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第三十四話 名探偵ヒイ

ヒイとミヤが活躍します。

 10時 来賓来賓宿泊所 従者寝室2

 蒼伊は最近、石の達人をインストールして魔石と魔力石の研究をしている。恭平がやりたいと言っていたが忙しくて果たせないため立候補した。転移組の3人の中でメインの業務を持っていないというコンプレックスもあった。


 魔石の組成は顕微鏡で見ればすぐに分かった。石英、長石、それに微量の雲母である。石英が魔力の蓄積、長石がエネルギー抽出、雲母が運動エネルギーである。雲母を銅合金に替えると熱や光に変わる。

 いずれも自然に大量にあるものなので大量生産が可能である。

 魔力石は石英の結晶、つまり水晶の効率が最も良かった。


 魔力は通常地面の下を流れており、時折地表へ出て魔力溜まりを作る。魔力は魔石を作り、蓄えた魔力量により魔物になる。魔物は魔力が地下に戻ると魔力の供給を絶たれるので、魔力を求めて徘徊する疑似生物となる。


 水晶を魔力の流れの中に置いておくと魔力を貯める。流れる魔力量にもよるがだいたい2、3時間で飽和する。貯める魔力量は一立方cmで大人一人分ぐらい。これに長石のプラグを付けると任意に魔力を引き出せる。


 これがどういうことかと言うと人が動かせなかった重機や大きな船が動かせる。コンロぐらいの能力しかなかった熱魔道具が給湯設備や暖房に利用できるのだ。


 ここまでは順調に行った。もともとあったものを調べただけだから。今はナビさんと二人三脚で魔石の効率の向上、雲母の並べ方や分量などを変更して効率を測定している。以前の3倍くらいの効率を達成している。


「あー疲れた。休憩しよーっと。ナビさん缶コーヒー買ってよ」

『ホットですか。アイスですか』

「アイスでお願い」

 冷えた缶コーヒーが蒼伊の座る机に出てくる。

 最近恭平は、従者たちがお金を稼ぐようになったのもあって、小遣い制ではあるがナビさんを通じてショッピングの利用をさせている。

 本当は、下着を買わされるのが嫌になっただけである。


 10時過ぎ 帝城 玄武門辺り

「匂いがあるの?」

「あるよ。向こう側に続いてる」

 昨日、トブレさんが帰らなかったので、恭平は自分たちも捜索してみることにした。

 〇 おとといの10時頃、玄武門を出て買い物に行った。

 〇 帝城外で全く目撃情報がない。

 〇 行方不明になるような本人に関する情報が無い。

 これが現在解っていることだ。

 ヒイとミヤは忙しい恭平に代わって、朝から帝城内を捜索するように指示された。ライヤの件もあるので帝城内にすぐ戻ったのではないかと疑っていた。それでトブレさんの私物を貰って匂いを辿っているのだ。

 ヒイは鼻をクンクンさせながら東の方へ歩いて行く。ヒイは狼人と犬人のハーフで鼻が非常に良い。さらに異能身体強化で強化されているため、世界一の鼻と言っても過言ではない。


 帝城の北東側は壁と城が近いので、庭園管理の建物と木があるだけで、他に隠れるような場所は無い。

「この木の所に居たみたい」(ヒイ)

「多分この建物、肥料の匂いがきつくてこれ以上無理」(ヒイ)

「庭師の人に聞いてみるよ」(ミヤ)


 庭園管理の建物をノックすると中年の野良着を着た叔父さんが出て来た。

「おはようございます。お聞きしたいことがありまして」(ミヤ)

「これは剣姫のお嬢さん方、何の御用でしょう」

「トブレさんと言う鬼族の娘さんの匂いがこの建物からするのですが。ご存知でしょうか」

「鬼族のお嬢さんなら城内で何度か見かけたけど、ここでは見てないな」

「そうですか。どうヒイ」(ミヤ)

「この部屋からは匂わないよ」(ヒイ)

 叔父さんは関係ないらしい。では匂いはどこから?


「この建物はこの部屋だけですか?」(ミヤ)

「後、道具倉庫と肥料倉庫があるけど」

「調べてもよろしいですか?」(ミヤ)

「良いよ。案内しよう」

 なんか叔父さんウキウキしてるような。なんでだろう?

