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第四十話 マール

いつものパターンです。

 マールの話では弓矢が上手だと言うので悪魔に拉致され、憑依されていた。ただ憑依の度合いとしては緩やかで記憶もある。自分が誰かも解っていたが都合上ボウと呼ばれた。

 悪魔の為に戦うように思考を誘導はされていた。ヒイとの試合もすべて覚えており、ヒイの腕に感動したということだ。

 尚、他の選手も解放されたみたいだ。


 蛇亀王が耳長族であるのは蛇亀族が滅んでしまったので次位にいた耳長族が王を継いだ。500年も前の話だ。蛇亀族が滅んだのは血統を純血に拘り過ぎた為らしい。


 蛇亀王が後始末があるので、明日朝来いと言って来た。帰りたいと思っていたが仕方ないホテルを用意させる。もちろん、天帝様には念話で報告しといた。


 昼食を取るのにレストランを探そうと王城を出ようとした時マールがやって来た。

「俺が案内するよ」

「王族が一人で大丈夫か?」

「俺は王の甥の子だ。親父ももうじき城から出されるしな」

 王の男の子が成人したので彼女の父親は王族から除籍されるらしい。

「君が良いならお願いするよ」


 マールが案内してくれたのは王城からほど近いレストランだ。

 頼んだのは、この地方の料理、酸采と豚肉の鍋と水餃子だ。この国の北の方は小麦が主食なので水餃子が御飯代わりだ。

 酸采は、白菜の漬物でドイツのザウアークラウトみたいな感じかな。水餃子の餡にも入っていた。

 おいしかった。南では地元料理が食べられなかったので満足だ。


「なあなあ、恭平さんよ。俺も天都に連れて行ってくれないか?」

 はあ、マールの要求が予想外なんですけど。誘われた時点で何かあるとは思ったんだけどね。

「なぜ、天都に来たいの?」

「親父がよ、俺のことを良いとこに出そうとしてるんだよ」

 確か、アンナさんが貴族は15~18歳で結婚するって言ってたな。

「君は幾つだい?」

「13歳だぜ」

「嫁に行くのは15歳からじゃなかったかな」

「嫁ならな。王族から外されるから有力な貴族にコネを作りたいんだよ」

「貴族なら仕方ないんじゃないか?」

「相手が爺なんだよ。それも妾だ」


 この国の男は女を道具扱いするって真白が言ってたな。本当なんだ。娘の幸せなんてこれっぽっちも考えてねえ。

 茜と蒼伊がかなりヒートアップして”女を何だと思ってんのよ”とか言ってる。まあまあ、お店に迷惑だからその辺にしとこうか。

「天都でどうしたいんだい?」

「剣姫に入れてくれよ。俺の弓、まんざらでも無かっただろ」

 両手をすり合わせてお願いしてくる少女をどうすべきか。

「貴族の特権は無くなるし、命を懸けて戦うこともあるんだぞ」

「そんなことなんでもねえよ。恭平さんなら嫁になっても良いしな」


「エルフが仲間になるの?」

 蒼伊が燥いでる。俺も言いたかったけど我慢してたのに言われてしまった。ついでに聞くだけ聞くか。

「寿命が長いとかあるの?」

「普通だと思うぞ。それよりエルフってなんだよ」

 取敢えず父親と話してみるか。無理だろうな。ジュレイの時は母親が賛成してくれたけど今度は厳しいな。やることやんないと女性陣が怖いよ


 王城に戻ってマールの父親と話すこととなった。

 まずは婚姻の話をやめてくれないかと頼んだ。当然のごとく断られた。

 次は天都に連れて行きたいと言うと、猛反対された。

 娘さんが剣姫になりたいと言っていると言ったら、180度変わった。


「獣王様の御息女が軍務大臣のクーデターで大活躍されたとか、竜王様の御息女を悪魔から守ったりしたと聞きました」

「それは私ですがどういうことですか?」(ジュレイ)

「お知りならないのですね。今、獣王様は羨望の的です。あなた様の御活躍が信帝国中に鳴り響いておりますぞ」

「はあ」(ジュレイ)

