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17話 ギルド協会(2)

――ギオラ視点――

 扉の先へ進むと、案内受付と書かれた窓口を発見した。

 窓口には私と同じくらいの歳の受付嬢が数人座っている。

 その大きな空間には似合わず、私以外に訪問者はいないようだ。


「あの、裏ギルドと名乗っている連中を捕まえたんですけど」

「はい。裏ギルドの一味の捕獲ですね。名前と、所属しているギルド名を教えて下さい」

「私の名前はギオラ・カヴァリエで、所属ギルドは『サルビアス』です」

「カヴァリエ……いえ、失礼しました。裏ギルドに関しての対応は上層部が行いますので、今から連絡を取ります。10分ほど掛かりますので、あちらでお待ち下さい」


 声を掛けた女性はすぐさま、後ろに置いてあった伝心石へ触れた。

 チラッと見ただけでも、複数の伝心石が確認できる。

 流石は良いところの受付だ。

 伝心石はその性質から重宝されているため、値が張る。

 だいたい、新品の装備1式が揃うくらいだ。

 便利な石だが、業務連絡の為に買おうとは思わない。


「おい、あんた今、カヴァリエって……」

「それがどうしたの?」


 受付嬢の指示通り、部屋の隅にあった椅子で寛いでいると縄で縛っておいたプシュワが口を開いた。

 ちなみに、裏ギルドの連中は暴れられると面倒だから、私の魔法で眠らせている。

 4人とも戦意喪失していたため、状態異常魔法に抵抗すること無く簡単に眠らせてることが出来た。

 圧倒的な実力差があると抵抗することすら出来ないが、割と気持ち次第で状態異常魔法を無効、軽減することは出来る。


「王国騎士ギルドのギルドマスターの名前と一緒じゃないか! アタイはなんて奴と敵対しちまったんだ!」

「誰それ」

「この国に住んでて、王国騎士ギルドのギルドマスターを知らない訳ないだろう!」

「いや、知らないって。いるよね。自分が知ってるからって世界の常識みたいに言う人」

「うるさい! そいつは、強者だけしか入れない王国騎士ギルドに突如現れた怪物なんだ」


 王国騎士ギルドは私でも知っている。

 入団率は低く、そして条件も厳しい。

 私の通っていた学院でも、志す者が数名いた気がする。

 そして、意外とあいつらは弱い。

 所詮はテストの点数だけを取ってきた良い子ちゃんの集まりだ。


「あんた、本当に知らないのか?」

「うん、知らない」

「2年前、ギルドマスターに就任してあの四天怪(してんかい)を捕らえた化け物だぞ!」

「そもそも、その四天怪(してんかい)が分からない」

「あんたはもっと世間に目を――」

「ギオラ様、お待たせしました」


 盛り上がっているプシュワを遮り、受付嬢から声が掛かる。

 プシュワは引き続きブツブツと呟いていたが、興味無いのでそのまま眠らせた。

 うるさい奴を黙らせるのに、睡眠魔法は便利だ。


「それでは、連絡が取れましたので階段を上がって3階へお進み下さい。3階で担当の者が待機しております。捕獲した裏ギルドの一味に関しては、こちらで身分を確認致しますので拘束させていただきます」