「これが道具倉庫。普段俺達が使う道具が入ってるんだ。なあ後でサイン貰えないか」

「いいけど後でね」(ミヤ)

 叔父さんの居た部屋の隣にある扉を開けると一輪車、リヤカー、鍬にスコップなど農具が雑多に収められている。

「どうヒイ」(ミヤ)

「この部屋じゃない」(ヒイ)

「ここでは無いようです」(ミヤ)

「じゃあ、肥料部屋だ」


 裏手に回ってそこにあった扉を開ける。

「臭い」(ヒイ)

 糞尿の匂いがする。

「おかしいな。ここの肥料はちゃんと処理されてるからあまり匂いがしないはずなんだけど」

 それは帝城の庭園で糞尿の匂いがしたらまずいですね。

 扉を開けて暫くすると匂いも収まってきた。

 ミヤが倉庫に入ると樽や紙袋に入った肥料や農薬が所狭しと置いてある。

「ミヤちゃん、その樽の後ろ見られない?」(ヒイ)

 ミヤが樽の後ろを覗くと女官服が見えた。

「ここに誰かいる!」(ミヤ)

 ミヤが樽を持ち上げて横に退ける。叔父さんがびっくりしてる。

「その樽20kgはあるんだけど」


「息はある。ヒイ、恭平様を呼んで」(ミヤ)

 ミヤは樽の裏から額に角のある縛られた女性を引っ張り出した。

 一分もしないうちに恭平が現れた。空間移動を使ったようだ。

「けがはないと思いますが意識はありません」(ミヤ)

 外に出し、猿轡やロープを解きながらミヤが言った。

「もうすぐ医療班が来る。そのまま動かすな」


 医療班が来てトブレを運んで行った。

「良く見つけてくれた」

「ヒイが探してくれました」(ミヤ)

「ミヤちゃんが見つけたんだよ」(ヒイ)

「二人ともよくやった」

 頭を優しくなでてやる。

 ポカーンとしている叔父さんに声を掛けた。

「後で調べに来ると思いますので、出来るだけこのままでお願いします」

「分かりました」


 12時 来賓宿泊所 居間

 ジュレイを獣王府に迎えに行って帰ってくると昼食の用意が出来ていた。

 俺、ヒイ、ミヤ、蒼伊、ジュレイの5人で昼食を食べた。

 言い忘れていたが2人乗りの出来るスクーターを3台買って、ゴーレムエンジンを載せてあるので各々、勝手に乗って出かけるので送迎は要らなくなった。

 現在は真白が帝城内、茜が天都競技場、ライヤが工房に出かけている。


 13時 帝城 医療室

 トブレさんが目を覚ましたのでと言うことで呼ばれた。蒼伊を除く4人で出かけた。

 医者と看護人の他に天帝様、リョウカ様、アンナさんが居た。

「実はシンシアが狙われているらしい」(天帝)

「お願いです。シンシア様を助けてください」(トブレ)

 トブレさんがベッドに座って天帝様に縋っている。

「どういうことですか?」


 トブレさんが言うには一昨日、門を出た時に門の中でシンシアさんの護衛の一人が怪しい人物と東の方へ歩いて行くのを見た。それで入門の手続きをしてると逃げられると思い、門番に見えないようにちょうど入門する馬車の影から門内に侵入し、後を追った。木に隠れて二人を観察していると護衛の一人が怪しい人物を吸い込んだ。トブレさんは木の後ろで護衛が居なくなるのを待っていた。シンシアさんに連絡するためだ。そっと覗くと護衛は居なくなっていた。ほっとして門の方を向くと護衛が目の前に居た。悲鳴を上げようとしたが口を塞がれた。

「あなたには私が見えていたようですね。私もうっかりしてました。巫女と言うのは感度が高いものですね。教えて頂いたお礼にあなたは殺さずにおいてあげましょう」

 そこで記憶はなくなった。


「聞く限りシンシアさんを殺すつもりはないようだ。考えられるのは旅の途中での誘拐ですかね」

「そうだな。護衛であれば武器を持って近付くことも出来よう。帝城で殺さなかったというのはそういうことだろうな」(天帝)

「恭平、姉さまを守ってくれ」(リョウカ)

「護衛の名前分かりますか」

「ケンジです」(トブレ)

「流石に今回は相手の力が全く分かりません。約束はできません。それでも俺にやれと言いますか」

「お前以外に追付けるものは居ない。お前に頼むしかないのだ」(天帝)

「分かりました。行きます」


 全員に集合を掛けた。


 15時 来賓宿泊所 居間

 俺は皆に事情を説明した。

「今から走り続けて明日にはシンシアさん達の前に出る。シンシアさん達は今日は安陽で宿泊予定だ。相手は多分一人だが相当の実力を持っていると思われる」

 一呼吸開けて続けた。

「シンシアさんを連れて行かれないことが趣旨だ。敵は逃がしても良い。危ないと思ったら自分の命を何よりも優先してくれ」

 スクーターを収納に入れ出発する。



次回戦いです。

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