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第二十九話 刺客来る?

ポンコツ忍者登場です。

 13時 近衛練兵場

 蒼伊とヒイから武技の相談があったので練兵場に来た。

 まずは蒼伊からだ。

 蒼伊の薙刀は、薙刀が売っていないので槍の穂先を外して二尺の脇差を取り付けたものだ。

「このあいだの虎のような大質量で素早い動きの物に対して、斬るというのはかなり厳しいと思うの」

 確かに俺もそう思って刀を槍に持ち替えた。これは切り離せなかったときにこちらが致命傷を負う可能性が高いからだ。


「それで斬撃を確実にする高周波ブレードや単分子カッターがあれば魔獣も怖くないと思うのよ」

 高周波ブレードも単分子カッターもSFの世界の武器である。詳しい説明は省くが高周波ブレードは刃に超微細で超高速のチェーンソーが付いている。単分子カッターは刃を出来る限り薄くしたものでどちらもどんなものでも抵抗なく斬れるというものだ。

「両方とも無理かな。そんなものは日本でも実用化出来てなかった」

 何か引っ掛かるがそれが何なのかが分からない。

「気功で刃を作るというのは無理ですか」

 ミヤの言葉で引っ掛かってたものが何なのかが分かった。俺は気功は魔力だと思っている。拳弾と言うのは意志の力で離れた場所に魔力で運動エネルギーを発生させる。ヒイの村では約20m位飛んだ。魔石を使わない魔力の行使だ。


「ミヤ、良く気付いたな。もしそれが出来れば俺達は魔獣に苦戦しなくなるかも知れない」

 俺は、ミヤの頭を撫で回す。

「ヒイが気功の利用がうまく行かないと言っていたので」

「ヒイの相談もそれか?」

「はい、拳弾を矢と一緒に打ち出せばもっと威力が上がる思ったんだけど威力は同じなの」

「一度見てみよう」


 弓技場へ皆で来た。幸い、弓を練習している者は居なかった。

 ヒイに的に向かって矢と拳弾を打つように言った。

 矢は的の中心に刺さりその周辺が少し窪む。

「ヒイ、拳弾を鎌みたいな形に出来るか?」

「やってみます」

 何も変わらなかった。

「よし、皆で拳弾を刃の形に出来るか練習だ。うまく出来たら皆に教えてくれ」

 的がある土手に向かって気功の練習をする。

 一時間程やったが埃が立つばかりで刃の形にはならない。

「少し休憩しよう」


「何かヒントでもあったか?」

「打ち出すというよりも斬ると意識した方が良さそうです」

 ジュレイが手刀で身振りをする。


 16時

 気の塊で丸い気功を薄く切るように変えていく。どうもイメージしにくいので木剣を持ってきて振ってみる。刃が空を斬った感触があった。

「真白、枯れ枝を拾って来てくれないか」


 真白が裏の林で拾ってきた枝を投げて貰った。木剣を振るうと枝が音もなく斬れる。

「出来た!!」

 次は弓だ。弓の感覚は恐らく剣とは違う。シュバルツの弓を出し、矢を構える。

 矢に着いた刃が的を切り裂くイメージを思い浮かべる。

 矢を放つと的に命中すると同時に二つに割れる。

『このイメージを全員と共有出来るかな』

『全員と共有しました』

 皆で確認しているがほぼほぼ出来るようだ。


「これはどういうことだ?」

 カクタスと副隊長が俺達を見て驚いている。

 そりゃそうだ。茜なんかタンポ槍で当たっても無いのに枝をスパスパ斬ってる。本人は十文字槍を意識しているんだろうが傍から見ると不条理の塊である。

 俺が気功の変化技であることを説明すると自分たちもやり始めたがそんなに簡単に出来るはずもない。


 17時 来賓宿泊所 居間

 天帝様より念話があった通り、居間に明日の飛行経路が置かれていた。

「え~と、10時から11時までで、外郭を3週回って、その後帝城の周囲を5週回るっと。帝城の上は飛ぶな。時間が余ったら好きにせよ。但し、危ない真似はするな」

「普通よね」

「普通だわ」

「空を飛ぶことが普通じゃないんです」

 真白と茜の感想にジュレイが突っ込みを入れる。ジュレイも大分馴染んできたな。


 21時 その後、ご飯を食べ、お風呂に入り居間で寛いでいると背中にへばり付いていたミヤが立ち上がった。

「ミヤちゃんどうしたの」

 膝の上に座っていたヒイが聞く。

「桔梗の間の方で物音がしました」

 主寝室に居る4人に念話で動かないように連絡を入れ、3人で廊下に出る。

 今の時間は俺達の他は誰も居ないはずだ。


 ゴトッとまた今度は皆に聞こえる音がした。

 灯を付けると筋向いの桔梗の間の扉が僅かに開いている。

『ヒイ匂いは?』

『怪しい匂いはあるけど、後を追えるほど濃くない』

『恭平様、灯を部屋の中に入れて最強にして下さい』

 俺はミヤに言われた通り、灯の魔石に強い魔力を流して部屋に放り込む。

 部屋の中が一瞬明るくなってプチっと焼き切れた。

 次の瞬間、ミヤが真っ暗闇の部屋の中に飛び込み格闘が始まった。

 俺はもう一つの灯の魔石を光らせた。


 ミヤが部屋の真ん中で俯せの黒装束の背中の上で相手の右腕を捻り上げていた。

「ヒイ身体検査だ。武器を持ってないか確認して」

 黒装束を立たせ、両手両足を拘束して身体検査をする。小さい真白くらいか?

