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第五十二話 少女たちの一日

モンゴル帝国編スタートです。(殆ど他愛のない話ですけどね)

 転移208日目

 侵入者事件から一か月。悪魔に動きは無く、割と平和な時を過ごした。

 と言っても魔獣の討伐依頼は2件あったが、今の俺達なら手子摺ることは無い。


 魔道具は結局、国に卸すことになり市場の状況を見ながら販売することとなった。


 製鉄所も稼働を始めた。初めて銑鉄を取り出したときは不覚にも涙が浮かんだよ。忍猫族の人達は大泣きしていたけどな。


 ゴーレムエンジンは個人向けの船外機が飛ぶように売れ、他のエンジンを作る暇がないくらいだ。

 簡単に取り付けられるし、速度は3倍だからな。


 製鉄所はまだだが、研究所とエンジン工場は利益を上げ始めた。勇犬族の人達も初めての給料を貰って、すげえテンション上がってたなあ。

 天帝様も配当渡したら喜んでくれたよ。


 車体工場だが魔力発電に目途が立ったので設備を入れ始めた。でかいプレス機がメインだ。

 魔力発電は地下を通る魔力の流れを誘導して、一定の魔力を取り出して、でかいゴーレムエンジンを回して発電する。燃料が要らないし、二酸化炭素も排出しない、日本に欲しかったなあ。


 俺達に目を向けるとドーテとマールが気功の刃を使えるようになった。

 それとヒイが始めた気功の盾を全員が訓練している。結界が展開に時間が掛かるのでとっさの役に立たないことから気功の盾(直径30~50cm)を使うことにした。

 空間に固定される結界と違って気功の盾は体に、普通は左腕に固定される。

 どういうことかと言うと一月前の魔獣戦で、ドーテが気功の盾を使った時を例にしよう。

 蹴りを受けた時はやはり弾き飛ばされる。

 次に踏み抜かれた時は鈎爪の貫通は阻止できただろうが、あばら骨は折れただろう。

 つまり、普通の盾と変わりがないが致命傷の防御に期待できる。


 剣術大会だがドーテが剣姫になったため棄権することとなった。

 2人の出場枠のうち1つが空いたため、急遽カクタス対少林寺の試合が行われた。

 結果はカクタスが勝ち、出場権を獲得した。


 ・・・・


 10時 天都 繁華街

 その日カクタスは剣術大会の出場を両親に知らせる手紙を送るついでに、妹のジュリアンちゃんに天都のお土産を送ろうとしていた。だが妹に何を送って良いのか分からないため、ジュレイとミヤに助っ人を頼んだのである。

「すまないなあ、俺は女の子の欲しがるものなんて、全然分からないから」(カクタス)

「でも妹さんにお土産買うなんて偉いわ。うちの兄なんて私を気にしたことないわ」(ジュレイ)

 天都の繁華街を歩く3人ではあるが竜人、雪豹、猫人の組み合わせは天都でも珍しく、少女たちは洋装に身を固めているためかなり目立っていた。


「あそこの店が品ぞろえが良いとライヤさんが言ってました」(ミヤ)

 ライヤが天都に一番詳しいので念話で案内してもらっているのだ。

「君達は便利だね。いない人に案内してもらえるなんて」(カクタス)

「それは秘密ですよ」(ジュレイ)

「おっと、そうだった」(カクタス)


 笑っていると前から歩いてきた少女がカクタスに体当たりをしてきた。

 カクタスはとっさに一歩引いて半回転、衝撃を逃がした。

「おいおい危ないなあ。何だ君は」(カクタス)

「あなたはカクタスでしょう。私は少林寺のメイリン。勝負!!」(メイリン)

 信人の少女が足を前後に開き、体を半身に構える。拳法家のスタイルだ。

「こんな人の多い所で何を言っている。お断りだ!!」(カクタス)


 彼女は有無をも言わせずに飛び込んでケリを放った。

 蹴り足が持ち上げられ、蹴りは空を切り、視界が後方に回転した。

 辛うじて受け身を取って後方に回転して立った。

「何者!!」(メイリン)

「私はミヤ。この人はご主人様の大切なご友人、無礼は許しません」(ミヤ)

「やめといた方が良いわよ。この子が怒ると五体満足では居られないよ」(ジュレイ)

 メイリンは構えを解いた。


 その後カクタスはお土産を買い、ジュレイとミヤに一個ずつアクセサリーをプレゼントした。

 帝城の近くでカクタスと別れた。

 メイリンはミヤたちの後を付いてくる。これでは収納からスクーターを出せない。

「まだ、何か用があるの」(ジュレイ)

「私は強くならなければいけない。あなたの拳法を教えてくれ」(メイリン)

「私は拳法家ではない。合気道と言う格闘技を使っている」(ミヤ)

