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第十話 海の魔物

  8時 出発 あいにくの雨だ。風はないし、視界はある程度確保できるので、島伝いに西に向かう。


 17時 ようやく半島の西端珍島に辿り着く。今日は一日キャビンの中だったので、体が硬くなったようだ。 浜に上陸して家を建てる。朝鮮半島、及び中央大陸では漢字が使用されている。


 行程8日目(転移55日目)

 また雨だ。島の隙間を縫うように北上する。瑞山の近くまで来た。明日はうまくいけば朝鮮半島最西端の一つ小青島から中央大陸の煙台に行ける。

 水が少ないので補給をする。あまりいい水が無かったが仕方ない。お風呂に回そう。


 行程9日目(転移56日目)

 雨がやまない 直線では航路を外れてしまう可能性があるため仁川の方へ大きく迂回する。

 17時 ようやく小青島に着いた。ここは山が多く、中央大陸への道中の補給と案内の人員がわずかにいるだけだった。

 雨はやんでいた、西が明るいので明日は晴れるだろう。

 海域の情報を聞くと中央大陸との中間あたりで魔物が出るという。大連に回ったほうが安全だという。


 さあどうするか悩んでいるとリョウカ様が晴れやかに言う。

「人々が難儀しているなら、それを解決するのが我らの役目だ。いくぞ恭平」

 これって、雨で外に出られなかったから、憂さ晴らしだよね。

「はい」

 不安要素は伝えてあるからこう言うしかないよね。


 風呂が終わった後、カクタスを呼び、対策について話し合う。

 船の上では足場が悪い、移動するにも限定的だ。となれば、武器を長いものに変えたほうが良い。

 薙刀かバルディシュのような長柄があればいいのだが、今は、手に入らない。

 鞘と刀を連結する方法を以前から考えていたので材料を買って刀に取り付ける。鞘が割れないように補強し、動かないように金属バンドで継ぎ手を固定する。

 継ぎ手は、差し込んで90度回すと固定される。


 二人で家の外に出て振り回してみる。なかなか良い。獣や人を斬るのには強度が心配だが魔物ならば抵抗はほとんどないので問題ない。

 ヒイとミヤの二人が興味津々でこちらを見てるが、明日は彼女たちの出番はないだろう。


 行程10日目(転移57日目)

 8時 中央大陸はほぼ200キロ離れているので見えないかと思ったが、かすかに山が見える。

 昨日の雨で埃が流れたのだろう。その方向目指してひた走る。


 約一時間後、それは現れた。大きい王都周辺で見た奴の倍はある。それが10頭以上いる。海に出入りしているので総数がつかめない。

『海の中に魔力溜まりがあったものと思われますが、現在、感知できません』

 舵をミヤに任せて、俺がバウデッキ、カクタスがスタンデッキに陣取る。

「魔力溜まりが消失している。このまま放っておくと人を襲いだすぞ」

「すべて討伐するということだな」


 正面から来た奴を唐竹割にする。消えて魔石が転がる。

 ミヤにスピードを落とすように手信号を出す。魔物が追いつきやすくするためだ。

 ふと見るとヒイが窓を開けて魔物を射ようとしている。俺は怒鳴る。

「窓を閉めろ!!ヒイ!!矢は効かない」

 慌てて窓を閉めるヒイ。そこへ魔物が突っ込んだ。

 ふう、危なかった。言ってあったのに。


 また、右前から来たのを切り上げる。続けて左後ろから来たのを袈裟切りにする。

 カクタスも順調に退治できてるようだ。

 前方から5頭が襲ってきた。右2頭を斬りデッキに伏せた。魔物は宙返りしてまた襲ってきた。

 転がりながら、なんとか一頭を斬り、素早く立ち上がる。旋回して3頭になってる。合流したか?

