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25話 反抗の芽(2)

――ギオラ視点――

 ギルド協会に対して反抗する事を決めた私達だったが、具体的な作戦は何も決まっていない。

 力だけで制圧しようと思えば「インストリア」へ攻め入るだけだ。

 だが、私達の目的は暴力での解決ではない。

 私の冤罪を釈明することである。

 そのため、罪の無い「インストリア」の住民を巻き込む訳にはいかない。


「せめて、落ち着いて話し合いが出来れば良いんだけどね」

「手紙で呼び出して、拘束するとかはどうですか?」

「ドレミ……怖いこと言うね」

「す、すみません。でも、あの赤毛の方達が大人しく話し合いに参加してくれるとは思えなくて……」


 ドレミの言う事も分かる。

 単細胞のアハロはニャン達を敵と定めていたし、出会っただけで間違いなく襲ってくるだろう。

 ロコやモコには介入の余地がありそうだが、アハロが近くにいる可能性が高い。

 それに、ギルド協会のハイトも話し合いをする気は無さそうだ。

 私を呼び出して、手荒な方法で捕まえようとしていたくらいだからな。


 アハロに関しては緊急性は無いため、後回しで良いだろう。

 ニャン達の話からして、襲ってきた動機は幻獣種の討伐と思われるからだ。

 ファザーさんはドレミの眷属である事を説明したら、意外とすんなり解決するかもしれない。

 逆に、ハイトへの対処は迅速に行う必要がある。

 ギルド協会の力を使われたら、本当に国を敵に回す事になりそうだ。


 これは私の直感だが、ハイトの裏には何か得体のしれない者が居る気がする。

 私の能力を正確に調べ尽くしてる癖に、ありもしない罪を疑うなんておかしい。

 まるで、私に冤罪を擦り付けたいみたいだ。


「おい、ギオラ」

「ん、どうしたの?」

「そう言えば、ギルド協会と繋がっている伝心石はどうなってるんだ?」

「そんなのあったの?」


 そんな物があったなんて聞いていない。

 ろくな引き継ぎをしていないため、当たり前ではあるが。

 むしろ、知っている事の方が少ない。


「確か、ババアは伝心石をここら辺に置いてたような」


 ニャンは受付用のカウンターの下へ潜り込んだ。

 そして「インストリア」で見た伝心石よりも、一回り大きな板を取り出した。

 この大きさにもなると、石というより石版と言った方がしっくりくる。

 今度からこの板は、伝心板と呼ぼう。


「あたしは魔力を流せないから、頼んだ」


 差し出された伝心板を受け取る。

 咄嗟に〈筋力強化(ビルドアップ)〉を発動してしまうくらいには重かった。

 こんなのを軽々と持ち上げたニャンは恐ろしいな。

 別に体技で強化している訳でも無いだろう。

 そんな事を考えながら、伝心板へ魔力を流す。


 「インストリア」の宿での使用方法は一方的に伝言を送るだけだったが伝心石の特性として、送られてきた伝言の記録を閲覧する事が出来る。

 魔力が十分に流れると、傷一つ無かった板の表面に文字が刻まれ始めた。

 恐らく、私がギルドマスターの後任に決まってから1度も使っていないのだろう。

 無数の文字がびっしりと敷き詰められている。


 ちなみに、魔力を流す頻度が遅いと石版に収まらなかった伝言は消えてしまう。

 古い伝言から消えていくようだ。


「えっと、この日に私が来たんだよね」

「そうだな、ここに狼もどきの依頼について書いてあるから……その次の日にギオラと出会ったんだな」

「それで、ドレミとウレレに会ったのがその次の日だよね――うわ、依頼が2件入ってるじゃん」


 伝心板に浮かんだ伝言を読んでいると、ギルド協会から送られた依頼が2件入っていた。

 私の聖書「猿でも分かるギルドマスター」曰く、ギルドマスターは毎日伝心板を確認してロビーの依頼書を更新するらしい。

 そして、依頼内容を出来たら伝心板でギルド協会へ完了報告を済ませる。

 この完了報告をして、やっと報酬の授与を行うと書いてあった。

 報酬のための硬貨は、各ギルドハウスに保管し、足りなくたった場合や高額な依頼があった場合は直接ギルド協会へ取りに行くようだ。


 依頼の内容は、2つとも簡単な内容だったから後で手分けして達成しようと思う。

 初級に分類されている魔獣の討伐だから、特に準備しなくても何とかなるはずだ。


「っておい、これ見ろよ」

「どれどれ」


 ニャンが指の先の伝言へ視線を移す。

 送られてきていた伝言の中では、1番最新の伝言だ。

 送られた日付は昨日になっている。


「えっと――は?」


 伝言には私の罪状が書かれていた。

 そして、私を匿ったとして「()()()()()()()()()()」を襲撃するとも書いてある。

 しかも、襲撃の予定日は明日だ。


「これって……」

「宣戦布告だろうな」

「やはり人間は醜いですね……すぐに無駄な争いを起こす」


 ニャンの言う通り、これは宣戦布告だ。

 こんなふざけた事を考えたのは、ハイトに違いない。

 もしかしたら、ハイトの目的は最初からこの「アマニーレ」を襲撃する事だったんじゃないか?

 それなら、私の冤罪含め裏ギルドの襲撃も納得出来る。


「けっ、最初からここが狙いかよ」

「そうだろうね。でも、ここを襲って何の意味があるんだろう?」


 わざわざギルド協会が力を使ってまで、この土地を欲する理由が分からない。

 別にこの町に希少な資源がある訳でもないし、特筆するような特徴もないのだ。


「恐らく、彼らは人族が()()()()()を襲ったという事実が欲しいのでしょう」

「それってつまり、亜人戦争の引き金にしたいってこと?」

「はい。30年前に行われた亜人戦争も、きっかけはささいな事でした。相手方が何を考えているのかは分かりませんが、襲ったという事実が四天怪(してんかい)に伝われば、この国は無に帰するはずです」

「ごめん、そのシテンなんちゃらって何?」

「そうですね――」


 四天怪の説明がファザーさんの口から淡々と語られる。

 ざっくりとまとめると、亜人戦争で活躍した亜人側の怪物の事らしい。

 ギルド協会でプシュワが言ってたのはこの事か。

 あれ?

 でも、そのうちの1人を倒したとか何とか言ってた気がするぞ。

 つまり、この国には四天怪へ対抗する力があるという事だ。

 ハイト、もといギルド協会は戦争を起こして亜人を撲滅して何の得がある?


「何だか、大きな話になってきましたね」

「亜人戦争か……あたしはよく知らないけど、この町を守る事に変わりはないな」

「戦争はしたい奴にさせとけば良いからね」

「そうだな。まあ、相手が自分からこの町に来るんだ。全力で迎え撃とう」


 当初の不安点が解決した所で、私達は1度解散した。

 各々、明日の襲撃へ向けての準備を済ませるためだ。

 その間もウレレは寝たきりだった。










すみません、やはりラノベに集中してました。

細かい設定の参考になり悪いことではないんですが、どうしても投稿ペースが遅れますね。

めっちゃ面白いんですよ。

はい。

では、続きを読んできます。

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