第四十九話 恐竜襲撃
恐竜がいっぱい出てきます。
俺達はトルファンの手前で合流した。
「町では、恐竜の話は聞きませんでした。変わったことも無かったそうです」
ジュレイの話でもやはりこちらには来ていないということだ。
飛行機で見た恐竜の足跡らしきものを見つけたことを話して、門城の方に戻ることにした。
それから二日掛けて戻り、足跡が街道から逸れる所に来た。
西域偵察7日目(転移166日目)
15時
車を収納に入れて、歩いて足跡を追う。
17時
足跡が途切れた所に来たがやはり何もない。
18時 夜営
足跡から少し離れた場所で夜営することにした。
暗くなったので明日もう一度捜索しよう決めたのだ。
西域偵察8日目(転移167日目)
4時
十六夜に照らされた砂漠の一部がカパッと口を開け、大人位の背丈の2足歩行の羽で着飾ったトカゲがワラワラと出てくる。
最初に気付いたのはやはりハイジだ。低い唸り声をあげている。
「ウアン(敵だ)」
俺は起き出し、奥の寝室を開け、皆を起こす。
「敵だ、武装しろ」
「ハイジ敵が分かるか?」
「ウオワン、アォォン(鳥かトカゲだ)」
鳥かトカゲって、そうか羽毛恐竜。
大きな奴以外にもいたのかよ。
覗き窓を開けてみる。
夜が白み始めた中、約20頭のデイノニクス?がやってくるのが見えた。
どうする。恐竜となんて戦ったことないぞ。
確か、あいつらは後ろ脚の鈎爪で攻撃してくるんだっけ。
着替えた女子たちがやって来た。
「ヒイとマールは窓から攻撃しろ!」
一直線にこちらにやってくるんだ。攻撃以外あるまい。
二つの矢窓からヒイとマールが矢を射る。
先頭に居た5頭が倒れると群れが割れた。裏に回る気だ。
「ジュレイ、ミヤ、トイレの隔壁を閉めろ!!」
この家の弱点は左側のトイレだ。トイレが破られると玄関に横から入られる。隔壁は作ったが、どの程度耐えられるか?さらにはトイレ側には矢窓が無い。
「マールは後ろだ、ヒイは右だ」
俺は表で弓を構える。表に敵は居なくなった。
敵は左側に集まったようだ。
「裏で3頭、右で2頭倒しました」
半数は倒したみたいだ。
その時、ドーンと言う音が響いた。水タンクがやられた。水の流れる音がする
その後もバキバキと言う音が続く。トイレが壊された。
ガンガンと外壁を蹴っている音がする。
どうする。このままではじり貧だ。いずれは外壁が破られる。
敵は半分になってるはずだ。外に出るか。
「いいか、左の端は俺だ。俺が出て攻撃を止めてる間にミヤ、ジュレイ、ドーテの順で外に出ろ。家から離れずに敵を迎え撃て。相手の攻撃は止めるな、避けろ。マールは俺達が出たら玄関にカギを掛けろ。後は、ヒイとマールで表側の敵を撃って援護だ。ドーテは無理をするな。ハイジは中に居ろ」
もう東の空は明るくなってきている。さっきよりは、見えるはずだ。
「こちら側には居ません。大丈夫」
ヒイが確認した。
「いくぞ」
玄関を開け外へ飛び出した。左側の角で結界を張る。
結界は結構不便だ。見えてないと張れないし、位置、形大きさを指定しないと張れない。どうしても2秒くらいは掛かる。
攻撃は来たが、全員が出ることが出来た。
こいつら頭がいい、表側に回らず、左側に居る。
相変わらず左側を蹴とばして家を壊すつもりらしい。
それとも俺達を引き込みたいのか。
いずれにせよ、家を壊されれば俺達が不利になる。
「ミヤ、俺と突っ込むぞ。ジュレイとドーテは俺達の後ろに敵が来ないようにしてくれ」
左側の壁に沿って突撃する。
俺は刀の延長に気功の刃を出し、目の前に居たトカゲを斬る。ミヤが千本に刃を付けて投げるとトカゲの細い首が落ちる。後8頭。
「とうとう出てきましたね。恭平」
トカゲたちの後ろに黒い服を着た男が立っていた。
「悪魔か」
「そうです。あなたをおびき出すため、あのでか物を運ぶのは苦労しました」
「俺が目的だと?」
「そうです。ラッソの馬鹿が、何度も失敗するので私が出て来たのです」
「自慢のデイノニクスももう僅かだぞ」
「申し訳ありません。そいつらはヴェロキラプトルです。それにまだまだ居ますよ」
「ヴェロキラプトルは犬くらいの大きさ、・・魔獣化か」
「その通り」
男の後ろからさらに20頭のトカゲが出て来た。
突如、男の後ろにミヤが現れ、首を切り落とした。
空間移動か大胆だな。
黒い影が首から現れ上昇する。ミヤが千本を放つ。数本が影に吸い込まれる。
「おのれよくも、掛かれ」
上空で影が命令した。
ミヤが戻る。
『表側に誘導するぞ』
『ドーテとジュレイは先に行け、俺とミヤは下がりながら誘導する』
トカゲの誘導に成功した。
『まだ射るなよ』
全部が表側に来た時、左側に逃げられないように結界を張る。
