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第二十七話 休日1

良し、明日明後日はお休みだ

 帝城 近衛兵練兵場

 今回は近衛兵が百人程いる。

「こんにちわ」

 カクタスと副隊長がやってきた。

「あれ、新しい子。初めて見る獣人だな」

「獣王の娘でジュレイと申します。皆さまと同じで剣の道を志し、恭平様の弟子となりました。よろしくお願いします」

「獣王様の、へええ。しかしお前のところに集まるのは美少女ばかりだな」

 うん、否定はしないよ。事実だから。

「とにかく一手お願いしようか」

「こちらこそよろしくお願いします」


 副隊長とジュレイの一戦だ。

 二人とも正眼の構えで様子を見ている。副隊長が剣先をスッと上げる。ジュレイはピクリともしない。ジュレイは後の先を狙っている。

 副隊長が動いた小手から摺り上げての面狙いだ。ジュレイは剣を外すと一歩斜め前に出て胴を払った。副隊長は一歩引いて胴を躱し、同時に面を打った。ジュレイは横にくるりと回って除け、小手を打った。

「まいった。いや、師匠譲りの綺麗な剣だ」

 そうなんだよ。井倉さんが俺が教えるって言って来たから任せてある。だから兄弟弟子になるのかな。

「ありがとうございました」

 おお、礼儀も正しい。良い子だ。


 ジュレイもヒイも相手してくれって人気だ。ミヤは変則的過ぎて敬遠されている。

「ミヤ、俺とやるか?」

「はい」

 ニコッと笑ったその笑顔が可愛い。

 ミヤ相手に大きな動作は禁物だ。小さな連続技で攻めていく、左手には竹で作った千本を持っているがこちらの技が速くて投げられない。相手が片手剣だとどうしても力攻めをしてしまう。だが躱す能力に優れたミヤには通じない。だから躱せない速度で攻める。左手を使う余裕を奪う。ミヤはまだ子供だ、必ず焦れて行動を起こす。俺の剣をいなして突っ込んでくる。俺は慌てずに一歩下がって面を打つ。

「まいりました」

「ミヤ強くなったな。でも我慢も必要だぞ」

「はい」

 お昼になった。

 副隊長が近付いてきた。

「成程、猫人殺法にも弱点があったか。ミヤちゃん、昼からお兄ちゃんと試合しようか?」

「はい」


 俺達は練兵場の端にある木の下にレジャーシートを引いておにぎりを出す。

「はい、おしぼり」

 全員のおしぼりを出して渡す。

「これはどうするのですか」

「手を綺麗にするんだよ。汚れた手でご飯を食べると病気になるよ」

 ヒイがジュレイにおしぼりの使い方を指導している。

「これがおにぎりですか」

「こうやって海苔で掴むと手にご飯が付かないしおいしいよ」

「こうですね」

「ムグ、・・・おいしいです。海苔がパリパリして香ばしいです」

「ムグ・・・中から茶色い細いのが出てきました。甘辛くておいしい」

「それは昆布の佃煮だよ。ほかにも鮭、おかか、梅干しなんかも入ってるよ」

 ヒイとジュレイは楽しそうだ。


 向こうからカクタスと副隊長がやって来た

「おっ、おにぎりだ。久しぶりだな。俺にもくれないか」

「おまえ、おにぎり見たくないとか言ってなかったか」

「あれは一週間以上続いたからだろう」

「分かったよ。ほれ、おしぼり」

「あんがと」

「副隊長もいかがですか」

「いいのか。済まないな」

「ミヤ、副隊長に食べて貰いなさい」

「はい」

 ミヤがおにぎりの食べ方を副隊長の教えている。

 皆でわいわい言いながら昼飯を食った。

 食休みを取って昼からの訓練を開始した。


 暫くすると真白たちが来た。

「どうした」

「どうしたもこうしたも、もう私達の仕事がないの」

「そうか、それは寂しいな」

「いえ、最初からそれを目指していたので嬉しいわ」

「では君達も訓練するかい」

「「「はい」」」

 インストールして訓練用の武器を手に練習を始めた。

 ヒイと真白は弓の訓練場に行った。

 十人程後を追っかけて奴がいたのは、この間渡したコンパウンドボウを使う兵かな。


 来賓宿泊所 居間

 夕方まで訓練して来賓宿泊所に戻ってきた。

「明日、明後日は休みにしよう」

「休みっていうと」(ジュレイ)

