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15話 平原戦(3)

――ニャン視点――

 何であたしはこんなに怒っているのだろう。

 あたしたちのことを邪険に扱っていた町の人たちに対して。

 弱っている姿を見たから?

 あたしには分からない。


「何て速い攻撃なんだ。油断していたとはいえ、ありえない」


 勢いよく吹き飛ばしたツルツル頭の男は、すぐに起き上がった。

 大抵の者は今の一撃で、身動きが取れなくなるはずだ。

 大柄の女が言っていた通り、相手はなかなかの手練と確信する。

 私情で戦力を分散させたのは浅はかとも思ったが、ギオラが居れば向こうは心配ないだろう。

 あいつは強い。

 その強さは実力とはまた別の、精神的な強さだ。

 あたしにはない物を、たくさん持っている。


「おい、お前。俺たちの仲間にならないか?」

「あ? 何言ってんだ?」

「何もおかしい話じゃない。お前があの伝説の獣人だろ?噂は聞いている。表のギルドじゃ、退屈じゃないのか? 毎日、雑用みたいな小さいクエストばかり受けて」

「お前には関係ない」

「獣人は争いの中でしか輝けない。そんなことは歴史が証明しているじゃないか。裏のギルドならお前のような奴を歓迎するぞ?もう少しで、大きな戦争が始まる。お前の力を発揮するチャンスだ」

「黙れよ」


 ツルツル頭を黙らせるために、力を込めた拳を放つ。

 最初からイラついていたあたしに、手加減する余裕はない。


「俺を守れ! 〈障壁(バリア)〉」


 拳から身を守るように、魔力の壁が現れた。

 しかし、あたしには無意味だ。


「な、何故だ! 魔法が破られた!?」


 あたしの拳は魔力の壁に触れても、勢い衰えずツルツル男へ伸びる。

 これがあたしが伝説の獣人と言われる所以だ。

 神に愛された種族、獣人は魔力に干渉することができる。

 あたしが直感的に魔力を感知できる理由もこれだ。

 だから、実際には魔法を破ったのでは無く、魔力に干渉して魔力の壁に手の通る穴を開けた。


 もちろん、具現化した魔力――魔法での攻撃を完全に無効化することは出来ない。

 例えば、村を襲ったような広い範囲を攻撃する魔法やギオラが使うような状態異常を起こす魔法を防ぐことは難しいのだ。

 ただし、火の玉を飛ばす程度の魔法なら弾き返したりすることはできる。


「ただの八つ当たりだから、殺しはしないよ。だから、安心して眠りな」

「ひ、ひぃ……辞めてくれ……俺は仕事をしただけなんだ。悪意は無い!」

「で?それがどうしたの?」

「いや、だから……悪いのは依頼人のあの女だ。ほら、お前だって仕事なら、仕方ないことも分か――」


 ツルツル男へ向け、軽く覇気のこもった拳を放つとそのまま気を失ってしまった。

 こんなのが、王国ギルドの手を煩わせているとなると王国ギルドのレベルも知れる。

 飛んだ腰抜けだ。


 ギオラたちの方はどうなっているだろうか。

 まあ、大丈夫だろうが早く戻って状況を確認しよう。

 ツルツル頭を抱えて、ギオラの元へ向かった。


 ――ギオラ視点――


「これで終わりっと」


 凍っていた2人の男を縄で縛り上げた。

 溶かすのにちょっと時間が掛かったから、今度からあの魔法は使わないようにしよう。

 わざわざ溶かすために魔法を使うのも面倒だ。

 私だって、無限に魔法が使えるわけじゃない。


 魔法を使うための魔力は空気に含まれている。

 つまり、呼吸を繰り返すだけで魔法に必要な魔力は供給されるのだ。

 神聖な場所や、長年魔力が溜まった未開拓地などは空気中の魔力の割合が高いため強力な魔法が発動しやすいとされている。

 教科書に書いてあっただけで、実感したことなない。


 魔力がある限り、魔法は永遠に使える。

 という考えが昔は主流だったが、実際は違った。

 魔法は気力、すなわち精神力と関係していたのだ。

 気力がない状態で魔法を発動すると、意識を失う可能性が高い。

 最悪の場合は命を落とす。

 とある少女が身をもってその事実を伝えたため、今はこの考えが広まっている。


 つまり、私みたいに蛇口が常に全開のような人間は生きてるだけで奇跡だ。

 私ですら2年の歳月を無駄にしたのだから、大抵の人間は命を落としてもおかしくない。

 おかげで私の精神力は常人の何倍も高まっているはずだ。

 限りはあるが。


「どれどれ、ニャンとドレミは無事かな」


 ニャンとドレミの状況を確認した。

 ニャンの方は無事に片付いたようで、既にこちらへ向かって歩いている。

 ドレミの方は――


「え? 何あの大きな犬!」

「可愛い〜!」


 私の真似をして、周囲を観察していたウレレはご機嫌だ。

 視線の先には、ふわっとん3個分はありそうな大きな犬がいた。

 しかも、ドレミは安堵した表情で寄りかかっている。


「敵……ではないんだよね」

「ウレレも一緒に寝てくる〜」

「あ、うん。行ってらっしゃい」


 ウレレは、パタパタと大きな犬の元へと駆けていく。

 無邪気な姿が愛らしい。

 というか、怖くないのかあれ。


「あんたら、何者なんだ……あの『ダチュラ』をいとも簡単に……」


 腰を抜かして震えていたプシュワが、口を開いた。

 凍った二人を見て、戦意喪失していたから放っておいたのだ。

 相変わらず顔が青いままだが、やっと気を取り戻したらしい。


「私たちは『サルビアス』。顔が良い私がマスターのギルドです」

「あ、悪魔だ……」

「誰の顔が小悪魔並みに可愛いって?」

「近寄るな!」

「酷いなあ、お泊まりした仲じゃないですか。まあ、そんなことは置いといて。責任はきちんととって貰いますからね」


 私のすることは決まっている。

 こいつらをまとめて、ギルド協会へ運ぶ。

 そこで、裏ギルドとやらを捕まえた報酬をたんまり貰ってやる。

 そして、プシュワは警備兵にでも渡して投獄してもらう予定だ。

 犯した罪はしっかり償ってもらう。


 愛書「猿でも分かるギルドマスター」によると、ギルド協会の本部は王都にあるらしい。

 支部は近場の「インストリア」にもあると書いてあるので、ここを目指す。


 1度休憩したらこのまま「インストリア」へ向かおう。

 あの町なら手ぶらでもゆっくり出来るはずだ。





お久しぶりです。

やっぱり、ニャン視点の内容は薄かったので途中からギオラ視点に変わっています。

何故かほとんど解説回でした、まあ戦力差があり過ぎて……。

もっとギオラたちが強いアピールをしたかったんですけど「インストリア」でのお話にお任せします。

毎日更新できるようにがんばりますので、よろしくお願いします。

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