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第二十五話 ジュレイの恋

新しい従者です。

 獣王府 応接室

 ジュレイの母親と向き合っていた。

「私がこの度、獣王国に使者として遣わされた恭平と申します」

「そうですかストライキの方はどうなりましたか?」

「天帝様と獣王様の御配慮により無事に解決いたしました。明日、天帝様に報告いたします」

 母親は心底ほっとしているようだ。

「良かったです。まさか軍が横領を働くなんて考えもしませんでした」


「それでですね。獣王様より天帝様への伝言を預かりまして」

「はい、それはどのような?」

「王都を東に移転すべきだと」

「またそのような埒も無いことを言っているのですか。王都は西の防御の要です。動かすべきではありません」

「それを考えるのは天帝様だと思います」

「ではなぜあなたはそれを私に伝えるのですか?」

「もし、あなたが獣王家の都合で移転に反対し、それが私にも理解できるなら話をせずに置こうと思いまして」


 母親は考え込んでいる。

「あなたは私が夫を蔑ろにして天都で贅沢をしているとお考えで?」

「いえ、私は、娘さんより相談を受けたので先にあなたに相談に来ただけです」

「だって父上はすごく質素な生活をしているわ。城もこことは大違い。父上は寂しいのよ。恭平殿に愚痴をこぼして泣くぐらい」

 我慢できなくなってジュレイが泣き出した。

「何を言うのですか?上級の貴族の生活費を送っています。それは先代の頃に比べればかなり減らしていますが十分に暮らしていけるはずです。」

「生鮮食料を買うのに100km離れた村まで行き、2日分の食料を3日がかりで手に入れます。これで300デム掛かります。恐らくできないでしょうから兵隊と同じ食事を買っていたと思います。上級の貴族の食事の倍の値段で」

 母親の口からヒィッというつぶやきが聞こえた。想像したのだろう、夫の窮状を。言ったのは適当な数字だが大きく外れてはいまい。俺達が旅費として破格と思える費用を貰えるのは宿泊費もあるが食糧事情が悪い為だ。もちろん俺には次元収納があるから関係ないけどね。


「私は間違っていたのですね。西域に行く途中、こんなところに居ては何も出来ない。獣王の権威を上げるためには天都に居なくちゃいけないと思って。夫がそんな暮らしをしてるとは思いもせずに」

 今度は母親が泣きだした。感情が収まるまで泣かせておこう。


 泣き止んだ母親が尋ねてきた。

「私はどうすれば良いと思いますか?」

「家庭内のことだし、俺も経験が少ないので言えることは、獣王様はあなたがつらい思いをすることは望んでいないということです」

「それはどういうことでしょう」

「今度のことで自分に罰を与えるとかですかね。費用を先代と同じにしてあげてくださいね」

「そうですね。私は愚かでした。息子も結婚し、娘も成人しましたから、私は獣王国に行って夫に尽くしたいと思います」

 良かった。悪役令嬢みたいな人じゃなくて、無礼者、平民風情がとか言われたらどうしようかと思ってたけど取り越し苦労だった。


「あとはご家族でって事で邪魔者は退散しますね」

「待ってください。私も行きます」

 ジュレイさんが服にしがみ付いてきた。

「はい、なんで?」

「剣術を志すなら教えてくれるっておっしゃいました」

 そんなこと言いましたか?覚えがないですが。

『もう一本と言われた時に剣術志していないですよねと言いました』

 あれは、断る口実・・えええ。お母さん止めてください。

 なんであらあらみたいな顔をしてるんですか。

「俺は冒険者で今は帝城に居ますが良く辺境に行きますし、剣術指南をしている訳では無いです。」

「私は辺境に居ましたから大丈夫です。近衛で剣術指南してるんですよね」

「帝城には許可が無いと入れませんよ」

「車に乗って行けば顔パスだって言ってました」

「お母さんと久しぶりに会ったんだから」

「天都に居ればいつでも会えます。私の事嫌いなんですか?」

 駄目だ断れる気がしない。

「ジュレイの事よろしくお願いいたします」

 母親からも頼まれちゃったよ。もう逃げ道なしだ。


 皆の所にジュレイさんを連れて行く。

「やっぱりこうなったか」

「そうだと思ったんだよね」

「仕方ないわね」

 転移組です。

「お腹空いたぁ」

「今日はどちらで夜営を」

 ヒイとミヤ。

「今日から弟子になりましたジュレイです」

 前に夜営した外郭に行きますか。


 西域使者行 十日目 (転移95日目)


