人狼ゲーム -ラストウルフ・ナナナ- JOJO
俺の名前は一橋。ただの中年のオッサンだ。父は天孫降臨で有名な高千穂出身、母は河童が出ると噂される遠野出身。子供の頃、父母の実家(祖父母の家)に行って、“人ならざるもの”に会えることを期待していたが、実際に出会えることはなかった。
大人になってから友人に「幽霊は人の多いところに出没する」と言われて、なんとなく初めて渋谷に出てみた。すると本当に幽霊だったのか人間だったのかわからないが、そのような存在を見かけた。アルビノのように色が白く儚げな女性で彼女は見えない壁に守られているかのように、周りの人たちは気づいていなかった。俺だけにハッキリと見えていたみたいだ。
それから数ヶ月して渋谷で猟奇殺人が起こった。被害者はどれも公園や駅をねぐらにしているホームレスであった。犯行は深夜に首元を喰い千切られているとの事だった。俺はこれに“人ならざるもの”が関与しているものとみて再度渋谷へと繰り出した。
渋谷の宮下公園で俺は驚くべきものを見た。小さな女の子がゴミ箱で食べ物を漁っていたのだ。たまたまポケットに入っていた菓子パンをあげたら懐かれたようで、色々なことを教えてくれた。
少女はなんと狼人間であるという。狼人間の里で暮らしていたが、お母さんと一緒に渋谷に降りてきた。理由は狼人間の里のリーダーであったお父さんが行方をくらまし、お母さんから「お父さんを探して一緒に里に帰るよ」と言われたからだ。
要するにお父さんが妻子を捨てて逃げた。そしてお母さんは子供を連れて探しにきた。狼人間の世界にも色々あるのだろう。
だが狼少女から次の言葉を聞いてゾッとした。
「人間より前にお父さんを見つけられなかったり、自分の正体をさらけ出してしまったら、処刑されるって」
まるで処刑が何なのか分かっていない調子で言った。
こんなことを聞いてしまっては父親探しに協力するしかないだろう。だが、最近多発している猟奇殺人の犯人はこの子の父親なのではないかと思い始めた。どう転ぶかはわからないが、今はこの子を手助けすることに決めた。
狼少女にお母さんはどうしてるのか?と聞いたら「お母さんともはぐれちゃった」と返ってきた。だからさっきゴミ箱で食べ物を漁っていたのか。お母さんの特徴は?と聞くと「真っ白」と返ってきた。もしかして数ヶ月前に見かけたアルビノのように真っ白な女性、その人がこの子の母親なのかもしれない。
この子を保護するか?と考える。どうせ俺は独り身のオッサンだ。誰も反対する者などいない。
「良かったら一緒に暮らすか? お父さんとお母さんが見つかるまで」
「いいの?」
狼少女がきょとんした顔をする。
俺は渋谷に部屋を借りて、こうして狼少女との暮らしが始まった。
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狼少女と暮らしてから数年が経った。
出会ったときは人間でいうと、小学生くらいであったが今は中学生くらいとなっている。戸籍がないので学校に通わせてはいないが、外を元気に飛び回っている。
そんなある日
「お父さん! お母さん! おじちゃん、ごめんね。行ってくる」
「おい!」
行ってしまった。
そういえば以前から聞いていた。狼人間はある程度成長すると仲間を見つける能力が発揮できると。
両親を探すという名目でよく一緒に散歩をしていた。俺にとってそれは楽しい日々であった。正直両親なんて見つからなければいいのにとも思っていた。でも今日能力が発揮されてしまった。どうか両親と一緒に幸せに暮らしてくれ。俺は泣きながら狼少女の幸福を祈った。
狼少女を保護してからこの数年間で渋谷の社会情勢は最悪となっていた。
猟奇殺人は止まらず被害者はホームレスに限らず様々な人に及ぶようになった。人口が有意に減るレベルに人が死んでいくので、犯人は一人ではなく複数人だろう。数十人、もしかすると数百人かもしれない。
