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第三十八話 ジュレイ錯乱、ミヤ泰然

ジュレイ対悪魔、ミヤ対悪魔です。

『井倉さん、ジュレイはどんなもんですか?』

 井倉さんは俺のインストール時の剣の先生だった人で幕末の剣士だ。今はジュレイを鍛えている。

「そうだねえ、技は完成に近いが精神的にはまだまだでござるかな』

 そりゃ思春期の女の子が精神的に完成してたらつまらないよね。


(ジュレイ視点)

 私は試合場に立った。少し緊張しているが大したことは無い。

 私は剣姫に一番後で入った、言わば新参者だ。でも腕前は転移組に追付いたと思っている。

 ここで勝てば恭平様がもっと構ってくれるようになるかもしれない。頑張るぞ。


 相手がやって来た。得物は木刀だ。髪はぼさぼさ、髭はぼうぼう、不潔極まりない第一印象だ。

 上半身も下半身も鍛えられているが革鎧だけしか着ていない。何か汚らしい。速く終わらせるように専念しよう。

 始めの声が掛かる


 すぐには掛かってこない。ちょっとこっちから手を出してみる。

 小手から面への連続攻撃を仕掛けてみる。下がって避けた。あまり積極的なタイプではなさそうな感じだ。試合場が広いので逃げられるといつまでも勝負がつかない。こうなったら連続攻撃で体制を崩させる。

 踏み込みながらの小手から面でようやく木刀で面を止めた。そのまま下がろうとするので胴を抜く。

 相手は体を捻って避けた。切っ先が掠った程度だ。

 再び正面で向き合った。

 その時であった。相手の革鎧の腰の部分、幾枚かの革の板で覆ってあったのが正面の一枚が外れて落ちた。


 下に何も履いてない。グロテスクなものが・・。頭の中が真っ白になる。ここに居てはいけない。

「きゃああああああ!!!!!」


(主人公視点)

 絹を裂くような悲鳴を残し、ジュレイは選手の出入り口に駆け込んでいく。

 戦闘放棄で相手の勝ちが宣告された。


「ちょっとあれはひどいんじゃないの」

 観客席からのブーイングが凄いがソード君はへっちゃらだ。

「堪忍してください。事故ですから」

「掠ったのは胴で腰じゃない」

「事故ですから」

 始めから仕組んでたな。効きそうな相手もジュレイしかいないし。

 ジュレイには悪いと思っている。知り合った時期が工房が忙しくなってきた時期と重なってきたため精神的なフォローが出来ていない。深窓の令嬢のままだ。工房が出来たら忍猫族に丸投げして一緒に冒険しよう。

「これで2勝2敗で対ですね」

「次はミヤだし負け様が無いな」

「次はスパイダー君です」


 選手出入口に駆け込んだジュレイは茜に抱き着き、泣いている。

「あんな醜い物見せるなんてぇ!!」(ジュレイ)

「蹴っ飛ばしてやればよかったのに」(茜)

 蹴っ飛ばした感触を思うだけで吐きそうである。

「無理ですぅ」(ジュレイ)

「でも、恭平にも同じのが付いてるのよ」(茜)

「恭平様のはもっと美しいに決まってます」(ジュレイ)

「ああ、そうですか」(茜)

 経験を重ねるまで慣れないでしょうね。


「ミヤちゃんは大丈夫?」(茜)

「恭平様のでしたら、恥ずかしくて見れないとは思いますが、他の人のはどうとも思いません」(ミヤ)

「ミヤちゃん凄いね」(ジュレイ)

「私は、恭平様の為に居ます。それ以外で大きく心を乱すことは無いと思います」(ミヤ)

「でも私達の負けについて言いたいことはあるのよね」(蒼伊)

 少し不貞腐れて蒼伊が言う。

「ではちょっと言わさせていただきます。蒼伊さん、格下相手の試合で大技ばかり使って、自滅するってどういうことですか?この試合で負けたら、恭平様の異能が盗られちゃうんですよ」(ミヤ)

 蒼伊があまりに正しい指摘に面食らって目を伏せている。


「それからジュレイさん、あんなもん見せられたくらいで逃げるなんて信じられません。あなたには守るべきものは無いのですか。あれぐらいで守るものを放り出すのなら、私はあなたを信用できません」(ミヤ)

「ごめんなさい。あなたの言う通りだわ」(ジュレイ)

 ジュレイはシュンとしている。

「済みません。私は私を救ってくれた人達、特にリョウカ様とアンナさん、ジュレイさんと同い年の人達と比べていました」(ミヤ)