「うちの子が剣姫に成れるのですね。どうぞ連れて行って下さい。お願いします」

 ありゃ、お願いされちゃったよ。どうも剣姫ってステータスになっちゃってるみたい。

 良かった。これで女性陣から攻撃されない。


 ホテルにチェックインするとマールがやってきた。

「どうしたんだい、今日は家族と一緒に居ていいんだよ」

「親父の奴、放って行かれるといけないから、あんたと一緒に居ろってさ」

「ああ、そうだったんだ」

 あの父親、変なところに筋が一本通っているねえ。


 ホテルにマールの追加を連絡して部屋に入った。

 女性たちはスイートで居間と主寝室、従者部屋がある。主寝室にマール、ヒイ、ミヤ、ジュレイだ。

 従者部屋に茜と蒼伊だ。俺はシングルに一人だ。


 俺の部屋にマールを呼んだ。

 俺の正面に座らせる。

「なあ、脱ぐのか、俺初めてだから優しくしてくれ」

 マールは、服を脱ぎ始める。

「脱がなくていい。従属の回路を繋ぐだけだ」

「ええ、てっきりやるのかと思って覚悟したのに」

「まず、言葉使いを何とかしろ。それでは従者に出来ない。天帝様と話すこともあるからな」

「天帝様と話すのか、いえ、話すんですか?」

「そうだ。仲間内ではラフで構わんが嫌われないようにしてくれ」

「わかっ・・分かりました」

 やればできるじゃないか。


「まず聞きたい。俺の従者になって俺と共に生きるか?」

「従者って何だ・・すか?」

「俺のことを尊敬すればいい、従者になれば剣姫に必要な異能が使える。もちろん他の男が好きになって出ていきたい時とかは解除する」

「異能って何ですか?」

「技術の覚えが数十倍良くなるインストール、仲間とどれだけ離れても会話が出来る念話。身体能力が3倍になり、病気にかかりにくくなる身体強化、仲間と自分が行ったことのある場所を頭の中に表示できる脳内地図。主なものは、この四つだ」

「面白そう、なります。なります」


『マールとの間に従属の回路が形成されました。インストール、身体強化、念話、脳内地図が使えます。』

「これで従者になった。分らんことややりたいことがあったらナビさんを呼んでみろ」

「え、なびさん」

『はい、どういうご用件でしょうか?』

「わあ、頭の中に人がいる!」

 頭を抱えて叫んでいる。

「大丈夫だよ。頭の中でインストールってどうするのって聞いてごらん」

 目を塞いで念じているようだ。


「ちゃんと答えてくれた」

「答えられることは答えてくれるからうまく使ってくれ」

 ナビさんと脳内会話を楽しんでいるようだ。


 脳内会話が終わったのかこちらを向いた。

「俺は今日、ここで寝ればいいですか」

「君はヒイたちと寝るの。それと俺禁止」

「ええ、じゃあどう言えば?」

「そういうことは女の子に聞いてくれ。あっ、でも蒼伊は駄目だからな」

 蒼伊に任せたら僕とか言わせそうだ。


「わかったです。なあ、してもいいんですよ」

「しないってば。そんなにしたいのか?」

「したいのかと言われればしたいです」

「君は成長中だからね。成長しきるまで我慢しなさい」

「それっていつまでだよ・・です?」

「最低でも後二年かな」

「えーそんなに我慢するのか・ですか」

 口を尖らせてそっぽ向いちまった。

 そろそろ夕食の時間だな。

「良し、一旦部屋に戻って、夕食に行こう」


 食後、明日のスケジュールの確認を全員で行い、恭平と別れて風呂に入り、居間で女だけでわいわいがやがやしてる。

「そうなんだよ。迫ってんのに駄目だっつうんだぜ」(マール)

「私は15になってますが、あと半年は駄目って言われました」(ジュレイ)

「大人の体にならないと出産が危ないから我慢しなきゃ」(茜)

「そういや成人したすぐに子供を作ると母子共に危ないことがあるって聞いた」(マール)

「そうでなくても初産はいろいろあるから」(茜)

 茜はエッチの話を出産にすり替えて誤魔化そうと必死だ。


「そう言えば俺の一人称を女の子らしくしろって言われた」(マール)

「そうよねえ、俺は無いわよねえ」(茜)

「僕はどう。良いと思うんだけど」(蒼伊)

 蒼伊が飛び込んできた。

「あんた、蒼伊さんだろ。あんたの言うこと聞いちゃだめだって言われた」

「きい、なんでよ?」(蒼伊)

「僕なんて言うからでしょ」(茜)

「わたしで良いんじゃないかしら、普通だし」(ジュレイ)

「わたしかあ、しゃーねえか」(マール)

 奇抜な言い方させたら怒られるよね、絶対(茜)


「すいません。ヒイが眠いみたいなので、お先に失礼します」(ミヤ)

 ミヤがヒイを連れて寝室に行った。

「ミヤちゃん凄いね。いつもヒイちゃんの面倒見て」(ジュレイ)

「あの子は従者っていう思いが強いんだよ。恭平に尽くすことで、繋がりを求めてる」(茜)

「そうなんだ。お・私とあまり変わんない歳なのに」(マール)

「どうせ何時かは解ることだから・・・」(茜)

 ミヤとヒイの身の上話をした。

「平民も大変なんだな」(マール)

「私達はそんなことの起きない豊かな社会を造る活動しているのだ」(蒼伊)

「分かった、俺じゃない、私も頑張る」(マール)


次回、剣術大会天都予選が始まります。優勝者がとんでもないことを言い出します。

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