第四十七話 暗殺
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お母さんもやるときゃやるんだよ。
びっくりした。恭平様が声を荒げて怒るところを初めて見た。
私も”ひどいなあ、後で注意しないと”とは思っていたがあれほどお怒りになるとは。
思わず土下座しちゃった。
「ひとまず、里に案内するがお前たちが自分たちで悪い所を治せ。治らなければ追い出す」
そう言われてから里に来て決められた家に入った。
「悪いがここからは私が仕切るよ」
母さんは村人を集会場に集めた。
「お前達なんで怒られたのか解ってるな」
大体の者は、首を縦に振るが中には気に入らないという顔をした奴がいる。
「なんでだよ。来てくれっていうから来てやったのにあの態度はねえだろうが」
一人の男が声を上げるとそれに追従する奴がいる。
「そうだぜ、わざわざ、遠くから来てやったのに感謝されてもいいだろう」
「まだ金も貰ってないのにへいこらするこたあねえよなあ」
「ほかに言いたいことがある奴はいるかい?」
母さんが促すと一人の男が立った」
「俺達はあの村で暮らせなくなること解ってたから、頼み込んで連れて来て貰ったんじゃないか。なんでそんなことが言えるんだ」
「「そうだ、そうだ」」
「これだからいい子ちゃんは損をするんだよ」
最初に文句を言った男が吐き捨てた。
吐き捨てた男を指さして母さんは言った。
「こいつの言うことに一理あると思うものは手を上げな」
追従した二人以外は手を上げなかった。
「こら、お前なんで手を上げねえんだ」
男は自分の女房に手を上げた。私はその手を掴んだ。
「私は子供を売るなんて真っ平だよ。嫌なら、あんたが出て行けばいいんだ」
女房は子供を抱えて泣きながら叫んだ。
「馬鹿野郎、子供みたいなもの、またこさえりゃ良いんだよ」
なんて醜い所業なんだろう。私はこんなやつを庇って、母さんを引きずり下ろしたんじゃない。
村人が善良だって思ったから恭平様に頼み込んだのに、とんでもない迷惑を掛けてしまった。
泣いてちゃ駄目だ。現実を見なけりゃ。
「お前たちは残りな。後は戻って良いよ」
例の三人を残して村人を戻した。
「お小言かい。元族長さんよう。心配すんなって俺は働かないから、あいつの目にはもう映らないよ。アンタらが稼いだ金からちょっと小遣いを貰えば静かにしてるからさ」
「小遣いが少ないとあいつの所へ文句を言いに行くかもだけどな」
「わはははは」
「ドーテ 出口を塞ぎな」
母さんは裏口の前で静かに行った。
「な、何をする気だ?」
男は焦って転んでしまう。
私は出口に回って収納から脇差と自分の剣を出す。
「母さん!!」
自分の剣を母さんに放る。母さんが私を呼んだ時、何をするかはっきり分かった。
母さんは鞘を払って剣を構える
「やめろ、俺達も村の人間なんだぞ」
「お前らみたいなダニは村に要らない」
「台湾に帰るから許してくれ」
「お前らに帰られたら、爺さんたちが苦労するだけだ」
男の額を剣で突き刺した。
私も逃げようとした男の頭に刀を突き立てる。母さんは血があまり出ないようにしている。なら私もだ。
逃げ回る男を組み伏せ、後頭部に剣を突き立てる。
母さんは村の男三人の名を上げ呼んでくるように言った。
「暫く、ここに誰も来させるんじゃないよ」
「はい」
私は三人の男を呼ぶと表で見張りに立った。
呼ばれて入ると死体は裏口から運ばれたらしく、中は綺麗になっていた。
「夕方また皆を呼んで、あいつら3人に金を渡して出て言って貰ったと言うよ」
「奥さんはどうするの?」
「子供の為に残って貰うさ」
母さんは大きなため息を付く。
「ごめんなさい。嫌なこと押し付けちゃって」
「何言ってんだい。あいつらは私の責任さ。それよりドーテ、お前は剣姫になるんだろ」
「でも族長になっちゃったし」
「私が族長代理をやるから安心して行っといで」
「ありがとう。母さん」
「夕食を置いたら恭平様の所に説明に行ってきな。ついでに働いてるときに子供を預かってくれる施設を作ってくれって頼んできな」
「そんなわがまま言って大丈夫かしら」
「働くためのお願いだ、多分考えてくれるよ」
私は夕食を集会場に広げて、スクーターを出して、恭平様の元へ向かう。
寮に着くと今に恭平様と真白さんを除く剣姫が居た。
「おう、ドーテご苦労さん」
恭平様に明るく労われたのでどう返事しようか迷ってしまう。
