第四十二話 アマゾネス?
ビキニアーマーが活躍します。
少林寺が負けを認めたのは仕方がない。恐らく彼の最速の攻撃だったのだろうが、届く前に潰された。
とっさに左手を剣に添えなければ打ち据えられていた。
「ミヤならどうする?」
「避けて、胴か足を払います」(ミヤ)
まあ、うちのミヤちゃんじゃ相手にならんか。
「ジュレイはどう?」
「避けるのは難しいかと、流して面、届かなければ小手ですね」(ジュレイ)
「うん、見れてるね。うちの前衛相手じゃ、あの攻撃は出来ないね」」
「私達は?」(蒼伊)
「君達は長柄だから突っ込む必要が無いでしょう」
「そりゃそうね」(茜)
「うー、私も構われたい」(蒼伊)
「真白、彼女はこれまでどうだったの?」
「私が見たのは、今回と一緒だね。突っ込んだところを一撃だよ」(真白)
「まあ、副隊長だったらジュレイと同じ策を取るだろうね」
「副隊長さんは蒼伊さんともよくやってるから大丈夫です」(ミヤ)
「流石に薙刀みたいな変化は無いと思うしね」(蒼伊)
「えーと、決勝は今から1時間と30分位だな。お昼ご飯にしようか」
「はい、ミヤちゃんと作ってきました」(ヒイ)
「おにぎりじゃないでしょうね?」(蒼伊)
「違います、サンドイッチとハンバーガーです」(ミヤ)
「流石に帰りの三日間ずっとおにぎりだったから、違うのにした」(ヒイ)
「ありがとう、流石ね。蒼伊も文句言うなら自分で作ったら」(茜)
「うう、朝起きれない」(蒼伊)
「それを言われると私もだから、言えなくなるわ」(茜)
わいわい、騒ぎながら昼食を済ませて決勝戦を待つ。
選手の入場だ。
副隊長が出て来た。こちらに気付いたのか手を振ってくれる。ミヤとヒイが手を振り返す。
「律儀だねぇ」
副隊長のいい所だろう。うちの子供たちの一押しだ。
「恭平、あれ」(茜)
「えっ、どうした」
反対側から出て来たのはビキニアーマーだ。
左手に持つ剣が短い。刃渡り1m以上だった剣が7、80cmしかない。
「これはやられたな」
「どういうこと?」(蒼伊)
「今まで速く強くしか見せていない。あの剣をどう使うのか見せてないってことだ」
「危ないですか」(ミヤ)
「あの剣をやめたということは、速く強くだけではないことでもある」
「副隊長だもの。ミヤちゃんとさんざんやってるから、ちょっとやそっとでは動じないわ」(茜)
・・・
うん、ビキニアーマーがこちらを睨んでる。俺の事を知っているのだろうか?
選手が中央に呼ばれ、いよいよ試合開始だ。
開始の掛け声と共にビキニアーマーが突っ込んだ。速い、小手から面、袈裟切りと息もつかせぬ連続攻撃だ。副隊長も少しも遅れずに防御する。次は、虚実織り交ぜた攻撃だ。
「くっ、やるな」
速く鋭い攻撃の連続で俺(副隊長)は反撃に転じられない。
「お前もなかなか出来るではないか」
相手に剣を跳ね返してやっと反撃に転ずる。しかし相手に体は捕えられない。
ミヤちゃんとやるときの作戦をやってみるか。
浅く速くを繰り返して相手の技を出させない。相手が焦れて無理をした時を狙う。
十回位打ち込んでいると。こちらの剣を強く叩き、上段に振りかぶった。
「ええい、うっとおしいわぁ!!」
これは精神年齢がミヤちゃんと同じだ。
上段からの打ち込みを木刀で左に流し、がら空きの面を打つ。
消えた。目の前に居た相手がいない、いや左にステップして躱している。
そのまま、面を打たれた。
あれが誘いだったのか。そう言えば流した衝撃が小さかった。
相手の勝利が宣告された。
「ああ、副隊長さんが負けてしまいました」(ミヤ)
「でも良い試合だったろ」
「はい」(ミヤ)
「じゃあ、拍手だ」
「はい」(ミヤ)
場内が割れんばかりの拍手で覆われた。
あれ、副隊長がビキニアーマーに捕まって何か言われている。あれ俺を見たような。
なんかやばい気がしたので、天帝様に連絡をして帝城に逃げようとしたら、天帝様が競技場に居た。
後を見たら観客席の一番上に貴賓席があった。
貴賓席に呼ばれ、天帝様に挨拶した。
「オウ、ご苦労じゃった」
「蛇亀王国から帰ってまいりました」
「連絡を受けて4日か、速かったの」
「カクタスに試合を見ると約束していたのです」
「悪魔か、ヨーロッパを支配してどうするつもりなのか?」
「私の考えですが、悪魔は人間の真似をしているように思います」
「どういう意味じゃ?」