 出てきたのは手裏剣、目つぶしくらいか。

「あっ、おっぱい」

 ヒイが胸をもみもみする。ヒッと小さく呻く。

 俺が覆面を取ると茶色の猫獣人の美少女が現れた。

「部屋まで連れて行こうか」


 ソファーに座らせ、主寝室に居た4人も出て来て取り囲む。

「なんであの部屋に居たのかな?」

 少女は俺を睨んで口を開こうとはしない。

 ミヤがひじを極めて捻る。

「くっ、殺せ」

「クッコロよ。初めて聞いたわ」

 蒼伊がテンション爆上がりだ。

「蒼伊ちゃんクッコロってなあに?」(真白)

「女騎士が敵に捕まって、凌辱されそうになった時に言うのよ」(蒼伊)

 ”凌辱”って言葉にビクッてしてるからかわいそうに。

「ミヤ、あまりきつくしないであげて」

「恭平様スケベなことするんですか」(ヒイ)

「しません。ああもう尋問出来ないじゃないか」


「この子、忍猫族じゃないかしら」(ジュレイ)

「忍猫族って何?」

「千年前の大戦で信帝国に味方して活躍したって聞いたことがあるんですが」(ジュレイ)

「それが何でこんな所に?」

「さあ、それは。でもこの黒装束って私が聞いたのと同じです」(ジュレイ)

「お前は忍猫族か?」

 頷いた。

「しっかし、猫人で美少女で忍者ってミヤちゃんともろ被りなんだけど」(蒼伊)

「私は忍者じゃありません。恭平様が危ないことはしちゃ駄目だって」(ミヤ)

「でもこの子よりはるかに忍者みたいだわ」(茜)

「実際、本職に勝ってるし」(真白)

「また、脱線してる。君達、ジュレイを除いて主寝室へ行きなさい。ヒイとミヤは寝る時間でしょ」

「「「「「はーい」」」」」


「ジュレイ、忍猫族は今、どうしてる」

「分かりません。影に生きる一族ですから」(ジュレイ)

「落ちぶれて悪の手先になっちゃったか?」

「私達は悪に加担していません」(忍猫)

「だったらなんで俺なんか見張ってるの」

「あなたが天帝様を誑かす悪い奴だからです」(忍猫)

「俺が、???」

「忍猫殿、恭平殿の何が悪いというのです」(ジュレイ)

「天帝様の帝配の座を狙っていると聞いてます」(忍猫)

「それは誤解です。その件は帝国側から出され、恭平殿は断っておいでです。」(ジュレイ)

「信じられんな」(忍猫)

「恭平殿あの場に居合わせたのは誰ですか」(ジュレイ)

「天帝様、宰相、右大臣、左大臣、軍務大臣、茜、真白、俺、後 リョウカ様、アンナさん、ヒイ、ミヤには話した」

「宰相、右大臣、左大臣、軍務大臣が怪しいですが・・」(ジュレイ)

「まあ、軍務大臣だろうな。西域の件で恥かいてるからな」


 ・・・・


「ということは本番を狙ってくるな」

「はやぶさ号ですか」(ジュレイ)

「どうせ倉庫に無かったんで、こっちに探しに来たんだろう」

「知らん、そんなことは知らんぞ」(忍猫)

「図星みたいですね」(ジュレイ)

「君、帝城から脱出できるの。出来るんだったら釈放するから」

「クッ」(忍猫)

「無理みたいですね」(ジュレイ)

「じゃあ、明日一番に連れ出してあげるから仲間を逃がせ」

「どういうことだ」(忍猫)

「君達は企てが成功してもしなくても殺される」

「そんなはずは」(忍猫)

「はやぶさ号は俺もだが天帝様の夢の第一歩と言っていい。それを壊すんだ。厳しく追及される。それなのに証人を生かしておくと思うかい」

「そんな、私はどうすれば良いのでしょうか」(忍猫)

「だから仲間を逃がせと言っている。鳳王国だったら多少無理は聞いてくれるだろう」

「仲間は兵隊と一緒に居ます。逃げられません」(忍猫)

 忍猫は縛られたまま土下座して恭平を拝む。


「お願いします。私はどうなってもいいです。仲間をどうか」(忍猫)

「あなた、何を言っているのかわかってるの。恭平殿に敵であるあなた方を助けるために危険な目に会えと言っているのですよ」(ジュレイ)

「でも、私にはどうすることも出来ません。あなたの奴隷でも何でもします。だから・・・」(忍猫)

 俺は頭を抱えた。





次回は西域事件の進展があります。

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