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12話 襲撃者

――ギオラ視点――

 親睦会を楽しんだ次の日の朝、私たちは町中を駆け回っていた。


「怪我がひどい人はギルドの中へ運んで! 傷口は私の魔法で洗浄するから、毛布の上に寝かせて!」

「おい! こいつ血が止まらねえぞ!」

「ニャンさん! 私なら何とか出来るかもしれません!」

「おう、そっちは任せた。ウレレ! 他に怪我をしたやつがいないか探しに行くぞ!」

「ウレレ、頑張る!」


 昨晩、何者かによって町が襲撃されたのだ。

 その被害は、町が半壊するほどだった。

 襲撃の直前で、私の魔法が反射的に発動したことでギルドハウス周辺は無事だ。

 しかし、郊外の家や牧場は壊滅的である。


 そのため、私たち『サルビアス』は住民の救助、治療を行っている。

 私は運ばれてきた住民の傷口を魔法を使って清潔にしていた。

 同時に治癒魔法を掛けているが、得意分野ではないため効果が薄い。

 元から適性が低い魔法だったから、発動できただけで上出来だ。


 そんな中、希望の光となったのはドレミだった。

 ドレミは魔法を使うことは出来なかったが、吸血鬼の特性を活かして出血を抑え、当人の自己再生能力を極限にまで高めることに成功したのだ。

 その効果は部位欠損すら、完治させるという驚異的な治癒力だった。

 吸血鬼の生まれということには驚いたが、おかげ死亡者は1人もいない。


 ニャンやウレレも、持ち前の身体能力を活かして町中から負傷者を運び集めている。

 彼女たちなら、瓦礫が道を塞いでいても特に問題はないだろう。


「ありがとうございます。私たちにこのように丁寧な処置を」


 こっちはまだ、治療に励んでいるというのに声を掛けてきたのはこの町の町長だ。

 町長と言っても、見た目は意外と若い。

 私のお父さんとさほど変わらないくらいだろう。

 流石に無視もできないので、治療と並行して答える。

 顔が良い私にしか出来ない芸当だ。

 てか、空気読めよおっさん。


「いえいえ、町の力になるのはギルドの義務ですので」

「若いのにしっかりしていますね」

「よく言われますよ」


 その話、今じゃないと駄目ですかと言ってやろうか。

 これだから、偉い人は苦手なんだ。


「ニャンとフォンを……よろしくお願いします。私たちが望むのはそれだけです」

「ええ、もちろん。言われなくても、よろしくしますよ」

「重ね重ね感謝します」


 町長は頭を下げ、他の負傷者の看病に向かった。

 正直、今のやり取りに意味はあったのか謎だ。

 そんなことよりも邪魔者が消えたことで、治療に専念する。


 こうして『サルビアス』の活躍もあり、全ての住民の治療が完了した。

 崩壊した住居の瓦礫も撤去が進んでいる。

 当分、不便な生活を強いられることにはなるが直に元の生活に戻ることが出来るだろう。

 町への被害を考えると、奇跡的な復興具合だ。


 奇跡的な復興……その要因として、少し奇妙なことがあった。

 この町には、ニャンとフォンを除く子供が1人もいなかったのだ。

 もし、被害者の中に赤子がいたならば、私の魔法やドレミの治療は効果がない可能性が高い。

 町長の謎の発言も、これと関係しているのかもしれない。

 この町のギルドに務めることになったんだから、いつか深く調べてみようと思った。

 いつか……ね。


「クソ! 一体誰がこんなこと」

「夜でみんな寝てたからね。町の人に聞いてみたけど、目撃者はいないみたい」

「私たちもここで寝ていたので、起きた時には……」


 この町に来たばかりの、ドレミとウレレはギルドハウスの屋根裏部屋で寝ていた。

 一応、居住スペースとしての機能は十分だったので、今後も2人はここで寝泊まりする予定だ。


 町を襲った襲撃者は、火属性の上級魔法を放ったと予想できる。

 反射的に魔法を相殺した際、感覚的に伝わってきた。

 何となくの方角は分かったが、襲撃者の特定までは出来ない。


「メラメラの人探してるの〜?」

「めらめら? 何だそれ」

「ちょっと待って、ウレレはあれが火の魔法だって分かったの?」

「あたしだって、魔法で攻撃されたことくらいは分かったけど、流石に属性までは分かないだろ」

「ウレレ、分かるもん」

「本当か? 狼肉と牛肉に違いも分からないのにか?」

「どっちも食べれるから同じ〜」


 どうせ、手掛かりも何もないんだ。

 ウレレの意外性に賭けてみよう。

 町をこんな目に合わせて、私の睡眠を遮った奴だ。

 絶対に見つけ出して、奥歯ガタガタ言わせてやる。


「ウレレはそいつがどこにいるか分かるの?」

「分かるよ〜。ウレレはメラメラの跡が見えるもん」

「メラメラの跡ね……とりあえず、案内よろしく」

「は〜い」


 ウレレは迷わずに、平原へ向かった。

 それは、私が直感的に感じた方角と同じだ。

 少し歩いて行くと、平原の先に人影が確認出来た。

 視覚の優れた、ニャンに確認してもらう。


「人数は5人だ。2人は剣を持っているな。他の3人は杖を持っているから、魔法使いだろう」

「悪人面してる?」

「うーん、盗賊って感じはしないな。装備が上等で、新品みたいに綺麗だ」

「メラメラの人あれだよ〜。あのツルツルの人」

「めらめらだか、つるつるだかハッキリしろよ。お、でも本当にいるぞ髪がないやつ。しかも、あいつは杖を持ってる」


 人影まで結構な距離があったが、2人ははっきりと対象を捉えているようだ。

 あの人影たちが、襲撃者と仮定して良いだろう。

 平原で隠れようがないから、〈阻害(インピード)〉を発動させる。

 この魔法は指定の相手に気づかれにくくなる魔法だ。

 いくら顔の良い私でも、この魔法を使えば街で声を掛けられない。


「ギオラのおかげでキラキラ〜」

「本当に息を吐くように、魔法を使えるんだな」

「備えあればってやつだよ」

「え、ギオラさん。今、魔法使ったんですか?」

「まあ、それが普通の反応だよな」


 今から戦闘が始まるかもしれないのに、意外とみんな落ち着いている。

 頼もしい限りだ。

 そして、ようやく人影だったものが視認できる位置まで近づけた。

 ニャンとウレレの情報通りだ。

 もし、襲撃者なのだとしたら私がボッコボコにしてやる。









技名や魔法は分かりやすいように〈〉このカッコで統一することにしました!

今回から急展開ですけど、思った以上に問題の解決が早くなりそうです。

どうしたものですかね。

まあ、書いてから考えます。

では、よろしくおねがいします。

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