女の子が女の子に告白していた!
空き教室にポツリと女の子が立っていた。
体を揺らして目を閉じる少女はサラと呼ばれている。
サラはカッと見開くと、さっきまで緩ませていた頬を揉んで済ました顔を作った。
ちょうど、ガラガラと教室のドアが開く。
『サラー、どうしたのー』
現れた美女はミオと聞いている。
『実は……』
「なにー」
サラの言葉を待つミオ。
二人は仲良しで。
食堂、通学路、トイレ。どこで見ても二人で居るらしい。
「それよりさ! 駅前のクレープ食べた!?」
「え、まあ、食べたけど」
「今度食べにいこ、まだ食べたことないから」
楽しそうに広がる他愛もない話。
「じゃ、今からさっさと行こー」
「ま、まって……」
閑散とした空間に芽生えた確かなつぼみ。
「えー」
「大切な話、だから」
張り巡らされる想いはどんなことだろうか。
親のこと? 今後のこと?
いや、相手のことを考えているに違いない。
サラとミオは乗る駅と降りる駅が一緒で、自分が悲しくなるだけでは済まない。
どちらかが、特急列車にわざわざ乗らなければ行けなくなる。
ミオに特急を毎日乗って欲しいわけが、ないのである!
サラが相手のことを考えるのは当たり前のことだった。
「うう、ずっと一緒で居てくれる?」
「卒業したらわかんないけど、ずっとサラと一緒に居たいかな」
「じゃあ、言い、ます!」
「ます?」
サラはミオから一歩下がって改まる。
「えっ?」
背筋を伸ばして足並みを揃え、両手を後ろに隠して不安を隠す。
肩が大きく縦に揺れ。
『ミオのことが、好きです』
言い切ったサラの表情は赤く、丸い目でミオをじっと見ている。
「好き?」
「好き、だいすき、つきあいたいくらい……」
言葉が途切れる。
縁の切れ目を見たと思うほど、長い無音。
「だめ、かなあ……?」
今にも泣きそうなサラの声にミオが近づいた。
「そんな顔見せられたら、断れるわけないでしょ」
「じゃあ!」
「駅前のクレープ、コンプリートしに行こっか」
「やったあ! 半分こしよ!」
サラの肩を抱いて優しく語りかけ、教室を出ようと導く。
「なんだか、恥ずかしいよ」
サラがピタリと止まると遅れてミオが戻る。
「なんで?」
「分かんない、好きだからかな……?」
「手、繋ぐのは?」
「恥ずかしくない、かも」
体を引き合って互いに手を差し出して握り合う姿は、つぼみが開いた一輪の花のように美しかった。
「実は夢で、教室から出たら冷めたりしないかな」
「つねってあげよう」
「うーいたいー」
「夢じゃなくてよかったじゃん」
二人に合わせてその場を去ろうと歩を進める。
パキッ!
「「誰!?」」
枝を踏んでしまったようだ!
「ちょ、誰か見てた? 出てきて! ボコボコにするだけだから!」
「ミオ、こわい……」
「待て! 逃げるな!」
「クレープ屋、閉まっちゃうよ」
「た、たしかに」
ミオの声は段々と聞こえなくなっていった。
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