第十三話 天都
ようやく到着しました。
信帝国の街には壁が無い。千年も戦争が無いので防御を必要としていない。もちろんそれは、天都も同じだ。ただ主街道には、ただ門だけが立っている。沖縄の守礼の門のでかい奴がただ立ってる。そこを潜ったのだ。
王都を出てから十四日目に到着した。カクタスが言うには、新記録だそうだ。今までだと1か月半は掛かるそうだ。
陸路が3倍、海路が倍の速さで進み、宿を気にせず。進めるだけ進む。なんてことは普通出来ない。
これも経費を節約する為なのだが、喜んでいるみたいなどで触らないでおこう。
「帝城の近くまで、このまま行ってくれ。竜王府がある」
竜王府は、竜王領と信帝国の間の業務を円滑にするためにある役所で竜王が運営している。リョウカ様と俺が来たことを天帝様に奏上し、面接のスケジュール調整を行ってくれる。二人とも天帝様側からの案件なので時間はあまり掛からないであろう。こちらの案件であると賄賂を出さない限り、まともに取り合っても貰えないそうだ。
帝城は流石に城壁で囲まれている。城壁に沿った道を右回りに回る。一キロ位のところにそれはあった。三階建ての古い建物だ。
カクタスが先触れに行く。すぐに職員が出てきて出迎えてくれる。早い到着に驚いているようだ。
「半月前に王都を出ると聞いたのですが早くなったのでしょうか?」
この府の責任者らしい男がリョウカ様に聞いている。
「その通り半月前に王都を出たのじゃ。早く着くと申したであろうが」
「それはそうですが、いくら何でも早過ぎます。最低でも一月は掛かると踏んでました」
まだ宿の手配などがされていないということだ。
それは仕方ないので早急に手配するように頼んだ。
「帝城の方は、まだ昼前なので奏上できます」
「おや、連絡より一人多いようですね」
「おお、護衛を一人雇った。この子じゃ」
ミヤを前に出す。
「護衛?子供ではないですか」
「嘘ではない。そうじゃ、そこの衛士よ。この子を捕まえてみよ」
入り口を守っていた衛士は、ミヤの両肩を捕えようとした。
いつの間にか転ばされて右腕を極められている。
「いててて、まいった」
衛士は首を捻りつつ元の位置に戻った。責任者は信じられんと言った顔でミヤを見ている。
「もう一人の子供も護衛ですか?」
「うむ、この子は弓矢が得意で、ヒメジでは6人の盗賊を退治した。それにこのオオカミは、この子の従魔獣じゃ」
ハイジを抱いた、ヒイが前に出される。
「この子犬がオオカミですか?」
「ハイジ、大きくなって」
ヒイが指示するとハイジは牛並みに大きくなった。魔石を食べたからなのかさらに大きくなれるようになった。
「ひいいいっ」
責任者は腰を抜かして尻もちをついた。
「わかりましたから小さくなってください」
ハイジが小さくなるとリョウカ様は得意満面である。
「この子の弓の腕も見るか?」
「もうよろしいです。分かりました」
俺の方に向き直って挨拶してきた。
「どうも、挨拶が遅れました。府長のアルベルトです」
「浅野恭平です。よろしくお願いいたします」
「宿泊先が決まるまで中でお待ちください」
何か騒がしいので周りを見ると100人位の野次馬が騒いでいた。
「この国の人達は娯楽が少ないのか、何かあるとすぐに野次馬が集まってくるのです。ちょっと騒ぎ過ぎましたね」
俺達は中の応接間に通された。
30分も経つと子供たちが飽きて来て、俺におねだりし始める。
「天都を見学したいです」
「ちょっと散歩に行っていいですか?」
「そうじゃ、退屈じゃ、外に遊びに行くぞ」
リョウカ様、子供と一緒に何言ってんの。
「もうすぐお昼御飯だからね。静かに待ってなさい」
ここまで来たんだから、もう俺が用意しなくてもいいんだよな。
「恭平、今日の昼はなんだ。なぜ用意しない」
「ふふふ、俺の契約は天都に着くまで。天都に着いた以上、俺の任務は終わったんですよ」
