第三十一話 反撃
クーデター前夜ですがのんびりしてます。
15時 御所 応接間
御所に行くとそうそうたるメンバーが集まっていた。
天帝様、宰相、右大臣、左大臣、警ら大隊長、近衛隊長、軍の偉いさんが3人
「皆の者良く集まってくれた。今回、展示飛行妨害の件じゃが、西域の事件とも関わり合いが深いようなので集まって貰った。警ら大隊長説明してくれ」
「はい、今朝8時30分ごろ、恭平殿の従者から展示飛行を妨害する意図で工房開発地区に集合しているものが居ると報告がありました。10時頃に現着したおりには捕縛された天都防衛軍第二中隊の70名が居ました。すでに恭平殿は展示飛行を開始しており、話は彼の従者から聞きました。林に人がいるのを見つけて声を掛けたら襲ってきたがゴーレム馬車で逃げたら追いつけず疲労困憊の状態になり、そこで従者たちが捕縛したということでした。捕縛した70人ですが”軍に返せ”以外は黙秘しております」
「第二中隊長、どういうことだ?」(天帝)
「はい、展示飛行を妨害しようとしているものが居ると聞いたので70名を派遣しました」(中隊長)
「誰に聞いたのか?」(天帝)
「えっ、いや、あの」(中隊長)
「誰に聞いたのかと聞いておる」
「はい、大隊長に聞きました」(中隊長)
「わしはそんなことは言っておらん」(大隊長)
「どういうことか?」(天帝)
「中隊長の勘違いではないですか。私は言っておりません」(大隊長)
「そんなあんまりではないですか」(中隊長)
「わしは知らんと申して居る」(大隊長)
「あの良いですか?」
「恭平、なんじゃ」(天帝)
「確かに妨害しようとした団体は二つでしたが声を掛けた時、同じ場所に仲良くいました」
「中隊長、どういうことか?」(天帝)
「分かりません」(中隊長)
「近衛隊長、この後中隊長と大隊長の整合が取れるまで追求せよ」(天帝)
「軍の問題に近衛が関わるのは越権行為です」(大隊長)
「朕の意を汲んだ展示飛行を妨害しようとしたのじゃ。朕の直属の近衛を使って何が悪い」(天帝)
「しかし軍務大臣の居ない所でこのような、私は失礼しますぞ」(大隊長)
「近衛隊長、大隊長を捕えよ。きゃつは朕より軍務大臣の言うことを聞くと言っておる」(天帝)
「不敬罪ですな。この場合財産没収の上、追放ですか」(近衛隊長)
大隊長は青い顔をして”それだけは”を連呼している。居るんだよね組織外のことを考えられなくなる奴って。
「次は主計局長、忍猫族の里を接収したそうだな」(天帝)
「はい、西域の件の穴埋めにと」(主計局長)
「なぜじゃ、里の者に罪はなかろう」(天帝)
「族長が罪を犯したのですから当然でしょう」(主計局長)
「では上司のお前も当然、罪を償うのであろうな」(天帝)
「私は、私がなぜ」(主計局長)
「何年にも渡る不正を見逃し、ましてや確認もしておらんと言うのだ。業務放棄もいい所だ」(天帝)
「主計局長は明らかに越権行為を働いている。警ら大隊長、そうだな!」(天帝)
「はい、庶民への接収要請は閣議の許可が要ります。越権行為と言うより犯罪でしょう」(警ら大隊長)
「待ってください。これは命令なのです」(主計局長)
「誰のだ?」(天帝)
「軍・・・・」(主計局長)
「もう良い、近衛隊長、警ら大隊長、容疑者を連れて行って、何としても事件を解決せよ」(天帝)
「「はい、承りました」」
「恭平殿」
「はい、何でしょうか」
近衛隊長、警ら大隊長が容疑者を連れて出て行くと宰相が俺に話しかけてきた。
「恭平殿が来てから恐ろしい速度で周りが良い方向に変わっていく。特に天帝様が水を得た魚と言うか、鬼に金棒と言うか。君が現れた日、天帝様が君を帝配にと言った気持ちが分かる気がする」
「それは駄目ですからね」
「分かっておる。もう少し実績を挙げねばな」
それ違うでしょう。と苦笑いをしていると廊下でドタドタと大きな足音がする。
「天帝様、軍の幹部を呼ぶときには私を通してください」
「軍務大臣か、お主は呼んでおらんぞ。ここは朕の部屋じゃ。出て行くが良い」
「しかし、幹部が3人も抜けると業務に支障が出ます」
「朕は出ていけと申して居る。聞えぬか」
