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1話 物語の始まり

――ギオラ視点――

 私の名前はギオラ。

 顔が良いことが取り柄の魔法使いだ。


 そんな私に今、絶体絶命の危機が訪れていた。

 どんな危機かと言うと――


「――もう我慢ならん。仕事をしなさい!」


 私に訪れた危機……それは、それは仕事を探さねばならないということ。


 かれこれ2年ほど家に引きこもっていた私に対して、ついにお父さんの堪忍袋も音を上げたらしい。


 確かに、最近の私は堕落し尽くしていた。

 朝起きて寝て、昼起きて寝て、夜起きて寝る。

 1日3寝の生活を過ごしていたのだ。

 だが、堕落している自覚はあれど仕事はしたくない。


 ここは適当な言い訳でもして、話をあやふやにしよう。


「でもお父さん……私顔が良いから家の外に出たら、知らない男の人に攫われちゃうかもよ」

「そうだろうな」

「顔が良い娘に危険な思いをさせても良いの?」

「ギオラ……俺はお前のためを思って、これまでは強く言ってこなかった。だが、この際はっきり言っておこう。お前は顔が良いが、我儘で自分勝手だ。1日中家にいる癖に、家事の手伝いはしないし部屋は汚すだけ……そんなお前の元に人が集まったとしてもすぐに散っていくに決まっている」

「え……お父さんがそれ言っちゃうの……」


 お父さんからの衝撃の告白に、言葉が出ない。

 なぜなら、否定ができないからだ。


 学院時代をともに過ごしたAちゃんからは「私がいなかったら、ギオラちゃんはボッチだね」と口癖のように言われていた。

 さらに「学院で起こる問題は、全て貴方を中心に起こっていた」と、講師から伝えられたこともある。


 つまり私はお父さんの言ったとおり、我儘で自分勝手な女なのだ。

 中身を知られてしまえば、私に関わろうとする人間は絶滅するだろう。

 色違いの魔物を探す方が簡単な気がする。


「もう、お父さんなんて知らない。私出て行くから!」


 当然だが、本意ではない。


 とりあえず、こんなことを言っておけば過保護なお父さんは涙ぐんで、自らの行いを後悔するはずだ。

 という安直な考えで言葉を発した。

 だって、私は顔が良いから。


 顔が良い娘が家を出るとか、お父さんからしたら前代未聞の大事件だ。

「人生で1番後悔したことは?」と尋ねられたら、きっと今のことを話すだろう。

 だから、必死に引き止めるはずだ。


「お、お前家を出るのか……」


 今尚、現役の冒険者として活躍しているお父さんの屈強な体が、小刻みに震えている。

 動揺している様子が筒抜けだ。


 あともうひと押しすれば、引き止めてくれるだろう。

 私を追い出そうとしたことを悔いて、沢山甘やかすのだ。


「俺は嬉しいよ」

「え?」

「別に自宅から通える仕事でも許してやろうと思っていたんだが、家を出て仕事するんだな。いや、俺は嬉しい」

「ちょっと、ま――」

「じゃ、そういうことなら今日から仕事探さないとな。行ってらっしゃい」


 目にも留まらぬ速さで家を追い出された。


 ドアを開けようにも、最上級魔法でロックされているため開かない。

 全力で魔法を発動することができればなんとかなるかもしれないが、そんなことをしたらドアだけでなく家ごと吹き飛ばしてしまう。


 娘を追い出すためにここまで本気になるか?

 ありないだろう、普通に考えて。


 ともあれ、家の外に追い出された私に選択肢はない。

 仕事を探すしかないのだ。

 できれば休みが多い仕事を……。


 だがしかし、私はどこに行けば仕事に就けるのか分からない。

 と言うか、仕事って何だ。

 自宅を警備してると言えば、引きこもりも立派な仕事じゃないのか?

 賃金が出ないからダメ?

 そんなのお金の為では無く、やり甲斐のために働いているという理由でどうにかなるだろう。


 自慢ではないが私は仕事をしたことがない。

 だから、何もかもが分からないのだ。


「やあやあ、あなた良い顔してるわね」


 家の前で考え込んでいると、見知らぬおばあさんに声を掛けられた。

 今にも死にそうな、腰の曲がったおばあさんだ。


 引きこもっていたこともあり、ご近所事情には詳しくない。

 お父さんの知り合いのおばあさんなのだろうか。

 とりあえず、適当に返してみよう。


「はい、よく言われます」

「あらあら、意外と図太いのね」

「よく言われますので」

「まあまあ、そんな娘も嫌いじゃないわよ」

「はい、ありがとうございます」

「そうそう、私は仕事を引き継いでくれる顔が良くて若い娘を探しているんだけどね。誰か紹介できないかしら?」


 台本通りのようなセリフが怪しい。

 最初から、私を探しに来たみたいな条件だ。

 むしろ、私にしか当てはまらないだろう。

 だって、私は顔が良くて、まだ17の若い娘だ。


「それなら私が適任ですね」


 怪しさプンプンだが、向こうから仕事が寄ってきたのだ。

 迎えない手はない。


 きっと神様が、顔が良い私に仕事を与えてくれたのだろう。

 絶対そうだ。

 顔が良い私には神までもが、優遇してくれる。


「うんうん。確かに顔が良いし、若いわね。じゃあ、あなたにお願いしようかしら」


 こうして私は、難なく仕事を得た。

 しかも話を聞いてみると、泊まり込みで働けるらしい。

 願ってもない高待遇だ。


 仕事の内容はギルドの管理と経営。

 ギルドマスターという職業らしい。

 ギルドマスターという言葉の響きがかっこいいし、私に似合っている気がする。


 これから、新しい私の生活が始まるぞ。








ぼちぼちと、書いていきたいです。

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