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第三十二話 クーデター

クーデターは当然潰されます。

 転移106日目

 9時 朝堂前

 もう朝議は8時頃から始まっている。今から、警らや近衛から軍務大臣の罪科について報告が上がるはずだ。

 昨日逮捕された3人は保身のため悪いことは全部軍務大臣のせいと自白している。

 ライヤの父も殺されたらしい。

 もしもの時は天帝様から念話が入ることになっている。

 そろそろ警ら隊が軍務大臣の家に家宅捜索に入る時間だ。

 軍の施設は殆ど城外にあるので大臣を外に出さなければ城内ですべては終わる。


『正門付近に正規兵約500人が来ます』(真白)

 南側の塀の上に居る真白からの念話だ。そのまま、天帝様に連絡する。

『正門には近衛兵が100人いる。大丈夫じゃ』(天帝)


『正門閉まりました。正規兵が門を開けようとしています』(真白)

『玄武門にも正規兵約500人、こちらはすでに閉まってますわ』(茜)

『東は全くいません』(ジュレイ)

『西もいないよ』(蒼伊)


 10時 正門

 ドーン、ドーンと門を壊そうとする音がする。

「弓兵、打てぇえ!」

 十人の弓兵と真白が正規兵に向けて矢を放つ。

 あっという間に30人くらいが倒れる。

 残りの兵が逃げ始める。

 近衛兵が門を開けて襲い掛かる。


 玄武門の方でも同じことが起きていた。ただし先頭で飛び出したのは蒼伊、ジュレイ、茜だ。

 それぞれの木の武器で逃げる正規兵を当たると幸いなぎ倒していく。


 朝堂前

 軍務大臣とその取り巻き10人が朝堂から出て来た。

 取り巻きはミヤの猫人殺法で次々倒されていく。ヒイも木刀で参戦、こうなってはすぐに終了だ。

「わしを助けろ。正門と玄武門に正規兵が来ておる」

「そんなもん、とっくに鎮圧されてるよ」

「そんな馬鹿な。近衛の倍だぞ」

「ろくに訓練もしない軍隊が勝てるわけないだろ」


「わしに味方したら100万デムやるぞ。なあいいだろ」

「あなたの家には警らが家宅捜索に入ってる。押さえられてるよ」

「なぜだ、わしが何をしたというのだ」

「俺と俺の家族に手を出そうとした」

「お前は一体何だというのだ。子供のくせに」

「さあな」

 体は子供、頭脳はおっさんてか。


 駆け付けた近衛兵に軍務大臣と取り巻きが連れられて行く。

 天帝様に事態が収拾したことを告げた。


 11時 来賓宿泊所 居間

「面白くないなぁ。もう」(蒼伊)

「どうした」

「5倍も人数居るのに逃げるだけなんて」(蒼伊)

「こっちは木刀ですのに挑んできても良いではないですか」(ジュレイ)

「あいつら全然訓練してなかったらしいわよ」(茜)

「矢で30人位倒れただけで総崩れだったよ」(真白)

「欲求不満らしいな。良し今日はステーキだ」

「「「「「やったー」」」」」

「あのステーキって何ですか」(ライヤ)

「私も教えて欲しいです。なにかハイジが喜んでいるような」(ジュレイ)


 13時 御所 応接間

 クーデター処理の初回報告会に呼ばれて御所に居る。

「皆の者、大儀であった。クーデターは終息した。まず近衛隊長の報告を」

「はい、クーデターに参加した兵、約1000名殆どが拘束され、十数名が現在逃走中です。帝城内でクーデターに参加した10名及び軍務大臣もすでに拘束されて居ります。逃走中の兵に関しましては氏名、住所は把握しており逮捕は時間の問題と思われます」


「次は警ら大隊長、報告を」

「はい、警ら隊は主に軍務大臣関連で行われた横領、殺人などの刑事事件を捜査しております。主計局、主計局長宅、軍務大臣宅を家宅捜索し、200億デム以上の現金を押収しました。横領、殺人の容疑者として26人を逮捕しております。何せ、大掛かりな犯罪のため、全貌が見えるのに半年は掛かると思われます」


「次、中部方面軍司令長官」

「はい、クーデター以後、軍務大臣が直轄しておりました天都防衛軍、西部防衛軍を一時管理することになりました。まだ内情は把握しておりませんが、各隊に軍務大臣への追従する行為は見られません。また、天都防衛軍においては一から立て直す必要があるかと考えます」