ある時、誰かが犯人の一人を捕まえることができた。驚くべきことに正体は狼であった。しかしただの狼ではない。昼は人間、夜は狼になるという狼人間であった。人々は狼人間のことを“人狼”と呼ぶようになった。
こうして人間による“人狼狩り”が始まった。しかし深夜に人狼を捕まえようとしても素早くてなかなか捕えることはできない。昼間、人間の姿のときに人狼狩りが行われるようになった。だが、見た目は普通の人間と同じなので、間違えて普通の人間も多数狩られるようになった。人狼の数は確実に減っていったが、なんの罪もない普通の人間も犠牲になる。このような状況に対して、人狼狩りは禁止されるようになった。
そこで新たに考案されたのが“人狼ゲーム”であった。
数人から10数人が集まってゲームを行う。ルールは市民陣営と人狼陣営に分かれて戦う。ターン制のゲームで一日の間で昼のターンと夜のターンがある。昼のターンでは全員で話し合い、人狼だと思われる人物を一人投票によって選んで処刑する。夜のターンでは人狼が市民陣営を一人襲撃することができる。ゲームの勝敗は人狼陣営を処刑によって全滅させれば市民陣営の勝利。市民陣営と人狼陣営の人数が同数になれば人狼陣営の勝利となる。
このゲームによってむやみやたらと普通の人間を殺すことがなくなり(投票によって人間が処刑される可能性はあるが)人狼を処刑でき、人狼陣営も夜のターンに人間を食べることが保証された。
ここで現れるのがGMという存在である。
GMは市民陣営にも人狼陣営にも属さない完全なフリーな立場である。
ゲームの開始は人狼陣営がGMにゲームをやりたいと申し出る。そうするとGMが人間を集めて人狼ゲームを開始する。人間にゲームを拒否する権利はない。拒否をするとGMによってその場で処刑される。
人狼ゲームは一大ムーブメントを起こした。生死をかけたゲームが単純にスリル満点でゲームとして面白いからだ。人間も人狼も人狼ゲームにハマり渋谷各地で人狼ゲームが行われるようになった。
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主人公・一橋が狼少女と別れてから更に数年が経った。
一橋は狼少女と別れた寂しさから引きこもり、髪を切らず髭も剃らず廃人のような生活を送っていた。
そんなある日、一橋の部屋をノックする音が響いた。
「人狼ゲームのGMです。一橋さんあなたがプレイヤーとして選ばれました」
「ついに俺のところにも来たんですね。どうせ生きてるか死んでるかわからない身。参加しましょう」
「着いてきてください」
数年ぶりに家を出ると、渋谷の街は荒廃していた。
「こんな街になってしまったんですね」
「人々が人狼ゲームに夢中になりすぎて人口が激減したんです。そして今回がラストゲームです。もう渋谷の住民はあなたを入れて9人しかいません」
「そうなんですね」
廃人となった一橋はどうでもよさそうな返事をする。
GMに着いていくと宮下公園に着いた。狼少女と最初に出会った公園である。
すでに一橋以外のプレイヤーは揃っていた。
各自自己紹介をするとこんな感じのメンバーであった。
一橋…主人公。オッサン。廃人。
二宮…主婦。
三井…オッサン。
四谷…オッサン。
五間…オッサン。
六呂…女子高生。
七菜…女子高生。
八戸…老婆。
九院…女子大生。
GM「それでは今回の※レギュを発表します」
※レギュ:レギュレーション。配役のこと。人狼ゲームには様々な役職があるので最初に配役がどれだけあるのか発表をする。
GM「※市民3、騎士1、占い師1,霊媒師1、人狼3だ」
※市民:なんの能力もないただの市民
