32話 ギオラの顔面(2)
――ギオラ視点――
「そんなの知ってたよ」
アハロが私を好きなことなんて、ずっと前から知っている。
むしろ、気づかない方がおかしい。
「な、な、な……」
「私とアハロは親友なんだから、当たり前でしょ。私だって、アハロが好きだし」
「え⁉ え、え……」
「それにロコやモコだって好きだよ。ちょっと会えない時間が続いちゃったけど、こうしてまた会えた。私にとっての大事な時間を過ごした親友たちさ」
私は2年前に、王都を襲撃したドラゴンから呪いを受けた。
まだ何も知らない私に、呪いの恐怖は重すぎた。
常に死と隣り合わせの状況で、心の中は不安と絶望でめちゃくちゃだった。
でも、そんな時さえ、ふと目を閉じれば思い出されるのは学院での日々だった。
幼い頃から、本心で話してくれる友達がいなかった私に初めて出来た存在。
口煩くも私のことを思ってくれるアハロ、そして私を慕ってくれるロコとモコ。
気力とは生きようとする力。
私の気力の源は仲間と思い出だった。
「仲間? 親友? 笑わせるな! じゃあ、なんであの時私を一緒に連れて行かなかった? 仲間なんだろ? なのに、なんで肝心な所で頼ってくれなかったんだ!」
「あの時……王都で女の子を助けた時かな」
「そうだ。お前は無謀にも1人でドラゴンと戦った。そして、お前は……私が一緒にいればあんな思いはさせなかった」
「それは違うよ、アハロ。私はこの呪いを受ける運命だったんだ。覆りようのない結果なんだよ」
「なんで……なんでお前は私を責めない? 助けに来なかった私を、そして何もしなかったこの国を! 最初から眼中になかったってことなんだろ? こんな私ではお前の隣には立てないのか……」
「だから、違うんだよ」
「何が違うと言うんだ!」
「一旦落ち着こうか。アハロは昔から思い込みが激しいからね」
「馬鹿っ! 顔を近づけて何を⁉」
「それ!」
静まり返っていた「アマニーレ」に、ドンっという鈍い音が響いた。
そう、私はアハロに頭突きをしたのだ。
アハロの頭の中は、意外と詰まっているようであまり良い音がしなかった。
ともあれ、これで落ち着いただろう。
「どう? 私の頭突きは」
「痛い……」
「でしょでしょ」
「おかしい……私の身体は頭を含め、最大限に強化されているはず。なのに、痛みを感じるなんて」
先程見せた〈英雄の光〉は、ただのハッタリではない。
もちろん、自慢の顔を見せつける必要性もない。
〈英雄の光〉とは私が本来持っていた力。
そしてその力は、ドラゴンの呪いによって覚醒したのだ。
死の淵で得た火事場のクソ力と言った所だろう。
単純に、駆けっこで負けないような脚力が付いたり、腕相撲大会で優勝できるほどの腕力が得られたりする。
「落ち着いたかな。それじゃあ、よく聞いて」
「あ、ああ」
「私は顔が良い。それはもう、とてつもなく」
「知ってる」
「良い返事だ。で、ここからが私の答え。私は何があっても仲間を見捨てない。それが私に出来る恩返しだから」
「それじゃあ、何の答えにもなっていない」
「いいや、私が答えと言ったらこれは答えだよ。私は私だけのものだ。だから、私は一方的に皆を守る。頼ってくれなんて、聞いてやるもんか」
「な――」
「文句があるなら、私を正面から倒してみな。あ、後でニャンたちに謝っておきなよ。それじゃあ、チクッとするから歯を食いしばってね――〈英雄の拳〉」
会話中に突然の、右ストレート。
私の放った完璧な不意打が直撃し、アハロはあえなく撃沈した。
「えっと、これはどう使うんだっけ。あ、なんか芽が出てきた」
白目を向いているアハロへ、ドレミから貰った〈束縛種〉を投げる。
使い方を詳しく聞いていなかったため、適当に水魔法で湿らせてみたが正解だったようで、種が割れ、芽がスクスクと伸び始めた。
アハロの身体へ巻き付くように芽が伸びているから、窮屈そうだ。
身体の凹凸がハッキリしているからね。
「少しくらい触ってみても良いかな。ツン、ツンツン、ツ――誰だ⁉」
どこかの扉が開く音が聞こえた。
非常にまずいぞ。
こんな状態の娘を物色しているなんて、どう考えても現行犯だ。
「ギオリャー!」
「って、何だ。フォンか」
気配の正体は、ニャンの妹であるフォンだった。
笑顔を撒き散らしながら、こちらに駆け寄って来ている。
「そんなに慌ててどうしたの?」
「ウレレ! 起きた!」
「え?」
自分でもらしくないと思うほど、嬉しかった。
だから、気がつくとギルドハウスの扉をぶち破っていた。
よく考えたら、本気のショートヘアー&謎発光状態のままだったのだ。
「ギオリャ、はえー!」
「あはは、後でちゃんと修理するから皆には内緒ね」
「あい!」
深く息を吸い、ゆっくりと吐く。
〈英雄の光〉を解除するためには、心を落ち着ける必要があるからだ。
そして、深呼吸と同時に髪の長さをもとに戻して置く。
落ち着いた状態で、ウレレの眠っていた部屋へと入る。
ノックは必要だろうかと悩んだが、気にせずにそのまま進む。
「おはよう、ウレレ」
「おはよ〜」
だらけた様子で、伸びをするウレレ。
私たちの心配なんてお構いなしに、鼻をほじり始めた。
だけど、それでいい。
「ありがとう。ウレレ」
ウレレが起きました。
ウレレ視点も書きたいんですが、なかなか場面がないです。
次の話は、好きな小説を見てから書こうと思います。
それでは、次もよろしくおねがいします。