「あなた本当に12歳、私より大人みたい」(茜)

「いいえ、私が心を開いているのは恭平様とヒイだけなので、皆さんみたいになれたらと思っています」(ミヤ)

 今みたいに嫌なことを言うくらいなら心を閉じていた方が良いとも思う。


「私達は恭平に比べたら頼りないと思うけど何でも言って来て良いからね」(茜)

 勝てて良かったと思う茜であった。

「ありがとうございます。ではそろそろ行きます」(ミヤ)

「頑張ってね」(茜)

「応援してるからね」(ジュレイ)

「私の分もお願い」(蒼伊)


(ミヤ視点)

 皆が私のことを思っていてくれることは分かってる。でもうまく心を開くことは出来ない。

 恭平様は慌てずにゆっくり、ちょっとずつ、心を開くように努力すれば良いと言ってくれた。

 だから、今日は負けた皆の分も頑張る。


 今日の得物はヒイが使ってた脇差様の木刀を使い、千本は使えないので、左手用に自分用の木刀を背中に挟んである。


 試合場に来るとすでに相手は来ていた。2m強の身長と細長い体と手足を持った黒装束の男だ。短めの木刀を2本左右に持っている。

「遅かったな」

 細長い男はしわがれた声で言った。


「お前の仲間が、私の仲間に気持ち悪いものを見せるからだ。変態め」

「あいつと一緒にするな。わしはそんなことはせん」

 失礼なとばかりに否定する。出したら砕いてあげるのに。

「ふん、どうだか」

「それよりお前は忍者のような技を使うと聞いた。楽しみだ」

「私にはどうでも良い。いつものように勝つだけだ」

 始めの声が掛かる。


 いつも通りまっすぐに突っ込む。相手は横に移動する。それを追う。

 私の戦い方は攻撃中心で防御は先を取られた時だけだ。

 相手の左右の木刀が別々の生き物のように襲ってくる。

 これくらいなら防御の必要はない。左右にステップを踏みながら出来るだけ姿勢を低くして相手の懐へ飛び込む。

 その時、殺気を感じた。上から刺突が降って来た。私は股の間を通り抜け、胴に刺突を放つ。

 相手は体を捻って半回転して刺突を避け、左右から斬撃を浴びせて来た。

 私はしゃがんで弁慶の泣き所に思い切り斬り込んだ。カーンと言う金属音がして相手が怯んだ。

 脛当てをしていたようだ。相手の斬撃は上を通り過ぎ、有効部位に斬り込む隙が無いので一旦離れる。


 スパイダー焦っていた。何だこいつ、斬撃や刺突が全く当たらない。気が付くと俺の真下に居やがる。それで無駄な攻撃は一切しない。どうすれば良いんだ。


 再度、相手の正面から突っ込んで行く。

 相手はサイドステップで懐に入られないようにするが、私にとってはスローだ。

 低い姿勢のまま方向転換して接近する。

 相手は左右の木刀で斬撃を繰り返すが、恭平様ほど鋭くないので防御はしない。避けながら懐に入るとそれを嫌がって逃げようとする。左手にも木刀を持ちジャンプして両肩を突いて反撃を封じる。

 左右の木刀で頭、首、胸、胴と何回もの斬撃を浴びせる。半回転して片膝で着地する。

 相手は仰向けに倒れる。

「猫人殺法 百花繚乱」

 私の勝ちが告げられる

「良し、これで恭平様に褒めて貰える」


 グラウンドの端で見ていた恭平様が叫んでいる。

「良くやった!!ミヤ!最高だったぞ!」


 観客席からはすごい声援が聞こえる。

 自然と顔が綻ぶ。後で頭撫でてくれないかな。と思いつつ試合場を後にする。


(主人公視点)

「あのスパイダー君の攻撃を一度も受け止めずに勝つとは、いやはや信じられませんねえ」

 ラッソの顔は驚きを通り越して呆れている。

「あの子は俺の連続技を受ける訓練をしているから、あれぐらいどうと言うことは無い」

 ミヤの最初のスタイルを作ったのは本人とナビさんだ。ナビさんは忍者にしたかったみたいだが俺が修正した。彼女にも光の当たる道を歩いて欲しい。それで空中殺法が生きる技のつなぎを考えて教えてきた。


「次は弓です。用意がありますので、しばらくお待ちください」


 それじゃあと言うことで皆の居る所へ行こう。



次回、ヒイ対悪魔、恭平対悪魔、決着です

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