※騎士:夜のターンに一人を守ることができる。守った人が人狼に襲撃された場合、その襲撃は失敗する。騎士は自分を守ることはできない。
※占い師:夜のターンに一人を占うことができる。その人が市民陣営なのか人狼陣営なのかわかる。なお市民陣営のことを白、人狼陣営のことを黒と言ったりする。
※霊媒師:夜のターンに昼間処刑された人が市民陣営なのか人狼陣営なのかわかる。
以上ここまでが市民陣営である。なお市民陣営は自分の役職しか知らず、誰が市民陣営なのか人狼陣営なのかはわからない。
※人狼:夜のターンに市民陣営を一人襲撃することができる。なお人狼陣営はお互いに誰が人狼なのかわかっている。
GM「今回9人村で人狼3人なので人狼陣営が有利だ。ルールは占い師は※初日ラン白有り、騎士は※レンガ有りだ」
※初日ラン白有り:初日ランダム白有り。占い師は初日にGMからランダムで一名白結果を教えてもらうことができる。
※レンガ有り:連続ガード有り。騎士は夜のターンに誰か一名を守れるが、連日して同じ人を守っても良いというルール。
GM「それでは今夜は小屋に泊まって明日からゲーム開始だ。机の上にそれぞれの役職カードがあるので確認してくれ。騎士、占い師、霊媒師はそれぞれの役割のやり方も書いてあるから夜のターンはそれに従ってくれ。今夜は人狼の襲撃はない。それではまた明日!」
宮下公園には一人ずつ小屋が建てられていてプレイヤーはそこで一夜を過ごす。
一橋は自己紹介のときちゃんとメンバーを見ていなかったが、明日からのゲームに備えて、どんな人達とプレイするのかと思ってしっかりと見てみた。
すると驚くべき人物がいた。さっき七菜と名乗っていた女子高生。明らかに狼少女であった。一緒に暮らしていたときは名前を付けていなかったが、今は七菜と名乗っているらしい。(人狼は基本的にそれぞれ名前はないがゲームをプレイするにあたって名前を付け始めた)。そして二宮という主婦。肌が真っ白である。この人は昔、見かけたことがあるアルビノのように色が白い女性と同一人物であった。きっと七菜の母親だろう。今回のレギュは人狼が3人。すると七菜の父親もいる可能性が高い。きっとオッサンである三井、四谷、五間の誰かだろう。七菜は両親とちゃんと再会できたんだ。
一橋はゲームを開始する前に人狼二人を確定し三人目の推察もついた。七菜と出会ったことにより活力が入り、廃人モードからは脱出した。髪を切り、髭を剃った。七菜はこれで俺だと気づいてくれるだろうか。
一橋は机のカードで役職を確認した。
※読者の皆さんにも一橋の役職は伏せておきます。推察しながらお読みください。
【初日:昼のターン】
GM「皆さんおはようございます。それではゲーム開始です!」
九院「待って。あんた誰?」
一橋「一橋だ」
九院「ずいぶん変わったのね」
廃人のような見た目であった一橋のあまりの変貌に皆が驚く。七菜も大きく目を見開き、どうやら育ててくれたおじちゃんだと気づいたようだ。
六呂「どうやって進めましょうか? 占い師に出てもらいます?」
人狼ゲームの初日はお互いなんの情報もない。占い師に名乗り出てもらうのがセオリーな戦い方だ。皆も賛同した。
六呂「それではせーのを言いますので、占い師の方はラン白結果を言ってください、せーの!」
六呂「一橋さん、白」
七菜「二宮さん、白」
三井「占い師が二人出ました。六呂ちゃんと七菜ちゃんの女子高生二人が。どちらかが人狼であることは確実です」
最悪だ。七菜が名乗りでるとは。このままでは※占い師ローラーになる可能性が高い。
※占い師ローラー:占い師が二人名乗り出たことによってどちらかは確実に人狼である。占い師は貴重な役職だが、占い師を全員処刑すれば確実に人狼も処刑できる。
五間「初日ですし、※グレー位置から※吊りたいですね。三井さん、四谷さん、私五間、八戸さん、九院さんの誰かから」