 ミヤの場合、あらゆる格闘技から良い所取りをした合気道と言うのが正しい。

「拳法でなくても良い。さっき何をされたのかもよく分からなかった。あなたは強い。教えてください」(メイリン)

 メイリンは土下座した。


 ”やばいわヤバイこのパターンはやばいわ。また剣姫が増えるわ”ジュレイは心の中で呟いた。

「私は人に教えるのは向いてない。私の技は私しかできない。諦めなさい」(ミヤ)

「そうよ、ミヤちゃんの技は天才的なバランス感覚の上に成り立っているのよ」(ジュレイ)

 何とか諦めさせるのよ。ただでさえ恭平様との接点が1/9になってるのに、ジュレイは必死だった。

「そこを何とかお願いします」(メイリン)

 メイリンも必死だ。

「無理なものは無理です」(ミヤ)

「父を倒して道場を継がないと結婚出来ないんです」(メイリン)

 「ハイ?」(ジュレイ)


 メイリンは父親の弟子の男と結婚したいと言ったら、父親に勝ったら道場を譲って結婚させると言われたそうで、自分が少林寺で修行している時の兄弟子を破ったカクタスに最初は弟子入りしようとしたが、素手でそれより強いミヤに何とか教えてもらおうと思ったそうだ。ちなみに弟子の男は条件を知ると結婚を諦めようと言ったそうで焦りが倍加したそうである。


「心底どうでもいいわ」(ジュレイ)

 ジュレイは大きなため息を吐いた。焦った自分が馬鹿みたいだ。

「どうしたんですか」(ミヤ)

「なんでもないわ。帰るわよ」(ジュレイ)

 メイリンを撒いて帰った。


 ・・・・・・


 13時 寮 真白の部屋

 ベッドに真白と茜、その対面に蒼伊とライヤが座っている。

「真白ちゃん久しぶりの休みだね」(蒼伊)

「もう死ぬかと思ったよ。学生時代だってこんなに勉強したことなかったよ」(真白)

「今は何をやってるの」(茜)

「科別の担当が決まったから、基本から教えてるよ。インストールと日本の本に頼ってるよ」(真白)

「大変なんですね。私、芸術ってよく分からないから」(ライヤ)

「分からない人にも感動とか癒しを効率よく与えるっていうのかな。その筋道を作る学問だと私は思うけど。あくまで芸術は大衆の物よ。ライヤたちが喜んでくれることが私の目的だよ」(真白)

「ひえー、なんか鳥肌立った。真白さんすごいです。」(ライヤ)


「まだ、こっちに来てから半年余り、密度が凄いよね。婚約もしちゃったし」(茜)

「初体験も済ませたし、っていうか、こんなの反則だよね」(蒼伊)

「うん、日本で友達に聞いたあれと全然違うというか」(真白)

「私もそれは思います。結婚した友達に言えませんでした」(ライヤ)

「多分、本当に違うんだと思う。私達が感じてる幸福感」(茜)

「してる時も気持ち良いんだけど、その後の充足感、満足感と言うか、やっぱり幸福感かな」(真白)

「もう、離れられないや」(蒼伊)

「ジュレイやドーテもそろそろ参加でしょ。我慢できるかなあ」(真白)

「そうなったら二人ずつ行くか」(茜)

「私は無理ですう」(ライヤ)

 恭平の知らぬところで恐ろしい策謀が進行しているのである。


 ・・・・・・


 15時 帝城 近衛兵練兵場

 ヒイとマールが弓を練習するために来ている。大きな弓の練習場は、天都ではここしかない。

 ドーテは暇なので二人について来て、近衛兵と一緒に剣術の練習をしている。

「いくよぉ、三、二、一、ハイ!!」(ヒイ)

「オウ!」(マール)

 次々と放たれた矢は弧を描いて、遠く離れた的の中心に突き立っていく。

 拍手がいくつか聞こえて来た。天帝様が何人かの人を連れて見物している。

 ヒイとマールは矢と弓を後に置いて、跪いて礼をした。

「見事じゃ、ヒイそれとマールじゃな」

「「ありがとうございます」」

「ドーテじゃったな。お主も前に来い」

「ハッ」

 いつの間にかドーテと近衛兵が後ろに居た。

 ドーテもヒイたちと並ぶと天帝が言った。

「明日、この者たち、モンゴル帝国の第一皇子と第一皇女が製鉄所見学に赴く。恭平に連絡済みであるがその方たちも守ってやってくれ」

「「「はい」」」

「噂の剣姫に会えて嬉しく思う。明日はお願いするぞ」

 第一皇子は満面の笑みで言う。17、8歳かな。

「本当に頼もしい。それに美しいわ」

 第一皇女はその可愛い顔で笑いかける。14、5歳位かな。

 ニ三質問をした後、帝城に戻って行った。


次回よりモンゴル帝国編が本格的になります。

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