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第十九話 虎退治

サブタイトルそのままです。

 念話で王城に仲間を呼んだ。来るまでの間、虎と実際に遭遇した者に詳しいことを聞いた。

 虎が出るのは神殿のすぐ手前、道の両側が崖に挟まれ、曲がりくねっているので弓矢で狙いにくい。また狭いので一度に戦えるのは3人くらい。とことんこちらが不利だな。


 皆が来たので先ほどの部屋を貸してもらい、相談する。蒼伊も残ってる。

「鳳の神は、第6代の天帝様です。空を自由に飛べたということです」

 ミヤ、良く知ってたな。

「神殿に行くのは、何か印のようなものを頂くのではないでしょうか」

 となると行かずに済ますことは出来ないか。再三言うがこの世界には神が存在する。


「うちのひいおじいちゃんが田舎で農業してるんだけど、猪が良く出るって罠を仕掛けてたよ」

 蒼伊、ナイスだ。

「どんな罠か知ってる」

「檻みたいので、中にお芋とか入れて、中に猪が入ると扉が閉まるの」

 ショッピングで探してみた。小さい、とてもじゃないが4~5mの虎は入らん。

「そんな大きな罠は売ってないな」

「でも、エサで誘き寄せるとか出来るんじゃないの」(真白)

「それいいね。広い所まで誘き寄せたら、戦えるわ」(茜)

 熊を思い出すと、この子達には虎との接近戦は無理だと思う。虎は熊よりはるかに強い。

 狭い道で俺一人で戦うか?熊のようには弱点を曝してくれないだろう。前足を降ろしていても頭は俺くらいの高さだと思われる。

 ならば、やはり罠が必要だ。相手の動きを抑制する物が。


「では、この依頼は受けることとする。明日の朝から現地調査だ」

 宰相を呼び依頼を受けることを伝えた。手付金5万デム、達成金5万デム合わせて10万デムだ。

 槍を人数分とロープを借りようとしたが、ロープは虎に耐えられるようなのが無かった。

 仕方ない、ロープは日本で買いますか。


 鳳王国調査七日目(転移75日目)

 昨日は、雲浮の方に走って、あと50km位まで来て夜営した。

 8時に出発して雲浮を通過して山に登り始める。11時頃に車で来れる限界に到着。後8km位徒歩で登る。皆の登山服が結構高かった。1時間程歩いて昼食休憩。今日はおにぎりだ。


「蒼伊、付いてきてよかったのか?」

「はい、この後の事を考えるとあなた達の事も知っておきたいですから」

 トイレ休憩を挟みながら、残り1kmまで来た。ちょうど広い場所があったので茜と真白に家の準備をさせる。俺はミヤとヒイを連れて先を探索に行く。ミヤの目とヒイの鼻が探索の範囲を広げてくれる。ハイジはまだ危険なのでおいてきた。

『100m程先に居ます』

 ナビさんが見つけた。

『これ以上の接近は危険です』

 姿を見ておきたかったが仕方がない。


「大丈夫です。私が木の上から」

 ミヤが隣にあった木を登っていく。流石、猫人族、10m程登って指差す。

『視界を共有します』

 ミヤが見ている視界が脳で再生される。2頭いる。でかい、尾を含めれば5m以上は有りそうだ。

『降りて良いよ』

 俺はミヤを降ろすと撤退した。

 野営地から約500m。近い。ここの広場は幅8m、長さが15m位、幅は少し狭いが長さは十分だ。


 家を建てて、結界を張る。相手は夜行性だ。注意せねば。夕食は火を使いたくないのでまた、おにぎりだ。風呂も無しだ。明日の準備を始める。まず防獣ネット2m×20mを5枚繋いで10m×20mにする。6cm角の網目を一つ一つ縛って繋ぐのだ。今度は転落防止ネットを同じく5枚繋ぐ。

 夜中になったので寝る。


 鳳王国調査八日目(転移76日目)

 8時 家を片付けて、罠を準備、まず、防獣ネットを幅いっぱいに広げて、広場の入り口付近に端を固定する。ふもとで取って来た3m程の竹を地面に固定して、それを曲げて地上の錠に懸け、ネットに繋がったロープの先に2kの重りを付けて先端の切り欠きに置く、それを4か所。


 ミヤが木に登って錠に繋がったロープを引くと錠が外れ、重りがネットを引きながら広場の向こうまで跳んでいく。ネットが落ちて来て広場いっぱいに広がる。広場の奥から茜と真白が落下防止ネットを引きながら広場の入り口まで走る。俺は広場の真ん中に居て2つのネットに拘束されていた。ナビさんの計算通りだ。