「なにぃ、それでは、この後近衛に就職するカクタスを除いて、護衛は任務終了なのかぁ?」
「私たち首なんですかぁ!!?」
「まだ、宿泊先での護衛があるからね」
「それ見ろ、まだ任務は続くのだぁ。飯を作れぇ」
ああ、細かいこと竜王府と詰めなきゃな。応接室を出て事務室にいた職員に聞く。
「昼食はどうしたらよろしいですか?」
「ご自由にどうぞ。必要でしたらお店から取り寄せますが?」
「宿泊先が決まってもですか?」
「朝夕のホテルの食事代はこちらがお持ちします。昼食はお客様のご負担となります」
「護衛の業務は、どうしますか?」
「できればこのまま続けて頂きたい。費用は月単位で月頭に支払います」
護衛の日当はまあまあだったのでOKしておいた。
ハイジはヒイの武器扱いで日当は出ない。
「リョウカ様、と言うことです」
「どういうことじゃ、よく分からなかったが?」
「つまり、昼食代はリョウカ様の自腹と言うことになります」
「よし、私とアンナの分はアルベルトに請求するが良い」
結局は俺が面倒みるのか。
「えっ、俺の分は・・・?」
「カクタスは、護衛の日当出るから自分で払うんだな」
「よし、今日は俺のおごりです」
そう言っておにぎりを出す。決して海路が順調で余ったからではないぞ。
「なに、またおにぎりなのか」
おにぎりと漬物とお茶は最強のコンボなのだ。
在庫整理にほくそ笑む俺だった。
職員からはここに居てくれと言うことで昼食後ものんびり応接室でだべっている。
14時頃 ようやく宿泊場所が決まったようだ。チェックインが15時からなので、まだ待たないとだ。
15時 ホテルに出発、俺の車を使えということで助手席に道案内を乗せてホテルにいく。
ホテルの名は黄河ホテル。何か濁っていそうだ。天都で五本の指で数えられる高級ホテルだ。
リョウカ様の部屋はスイートで3部屋あるぞ、主寝室にリョウカ様、後三人が従者部屋かと思ったらリョウカ様はミヤと寝るらしい。無駄にでかいベットだから構わないだろうね。ちなみにハイジは応接室だ。
俺とカクタスがツインって言うのもなんか情けない。日本で地方に出張行ったときにシングルが空いてなくて、同僚とツインに泊らされた時以来だ。その時のビジネスホテルに比べれば、ずっと立派なんだけどね。
18時 俺達は夕食までリョウカ様の部屋で過ごしたよ。夕食は当然のようにコース料理だ。洋食ではないので無駄にナイフとフォーク・スプーンが出てないので子供達でも安心だ。中華のような懐石料理のような、それが順番に出てくるので子供達には不評のようだ。
「なんで一回で出てこないんですか?」とか「次まだぁ?」とか言い始めちゃう。旅の間は食事に時間が取れなかったから待てないのも仕方がない。
リョウカ様に次から俺達はもう一方の安いほうのレストラン(ビュッフェスタイル)に行くと伝えたら”私も”と言っていた。アンナさんは残念そうだったよ。
20時 女性陣がシャワーを浴びるので、自分たちの部屋に戻った。このホテルにはバスタブは無い。竜王国にはあったのに。
天都 2日目(転移62日目)
6時に起きて、着替えて、顔洗って、食事を誘いにリョウカ様の部屋に行く。ノックをするとヒイが出てきた。まだリョウカ様の着替えが済んでないので応接間で待つ。着替え終わるとレストランを覗く、高いレストランはおかゆ、ビュッフェの方はいろいろ選べる。当然ビュッフェの方だ。
久々に洋食が食べたかったので、パン、コーヒー、フルーツ。ヒイとミヤが俺の真似をしようとしたが、コーヒーを一口飲ませて諦めさせた。結果、パン、ジュース、プリンだ。食べ終った後、まだプリンを食べたそうにしていたので、もう一度取りに行かせた。リョウカ様のテーブルにはプリンの空が5つあったことは見なかったことにしておこう。ちなみにアンナさんはショートケーキを2つ食べてた。
次は天帝様と面会です。




