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第四十六話 村人到着

村人が問題を起こします。

 転移149日目

 魔力研究所の建屋が完成、寮の部屋から引っ越しをした。

 以後、大型設備や材料の搬入が続く。


 転移150日目

 体育大会の予選が無事終了。見に行けなかった。茜ごめん。

 忍猫族の隠れ里の整備終了。結局無料になった。ありがとう。


 転移151日目

 ドーテから4日後に厦門港に着く予定と連絡が有った。計67人となったがまだ増える可能性有。

 運転手二人、ミヤ、ジュレイ、マールが出迎えに行くこととなり出発。

 忍猫族の奥さん方に頼んで67人プラス出迎え5人の一日三食を作って、収納へ入れて貰うことにする。


 転移152日目

 家族構成から隠れ里の家の振り分け。

 研究所の業務振り分け。


 転移153日目 9時 寮 居間

 朝からヒイが暇なのか俺にくっ付いている。本来ならヒイも出迎えに行かせたかったが、そうなるとハイジが寂しがるので仕方が無い。

「恭平様、飛行機乗ろうよ」

「駄目、今日は研究所の工場を整理しないと蒼伊に怒られるよ」

 研究所は蒼伊の開発した製品の量産を行う工場が併設されている。台湾から来る人のほとんどがここで働くことになっている。


「面白くない」

 ヒイが駄々をこねるのは珍しい。仲間がいないので甘えてるのかな。

「警らへ行ったらどうだ」

「ミヤちゃんもマールちゃんもいないから嫌」

 やはり置いてきぼりで拗ねているのか。

「じゃあヒイ、俺の代わりにやって欲しいことがあるんだ」

「なに」

 オッ、食いついて来たな。


「ハイジに気功の刃を教えてあげて欲しいんだ。今のままだとハイジの戦闘力が低すぎて、皆と一緒に戦えないんだ」

「うーん、そうだね。ハイジは噛むだけだし、噛んでる所を狙われると負けるね」

 ここら辺は戦闘経験豊富なヒイちゃんだ。ちゃんと理解できる。

「ハイジに戦闘させないのなら良いけどね」

「嫌、ハイジはヒイと一緒に戦うの!ネッ、ハイジ!!」

「オン!!(もちろん)」

 ハイジはどこまで賢くなるのか。今の会話を理解していたのか?

 ヒイはハイジを連れて出て行った。


 さあ、俺も研究所に行こう。そう言えば始めは小さな工房を考えていたんだけど、今や製鉄所に研究所にゴーレムエンジン工場だぜ。秋には車体工場も動き始める予定だ。全部動けば1000人規模の人達が働き始める。今研究しているゴーレム発電が成功すれば製糸工場、織物工場、縫製工場も作って、服飾の革命を起こすつもりだ。それらが各地方に広まり、産業革命が始まる。


 そこまでで信帝国での俺の仕事は終わりかな。後は従者を何人か残して世界中を旅しよう。オーストラリア大陸、南北アメリカ大陸はまだ手着かずだ。原住民が居たら新しい文明を作るのも面白い。

