表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/83

第三十九話 ヒイ混乱、俺真剣

遂に決着です。

(主人公視点)

 選手出入口に行くとみんな揃っていた。

 ハイジが飛びついて来たので撫で回してやる。

「良くやったな。よーし、よーし」

 ハイジは仰向けになって甘えてくる。

「これでうちの3勝だ。ヒイか俺が勝てば勝利だ」

「私が勝って終わりだよ」(ヒイ)

「そうだな。でも俺との試合もやりたいそうだ」

「でも先に4勝した方が勝ちでしょう」(茜)

「勝負はね。でも人質解放の条件は試合がすべて終わったらだ」

「何にこだわってるのかな」(蒼伊)

 さっきまで反省していた?蒼伊が不思議がる。

 確かにラッソの要求は俺の異能より勝負にあるみたいだ。


 ふと見ると隅っこでジュレイが蹲ってる。

「あれ、どうしたの」

「ミヤちゃんにズバッて言われちゃって、落ち込んでるみたい」(茜)

「蒼伊は平気そうだけど」

「グッ、・・落ち込む位なら始めからやんないから」(蒼伊)

「君らしいよ。ジュレイも済んだことでくよくよしない。これからが大事だ」

 ジュレイが立ってこちらに来た。

「じゃあ、恭平様の見せてください」(ジュレイ)

「それとこれとは違うと思うけど」

 慌てていると用意が出来たと呼びに来た。


「ヒイ頑張れよ」

「はい」

 俺はラッソの居る方に行く。

 的は30m、50m、70m、90mで争われる。的は中心が10点で離れるほど点数が下がっていく。矢は各的3本ずつ、合計点の多かった方が勝利だ。


「うちはヒイだ」

「こちらはボウさんです」

 まあヒイだ、問題あるまい、インストール無しでここまで来ている。

 余程才能に恵まれているのだろう。


(ヒイ視点)

 私が試合場に着くと相手の人も来た。薄い色の金髪を後で括っている。なんて言ったっけ。ジュレイちゃんと一緒だ。

 耳が横に長い。耳長族?まだ子供みたいミヤちゃんよりかは大きいみたい。

「先攻後攻をきめて」

 審判の人が言って来た。うん、どっちでもいいかな。

「あなた、どっちが良いの?」

「どちらかと言えば後攻だな。お前の結果を見てできるからな」

「じゃあ、ヒイは先行で良い」

「それは、いやだぜ。譲られた気がするんだ。最初お前が先攻で的が変わる度に交代で良いか?」

「うん、良いよ」


「では30mから開始」

 ヒイは3本を3秒で射る。3本とも中央の〇に正三角形の形で並んでいる。

「やるね」(ボウ)

 ボウも中心ばかりで30対30だ。

 50mはボウ先攻で30点、ヒイ30点。


 70mヒイ先攻、またも3秒3本で30点。

 ボウは慎重になってる。一射目 左上にずれて9点、二射目 10点 三射目 下にずれて9点

 これでヒイの90対88だ。

 ヒイは冷静だが、ボウに焦りが見える。


 90mボウ先攻一射目 上にずれて8点、二射目 下にずれて7点 三射目 右上にずれて8点

 合計111点だった。

 ヒイは当然のように3秒3本で射る。一射目が的の中心を捕えた瞬間、的の下から鳥が飛び立った。

 二射目が中心を捕える。三射目が鳥に突き刺さる。そしてそのまま的の下へ落ちた。

 合計110点・・・。

「もう一回 やらせて」

 審判にお願いした。

「君の一射目で鳥が飛んだのだから。二射目、三射目を鳥がどこかへ行くまで待てば良かっただけだ。よって君の過失であることは明白、射直しは駄目だ」

「そんな、やらせてやれよ。鳥が飛んでくるなんて予測できるかよ」

 ボウも言ってくれたが判定は変わらず、私は負けてしまった。観客がブーイングをしてくれてるけど

 もう、変わらないんだよ。


 恭平様が期待してくれてたのに負けちゃった。私はどうしたら良いの、恭平様の所へも、皆の所へも帰れない。

『ヒイ、お出で。俺は怒ってないぞ』

「本当に、本当に怒ってないの。でもヒイ負けちゃったんだよ」

『大丈夫だヒイ、早くお出で』

 恭平様、恭平様・・・・。


(主人公視点)

