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14話 平原戦(2)

――ドレミ視点――

 ギオラさんの計らいで1人になった相手を追いかける。

 私は自分でも驚くほど、怒りが湧いていた。

 今まで生きてきて、怒ったこたことは何度もある。

 しかし、感情を表に出したことはなかった。

 内気な性格ということもあるが、私に力がなかったからだ。

 でも、今の私にはこの怒りを表現する力がある。


「あなたに恨みはありませんが、町の人の痛みを味わって頂きます」

「だまれ女! 不意打ちくらいで調子に乗ってんじゃねえぞ!」


 私の相手は男。

 それもかなりガタイがいいし、刃物も持っている。

 前の人生だったら、目を合わせることすらなかっただろう。

 咄嗟に身構えた体が震えている。

 体は正直だ。


「俺はな! 『ダチュラ』の中でも2番目に強いんだよ。ギルマス以外には負けたことねえ。この意味が

 分かるか? 俺がお前に負けることはありえねえってことだ!」


 男は剣を構えると、一瞬で間合いを詰めてきた。

 正直、私には速すぎて目で追うことは出来ない。

 気づけば、目の前に男が迫っている。


『主様! 危険です! 私めが戦います!』

「ごめんなさい。ファザーさん、何度も引き止めてしまって。でも、大丈夫です。私の力で戦います」

「何をブツブツと喋ってんだ! 死ねえ!」


 男の振り下ろした剣が、胸部へ衝撃を与えた。

 痛いというよりも、溢れる血が熱い。

 振り抜かれた刃は流れるように、私の肌を裂いていく。

 人間はこんなに脆い生き物なのか。

 意外なことに、こんなことを考えれるくらいには冷静だった。


「良いね、良いねえ! 俺はな、自分より弱いやつを切り裂いてる時が1番幸せなんだよ!」


 救いようのないクズだ。

 きっと、今までずっとあんなことを繰り返してきたのだろう。

 あなたに慈悲は与えない。


「〈血雨(ちさめ)〉」


 吹き出した血は、雨のように降り注ぐ。

 私が考えた私なりの戦い方だ。

 吸血鬼の特性で、血を浴びた者の自由を奪うことが出来る。

 例え、私より速く動けようが、私より力が強かろうが関係ない。


「汚え! 何だ、この血の量は? 気味が悪い。これで息の根を止めてやるよ」


 男は大きく剣を振りかぶった。

 しかし、その剣が振り下ろされることはない。


「〈発芽(はつが)〉」


 私の血を浴びせただけでは、体の自由を完全に奪うことは出来ない。

 そこで、私の血を養分とした芽で相手を縛り付けた。

 この芽は、ちょっとやそっとじゃ千切れない。

 ましてや、私の血を浴びて弱体化してるんだ。

 死ぬまで解けない鎖と言っても過言じゃない。

 私はこの種を〈束縛種(そくばくしゅ)〉と名付けた。

 最初は、〇〇チェーンと名付けようとしていたという話は内緒だ。


「動けねえ……それに視界が……」

「女神様によると私の血は特殊で、状態異常を起こす作用があるらしいのです。あなたの顔、青ざめてきましたよ。もしかしたら、貧血を起こしたのかもしれませんね」

「助け……て…………た……す」

「何を言ってるんですか。町の人たちが味わった苦しみはこんなものじゃ、ないはずですよ」

「……」

「意識を失っちゃいましたか。だったら、血を活性化させて――」

「主様!」


 男に触れようとしたその時、目の前に白色の猛獣が現れた。

 鋭い牙をむき出し、今にも私を食べしまいそうな迫力だ。

 それは私の眷属のファザーさんだった。


「ファザーさん? どうしたんですか。私はその男に皆さんの苦しみを――」

「主様! 怒りに飲まれてはなりません!」

「私は冷静ですよ」

「では、主様は本当にその行いで心が満たされるのですか? 昨日のようにあの者たちとまた笑い合えるのですか?」

「私は……」



 私は馬鹿だ。

 これじゃあ、この男と同じじゃないか。

 力に任せた、ただの暴力。

 こんな私のまま、誰かと笑いながら話をしている未来なんて想像したくもない。


「眷属になった時、私めには伝わってきました。主様の優しい心が」

「そんな、私は……」

「きっと、初めて誰かのために怒ったのでしょう。私めには主様の気持ちが分かります。どうか、その優しい心を捨てないでください」

「ファザーさん……ごめんなさい」

「謝る必要はありません。主様のしたいことを支えることが私めの仕事。道に迷った時に、手を差し伸べるのも私めでありたのです」

「うう……すみません。こ……このまま、寄っかかっていてもいいですか……」

「主様のお気の召すままに」


 ファザーさんのフカフカの体に、身を預ける。

 お布団の中みたいで心地良い。

 今まで湧いていた怒気が嘘のように、晴れていく。

 私は私だ。

 でも、道は踏み外さない。

 簡単に力を手に入れてしまったから、驕っていた。

 心は、弱い私のままなんだ。

 強くなりたい。

 私が私であるために。








なんか、話が重いですね。

怒らせたら怖い女ドレミさんです。

本当は途中で視点変更する予定だったので、文字数が微妙に短くなってます。

今のところ、いいペースで書けているのでこのまま頑張ります。

よろしくお願いします!

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