※グレー位置:白か黒か全くわからない人。現時点では一橋と二宮はそれぞれ自称占い師から白を出されている。六呂と七菜は占い師と名乗っている。それ以外の情報がない人達がグレー位置。
※吊りたい:処刑したいの意。
八戸「老体のわたしを処刑したいなんて、厳しい村だのぉ」
九院「私は霊媒師※COします」
※CO:シーオー。カミングアウトのこと。役職を名乗り出る意。
二宮「他に霊媒師の方はいませんか? これ以降出てきたも信じられませんよ? ……霊媒師はとりあえず九院さん確定ですね」
六呂「※白確した九院さんに※村の進行を進めてほしいですね」
※白確:しろかく。市民陣営だと確定した人。
※村の進行:ゲームの進行。ゲームの進行者の通りに場の流れを支配される可能性があるので、白確した人が村の進行を進めるのがセオリー。
九院「はい。今日吊るのは三井さん、四谷さん、五間さん、八戸さんの誰かからが良いと思います。四谷さんまだ喋っていませんがなにかありませんか?」
四谷「お前らバカか? こんな殺人ゲームに乗っかってよ! 今日吊りたい人を選ぶ? 人の命をなんだと思ってやがるんだ! くそったれどもがよ!」
GM「そろそろ投票の時間です。私がせーのと言ったら、人狼だと思われる人を指差してください。せーの!」
全員が四谷を指した。
四谷「ふざけんじゃねーぞ!!」
暴れる四谷を押さえつけて、GMは絞首台まで運ぶ。
GM「遺言をどうぞ」
四谷「お前ら全員死んじまえ!!」
GMが四谷の首に縄をかけ、絞首台のレバーを引くと床が開いた。四谷は処刑された。
GM「それでは皆さん。恐ろしい夜のターンがやってきます。プレイヤーは小屋へとお戻りください。人狼は深夜になったら出てきて、どなたか一人を襲撃してください」
初日昼のターンのまとめ
一橋:六呂から白を出される。
二宮:七菜から白を出される。
三井:特に情報なし。
四谷:死亡。
五間:特に情報なし。
六呂:占い師CO。
七菜:占い師CO。
八戸:特に情報なし。
九院:霊媒師CO。
【初日:夜のターン】
七菜「お父さんお母さん、一橋さんってわたしを育ててくれたおじちゃんだよ!」
二宮「うそ、あの人が……。七菜を育ててくれた恩人。……でも七菜、私達とあの人は敵同士なのよ? 殺すのにためらってはダメ」
XXX「七菜そうだったんだね。でも散々話し合ってきたじゃないか我々は人狼ゲームをやり続けると。人狼は大きくなると人間を食べることでしか生きていけない。人間を食べることに罪悪感を覚えちゃダメなんだ」
七菜「うん、わかってる。でもおじちゃんは食べたくない。だから投票によって処刑させて」
【二日目:昼のターン】
GM「皆さんおはようございます。夜が明け昼のターンです。昨夜襲撃されたのは八戸さんです」
九院「占い結果を同時に言ってもらえる? せーの!」
六呂「五間さん、白」
七菜「一橋さん、黒」
まさか七菜が俺に黒出しをしてくるとは。つまりこれは七菜からの回答だろう。敵同士で戦うという。所詮人間と人狼は相容れることができない存在。わかったよ、七菜。お前がそうするなら俺も全力で戦う。一緒にゲームをやっていたときお互い熱くなるタイプだったな。今回の生死をかけた人狼ゲームでお前とゲームをするのも最後だ。
一橋は涙を流す。
三井「一橋さん黒出されましたね。しかも泣いているし。人狼だとバレて悔しいんですか?」
一橋「まだ眠くてあくびをしただけだ。俺は今※パンダです。六呂の対抗である七菜が俺に黒を出すのは不思議なことではない」
※パンダ:自称占い師二人から白と黒の結果をもらうこと。
九院「そうですね。ただこれで一橋さんと七菜ちゃんは対立する構図です。そして霊媒結果ですが、四谷さんは白でした。つまりまだ人狼は3人います。今日人狼を処刑しないと市民陣営と人狼陣営が同数になるので人狼陣営の勝利となってしまいます」