「君が来たってことは解決したんだろ?」
「はい、あの3人にはお金を渡して帰って貰いました」(ドーテ)
「そうか、良くやってくれた」
「それでお願いがありまして」(ドーテ)
「まあ、座って」
玄関に居た私を中に入れてくれた。
「あのですね。寡婦が居まして、働いてる間子供を預かってくれる施設を作って頂けないかと」(ドーテ)
恭平様は手を打って
「そいつは失念していた。申し訳ない。ライヤ、君の所はどうだ?」
「はい、子供の面倒を見て貰えるなら後、十数人は働けると思います」(ライヤ)
「良し、8歳までの保育園と9歳からの学校を作ろう」
「保育士さんと先生を募集ね」(茜)
「工場の集会場を使おう」(蒼伊)
と、とんとん拍子に決まって行き、明日、預けたい子供の年齢と人数を報告、保育士や先生をやりたい人の募集をすることとなった。
「もう一つお願いがありまして、私を剣姫にして下さい」(ドーテ)
「それは良いけど、族長はどうするの?」
「良いの、定員問題はどうしたの?」(茜)
「族長は母が代理でやってくれます」(ドーテ)
「悪魔の問題があって、こちらも補強の必要があるんだよね」
「そうね、冒険だけやってりゃ良いってもんじゃないのね」(蒼伊)
「ライヤもどう?」
「私は武器を持って戦うって、聞いただけも駄目で」(ライヤ)
「そうかそれは仕方ない。でも俺も防衛戦なんてやりたくないんだ」
「あんた忍び込んだ時、手裏剣持ってたじゃない」(蒼伊)
「あれ、無理やり持たされたんで」(ライヤ)
「でも守らないと仕方がないよね。もう200人超えたんでしょう」(茜)
「そうなんだよね。俺としてはあっちこっちふらふらしたいんだけどね」
「諦めなさい、私達の旦那様なんだから」(茜)
「ドーテ、部屋どうする301号が開いてるけど?」
蒼伊の研究所が移転したので開いたのだ。
「明日からにします。今日は保育所と学校の件を話さないといけないので」(ドーテ)
「あっ、ついでに村の名前決めといて。無いと不便でさ」
「それと、向こうの収穫が終わった頃に爺さんたちを迎えに行こうよ
不意に涙が出た。引っ越し後の生活で邪魔になってはいけないと残ってくれたお爺さん達、心残りを拾ってくれた。恐らくその頃には生活はかなり安定しているはずだ。それにこちらには村よりも大きな田畑がある。お爺さんの仕事も十分あるはずだ。
夕食後に集会があるはずなのでそれまでに帰るつもりでスクーターに乗った。
もう、集会場に集まっていた。
と思ったらここで夕食を食べていた。
「母さん、私の分は?」
「無いよ。皆で分けちゃった」
「なんでよ?」
「だっておいしいんだもの。天都のご飯を食べたら、村のご飯なんて食べられないよ」
みんな大笑いだ。良いもん、おにぎりなら収納に山ほどあるから。
「で、話は?」
「三人の話はしたよ」
「じゃあ、そのままでいいので聞いて」
「まず、私は剣姫になることになりました。明日からは寮で生活します。それで私の母親にもう一度族長になって貰います。ここまで良いですか」
皆頷いてくれる。
「次に子供たちの事です。工場では働いている間、子供を預かってくれることになりました。年齢は1歳から14歳、1歳から8歳までは保育園、9歳から14歳までは学校となります。学校では読み書き計算を教えてくれます。預けたい方は子供の年齢・性別・親子の名前を私まで知らせてください。ここまで良いですか?」
幾つか質問が来たが答えられた。
「次に保育所・学校で働きたい人を募集します。保育所は赤ん坊から子供の世話ができる方、学校は読み書き計算を子供に教えられる方。計算は掛け算割り算を含みます。応募される方は私まで名前と年齢性別をお知らせください。ここまで良いですか」
あの男の女房が質問した。
「私でも保育士として雇ってくれますか?」
「あなたがよその子供でも分け隔てなく、お世話が出来るなら応募は出来ます」
「次に村の名前を決めてくれと要望がありました。大体は部族名を村の名前にするそうです。それでよろしいですか」
「部族名を知らんのだが」
「母さん」
「最近部族名も名乗ったこともないねえ。我部族名は勇ましい犬と書いて勇犬族じゃ」
「では勇犬村で良いですか?」
拍手が起きた。決定だ。
「では、明日は朝までいます。夕方また来ますので申請のある方はお願いします」
次回、とんでもないものが出現します。