 2頭は倒したが1頭に魔力を奪われる。すぐに避けたのでまだ動ける。

 俺から魔力を奪った奴がもう一度攻撃してくる。駄目だ、ふらつく。


 それより少し前。キャビン内では。

 恭平がデッキに転がりながら1頭を斬ったのを見たミヤが叫ぶ。

「恭平様が死んじゃう!!」

『私行く、ヒイ扉、開けて』

「お願い、恭平様を助けて」

 扉が開くとハイジが大きくなりながら、すっ飛んで行く。


 俺の左後ろからハイジが飛び出して魔物に噛み付く。魔物は消え去った。

 ハイジからガリっという音がした。

「魔石を食ったのか」

 魔物はこれが最後だったようだ。

「ありがとうハイジ」

 頭をなでてやると得意げに鳴いた。

「オン(まかせろ)」


 後ろからカクタスが来た。

「俺のところは7頭だった。後ろはキャビンが障害物になってくれたので楽だった」

「前は、9頭だ」


 俺はカクタスに舵を任せて、バウバースで寝っ転がって魔力の回復に努めた。

 ヒイとミヤが泣きそうな顔をしている。

「ちょっと寝たら元に戻るから心配しないで」

 戦いでダメージを受けたのは初めてだからな。心配するなと言うのが無理か。


『剣術の達人との魂の回路が形成されました』

『どういうこと!!』

『拙者 井倉士郎と申す。こうやって語り合うのは初めてでござるな』

『初めまして、浅野恭平です』

『お主に呼ばれて剣術の腕を貸せるのは嬉しかった。ちょっと、拙者の話を聞いて欲しいのでござる』


 彼は、幕末の頃、小藩の足軽の家系に生まれたそうだ。子供のころから剣の修行をして藩随一の剣客となったそうだ。

 風雲急を告げる京都に行って腕を試したかったそうだが、事なかれ主義の藩はゆるしてくれなかった。

 長男であるため家を出るわけにも行かず。悶々と暮らしていたそうだ。

 戦争が藩を巻き込むようになると維新軍は、兵を徴集し、彼も斬り込み隊として出陣することになる。当時の銃は先込め銃で一発撃つと弾込めでしばらく撃てなかったので、その間に斬り込むのである。

 彼は幾つかの戦闘で手柄を立てたが、ある時、まだ相手が撃ってないのに斬り込み隊の突撃が命じられた。指揮官に命令の取り消しを具申したが無視され、更には味方の銃に狙われたため、仕方なく突撃、当然のように彼の体をいくつかの弾丸が貫き、彼は死んだ。


 無念だったそうだ。指揮官の横暴よりも小さな家を守るため、志を諦めた自分を恨んだ。

 だから、魂だけとはいえ自分が認められることが嬉しかった。

 彼の剣術は完全に恭平の物となった。

『時々、話の相手をしてくれると嬉しい』

『もちろんだ』


 12時 左に威海の街が見えている。昼食は安定のおにぎりだ。

「このまま煙台まで行こう。煙台から天都までは、主街道が通っているはずだ」

 カクタスと舵を変わって目的地を指し示す。

「主街道って何ですか?」

「広くてきれいな道だよ」

「あとどれくらいかかるのですか?」

「煙台から天都まで1200キロくらいだから、うまくいけば車で4日かな」

 ミヤとヒイはこれからの行程を知りたがった。


「天都に着いたら何をするんですか?」

「まずリョウカ様を天帝様に渡して、アンナさんはリョウカ様に付いて行く。カクタスは兵隊になって武者修行だ」

「俺は天帝様に会って、ここへ連れてきた理由を聞いてこれからのことを考える予定だ」

「帰れるのなら日本に帰るのですか?」

「君達をそのままにして帰ることは無いよ。帰るなら君達がお嫁さんに行くとか、俺の手を離れてからだな」

「私は、お嫁になんて行きません。ずっと恭平様と居たいです」

「私もです。ずっとおそばに置いて下さい。」

「ありがとう。でも今から将来を縛らなくても良いんだよ。」

 こんなこと言ってても5,6年たったら、男作って去っていくんだろうな。

『だから去りませんって、絶対』

 独り言の癖がついたナビさんであった。





中国の地名は変換できない字を適当に似た漢字にしています。

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