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異世界パン屋~赤眼の少女と機械じかけのパン職人~  作者: どるき
終章

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だいぶ未来からのご挨拶

 急に時間が飛んでしまって申し訳がないが、ヨハネとパン屋を開いてから三年の月日が過ぎた。

 恋をして、愛し合って、そして死にかけて。いろいろな障害の末に結ばれたわたしたちは結婚まで秒読み段階の婚約者となっていた。

 当時の日記を広げながら馴れ初めを手記に納めるのは少し照れ臭いが、親友から「ミレッタの体験を参考資料にしたい」と言ってきたので、惚気を兼ねて書き殴っている。

 どうしてここでフェイトちゃんが出てくるのかと言われれば、今のわたしはヨハネを連れて日本に帰ってきているからに他ならない。

 しかも帰って来た時点では、こちらでの日付はあの洪水が起きた日の翌日だったのだから、異世界転移とは不思議なものだ。

 どうやって帰ってきたのか?

 そうやってヨハネを連れてきたのか?

 それを語るのにはまだ早い。

 ここまではほんの序章。わたしとヨハネのくんずほぐれずにとっては軽いジャブの段階に過ぎないのだから。


「明日もお仕事だしそろそろ寝ようか、あ……ミレッタ」

「アマネでも構わないって言っているじゃない、ヨハネ」

「そうだったね。でもご両親もみんな天音だし、僕だって結婚したら天音になるんだから、早く馴れておかないと」


 就寝前のヨハネとのこんなやりとりは良くあることだ。

 こちらに帰ってくるまですっかり勘違いさせてしまっていたのだが、ヨハネはアマネが名前でミレッタが姓だと思っていたそうだ。

 言われてみればジャポネの人々は姓が後ろにつく名前だったので、勘違いも無理はない。


「それじゃあ、寝ようか」


 日本に来てからのヨハネは身元不明の外国人という体で押し通している。まさか異世界人だなんて言われても、信じる人は少ないだろうし。

 それでもフェイトちゃんは「そうなんだ、カレシができてちょっと羨ましい」と、すんなり受け入れてくれた。

 その代わりに彼女が隠していた事をいくつか教えてもらったので、彼女のような化け物相手に超常の力で戦っている人間からすれば、まさしく「そうなんだ」と軽く受け入れてしまうモノのようだ。

 だが世間はそうもいかないので、ヨハネとの婚約関係は戸籍などの手続きでも有利に働く。結婚して婿にしてしまえば、ヨハネも戸籍上は立派な日本人なんだし。


「んもー。今日はここまでだよ」

「わかっているさ」


 日本に帰ってきてからのわたしたち───正確に言えば、ジャポネで正式に恋人関係になって以降のわたしたちは、同じベッドで毎晩眠っている。

 それこそ付き合い始めた当初などは若気の至りで見境なく盛りあったりもしていたが、帰ってきてからは仕事優先で自重している。

 いくら好きあった関係でも、毎晩重なるのはマンネリになって良くない。

 それにヨハネもジャポネにいた頃の絶倫はなりを潜める程に普通の体力になったしまったので、毎晩していたらわたしだけでなく彼の身も持たない。

 帰ってくるまでの間にわたしとヨハネに何が起きたのかは、まあ例のごとく今は語るべき段階ではないので、今回は割愛しよう。

 とりあえず今夜は背中から抱きついて眠るヨハネにわたしはドキドキと興奮しつつ、それ以上は求めないように我慢しながら眠りについた。

 明日のお仕事が終われば戸塚ブレットの休業日なので、その後は一週間ぶりのオールナイトと洒落込める。

 なのでフェイトちゃんに自慢するための三年間の手記は明後日から続きを書き上げようか。


 わたしの名前は天音ミレッタ。

 三年前に出会ったオートマタンのヨハネと恋に落ち、そして今は彼との結婚を控えた二十歳。

 本当は二十三歳と言うべきかもしれないが、異世界にいた期間は日本の暦には反映されなかったので、そこはご愛敬。

 異世界から連れ帰った旦那様はわたしを抱き締めながら、明日の仕事に備えて眠っている。ふたりで仲良く戸塚ブレットに勤めているせいか、ときおり戸塚店長をわたしたちの惚気で辟易させてしまっている様子は少し申し訳ない。

 まあ店長だって酸いも甘いも経験した既婚者なので、新婚夫婦とはそう言うものだと諦めモードで見守ってくれているわけだが。

 この幸せな気持ちをわたしは親友の頼みで手記に纏めている。

 ひとまず出会いの物語は書き終えたので、次はどの話を文字に書き出してあげようか。

 わたしは彼女に自慢する項目を吟味しながら、ヨハネの腕の中で眠りについた。

 わたしとヨハネの蜜月は、まだ始まったばかりだ。

ここでいったん終了となります。

だいぶ話数が多くなったので、再開するときはまた10万字程度のボリュームができたら、副題を変えて新規にしようと考え中です。

その時は後書きで誘導リンクを貼っておきます。

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