38話 ハイト(2)
――ギオラ視点――
「〈猫獣化〉」
「〈刻魔・竜〉」
ニャンとモコは、得意の間合いを取るために前へ出た。
何故か、ニャンに猫耳と尻尾が生えている。
これは、二重の意味で触れて良いのか?
その耳と尻尾を触ってみたいし、どうしてそうなったのか聞きたい。
モコの刻印魔法は久しぶりに見たな。
これは身体に刻まれた魔物の力を扱える、みたいな感じだった気がする。
2年前は精神の制御が覚束なかったが、今の様子を見る限り大丈夫そうだ。
「ニャン! しっぽ!」
「こら! ウレレ、声に出してはいけません」
「すごいです! 本当に生えてます!」
「ドレミまで……ほら、ニャンの顔が真っ赤になってるから」
「うるせえ! あたし別に恥ずかしくなんてにゃ――ない!」
「「……」」
「やめろ、その顔!」
獣人としての魅力を出してきたニャン……私には及ばないが、なかなか悪くない。
もう少し成長したら、私の良顔面枠が危ぶまれるとこだった。
「ロコちゃん、お願いします」
「はぁ、気が引けるけど――〈業火渦〉」
「なっ⁉ 何で、ドレミに魔法を⁉」
「主様!」
ニャンに注目している間に、ドレミの方もおかしなことになっていた。
なんと、ロコがドレミに向かって魔法を放ったのだ。
しかもその魔法は上級だ。
「アニマーレ」を襲撃した魔法と同等以上の破壊力を持っている。
2年前のロコは中級までの魔法しか、詠唱省略出来なかったのに今では上級まで使えている。
アハロにしてもそうだったが、この双子も劇的に成長しているようだ。
って、そんなことよりもドレミだ。
いくら、吸血鬼の特性があるとはいえ、この威力では灰になってしまう。
今すぐに回復魔法を――
「すみません、心配をかけてしまって。でも、大丈夫です」
「本当? 血がすごいけど」
「はい、私がお願いしましたから。ロコちゃん、ありがとうございました」
「これっきりよ。ロコだって、知人を傷つけるのは流石に滅入るんだから」
「ふふ、ありがとうございます」
「何よ、その顔」
「何でもありません」
驚いた。
ドレミの傷の再生速度、その耐久性、そして……あのロコが私たち以外と連携を取っている。
いや、確かにさっきもその予兆はあったのだが、こんな光景が見れるとは思わなかった。
そして心做しか、ドレミと親しげだ。
妹に親しい友人が出来たような……これが嫉妬なのだろうか。
嬉しい気持ちと寂しい気持ちで、心が複雑だ。
「――構築完了。私と戦ってください〈血種・練習曲〉」
「え、何そのかっこいいの!」
周囲に飛び散った血が集まり、球体になったかと思うと、手足と頭が生えてきた。
その形は人形と呼ぶには不格好だが、人の形を成している。
正義の味方なのに敵みたいな感じで、とてもかっこいい。
伝心板に載っていた2つの依頼を熟したときに、伝承で残っていたゴーレム使いの話をドレミにしていた。
今、ドレミが生成した人形はまさに伝承の通りだ。
まさかそれを,ドレミが実現させるとは想像すらしていなかった。
「これはですね、ギオラ先輩。ドレミさんの血を凝縮して作られた種を核とし――というわけなのです」
「わお、すごい早口。そして、すごい分かりやすい」
「もう、何でロコちゃんが説明しちゃうんですか」
「ギオラ先輩の後輩ですから」
「何ですか、その理由は……」
「それでは、あちらの2人はロコとドレミさんとファザーさんで引き受けますので、ギオラ先輩は直接ハイトの元へと突っ込んでください。モコ! 分かっていますね!}
「ばっちりっす。ニャンさん、自分に合わせて欲しいっす」
「おう!」
流石は双子、意思疎通の早さが尋常じゃない。
味方で頼もしい限りだ。
「行くっすよ」
ロコの指示を受けたモコが、ハイトの部下の前へ飛び込んだ。
その後ろには張り付くように、ニャンが追っている。
私でも目で追うのがやっとの速さで動いているため、モコは軽々とハイトの目の前へ躍り出た。
その距離は目と鼻の先と言った感じだ。
「へぇ、ギルド協会の情報を上回った動きをするんだね」
「ハイトさん、ごめんなさいっす。嘘ついてたっす」
「良いんだよ。情報は更新するものだ」
「いいや、そっちじゃないっす。自分、貴方のこと嫌いってことっす。少しだけお世話になってたんで、これだけ伝えておくっすね」
「「「「守」」」」
「おっと! それじゃあ、ニャンさん合わせるっすよ」
排除の対象を認知した部下たちが、ニャンとモコへ襲いかかる。
しかし、部下たちの動きは即座に止まった。
対象であるニャンとロコは、もう既に視界の外へと逃れていたからだ。
「そっちに運ぶっすよ」
「あたしはあっちだな」
部下たちの視界から外れていた、ニャンとロコは振り向いた部下たちの背後に回っていた。
そして、片手で部下たちの服を掴むと、こちらへ向けて放り投げた。
軽々と投げているが、体格差は2倍以上もある。
流石は、獣人と使族だ。
こうして、いとも簡単に部下たちとハイトを引き離すことに成功した。
これで、ハイトを倒すことだけに集中出来る。
「ギオラパイセン……ハイトさん、自分の動きに合わして動いてたっすよ……大丈夫だと思うっすけど、警戒は解かない方が良いっす……」
ハイトの方へ向かう際、モコが耳元で囁いた。
大胆に見えて、慎重なところは変わっていないな。
こういうところは、ニャンと似ている気がする。
せっかくの後輩からの伝言だが、それ杞憂だ。
私に油断はない。
あるとしたら、絶対的な自信だけだ。
何故か、サクサク書けたので投稿できちゃいました。
ハイト戦はもっとさっくり終わらせて、協会乱戦を終わらせたかったんですが10月中に終わらなそうですね。
終わりそうだったら、全体の修正をしたかったんですが、多分無理です。
では、次もよろしくおねがいします。