 8時 帝城に入る。

 天帝様の面会申請を行う。昼からになりそうなので来賓宿泊所に入る。

「ベッドを一つ貰ってこなきゃ」

「貰いに行こう」

「「「了解」」」

 来賓宿泊所の管理室があり、そこにベッドの追加をお願いする。

「桔梗の間の従者部屋から持って行ってちょうだい。あなた達は自分で運んでくれるので楽だわ」

 女官が指さして言った。来賓宿泊所は4区画あり、同じ間取りが桜、桔梗、撫子、百合の4つだ。俺達は桜に居る。

「ジュレイさん、大丈夫私達で運ぶから」

 真白と茜の二人が軽々と運ぶ。後をシーツと布団を持った蒼伊、ミヤ、ヒイが追う。ジュレイは枕を持っていく。

「あなた達って力持ちなのね」

「秘密があってね」

「ちょっと狭いかな」

「私達が従者部屋に移りましょうか?」

「駄目よ。聞えウグッ」

 ミヤの言葉に反応した蒼伊の口を茜が慌てて塞ぐ。

「みんな仲良く一緒の部屋で寝ましょうね」

 真白がフォローする。

 主寝室には天蓋付きのダブルベッドがあり22時に寝るヒイとミヤが寝ている。カーテンが付いてるので外の灯が入らないのだ。他は従者部屋から運んだシングルベッドだ。

 流石に横一列に並べると狭いが、二列に出来る広さがあるので狭くはない。

 従者部屋は俺が使っている通路側と隣に同じ間取りの従者部屋がもう一つある。ミヤが移ろうとしたのはこの部屋だ。いったい何が聞こえるというのか。


 13時 御所 応接間

 ジュレイを伴って天帝様に面会する。何か聞かれた時に役に立ってくれるだろうと連れてきた。

「ご苦労であった。して隣におるのは新しいこれか」

 天帝様が小指を見せた。誰がこんな下品なしぐさを教えるのか。

「獣王の娘、ジュレイと申します」

「獣王の娘か。してどうであった」

「天帝様の思し召しによりストライキは解散、通常の業務に戻りまして御座います」

 獣王様の書簡を渡した。天帝様はさっと目を通して。

「左様か、突厥のことがあるのでハラハラしておったが安堵したわ」

「その件ですが、突厥はさして脅威には思えません」

「なんじゃと、臣下の者から突厥は信帝国の西部を狙っておると聞いたが」

「獣王様は突厥の兵の影も見たことが無いと仰っていました」

「それから西域の門の縮小と獣王国の東への移転を具申しておりました」

「しかし、獣王国からはここ十年、西域の門の拡大を上申してきておる。守る兵も500から1000に倍増させた」

「どうも、西域から来た商人に騙されたようです。突厥が戦準備をしているとかデマを流し、自分の商品を獣王府に売り込んだようです」

「左様か、その商人はどうしておる」

「とっくに姿を晦ましています。獣王様の奥様は自分が騙されたからだと深く反省し、獣王府を王太子に任せ、自身は苦労を掛けた夫の元へ行くと申しておりました」

「うむ、遠く離れた夫を心配しての事。罪に問う訳にはいくまい」

「獣王の具申は閣議に諮るがそう簡単にはいくまい」

 天帝様はフーっと大きくため息を付いた。

「今回の件も、鳳王国の件もお主の様に簡単に行き来が出来れば、問題にもならなかったのかも知れぬ。早く文明を進めなければな」

「はい」

「そう言えば、言われておった倉庫だが外郭に手頃なのがあったから借りておいたぞ」

 パンパンと手を叩くと執事が入って来た。

「この者に成功報酬と倉庫の場所とカギを渡しておけ」

 はいと返事をしてこちらへどうぞと案内された。

 すべてを受け取った後、執事さんが言った。

「あなたが来てから帝城は活気に満ち、良き方向に進んでいます。これからも天帝様をよろしくお願いいたします」

 いえいえ、とんでもないですって言っといたけど本当の所どうなのかね?


 来賓宿泊所に帰る途中、いきなりジュレイさんが抱き着いて来た。

「どうしたの」

「父上にも母上にも良いように計らって頂けました。ありがとうございます」

「結果的にそうなっただけだよ」

「いえ、もう離れません。あなたに付いて行きます」

 ええええ、これってプロポーズ、まだ15だろ。抱き付いたまま。顔を上げてにこっと笑いかけて来た。不覚にもキュンとした。

『ジュレイと従属の回路が形成されました。身体強化、脳内地図、念話、インストールスロットが形成されました』



飛行機製作開始です。

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