27話 ギオラの顔面
――アハロ視点――
私だって分かっている。
こんなことをしていても、ギオラを独り占めすることは出来ない。
でも、だからこそ私は力でギオラを従える道を選んだのだ。
ギオラの隣に立つんじゃない。
私の隣に立たせるために。
「お前から仲間なんて単語が出るとはな」
「何を言ってるんだか。私からしたら、アハロだって仲間だよ」
「仲間? 仲間だから何なんだ? 優しく守ってくれるのか? 将来は? 死ぬまで私と一緒に――ええい! もういい。お前と話していると気が狂う。ギルド協会からの指令により、ギオラ・カヴァリエ。お前を拘束する。抵抗するなら容赦はしない」
「おお、怖い怖い。もちろん、抵抗はするよ。だって、私顔が良いからね」
「だから、意味が分からないんだよ!」
全身のリミッターを解除し、第六感を解放する。
これは私が、先生から教えてもらった体技だ。
制限解除した私の攻撃は全てが必殺、そして第六感を解放した私は全ての攻撃を感知できる。
なんの因果か、ギオラと決別したあの日、あの場所で先生と出会い、教えを請うことが出来たのだ。
厳しい指導に耐えた私は、5つの体技と2つの具現化魔法を会得した。
そして、国営ギルド最強の地位まで上り詰めたのだ。
今の私がギオラに負ける訳がない。
「せめて、私の手で殺してやる」
「拘束するって、話じゃなかった?」
「うるさい! 抵抗するなら殺すだけだ」
「んな。理不尽な」
まずは1手、相手の懐に潜り込む。
流石のギオラでも、近接格闘に持ち込めば不利になるはずだ。
リミッターを解除した状態であれば、ただ踏み込んだだけでも瞬間移動のように動くことが出来る。
体を倒すが如く、ギオラの目の前へ移動した。
「はや――」
やはり、私の動きに目が追いついていない。
辛うじて、体が反応しているという点は褒めていいだろう。
そして2手、ギオラの腹部に触れる。
「〈生波動〉」
全身の力という力を波のように揺らめかせ、ギオラへと流し込んだ。
その痛みは受け流せず、その苦しみは永遠のように続く。
すべての生き物の命を無に帰すために作られた、絶技だ。
私にとって初めての友達。
そして、初めて愛した人。
「ギオラちゃん……私だけの……」
「ん?」
「な、何故生きている⁉」
「いや、私に聞かれても」
おかしい。
私の攻撃は、確実にギオラに直撃したはずだ。
現に私は、ギオラに触れたままだ。
この状態で技を外す訳がないし、防ぐ手段もない。
なのに、何故こいつは死んでいないのだ。
「あの、いい加減お腹擦るのやめてもらっていい? こんなに顔が良くても、生娘だからさ」
「あ、うん。ごめん。そうだよね」
って、何故私はすんなりとギオラから距離を取っているんだ?
服越しとはいえ、せっかくギオラの肌に触れていたというのに。
いや、違う。
追い打ちの機会を自ら、潰してしまった。
「お前、何をした?」
「それ自分から聞いちゃうんだね。いいよ、教えてあげる」
ギオラは不敵な笑みを浮かべた。
おかしい。
まるで最初からギオラの手ひらの上で踊っていたかのようだ。
「単純に私の魔法で防いだだけだよ」
「そんなことはありえない。今の一撃は受けても殺し、避けても殺す。絶対の技だぞ。防げるはずがないんだよ」
「でも、こうして私が生きているんだし。防げたという証明にはなってるよね」
「くっ、次はない――死ね!」
再度、ギオラの懐を目掛け踏み込む。
きっと、さっきの一撃が効かなかったのは私の気の迷いのせいだ。
なら、もう一度。
それでもだめなら、何度でも打ち込むまでだ。
「悪いけど、アハロの攻撃はもう終わり。次は私の番だから」
「な、何故この速さについてこれる⁉」
一瞬、目を疑った。
だが、実際にギオラは私と同じ速さで動いている。
「そういえば、2年前はまだ扱えなかったし。アハロに見せるのは初めてだったね」
気づけば、ギオラの髪が昔のように短くなっている。
これは前回の戦いでも見た。
恐らく、私の制限解除と同じ部類の技だろう。
「それじゃあ、歯を食いしばってね」
やばい。
第六感がそう告げる。
むしろ、それしか感じ取れない。
全身に敗北感がひしひしと伝わる。
私ではギオラには勝てな――
「私の必殺技――〈英雄の光〉」
何だこれは。
私は今、攻撃を受けているのか?
「どうだ参ったか!」
何故こいつは、まじまじと自らの顔面を見せつけているのだ。
いや可愛いが。
だから、どうした。
「ふっふっふ、私の勝ちみたいだね」
この顔面を見ていたら、無性に腹が立ってきたぞ。
いや可愛いことに変わりないが。
私が今まで、こんなに心を病んできたというに、こいつは……こいつは……。
「ふざけるな!」
「わわ、急に大声出した。で、どう? 降参する?」
「ふざけるな、ふざけるな! 私がどんな気持ちでお前を――」
「どんな気持ちだったの?」
「え、いや。それは……」
「隠したいことがあるなら、そのままでいい。でも、伝えたいことがあるなら、言葉にしなきゃ伝わらないよ。まあ、私は顔で伝えられるけどね」
言葉で伝える……。
私は……。
「私はお前が好きだった」
少し迷走してます。
他の作品を見て、書き方を1から勉強しようか迷ってます。
やっぱり、表現のストックが乏しいです。
はい、では次もよろしくおねがいします。