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第二十一話 工房計画

 22時30分 主寝室(奥の間)

 ヒイとミヤは朝食当番なのですでに寝ている。残りの3人は天井の灯を消して、隅に固まりひそひそ話を始めた。

「どうでしたか」(真白)

「駄目、反応が薄い」(蒼伊)

「私達では、不服と言うことか?」(茜)

「ヒイちゃん達にそういうことを見せたくないのだと思う」(蒼伊)

「ヒイちゃんは完全にファザコンだよね」(茜)

「ミヤちゃんはご主人様ラブ」(真白)

「問題は恭平君が私達に男が出来るって思っていることね」(蒼伊)

「彼以上の男ってそうはいないわよ。強くって、優しくって、物静かで、頼りがいがあって、とても17歳とは思えないわ」(茜)

「それ、今まで彼みたいな人見たことないよ」(真白)

「天帝様が求婚したって本当なの」(蒼伊)

「本当よ、私達もびっくりしたんだから、信帝国をやるって言い出して、恭平が断らなかったらどうなっていたか分らないわ」(茜)

「これからもライバルが増えそうだけど、ヒイちゃんが大人になるまで受け入れては貰えそうもないよ」(真白)

「ヒイちゃんにデレデレしてるの見るとイラっとするけどね」(茜)

「それも17歳には見えないところよ」(真白)

「ヒイちゃんにやきもち妬いても勝てないから、相手は満年齢10歳よ。ここは建設的に行きましょう」(蒼伊)

「どこかで告白して確約が貰えれば良いのよ。こっちは一夫多妻がOKだから」(真白)

「そうだわ。確約があれば、甘えても良いんだわ」(茜)

「いつにする。私は今からでもいいよ」(蒼伊)

「ちょっと待って、心の準備が必要よ」(真白)

「じゃあ明日、良いわね」(茜)

「「了解」」


 天都帰還1日目 (転移82日目)

 帝城に報告に行った俺達は依頼達成金を貰い、また帝城に住むこととなった。

 宰相に虎二頭の売り先を相談すると工房の建築予定地が決まったことを知った。


 13時 茜と真白はそれぞれの事務局に連れて行かれたので、ヒイ、ミヤ、蒼伊を連れて建設予定地に行く。

 外郭の外に伊河という川があり、その岸辺に予定地はあった。この川を堰き止めて水力発電を実施する予定で、まずは50kW位を設置する。工房には高炉と電気炉を造るつもりだ。

 魔力の研究も同時進行させたい。ゴーレムを作ってもその動力源は魔力である。従っていくらゴーレムの馬力を上げても普通の人間では、その馬力を扱えないことになる。

 おれの考えているのは魔力を貯める魔力石の開発である。それが出来ればトラック、貨物船、重機、飛行機などが視野に入ってくる。

 飛行機と言えば俺一人が乗れる位のなら魔力石もいらないだろうから試作するか。


「どうだ、広いだろう」

 草と灌木しかない川岸である。

「どこからどこまでですか?」(ヒイ)

「あのロープが張ってある区域だ」

「はい、広いですが何もないです」(ヒイ)

 外郭の建物から1kmは離れている。

「これからだからな。天都の拠点をここにするつもりだ」

「私達も住むのですか?」(蒼伊)

「そのつもりだ。いやか?」

「これくらいの距離なら帝城までバイクですぐですし、問題ないかと思います」(ミヤ)

「飛行機を造ろうと思う。竜王国や鳳王国でも1日で行けるぞ」

「飛行機って何ですか?」(ヒイ)

「鳥みたいに空を飛ぶ乗り物よ」(蒼伊)