六呂が五間に白を出し、昨日処刑された四谷も白だった。つまり残っているオッサンは三井のみ。こいつが七菜の父親で人狼だ。
一橋「俺目線からすると六呂は※真・占い師で確定。そして六呂から白を出されている五間も市民陣営だ。霊媒師COしてるのは九院のみ。よって二宮さん、三井さん、七菜が人狼だ」
※真・占い師:占い師COしている人物が複数いる中、真の占い師が誰かわかった状態。市民陣営である一橋は七菜から黒結果を出されているので、六呂が真・占い師であることは明白。最も一橋は※メタ情報により、七菜が人狼だということは最初からわかっていたが。
※メタ情報:ゲーム以外からの情報
三井「つまり私目線、一橋さん、五間さん、六呂ちゃんが人狼だということです。……九院さんあとはあなた次第ですよ」
一橋「九院、俺を信じろ」
九院「わたしがどちらにつくかという次第ね。……※パッションは一橋さんの方が高い」
※パッション:情熱。人狼ゲームは情熱も馬鹿にできないものである。パッションによって論理がひっくり返ることもある。
三井「今日の投票は間違えられないんですよ! 九院さん!」
一橋「市民陣営聞け、今日の投票、俺は三井に入れる」
三井「私は一橋さんに入れます!」
GM「そろそろ投票の時間です。私がせーのと言ったら、人狼だと思われる人を指差してください。せーの!!」
一橋、五間、六呂、九院は三井を指し
二宮、三井、七菜は一橋を指した。
GM「投票の結果、本日処刑されるのは三井さんです。三井さんは絞首台までお越しください」
三井は観念したように絞首台まで歩いていく。
GM「遺言をどうぞ」
三井「特にありません」
GMが三井の首に縄をかけ、絞首台のレバーを引くと床が開いた。三井は処刑された。
GM「それでは皆さん。恐ろしい夜のターンがやってきます。プレイヤーは小屋へとお戻りください。人狼は深夜になったら出てきて、どなたか一人を襲撃してください」
二日目昼のターンのまとめ
一橋:六呂から白を出され、七菜から黒を出されている
二宮:七菜から白を出されている
三井:死亡。
四谷:死亡。
五間:六呂から白を出されている。
六呂:占い師CO。
七菜:占い師CO。
八戸:死亡(人狼に襲撃されているので人狼でないことは確定)
九院:霊媒師CO。
【二日目:夜のターン】
七菜「ふぇぇん、お父さん死んじゃったよ」
二宮「七菜泣いちゃダメ。さっきの投票の結果、私達以外はお父さんに入れていた。もう私達が勝つ望みは薄い」
七菜「どうせ全滅するなら、九院を殺したい。あいつムカつく」
二宮「そうね。今夜は九院さんを襲撃しましょうか」
二宮と七菜は九院の小屋へ赴き、扉を開こうとする……が開かない。
七菜「どういうこと? まさか※グッジョブ起こされた?」
※グッジョブ:騎士の守りが成功すること。
二宮「騎士はまだ生きていたのね。でもこれは逆にチャンス。七菜、お母さんがこれから言う通りにしなさい」
七菜「うん」
【三日目:昼のターン】
GM「皆さんおはようございます。夜が明け昼のターンです。昨夜襲撃された人はいません」
九院「グッジョブが起こったのね。占い結果を同時に言ってもらえる? せーの!!!」
六呂「二宮さん、黒」
七菜「※スライドします」
※スライド:役職を降りること。
九院「スライドですって?」
七菜「そして騎士COします。つまり六呂ちゃんは真・占い師です。すると私目線、人狼は二宮さん、三井さん、九院さんです」
一橋「七菜、この後に及んでさすがにそれは無理があるぞ」
七菜「一橋さん、今回のレギュは人狼の人数が多いので圧倒的に人狼が有利です。トリッキーなプレイをしないと市民陣営は勝てません」
六呂「確かに七菜ちゃんが騎士ならありえなくはない」