「ショッピングでも遊びでも好きにしていいよ」

「ショッピングかこちらで買いたいものは無いかな」(茜)

「遊びって言ってもカラオケも映画館もないし」(蒼伊)

「私は恭平様と一緒に居たいです」(ミヤ)

「私もぉ」(ヒイ)

「私達もそうかな。従者になったのもそれが理由のひとつだし」(真白)

「恭平は何をするつもりだったの」(茜)

「俺は、工房が出来たらここを出るから家を探そうかと思ってる」

「どうして?」(真白)

「朝は8時半以降でないと外に出れないし、夕方は5時までに帰らなきゃいけないし不便だろ」

「確かにそうだね」(蒼伊)

「私付いて行きます」(ミヤ)

「「「「「私も」」」」」


 休日 一日目 (転移103日目)

 8時 御所から呼び出しがかかった。

「お主、家を探しておるそうじゃの」

「はい、帝城の中は時間的に不便ですので、工房が出来れば居を移そうかと」

「心配するな工房の近くに寮をいくつか立てる予定じゃ。地方から人を呼ぶからな」

「はい」

「そのうちの一つをお前にやろう」

「誠ですか?」

「お前には工房でも頑張って貰わねばならんからの」

「これが設計図の写しじゃ、文句があるなら言ってこい」

「ありがとうございます」

「但しじゃ、朕がすぐに呼び出せなくなるのはまずい。念話であったか、あれを使えるようにせよ」

 やっぱりタダじゃないか。ナビさん

『天帝様との臣従の回路を作成します。念話が使えます』


『繋がりました。聞えますか?』

「おお、聞えるぞ」

「声を出さずに何か私に話しかけてください」

『聞こえるか?聞こえたら手を挙げよ』

 俺が手を挙げると天帝様は大喜びだ。

 天帝様に朝議の迎えが来たので話はここまでとなった。


 来賓宿泊所 居間

「ただいま」

「何の御用でしたか」(ミヤ)

「今日の家探しは無しになった」

 実はと天帝様とのやり取りを話した。

「これが寮ね」(真白)

「個室だね」(茜)

「ああ、本来二人部屋だけど8部屋あるから一人で使っていい」

「管理室って要らないよ」(蒼伊)

「居間を延ばせばいいよ」

「私、一人で寝るの嫌」(ヒイ)

「私と寝ましょ」(ミヤ)

「ありがとう、ミヤちゃん大好き」(ヒイ)

 そう言えばこの二人はいつも一緒に寝てるな。

「それより今日の予定はどうするの?」(真白)

「どっか行こうよ」(茜)

「どこへ行くかね」(蒼伊)

「近くの地図あったよね」(茜)

 こういうのは企画慣れした転移組がリードする。

 ジュレイ、ミヤ、ヒイの三人は戸惑っている。自分で地図を見て行き先を決めたことがないのかもな。暫く、あれは駄目、これは駄目とか言っていた。

「あれこの道、何もない所に続いてる」(蒼伊)

「山菜取りか何かではないですか?」(ジュレイ)

「縮尺がはっきりしませんが30km位は続いているような?」(真白)

「山菜取りじゃないわね。ここへ行ってみましょ」(蒼伊)

「何をしに行くんですか」(ミヤ)

「冒険よ。未知なる何かがあるのよ」(蒼伊)

 なりを潜めたと思っていた、蒼伊のラノベオタクが復活した。

 結局、蒼伊の勢いに押される形で何もない道に行くことになった。

 正確な縮尺の地図ではないので分からないが、まあ道の消える所まで2,3時間あったら着けるだろう。


 3時間たったが道は消えない。馬車か大八車かと人の通った後が続いている。道が悪いので速度は出ないが、この道に入ってからかれこれ40kmは進んでいる。

 道の周りは低木の生えた林になっており、昼食にしたいが適した広場が無い。仕方が無いので車の中でおにぎりを食べることになった。トイレの設置も大変だ。

「何か音が聞こえます」

 トイレから帰って来たミヤが俺に告げた。窓を開けて耳を澄ますと木を叩くようなコーンと言う音がかすかに聞こえる。

「この先に人がいるようだ。ハイジ、見つからないように偵察してくれ」

 ハイジはすでにこれくらいの命令は理解して実行できる知能があった。

「オン(分かった)」

 ハイジが駆けて行ったので車をしまって茂みに隠れる。



休みでも休みにならないのが正義の味方

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