「????」

 ヒイには想像できないようだ。ミヤは明らかにビビりながら言う。

「恭平様の行く所ならどこへでも付いて行きます」

「そうか、ありがと」


 15時 帝城

 戻ってきたら天帝様からの呼び出しがあった。3人を連れて御所に行く。

「大きな虎を倒したと聞いたが見せてくれ」

 外の庭に出て虎を出した。丸まった状態でも8畳間がいっぱいになる。

「なんじゃこれは、こんなのと戦ったのか」

「はい、今回は危なかったです」

 俺は今回の戦いを話した。

「なんじゃヒイが危なかったのか」

「恭平様に怒られました」

「そちが死んだら恭平がどれほど嘆くか。分かるな、繰り返してはならぬぞ」

「はい」

「これの買取は帝国が行う。鳳王国の危機を救ってくれた恩もあるしな」

「宰相様に相談いたしましたが?」

「良い、玄関に飾れるぐらいの額は用意する」

「ありがとうございます」

「その方らも散れ、これで終わりじゃ」

 30人程の野次馬は散っていった。

 俺は虎をしまい、御所の応接間に入った。


「工房はどうじゃ。川を堰き止めるとなると市街地より離れてしまうがな」

「十分でございます。将来的には鉄を大増産しなければ改革が進みません。あの川なら数百kWの発電が可能と見ました。周囲に土地の空きがないと困ります」

「電気が無いと鉄はできないのか?」

「量の問題です。量を造ろうと思えば電気が必要です。さらにはアルミニウムを造りたい。数百kWでは、微々たるものですがアルミニウムが造れます」

「そのアルミニウムとやらは何に使うのじゃ」

「幅広い用途がありますが、何年後かには超々ジュラルミンを使って飛行機を造りたい」

「なんじゃ、お前が何を言っているのかさっぱり分からん」

「要するに空を飛ぶゴーレムを造りたいと言っています」(蒼伊)

「空を飛ぶじゃと正気か?」

「日本を覗いていたのなら飛行機ぐらい見たでしょう」

「あれは火薬とかで飛んでいたのであろう。こちらでは無理だ。」

「プロペラ・・・ええい、面倒臭い」


 俺は竜王国に居るときにヒイに作ってやった竹とんぼを出してヒイに渡した。

「飛ばしてごらん」

 ヒイが頷いて手を前後に擦ると竹とんぼが勢いよく飛んだ。

「なぜじゃ、こんなものがなぜ飛ぶのじゃ?」

 天帝様大興奮である。ヒイから飛ばせ方を教わると自分で何回も飛ばしていた。

「手に風を感じる。この部分が風を出しおる」

「その通りで御座います。その斜めになった板状の部分が風を下に送る反動で飛ぶのです」


 次は紙飛行機だ。A4のコピー用紙を出して紙飛行機を折る。なるべくゆっくり飛ぶものだ。

「次はこれに御座います」

 紙飛行機を飛ばす。応接室の端から端までゆっくりと飛んだ。

「今度は横に飛んだ。これはどうしてじゃ?」

「簡単に言うと落ちる力と前に進む力でこの紙飛行機を持ち上げる力を出します。それで飛んでいられるのです」


「そうか分かったぞ。先ほどの竹とんぼをこの紙飛行機の前に付けて、回せばずっと飛んでいられるのじゃな」

「ご明察です」

 さすが天帝様、これだけのことで飛行機の理屈が解るとは天才だ。

 ヒイとミヤに自慢するのはやめてあげてね。

「しかし、まだ何の成果もないうちに予算は降りんぞ」

「ご安心下さい。試作機はポケットマネーで造ります。工房が出来るまで半年、国民に夢を先に見せなければなりません」

「うむ、すまぬな。出来るだけ虎を高く買い取るようにしよう」

「ありがとうございます。つきましては20m×20m位の倉庫が借りたいのですが」

「分かった、後日連絡させる。人は要らぬのか?」

「我従者で大丈夫かとは思いますが、事務局の方でも忙しそうですから、必要な時にはお願いいたします」


 17時

 茜と真白はまだ帰ってこない。相当頼りにされてるようだ。取り敢えず夕食の準備を始めよう。

「今日は何がいいかな?」

「親子丼」(蒼伊)

「スパゲッティ」(ヒイ)

「オムライス」(ミヤ)

「見事に分かれたね。ほかの人のメニューでもいいって人は?」

「じゃあ、親子丼」(ミヤ)

「はい親子丼決定、あと味噌汁と漬物ね」

「「「はーい」」」

 まず、お鍋に素麺用のだしつゆを薄めて砂糖を入れる。玉ねぎ、長ネギ、鶏もも肉を適当な大きさに切って入れる。火が通ったら軽く溶いた卵を半分入れる。白身の色が変わって来たところで火を止める。一人用の専用鍋に一人分を入れて火にかける。温まったところに溶き卵を投入、蓋をして卵が固まりすぎないようにご飯をよそった丼にかける。具や白身、黄身が片寄らない様にするのがコツ。

 卵の硬さはお好みで。

 味噌汁はインスタントなので好きな具が選べるよ。ワカメが人気がない。他のにもワカメが入っているのでワカメだけなのは損した気分になるそうだ。


 みんなが食べ終わる頃、茜と真白が帰ってきて自分の分を作り始める。

「どうだ順調か?」

「はい、ようやく形が見えてきました。」

「こっちはほぼ準備が終わりました。後は叙勲に向けて候補者選びですね。残りは芸術なんかの評価を一定させる学校の設立ですか。これは来年度からですね」


 21時

 皆の風呂が終わり、今日の当番は茜と真白が風呂掃除に掛かる。

「あんた達忘れてないわよね」

「「もちろん」」


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