 再度、罠を準備し直しセットする。本来俺は槍を持って虎に突進する役だ。ハイジは蒼伊の居る出口の近くで護衛だ。


 昼食を食べ。虎を誘き寄せる。皆にサバゲー用の迷彩服を着せる。少しでも生存率を上げておく。

 俺は、出来るだけ虎に近寄り小さく切った鶏肉を広場まで撒いていく広場の中央に丸鶏を4つ置いておく。後は来るまで待つ。


 配置はミヤが広場入り口近くの木の上。ヒイ広場中央、山側の木の上、その下に俺、茜、真白は広場奥で隠れている。皆それぞれに槍を渡してある。茜、真白には虎が動けなかったら殺すように指示してある。ヒイやミヤは体重と力が足りないので虎に近寄るなと指示した。

 約1時間後、ミヤから念話。

『来ました。2頭です』

 広場に入る寸前で警戒しているようだ。盛んに匂いを嗅いでいる。

 やがて安心したのか丸鶏の匂いを嗅ぎ始めた。一頭が食べ始めるともう一頭も食い始めた。


『ミヤ!外せ!!』

 ミヤが錠を外す。ネットが飛ぶ、驚く虎、奥の方へ逃げようとするがネットが落ちてくる。ネットが絡んで倒れる。前足でネットを破ろうとする。ブチブチっと音がして何本かネットが千切られたようだ。そこへ茜と真白が走ってくる。防獣ネットの上に転落防止ネットが重なる。防獣ネットは、猪、鹿用なので破れるかもしれないが転落防止用ネットは10倍は太い。動けば動くほどネットに絡まれる。一頭がネットを潜りながらこっちに来る。失敗だ!


 俺は槍を持って迎え撃つ姿勢を整える。ヒイが何本も矢を当てるが全く怯まない。

 ネットから半分身を出した状態で頭の高さは2mを越える。虎は右前足を大きく上げて、俺目掛けて振り下ろす。左にステップして躱すも次の打撃が来る。早い!熊と比較にならない。もう一度振り上げるが、そのまま停止、タイミングを計っているようだ。

 反射的に槍を顎を目掛けて突き上げる。振り下ろした足に跳ね返された。

 少し離れて唸る虎、もう一頭はネットで殆ど身動きできないので茜と真白が殺した。


「こっちに来ちゃだめだ」

 ミヤがこちらに駆けて来てたので止める。ミヤの力では虎に勝てない。

 虎がミヤに向かおうと頭を回す。”心臓”ナビさんに頼むと虎に突進した。

 槍が深々と刺さる。外したか?虎が動いていたので、心臓を外したらしい。虎がこちらに向く。

 ゴアーと吠えた口に槍を突き込む。虎が大きく首を振り俺は飛ばされる。えっ、ヒイが!

 いつの間にかヒイが木を降り、槍を持って後ろに立ってた。ヒイの後ろまで飛ばされた俺にぶつかって尻もちを付いている。

 そこへ虎が前足を振り下ろした。俺は前足を槍で突いた、同時に茜と真白が左右から突っ込んで心臓を突いた。ヒイは虎の足の下だ。虎は止まったが間に合ったのか?


「ヒイ、大丈夫か!?」

 動かなくなった虎を退けてヒイを助け出す。頭と肩に傷を負ってる。

 再生で傷は治ったが目を覚まさない。俺のせいだ。俺が今まで甘やかして来たから。指示を聞かなくても怒らずにいたから。今日も近寄るなという指示を守らなかった。

 ヒイが目を覚ました。

「ヒイ、どこか痛まないか」

「大丈夫だよ。とっさに気功で盾を作ったんだけど止められなかった」

 それでこれだけで済んだのか。

「近寄るなって言っただろ」

「ごめんなさい」(てへぺろ)

「もう仕方のない奴だな」

 俺はヒイを抱き寄せた。

『それで終わりですか?さっきの反省は何だったんですか?』

 いつも通りナビさんの独り言は消えていくはずだったのだが。

「きちんと教えないとまた怪我しますよ」

「悪いことをしたら怒ってあげないとまたやりますよ」

 茜と真白が呆れている。俺は仕方なくヒイを怒った。


 ネットと虎を次元収納にしまうと休憩させた。その間に俺は神殿に行って安全を確認した。

「やあ、また会ったね」

「また、お前かナータ」

 相変わらず真っ黒な服を着ている。こいつが虎を大きくした犯人か?

「お前が犯人なのか?」

「何のこと。もしかして僕が魔獣化させてると思ってる?」

「そうじゃないのか?」

「とんでもない。僕はなぜ魔獣化が起き出したのかを調べている」

「起き出した?前は起きてなかったのか?」

「そうさ、僕の国では大変なことになってる。だから最近起き出したここら辺を調べてる」

「お前も知っているかは知らないが、通常生物と魔物が合体するらしいぞ」

「うん、それは知ってる。問題はなぜ合体し始めたかさ」

「それが分かったら俺にも教えてくれるか?」

「もちろん、君の様に魔獣化した動物を平気で飼える人は貴重だからね。ここでも何も分からなかったから、もう行くよ。じゃあね」

 また消えた。瞬間移動が出来るみたいだな。俺は戻った。



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