 ヒイが走って来た。

 俺に抱き着き、涙でぐしゃぐしゃになった顔で言った。

「ごめんなさい、ごめんなさい!!」

「大丈夫だ。ヒイ。お前は何も悪くない。お前の早撃ちはいつも俺達を助けてくれたじゃないか」

「本当に許してくれるの」

「だからお前は何も悪くないって。皆の所に戻ろう」


 ヒイの手を引いて、選手出入口に行くとミヤが飛び出して来た。

「ヒイ、大丈夫?」(ミヤ)

「うん、恭平様がヒイは悪くないって言ってた」(ヒイ)

「そうだよ。融通の利かない審判が悪いんだ」(蒼伊)

「実戦と競技は違うということだよ。私達は実戦ばかりやってたからね」(茜)

「私が逃げたのがいけなかったのです」(ジュレイ)

「みんな見ていてくれ。俺が決めてくる」

 ヒイは皆が居れば大丈夫だろう。後は俺だ。


 俺は的が片付けられた試合場に行く。

 目の所が網目になった仮面をつけたラッソが居た。

「まさか3勝3敗で勝負できるとは思いませんでしたよ」

「そうだな。天は俺の本気が見たかったのかもな。所でその仮面はどうした」

「私の顔がこの顔だと思って欲しくないと思いまして」

「どういうことだ」

「私はあなたに憧れ、嫉妬と言う感情を手にした。もっと欲しいのです。人間になりたいのです。出来ればあなたの友になりたいのです。今は悪魔の組織に縛られて、あなたと敵対するしかありませんがね。いつかは人間に」

「そうか、なれるといいな。俺は悪魔がどういう者か分らないが、高度な知能を持ってるようだし、友好的になってくれるならその方が良い」

 俺達の話を審判は嫌な顔をして聞いている。始めていいかと聞いてくる。

 もちろんだ。


 始めの声が掛かる。獲物は二人とも木刀だ。

 ラッソは中段からひょいと木刀を上げ、小手を狙ってきた。俺は俊足の一歩を踏み出しラッソの面を打つ。

 ラッソの仮面が割れて落ちる。

 審判は何が起きたのか解らない様だ。

「参りました」

 ラッソは崩れ落ちるとそう言った。俺の勝利が宣言された。

「もっと勝負が出来ると思ってました」

「すまんな。ヒイが責任を感じないように簡単に勝つ必要があった」

「3勝目は余分でしたか」

「まあな」

 手を差し伸べて立たせてやる。

「ありがとうございます」

 さっぱりした顔になってる。表情がまた豊かになったか。


「「「「「おめでとうございまーす」」」」」

 いきなり後ろから抱き着かれた。前に回って抱き着き俺を見上げてるのはジュレイだ。その上に覆いかぶさったのはヒイだ。右からキスしてきたのは茜、左からは蒼伊、と言うことは背中に居るのがミヤか。その下に居るのがハイジで全員集合だ。


「皆さん揃ったところで王城の解放に行きましょうか」

 ラッソがにこにこしている。気味が悪いぞ。

 競技場から100m位離れて王城がある。


 王城に着くとラッソが門を開けさせる。警備兵が駆けこもうとするのでラッソが言った。

「まだ悪魔が居ますので危険ですよ。正門で待っててくださいね」

 2体の黒い影が警備兵を押し戻す。

 そのまま王城に入り、奥の方の部屋へ案内される。蛇亀王が居た?

 そこに居たのはボウみたいに耳の横に長い人達だった。


「そなたが浅野恭平か。遅いではないか」

「天帝様相談役の恭平で御座います」

 わざとのんびり答えてやる。

「天帝様の相談役だと」

 ちょっとビビったかな。

「はい、いやあ、今回は苦労しました。蛇亀王様が健康なご様子でほっといたしました」

「では天都から来たのか、しかし使者が着いて一週間くらいしか経っておらぬはず」


「そんなことよりもこれで全員で御座いますか?」

「いや私の娘が連れて行かれたままだ」

「ラッソ、どうなってる」

「試合に出て頂きましたのでもう戻る頃かと思われます」

「ボウか」

「そうです」

 その時、開いたままのドアからボウが入って来た。


「あれこれどうなってんの」

「全員揃ったようですので我々はこれで失礼します」

 ラッソや部屋の中に居た黒い影は消え去った。

「マール大丈夫だったかい」

「うーん、よく覚えてないや、でもあんたは知ってるヒイのボスだ」

 君なんで悪魔側で戦ってたのさ。


次回は弓の女の子の話です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