宰相、右大臣、左大臣になだめられ追い出される軍務大臣。憤りながら去ってゆく。
「良かったのですか?」
「あのような腹黒い奴と一緒に居るのはいやじゃ。それに奴も明日までじゃ」
17時 来賓宿泊所 居間
「と言うことがあった」
「それでは父上は罪を犯しては無かったのでしょうか?」(ライヤ)
「話の内容から君のお父さんがやらないと出来ないことがある」
「そうですか」(ライヤ)
「でも、里は返して貰えるよ」
「どうしてここまで面倒を見て貰えるのでしょうか?」(ライヤ)
「一つは君の仲間たちを俺の工房に欲しい。俺の技術を伝えるのってちょっと秘密があるからね。口の堅い信じられる人が居るんだ」
「私の仲間なら全員大丈夫です」(ライヤ)
「もう一つは横領された金が戻ると工房への予算が前倒しされる」
「わぁ打算的ぃ」(茜)
「当たり前だろ。君達のためにも安定した収入を確保しなくちゃ」
「ありがとう」(真白)
「最後の一つは君に依頼されたからだ」
「俺は冒険者だ。基本的に依頼を受けてそれに相当する報酬があるとき依頼を受ける。それが一つ目の君の仲間だ」
「あのう、私は、私は要りませんか?」(ライヤ)
「もちろん君でもいいさ。信用できる人なら」
「この人にははっきり言わないと分からないわよ」(茜)
「そうだよ。相当鈍いから」(真白)
「もう朴念仁ってやつ」(蒼伊)
なんかひどいこと言われてる。俺ってそんなに鈍いかな?
「あなたが好きです。私をおそばにおいてください。奴隷でも構いませんから」(ライヤ)
意を決したライヤがソファを降りて土下座する。
「ありがとう、俺を好きになってくれて。ところで君いくつ」
俺はライヤを立ち上がらせソファに座らせる。
「16歳です。いいのですか?」(ライヤ)
「君を今いる仲間と同じ立場にはできない」
「どういう」(ライヤ)
「まあ聞いてくれ。君が仲間になっても冒険に連れていけない。車も船ももういっぱいなんだ。だから冒険に行くときには留守番になる。だから君には工房を任せたいんだ。構わないか」
「もちろんです。わがままは言いません」
『ライヤとの間に隷属の回路が作成されました。身体強化、脳内地図、念話、インストールスロットが形成されました』
「おめでとう」(真白)
「そっかぁ車もボートもいっぱいかあ、7人乗りに7人と一匹乗るからねえ」(蒼伊)
「ライヤが居なかったら真白か茜に頼むつもりでいた」
「ええ、何でよ」(茜)
「頼めそうなのお前らしかいないだろ」
「それもそうか」(茜)
「なんで納得するのよ」(蒼伊)
「夕食出来ましたぁ」(ミヤ)
「食堂に来て」(ヒイ)
21時 来賓宿泊所 居間
いつも通りヒイが膝の上にミヤが背中にくっ付いてる。
「うらやましいです。私もやって良いのですか?」(ライヤ)
「やめときなさい。あの二人、女子の中では一番目と二番目に強いのよ。まだ訓練もしていないあなたじゃあ相手も出来ないわ」(茜)
「ええ、明日はクーデターが起きる可能性があります」
「またとんでもないことを言うのね」(真白)
「軍務大臣がかなり追い詰められています」
「それは聞いて解ってるわ」(茜)
「多分、軍務大臣に付く兵隊は少ないと思います」
「防衛軍の大隊長と中隊長が捕まってるからね」(蒼伊)
「費用も捻出できません」
「主計局長も捕まってます」(ジュレイ)
「で、我々は軍務大臣が城外に逃げるのを防止します」
「捕まえればいいんですね?」(ミヤ)
「最近出番が無いのよね。明日も派手な立ち回りは無さそうだわ」(茜)
「私、立ち回りってしたことないんですけど」(蒼伊)
「そう言えば、虎以降私達戦ってないわね」(真白)
「そうなんですか?」(ジュレイ)
「信帝国の正規軍相手が多かったから死なせるわけにも行かないしねえ」(真白)
「正規軍相手でそんなに余裕なんですか?」(ライヤ)
「ミヤちゃんなら10人でも平気だわ」(茜)
「ヒイも平気」(ヒイ)
「そだね」(真白)
「と言うことで明日は午前中、帝城の警護を行います」
「ミヤ、ヒイをお願い」
「はい」(ミヤ)
次話、クーデター勃発です。天帝の手腕にビックリです。




