。
茜さんと真白さん以外は昼前に帰ってきました。
お昼を食べ終わってリシュ様はライヤさんとお昼からの話をしているようです。
私も進まなければ。そう思って恭平様に思い切って話しました。
「私の話を聞いて下さい」
「じゃあ、こちらで聞こうか」
恭平様の部屋の執務室に案内されました。この奥に寝室があるのですね。
対面で座って大きく深呼吸して話し始めた。
「私は剣姫になりたいです。機械の勉強もしたいです」
うまく言えた。
「うん、従者になると言うことでいいかな」
「はい、私は人の役に立つことをしたいです」
「従者になれば異能が使えるようになる。特にこれをやらなければと言う強制は無い。秘密が結構あるからこれは守って貰わなければならない」
「はい」
「後は秘密が含まれるから成った後でね。聞きたいことは?」
「ここに居る人は皆綺麗ですが、私みたいのでも良いですか?」
「従者の条件は善良で責任感のある人。容姿は入ってないし、君は結構可愛いよ。恋愛・結婚も業務に支障が無ければ自由だよ」
「でも、ここの人達って皆、恭平様と結婚するって言ってますけど?」
「この世界の男がリシュのお兄さんみたいなのばっかりだと思ってるからね」
「そうですか、皆、第一皇子と似たり寄ったりだと思いますけど」
「後は良いかな?」
「はい」
『ミノンとの従属の回路が形成されました。インストール、念話、マップ、身体強化が使用可能です』
「インストールはその道の達人の持つ技術が使える。そして技術の習得が数十倍速くなる。
念話は、俺もしくは他の従者と遠く離れていても会話が出来る。慣れると見ている絵も送れる。
マップは今までに行った場所、俺と俺の従者が行った場所が脳内地図に反映される。検索も可能だ。
身体強化は身体能力が約3倍になる。病気に罹りにくくなる。
あと、ナビさんと言う疑似人格がこれらを管理しているから、詳しいことはナビさんと念話してくれ」
「念話ってどうすれば良いんでしょう?」
「頭の中で”ナビさんリシュはどこに居ますか?”聞いてごらん」
『ナビさん、リシュ様は今どこに居ますか?』
頭の中に地図が出て点が動いている。
『リシュは工房内、ゴーレム工場から車体工場に移動しています』
「すごい、判っちゃいました。」
「それで、剣姫だがどんな武器を使いたい?」
「特に思い入れは無いんですが」
「敵を直接斬り倒したいか、弓矢の様に遠くから攻撃したいかだけど」
「突っ込んで行ってビシビシ斬り倒したいです」
ちょっと野蛮な女と思われたかしら。だって気持ち良さそうなんだもん。
恭平様が考えてくれることになったわ。
そうそう、あれをしとかないと。
私は帯を解いて着物を脱ごうとした。
「ちょっと、何やってるの」
「え、従者ですから。初めてなので優しくお願いします」
当然、抱いてもらうんだよね。ちょっとワクワクしてる。
「この世界には貞操観念ってないのかな」
「やっぱり、私が綺麗じゃないからですね」
私のおっぱい見たくせに、見たくせに。
「違う、違う、君は十分可愛いって」
恭平様が私の体は大人になる準備中で、それまではしない方が健康に良いんだって言ってた。
「だいたい、15、6歳で大人になるからそれ以降でね」
折角、覚悟したのにもう大人になってもさせてあげないんだから。
ミノンが突っ込んで戦うスタイルが良いと考えている。
俺は困った、それだと超近接戦闘になる。例えばミヤだ。
あの子は剣術界の特異点といって良い。
普通、戦場で生き残るのは長柄の武器だ。それだけ相手を近くに置いての戦闘は難しい。
『ご主人様、双剣使いはいかがでしょう?』
ナビさん、それはゲームの中の武器でしょう。双剣使いって現実に見たことないんだけど。
『御心配なく、私が育てて見せます。ミヤちゃんを超える双剣使いを』
最近、最新パソコンを大量に買い込んで、バージョンアップしてるからなあ。
仕方ないやらせてみますか。
次回、モンゴルの砂漠で決戦です。