 早すぎる。この後処理、絶対前から準備していたね。

 後、質疑応答などがあったが俺には関係ないので省略だ。


 14時 警ら大隊詰所 警ら大隊長室

 俺は、ライヤを伴って警ら大隊に来ている。忍猫族へのお小言を聞くためだ。

「我部族が御迷惑をお掛けし、申し訳ありませんでした」

「君達への立退きに気付けなかったこちらの落ち度もある。今回は目を瞑ろう。次は無いからな」

「ありがとうございます」

 まあ儀式みたいなもんだな。


「ところで恭平殿、なぜ君がここに居るのかな」

 ここまでの顛末を話した。

「このクーデターの原因は君だったか」

「そんな人聞きの悪い、すべて天帝様の思惑通りですよ。ほら、中部方面司令官も来てたじゃないですか」

「おう、あれにはわしもびっくりしたぞ。わしらの知らないところで事前に打ち合わせしてあったということか」


「そうだと思いますよ。あの天帝様が簡単にクーデターを許すんだな。不思議に思ってたんですよ」

「そうだな。まだ幼いと思っていたが、すでにわしらの上を行って居ったか」

「信帝国も安泰ですね」

「そうだな。それはそうと近衛ばかりじゃなくてこちらにも遊びに来い」

「そうですね。今度工房が出来たら帝城を出るので、そうなったらよろしくお願します」

「待ってるぞ」


 15時 忍猫族隠れ里

 忍猫族の人達にこれまでの経緯と里への帰還許可が出たことを報告した。

「それとですね。半年くらい先になると思うんですけど伊河のほとりに工房が出来るんです。ライヤさんに全体の管理をお願いしたんですが皆さんにも協力をお願いしたいと思うんですよ」

 俺は工房のあらましを説明した。


 彼らは族長の件で仕事を失っており、概ね喜んで貰えたようだ。仕事内容は工房の作業もだが発電所の管理、寮の管理など多岐に渡る。

「あなた方を襲った我々に対してこのようなご厚情をなんと礼を言って良いか分らない程です」

「ライヤさんの誠実さを知り、あなた方を紹介していただいた。こちらこそ感謝します」

「姫様が帝城に忍び込んだことが、このようなことになるとは神様でも分かりますまい」

 皆、素朴で真面目そうな人たちだ。しかも管理人との上下関係がすでに出来ている。これは人間関係で楽が出来そうだ。


「そうだ私の荷物を運ばなきゃ」

「姫様、どこへ行かれるので」

「あ、言ってなかったね。私、恭平様のお嫁さんになるの。私が押し掛けたんだけどね」

「剣姫の仲間入りをなさるので」

「私は工房を任されるから剣姫にはならないわ」


「何、その剣姫って?」

「知らないんですか?」

 天都の街では俺の従者は剣姫と呼ばれ有名らしい。

 犬姫 ヒイ

 猫姫 ミヤ

 槍姫 茜

 弓姫 真白

 薙姫 蒼伊

 刀姫 ジュレイ

 と言うことらしい。どうも近衛の練習を覗いていた野次馬が名付けたらしい。

 まあ本物のお姫様はジュレイだけだ。


 隠れ里を出るときに心に引っ掛かっていることを聞いた。

「ライヤは家族は居ないの」

「はい、西域に行ってる兄だけです」

「お兄さんはライヤが族長みたいになってもいいのかな」

 忘れてた。この問題があった。

「はい、父に似て野心の無い人なので。もし族長は俺だって言うなら譲っても良いですか?」

「工房で働く気があるならいいけど」

「その点は言い聞かせます」

 どうもライヤの方が立場が強いみたいだ。帰路についたころかな。まあ帰って来てからでもいいだろ。


 17時 来賓宿泊所 居間

「剣姫、格好良いじゃない」(蒼伊)

「犬姫ってやだぁ。私、オオカミなのに」(ヒイ)

「見た目はゴールデンレトリバーだけどね」(真白)

「なにそれ。格好良いの?」(ヒイ)

「カッコカワイイよ。ニホンオオカミより大きいし」(真白)

 ニホンオオカミは中型犬位だったとされるが、ハイジはより大型の灰色オオカミかエゾオオカミと思われる。

「ニホンオオカミって何?」(ヒイ)

「そう言えばニホンオオカミ見てないな。いないのかな。ヒイはハイジ達より小さくて黄色っぽいオオカミって見たことある」

「ううん、ない」(ヒイ)

「いないのかな。人間の種族の分布もかなり違うし、動物も変わっていて当然か」

「竜とか居たりして」(蒼伊)

「居ますよ。魔族の国にはいっぱいいるって聞いてます」(ジュレイ)

「どんなの?」

「山みたいな大きさで長い首と尻尾があるのとか。大きな牙を持ったのとか、大きな角の生えたのとか、鳥の羽がはえたのとかです。家にもこれくらいの牙がありますよ」(ジュレイ)

 手の幅30cm位にして言った。

「恐竜だな。スーパーサウルスや、ティラノサウルスとかがいそうだな」

 ナータが魔獣化してるって言ってたな。そんなのと戦っているのか。こちらには来ないでくれよ。



次話から工房建設です。

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