五間「そうだ。そもそも九院さんが霊媒師COしたのは怪しい。人狼が3人いる場合、序盤で霊媒師COするのは危険すぎる。つまり九院さんが人狼の可能性が高い」
七菜「九院さん、一応霊媒結果をどうぞ。どうせ黒出しするでしょうが」
九院「そう、三井さんは黒よ。六呂ちゃん、五間さん騙されちゃダメ」
一橋「ここで真偽はつかない。六呂の占い師は確定しているんだ。今日は六呂から黒出しされた二宮さんを吊ろう」
二宮「……もう抵抗しても無駄ね。私は人狼です。吊ってください。そして最後の人狼は六呂ちゃんです。六呂ちゃんが私に黒出ししたのは※ライン切りです」
※ライン切り:人狼同士だと疑われないため、人狼同士が疑い合う
六呂「ちょ、ちょっと、どういうことよ!?」
二宮「どうせこれで勝っても渋谷から人はいなくなって、私達は食料にありつけません。もう終わりにしましょう」
五間「え、九院さんと六呂ちゃんも人狼? 昨日処刑された三井さんは? もうわからん!」
GM「そろそろ投票の時間です。私がせーのと言ったら、人狼だと思われる人を指差してください。せーの!!!」
全員が二宮を指した。
GM「投票の結果、本日処刑されるのは二宮さんです。二宮さんは絞首台までお越しください」
二宮は微笑みながらに絞首台まで歩いていく。
GM「遺言をどうぞ」
二宮「皆さんお元気で」
GMが二宮の首に縄をかけ、絞首台のレバーを引くと床が開いた。二宮は処刑された。
GM「それでは皆さん。恐ろしい夜のターンがやってきます。プレイヤーは小屋へとお戻りください。人狼は深夜になったら出てきて、どなたか一人を襲撃してください」
三日目昼のターンのまとめ
一橋:生存。
二宮:死亡。
三井:死亡。
四谷:死亡。
五間:生存。
六呂:生存。
七菜:生存。
八戸:死亡(人狼に襲撃されているので人狼でないことは確定)
九院:生存。
役職の考察はもはや不可能。
【三日目:夜のターン】
七菜「お母さんありがとう。お母さんの言う通りにしたよ」
七菜「今夜の襲撃はどうしよう……おじちゃんだけは絶対に襲えない」
【四日目:昼のターン】
GM「皆さんおはようございます。夜が明け昼のターンです。昨夜襲撃された人はいません」
五間「またグッジョブが起こったのか! 人狼は六呂ちゃん、九院さんのどっちなんだ!」
一橋「七菜、なぜ昨夜俺を襲撃しなかった」
七菜「……できないよ」
一橋「お前にはわかっていたはずだ。俺が真・騎士だと」
六呂「一橋さんが真・騎士だったんですか! やっぱり七菜ちゃんが人狼ですよね?」
一橋「一昨日の夜、俺は九院を守った。昨夜は五間を守った。俺目線、九院が真・霊媒師は確定だ。九院、昨日の結果は?」
九院「二宮さん、黒」
一橋「つまり残る人狼は一人。六呂の真・占い師も全体の流れから確定している。つまり、お前がラストウルフだ、七菜」
七菜「……おじちゃん」
一橋「だが一つだけお前が勝つ可能性はあった。昨夜俺を襲撃しておけばな。五間や六呂はパニクってるし、誘導して九院を人狼に仕立てあげることもできたはずだ」
七菜「襲えるはずがないよ、おじちゃんを!! わたしを育ててくれたおじちゃんを!!」
七菜は大泣きしている。
一橋「七菜、俺は全力で戦う。俺は今日、お前に投票する」
GM「そろそろ投票の時間です。私がせーのと言ったら、人狼だと思われる人を指差してください。せーの!!!!」
全員が七菜を指した。
一橋の目からは涙が溢れる。
GM「投票の結果、本日処刑されるのは七菜さんです。七菜さんは絞首台までお越しください」
七菜は大泣きして立てず、GMに絞首台まで連れていかれる。
GM「遺言をどうぞ」
二宮「おじちゃんありがとう。あの日々は本当に楽しかったよ」
GMが七菜の首に縄をかけ、絞首台のレバーを引くと床が開いた。七菜は処刑された。