『今だ』
左側に固まって攻撃していたトカゲに矢が集中する。
特にヒイの矢には気功の刃が付いているので一矢で2、3頭のトカゲが倒れる。
左側に逃げようとしたが結界があるので逃げられない。
余計に固まって矢の好餌となる。
家に近づいたトカゲは俺達近接組に斬られる。
一頭のトカゲがドーテに向かいケリを放った。
恐らくドーテの倍以上の体重だ。受けてはいけないが魔獣との戦闘経験の無さが出た。
刀で受けた為、弾き飛ばされた。トカゲは鈎爪でドーテの胸に刺突をする。
ジュレイがトカゲの後ろから斬り付ける。しかし鈎爪はドーテの右胸に刺さっている。
「恭平様、ドーテが」
トカゲは後3頭だ。
「ミヤ、ジュレイ頼む」
俺はドーテに駆け寄り再生を掛ける。
「済みません。ドジを踏みました」
喋った後、ゴフッと血を吐いた。
「しゃべるな。大丈夫だ。すぐ直る」
ミヤが最後の一頭の首を落としてトカゲは全滅した。
死体を収納に入れる。
俺はドーテの鎧をを外してやる。右胸が貫かれている。Tシャツの破れた所からピンクの乳首が見えた。すぐに隠して見なかった振りをして再生を掛ける。
ジュレイからは俺の背中で見えなかったようだ。
寝室にドーテを置き、ジュレイとマールが様子を見る。
俺とヒイとミヤとハイジの3人と一匹は、恐竜の出て来た出入口を確認する。
「まだ居ます」
中を覗き込むと結構広い。中に入ると獣臭い。檻が小さい、子犬用位だ。小型化が出来るのか
1m位のアパトザウルスが居た。
「どうするの?」
「可哀そうだが置いていけないし、殺すしかないだろう」
流石にヒイも飼うとは言わなかった。俺はまだ1m位しか飛ばせない気功の刃で首を落とす。
奥の方でハイジが吠える。
「ウアン(敵だ)」
急いでハイジの所に行くと黒い影が蹲っていた。
「お前はさっきの奴か」
「見つかりましたか。残念です」
「お前たちは何をしようとしているんだ?」
「世界中の人間を支配して私達が憑依する。新しい人類の誕生です」
「人間との共存は考えないのか?」
「人間が自分より優れたものを許すっと‥。済みませんお別れで・・」
黒い影は灰色になり、薄くなって消えて行った。後には千本の刺さったソフトボール大の魔石が残っていた。
悪魔の弱点も魔石か。
周辺を探っているとハイジ大きくなったと思ったらが止める間もなく、魔石を食べてしまった。
「そんなの食べちゃダメ」
「お、い、し、い」
「「「喋ったぁ!?」」」
「ほかに何か喋れる」
「かあ、ちゃん」
ヒイはハイジに熱中してるのでミヤと二人で秘密基地?を調べる。
アパトサウルスの死体を収納に入れ、他にめぼしいものも無かったので戻る。
夜が明けていた。
家に入るとドーテが目を覚ましていた。
立とうとするのでそれを制した。
「血が随分流れたから休んでなさい」
「はい、ご迷惑をお掛けしました」
「迷惑じゃないけど怪我とかはしないようにね」
こういう時にご飯が出来ているのは嬉しい。
朝食後、家の修理をする。ボロボロになったタンクとトイレを収納し、新しいトイレを設置する。
勇犬族の時に使ったトイレだ。
タンクは新しいものもあるが配管と置台がここでは修理不能だ。
「暫く、お湯で拭くだけだな」
えーって言われても仕方が無い。
8時
いつまでも休んでいられないので街道まで歩き出す。大きな石がゴロゴロした中を足跡に沿って歩く。ドーテは俺の背中だ。天帝様に連絡する。ついでに茜に連絡を入れておく。
10時
街道に出たので車を出し帰ることにする。
風呂に入りたいというご要望により昼食、夕食はおにぎりで走りながら食べ、トイレ休憩も極力減らしてひた走った。娘たちは朝早かったのと戦いの疲れで殆ど寝ていた。
20時
獣王都に到着、こんな時間だが歓迎を受ける。豪華な寝室もお風呂も用意してくれた。家が戦いで壊れたので、修理の為にもう一泊したいと告げるとさらに大歓迎された。
西域偵察10日目(転移169日目)
8時 獣王城
ドーテも元気になり、ジュレイも獣王の残れ攻撃を躱して天都に向かう。
18時 長武辺り 夜営
西域偵察11日目(転移170日目)
8時出発
17時 天都 寮到着
「ああ疲れたぁ」
家に着いた安心感ってあるよねえ。俺はご飯まで部屋のベッドで大の字になった。
うとうとしていると腕が重い、見ると右内側にヒイ外側にジュレイ、左内側にミヤ外側にドーテ、足の間にマールが寝ている。
まあいいか、ご飯を呼ばれるまでそのままにしておこう。
キャーと言う声で起きるとライヤがハイジを指さしている。あーと6人が納得した。
「ご飯、ご飯」
ハイジが連呼している。随分流暢に話せるようになった。
次回、天都に帰っていろいろします。