「彼らの行動原理と言うものは人間の欲望に根差したものではないかと思います」
「人間が世界を征服したいと思うから征服していると申すか」
「彼らは人間と同じです」
「ヨーロッパは随分前から覇権争いをしておった。その影響を受けたのか」
「天帝様を見習ってくれれば良かったのですが」
「くすぐったいわ。来ると思うか?」
「大分先になりますが、十中八九攻めてくると思います」
「それまでに文明を進めなければ」
「はい」
謁見を終え、観客席に戻ると副隊長とビキニアーマーが居た。
「お前が恭平か?」
「そうだが何か用か?」
「私と勝負しろ」
「いやだ」
「なぜだ、なぜ勝負しない?」
「忙しいからだ。それ以外の用が無ければさよならだ」
「副隊長、残念でした」
「ああ、俺もまだまだだな。また遊びに来てくれ」
副隊長は逃げるように去って行った。余程しつこくされたんだろうな。
「俺達も帰るぞ。工房の進行を確認する」
「ちょっと待ってくれ。私はどうしたら良い?」
「知らないよ。帰ればいいだろ」
「私はお前に話をしないと帰れないんだ」
競技場の外に来ても付いてくる。
「私、後片付けを手伝うから先に帰って」
茜が事務局に去って行った。
「私も帝城に行くから」
真白も去って行った。
結局、ビキニアーマーは車に乗り込んできた。
仕方が無い。俺達は寮に帰った。
「俺は工房にライヤと行くから君達が相手してあげてね」
ミヤとジュレイにビキニアーマーを押し付ける。
ヒイとマールは合気道の特訓。蒼伊は魔力石の研究だ。
「彼女らに一回でも勝てたら勝負してあげるよ」
そう言って俺は工房に向かった。
「あなた、お名前は?私は雪豹族のジュレイと申します」
「私はドーテ、見ての通り犬人族だ」
「それでどうされますか?」
「もちろん勝負する」
空き地で木刀を持って向かい合った。
始め、ミヤの合図ドーテが突進する。小手を狙った剣は地面に当たり乾いた音がする。ジュレイの木刀はドーテの頭の上で止まっていた。
ジュレイの勝ちが宣告された。
何がどうなったかさっぱり分からない。
「今、何をした?」
「あなたの小手を狙った木刀の峰を叩き加速させ、軌道を変えたと同時に木刀を引き、面を叩いただけです」
「あの一瞬でそこまで」
ドーテは下を向き呆然としている。
「私はミヤ、私ともやりますか?」
「ぜひお願いする」
今度こそ見切ってやる。一尺ぐらいの片手剣だ。間合いに入られなければどうと言うことはない。
ジュレイが始めと叫ぶ。
目の前に居たミヤが消える、いや下だ。剣を振るうが、もうそこにはいない。後ろから首に木刀を当てられる。
ミヤの勝ちが宣告される。
今度は何をされたかは分かったが反応は出来なかった。
「あなた達は何なのだ?人間業とは思えない」
「私達は恭平様の従者です。恭平様に失礼な態度を取ったあなたを凹ましてあげようと実力差を見せました」(ジュレイ)
「申し訳ない。優勝して増長していたようだ」
「では、あなたにも見えるように試合ましょう」(ジュレイ)
その後、夕方まで何試合もしたが、ただの一度も勝てなかった。
恭平たちが帰って来たので夕食となった。シャワーを浴びていたドーテ、ミヤ、ジュレイ、ヒイ、マールも戻って来た。もう夏なのでタンクトップにハーフパンツ姿だ。
「あなたねえ、革鎧しかないの。普通、着替え位持ってくるでしょう」(ジュレイ)
「ちょっと待て、なぜこの部屋は涼しいのだ。明らかに外と違うぞ?」(ドーテ)
「クーラー入れてるからに決まってるでしょ。それよりあの革鎧どうするのよ?」(ジュレイ)
明らかにいつものジュレイじゃない。なに興奮してるんだろ。ミヤたちは呆れている。
「ミヤ、どうしたんだ?」
「あの娘、ドーテっていうんですけどあの革鎧だけで、一か月以上過ごしているようなんです」(ミヤ)
「臭くないのか」
「すごく臭いぜ」(マール)
「お鼻が曲がりそうです」(ヒイ)
美少女だけにすごく残念だ。
・・・
夕食後、ドーテの話を聞くことになった。
彼女の部族は台湾の山岳民族で、族長は代々女が務めることになっている。今年、族長の娘である自分が15歳になり成人したため、”強い男”の子供を産まなければならない。それで婿を探すため、天都に出て来て、剣術大会がちょうどがあったので参加したらしい。
お前はアマゾネスか、って叫びたくなった。鬼のお姉さん以来かな。
次回 ビキニアーマーが悩みます。