 受付嬢はプシュワらに繋がれた縄を握ると、引きずりながら運んで行った。

 小柄な見た目とは裏腹に、なかなかの怪力だ。


 私は受付嬢の案内通り、前に見える階段へ進む。

 3階に辿り着くと、以下にも上司という感じの男が待っていた。


「お待ちしておりました。貴方がギオラ様ですね」

「はい。よろし――」

「では、こちらへどうぞ」

「あ、はい」


 せっかちだなこの男。

 最後まで喋らせてくれよ。

 あんまり好きなタイプじゃないな。


「では、こちらの部屋へ」


 男は、突き当たりの扉を開けた。

 その先では、数人が机を囲んでいる。


「やあ、君がギオラくんだね」

「はい、ギオラ・カヴァリエです」

「堅くならなくてもいいよ。僕の名前はハイト。今回、君の担当を任されたから。よろしくね」

「それじゃあ、お言葉に甘えて。よろしく、ハイト」

「はっはは、こう言って崩した発言をしてくれたのは、今までで君だけだよ」


 ハイトと名乗った女は、机を囲む他の者たちを眺めるように奥で寛いでいた。

 偉い人なのかもしれない。

 軽快な話し方の中に、どこか圧を感じる。

 私を歓迎している訳ではない、といった感じだ。


「それで、君が今日来た理由は『ダチュラ』のメンバーを捕獲したということでいいのかな?」


 話が、早くて助かる。

 仕事を片付けて、私も「インストリア」を楽しみたいのだ。

 ニャンたちと合流したら、何をしようか。

 考えるだけで、ワクワクする。


「そうそう」

「なるほどね。うーん、困ったな」


 ハイトは嘘くさい演技のように、指を鼻にかけた。

 他の者たちは発言することなく、ただ座っているだけだ。


「どうしたの?」

「なんとね。調べたところ、君に懸賞金が掛かっているんだよね」

「は?」


 私が犯罪を犯すわけがない。

 いや、顔の良さが罪と言うならば仕方がない話だが。


「何かの間違いでしょ」

「ギルド協会の調べは徹底してる。この国に住んでれば分かるよね?」

「は、はぁ」


 いや、知らないけど。

 新任のギルドマスターの私はまだ、ギルド協会の恩恵を実感していない。

 仕事という仕事もしていないし。

 なんなら、今回が初めての報告だ。


「それで、私が何をしたって言うの?」

「罪状はね。国家転覆」

「へ?」

「2年前の王都襲撃から始まり、裏ギルドを操って様々な襲撃事件を起こした。これは立派な国家転覆罪に値する」

「ちょっと、よく分からないな」

「罪人はみんなそう言うよ。ちなみに、君が捕まえてきた『ダチュラ』のメンバーはギルド協会が潜入者として送り込んでいたメンバーなんだよね。生かしたまま、返してくれてありがとう」


 私が国家転覆とか、狙う訳ないだろう。

 顔が良過ぎて、国の情勢が傾いたとかなら分かるけど襲撃とか意味が分からない。

 てか、ギルド協会の潜入者ってなんだよ。

 あいつらは「アマニーレ」に向かって、魔法を放ったんだぞ?

 そんな奴らが、国の人間だと?


「じゃ、みんな。捕らえて、いいよ」

「「「「了」」」」


 周りの者たちが、一斉に動き出した。

 もちろん、このまま無抵抗で捕まる気は無い。

 即座に睡眠魔法を放つ。


「あれ? 効いてない?」


 魔法はしっかり発動しているが、手応えがない。

 実際に、私を囲んだ者たちは眠るどころか今にも襲ってきそうだ。


「お得意の状態異常魔法が通用しなくてビックリした?」

「お前が、何かしたのか」

「そんな目で見ないでよ。怖い怖い」


 何だか、ムカついてきたぞ。

 というか今初めて、ギルド協会の調べが徹底してることを実感した。

 私のことは既に調べ済みってことか。

 だが、こいつらに魔法が効かない理由が分からない。

 状態異常魔法に対する対策を定石通りに行っているなら、状態異常無効化の装備類が妥当だろうか。


「ほら、どうしたの?  次はどうするのかな。もっと僕を楽しませてよ」

「うぜええ」


 今すぐにでも、こいつを殴ってやりたいが必死に堪える。

 怒りは気力へ変わるが、精神が乱れては本末転倒だ。

 それに、こいつの実力が測れていない。

 顔の良い私なら余裕でボコボコに出来るだろうが、相手の切り札が分からない状況で無理に攻めるのは危険だ。


「固まっちゃった。でも、僕の部下は結構乱暴だよ。突っ立ってて大丈夫かな」


 少し長考し過ぎたみたいだ。

 気づけば、前後左右からハイトの部下たちが殴りかかってきている。

 すかさず、拳を避け流す。

 顔が良い私に攻撃なんて、当たらない。


「私は国家転覆なんて企んでない。国なんて興味無いからね。それでも、私を疑うなら確かな証拠を持って私のところまで来いよ」

「言うねえ。でも、この状況で逃げれるかな?」

「逃げるんじゃない。帰るんだよ」


 平原戦で使った〈煙幕(スモーク)〉を発動し、相手の視界を奪う。

 やはり、状態異常魔法への対策はしてあるがそれ以外の魔法に対しては対策していないみたいだ。

 そのまま、〈火弾(ファイア・ショット)〉で、壁に穴を開ける。

『ダチュラ』のメンバーが使っていた魔法も私が使えば、威力や効果は別物だ。


「じゃあね、私は帰るから。壊れた壁とかは、私への濡れ衣への慰謝料ってことで許してあげるよ」


 そう言い残して、砕けた壁の穴から飛び降りる。


更新が遅れました!

何故か、忙しかったのです。

そしてまさかの急展開。

一応、前回から新しい章が始まっていると思っても良いのかもしれません。

少しだけ話しが広がっていくと思います。

それではよろしくおねがいします。

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