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31話 練習曲(2)

――ドレミ視点――

 〈血種・練習曲〉は私の意志に従い動く。

 細かい指示を出すことも出来るが、それでは私の動きが鈍くなってしまうため、2つの大まかな作戦を元に自動で戦ってもらう。

 作戦名はガンガン攻めるタイプの攻撃モードと、命を大切にするタイプの防御モードだ。

 どこかで聞いてことのある作戦名だが、気の所為だろう。


「ま、まずは攻撃モード! お願いします」


 私の指示に従い、〈血種・練習曲〉……(長いのでこれからは練くんと呼ぼう)が動き始めた。


 練くんの見た目は、デッサン人形に近いだろうか。

 ただ、その大きさは2メートルほどはあり、夜中に出会ったらびっくりするはずだ。


「何だこれ、気持わりぃな」


 彼女の最大の武器は魔法。

 その威力は凄まじく、発動も早い。

 だけど、その攻撃は型にはまっている。

 ギオラさんの魔法はもっと自由で、もっと完全だった。

 そこに私の勝機がある。


「〈火炎渦()〉」


 先程と同じように、灼熱の炎が練くんを包んだ。

 しかし、練くんは気にも留めず進撃を続ける。


 この通り、練くんに魔法は効かない。

 というのは建前で、実際には部位欠損の嵐だ。


 この世界に来てから、1番印象に残っているのは魔法の破壊力だった。

「アニマーレ」を襲った魔法やギオラさんの魔法など、前世では考えられない力を持っている。

 そんな人たちを相手にする以上、私も普通では駄目だと思った。

 そこで、練くんには特殊なギミックを用意したのだ。


 名付けて、「トカゲの尻尾切り、永遠に続ければ死なない説」。

 昨日の今日で思いついたため検証は出来なかったが、この様子を見るにこの説は立証された。


 このギミックは一定のダメージを追うと、被害を最小限にするために欠損部位を切り離すというものだ。

 それだけなら、何の変哲もない自傷人形だ。

 しかし、私の血を圧縮した疑似心臓を種としているため、再生速度が私と同等の速さとなっている。

 つまり、種を壊されなければ壊れることのない無敵の兵隊となるのだ。


「嘘だろ? 止まれよ木偶が!」


 必死に抵抗しているが、練くんの種に攻撃は届いていない。

 どんな攻撃に対しても、種に届く前に切り離しては再生をしているため、切り離した樹皮による無数の壁が生じている。

 思っていた防ぎ方とは違ったが、耐久性をなくしたおかげで謎の耐久性が生まれていた。


「練くん、火炎放射!」

「はぁ? そんなの出来るのかよ⁉」

「あ……間違えました。〈血雨放射〉です!」

「うわ、血を飛ばすなよ――〈障壁()〉〈障壁()〉〈防壁()〉」


 何故、練くんを作ってまで〈血雨〉なのかと言うと、思いつかなかったからだ。

 最近気づいたのだが、私は攻撃手段に関してのレパートリーが少ない。

 平和な人生を過ごしてきた私にとっての戦闘経験と言えば、幼い頃の水鉄砲くらいだ。

 だから血をかける、発射するくらいの攻撃手段しか思い浮かばなかった。


 しかし、意外と優秀な必殺技なのかもしれない。

 その証拠に、練くんの腕から高圧洗浄機並の勢いで放出されている私の血は、彼女の前に出現した魔法のバリアと拮抗してる。


 状況は整った。

 今、この瞬間を私は逃さない。


 彼女の視線、意識は完全に練くんに集中している。

 ついに、私の考えうる最大の勝機となった。


「捕まえました!」

「お前、どこから⁉ てか触んな、離せ!」


 私の決め手は、抱きつくこと。

 私にしか出来ない絶対の技。


「魔法は駄目ですよ」

「黙れ、すぐに粉々にしてやる」

「そんなことをしたら、私の血を浴びることになります」

「それがどうした?」

「私の血は触れただけで、貧血を起こすほど体調が悪くなりますよ。嘘だと思うのなら、構いませんが」

「くっ……」


 ギオラさんと初めて会った時、ギオラさんは何故か私の胸を揉んでいた。

 本人は心音を聞いていただけと言っていたが、明らかに揉んでいた。

 ただ、その時に私は違和感を感じたのだ。

 手で触れられている感触ではないと。

 後々、話を伺ってみると反射的に全身へ魔法の障壁を張っているのだと教えてくれた。


 だから、今の攻撃をギオラさんにしても意味がないだろう。

 でも、彼女になら通用してしまう。


 何故なら彼女の魔法は視覚で捉えて、判断をしてから発動するからだ。

 どちらかと言えば、通常の魔法というはこちらの方で、ギオラさんが異常なのかもしれない。


 つまり、彼女が私を認識する前に、彼女へ触れることの出来る有効範囲内に入り込めれば勝てるチャンスが生まれる。

 これが私が考えた最大の勝機だ。


「で、どうするんだ? ロコのことを殺すのか?」

「いえ、そんなことはしません」

「はぁ? 舐めてんのか?」

「その……私、自分で血を出すことが出来ないので……」


 言葉の通り、私は自分の意志で血液を放出することが出来ない。

 〈血雨〉は切り傷などで傷口が出来たときにか使えないし、そもそも〈血液操作〉は体外の血液を操作する技で〈血液作成〉は体内の血液を作成する技なのだ。


「お前……」

「あれ? 練くんが倒れてしまいました」


 血を放出したままだった練くんが、突然体勢を崩した。

 しかも、再生が完全に止まり、足元から徐々に朽ち始めている。


「そりゃ、あれだけ血を吐いてたら倒れるだろ。よく分からないけど、燃料切れってことだ」


 彼女の言うことは正しいかもしれない。

 練くんの再生能力は私の血の特性だ。

 そして、練くんが〈血液作成〉を使えるはずもなく、自身で血液を供給することは出来ない。

 要するに、素材とした血液が無くなれば自然と再生能力も消えてしまう。


「で、どうすんだよ」

「……」

「お前、後のことを何も考えてなかったのかよ。役目を全うするんじゃなかったっけ?」

「ち……」

「ち?」

「違います! 私の役目は防衛ですから! 貴方を拘束すれば勝ちなんです! これが役目なんです!」


 ムキになんて、なっていない。

 本当のことを言っているだけだ。

 そうだ、最初から私は守るために戦っているんだから。


「ああ、アホらしい。分かった。ロコの負けで良いから、早く離せよ」

「駄目です」

「はぁ?」

「離したら、もう2度と勝てません」

「だからもう、負けでいいって。もう2度と戦わねえよ。ロコだって戦う相手は選ぶに決まってんだろ」

「本当ですか?」

「本当。本当」

「嘘ついたら針千本ですよ?」

「分かったから早く離せよ、この胸デカ女」

「あああ、酷いです。私、傷つきました。そんなこと言うんだったら、離しませんからね」

「くっそ。ふざけんな、胸デカ女〜!」





















ちょっと迷ってます。

このまま、ドレミの話かギオラに行くか。

もしかしたら、ドレミとニャンの話が先かもしれません。

それではまた、ヨロシクオネガイシマス。

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