 夢は果てしなく広がっていく。


 その日の夕方にはハイジが気功の刃で土手の草刈りをしていた。すげえな。マールもまだ会得できてないのに。


 転移154日目

 夕方、厦門港への到着の連絡。出迎えと合流。

「あの子供たちが剣姫なの?」

 母親がドーテに聞いた。

「そうあの雪豹族の子が獣王様の娘、あの耳長族の子は蛇亀王様が大叔父よ。あの猫人族の子が剣姫で一番強い子、商人の子供よ」

「貴族と平民が一緒に居るのかい?」

「そうよとても仲が良いわ。恭平様は出身で分け隔てはしないのよ」

「でも、貴族は怖い」

「あら、恭平様は平民よ」

「えっ、でも天帝様相談役って言ってたじゃない」

「そうなんだけど、恭平様は縛られたくないのよ。いずれ別の国に行くつもりでしょうね」

「別の国に、勿体ないねえ」

「その時は私も付いて行きたいな」

「その時は私が族長代理をしてやるよ」

 母親は自分の娘を微笑ましく見ている。


 転移155日目

 ドーテの村人はバス2台に分乗して天都を目指し始めた。


 ヒイはまた暇を持て余してる。仕方が無いので、最近体育大会の影響か天都の治安が悪化しているというのでヒイとハイジをパトロールに出した。ヒイは張り切って出発した。

 街ではハイジは有名であり、ヒイがそばにいるなら放し飼いでも誰も怖がらない。


 ハイジは普通のオオカミの大きさなのでヒイの横を歩いている。

「キャー、ひったくりよ」

 前の方で若い男がおばさんの手提げ袋をひったくって走って逃げた。

「行くよ、ハイジ」

「ヘヘヘ、俺の足は天都3位、誰も追いつけないぜ」

 とベタなひったくりは安心していた。

「叔父さん、泥棒は駄目だよ」

 横を見るとまだ小さい女の子が平然と自分の方を見ながら走っている。

「チクショー、そんなはずはねえ」

 必死で走るが女の子を引き離せない。一分も立たないうちに息が上がってひったくりは倒れた。

「ハイジ、押さえといて。私は警らの人を呼んでくるわ」

 ハイジが前足でひったくりを押えると息も切らさずまた走って行った。

「ハアハア、あいつ、剣姫なのか。俺より速いなんてずるいよ。ハアハア」


 この一件でまた剣姫の武勇伝が追加された。槍投げ4位とかが追加されたのは俺達の与り知らぬところである。


 転移156日目

 ドーテの村人は昨日は撫州の手前で一泊してまた朝一番で出発だ。

「このゴーレム馬車はすごいね。50人は乗れるし、揺れないし、なんといってもお尻が痛くない」

「このバスね、人の魔力では動いてないの」

「そうなのかい。じゃあ、なんで動くんだい?」

「魔力石っていう、何百人分の魔力を貯めこむ石があるんだよ」

「それも恭平様かい?」

「ううん、従者の蒼伊さんだよ」

「剣姫かい?」

「そうだよ。薙刀を使うの、強いんだ。村の人はその人の下で働くんだよ」

「そうなのかい、怖い人じゃなきゃいいんだけど」

「大丈夫、悪いことやらなきゃ優しい人だよ」

「幾つなの?」

「えっと16歳」

「子供ばかりじゃないか」

「そうなんだけど、仕事をするときは大人って感じがするよ」

 ドーテの母親は外の世界を知ろうと積極的になってきている。ドーテはなるべく付き合うようにすると決めた。


 ヒイは今日もパトロールだ。都民には歓迎されている。治安が良くなったそうだ。

 時々、お菓子の差し入れがあったりする。


 転移157日目

 村人は武漢まで来ている。


 水力発電所の試験運転が始まった。上流に作った取水路から水が流れてくる。水門を開けると勢いよく水が流れ落ちて発電用のタービンを回す。

 転炉に空気を送るポンプを動かす。取り敢えず100kWが二つで200kWの発電が可能だ。クレーンなどの補器類の動作試験も行う。


 転移158日目

 村人は許昌まで来ている。恐らく昼前に到着する。

 到着したらまず工場を見学して、昼食を取り、隠れ里へ移動して家に入って貰う。家は賃貸にするつもりだ。あまり甘やかしても教育上良くない。隠れ里にも田畑はある。作物はすでに植えられているので収穫をするだけだ。収穫までの間は村から運んだ食料と足らない分はこちらが補助する。


 村人が到着した。ヒイとミヤは抱き合ってる。今まで一週間も離れたことが無かったからな。

 工場の見学だがあまり団体行動をとったことが無いのだろう。ばらばらだ。ドーテと母親が流石にまずいと思ったのか並ばせている。

 質疑応答が各所で行われ、蒼伊が説明している。時間が余ったので製鉄所やゴーレムエンジン工場も見学した。こっちはライヤの兄が説明している。ろくに聞かずに大声でしゃべっている奴がいる。


 研究所の食堂で昼食を食べる。行儀が悪い、足をテーブルの上に放り上げている者、テーブルの上に座る者、食い散らかして食べ物を其処らに撒いてる奴。

 何処にでもいる厄介な奴らだろう。


 俺は怒ることにした。このまま頭に乗らせては双方に危険だ。

「お前達、人に対する礼儀を知らないのか!!」

 ドーテが俺の前に来て謝る。

「申し訳ありません。教育しますので何卒お許しください」

「お前たちの態度は助けて貰った人間の態度ではない。不満があるなら台湾に帰るが良い!」

「ここには天帝様も来ることがある。そのときにこのようなものをお見せできると思うのか!」

 ドーテは土下座した。母親もだ。

 村人は静まり返り、怒りが過ぎていくのを待っている。

「教育しろ。明日もこの調子なら首だ」


 忍猫族が素直過ぎたので油断していた。これで工場運営してもうまく行くはずがない。

 まずはドーテ親子がどの程度抑えられるか見せてもらうか。

 最悪こいつらを切るしかない。



次回、親子は悲しい決断をします。

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