GM「恐ろしい夜はやってきません。市民陣営の勝利です。おめでとうございます!」
九院「七菜ちゃんと過去になにかあったんですね?」
一橋「お前には関係のないことだ」
九院「そう」
五間「我々は勝ったんですね! これで人狼は全滅したんですよね!」
六呂「と言っても渋谷に住民はもう私達だけですよ」
五間「私は長年人狼ゲームをやって生き抜いてきました。これでもう人狼をゲームをやらなくて良いと思うと安心します。もうプレイできないって思うと少し寂しい気分にもなりますが」
GM「皆さんには渋谷区民の代表として次の東京二十三区戦へと進出してもらいます。他の区では人狼陣営が勝利しているところもあります。また東京だけでなく日本全国で市区町村戦が行われています。私、渋谷区GMとしては皆さんにはぜひ全国優勝をしてもらいたいです!」
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狼少女を保護したばかりの頃。
狼少女「おじちゃんゲームしよ!」
一橋「いいぜ。俺は子供相手でも手加減なんてしないからな」
狼少女「ゲームで手加減なんてされたらつまらないよ! お互い全力でやらないと!」
一橋「そうだゲームはお互い全力でやらないとな。これからずっとお前とゲームするとき俺は全力だ」
終
原作:原作者は OZさん です(編集者注)
・基本登場人物
①人・・・中年男性。
②狼娘・・・狼人間の娘。ある程度成長する迄、仲間を見つける能力は発動できない。
③人狼A・・・狼人間の里から良人を追って渋谷の町に降りてくる。
④人狼B・・・数ヶ月前に村から妻子を残して行方をくらます。
※名前は執筆者にお任せします。登場人物を増やしていただいて構いません。
・あらすじ
"人"は、幼い頃より妖怪、幽霊を見るのが夢だった。父は天孫降臨伝説で有名な宮崎県高千穂の出身、母の実家は河童が出ると噂される岩手県遠野市にあった。幼い頃にはいわゆる《人ならざるもの》に会えるかもしれないという期待が祖父母の家を訪ねる毎度の楽しみになっていた。しかしなかなかその夢は叶うことはなかった。
大人になった"人"は「幽霊は人の多い所に出没する」という、なんともありきたりな助言に誘われて、初めて渋谷の街に出た。
そこでアルビノのように色が白く儚げな女性を見かけた。不思議な事に彼女は見えない壁で守られているかのように周りの人は彼女に気付いていない様子だった。そして、ずっと見ていた筈なのに気づいたら彼女は姿を消していた。
♢
そんな不思議な体験をしてから暫く経ったころ渋谷で猟奇殺人が起きた。被害者はどれも公園や駅をねぐらにしているホームレス。犯行は深夜に首元を喰い千切られていることの事だった。私はこれに《人ならざるもの》が関与していると見て再度渋谷へと繰り出した。
宮下公園で"人"は驚くものも見た。小さな女の子"狼娘"がゴミ箱で食べ物を漁っていた。たまたまポケットに入っていた菓子パンをあげたら懐かれたようで、色々なことを教えてくれた。渋谷の町でお母さん(人狼A)と二人で暮らしていた事、お母さんが都会に降りてきたのはお父さん(人狼B)を追っての事だったこと、お父さんが以前は村のリーダーだった事、お母さんから「お父さんを探して一緒に村に帰るよう」言われた事を話してくれた。なんだか物語のようにフワフワと聞いていただけなのだが、次の言葉を聞いてゾッとした。「人間より前にお父さん見つけられなかったり、自分の正体をさらけ出してしまったら、処刑されるって」・・・まるで処刑が何なのか分かっていない調子で言った。この子と一緒に、この子の父親を探して共に帰してあげられるのか、はたまた最悪な結果になるのか・・・どう転ぶか分からないが今はこの子を手助けする事に決めた。
※ネタ 源 『人狼ゲーム』
 




