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異世界パン屋~赤眼の少女と機械じかけのパン職人~  作者: どるき
第三章 初恋の味

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デートのお誘い

 ライ麦パン作りに挑み始めてはや一週間。そろそろ街で買い求めたライ麦の粉が底をついてきた。

 最初は万人受けとダメで元々という気持ちを表すような失敗作だったライ麦パンにも慣れたもので、ダメ出しを経て路線が定まったパンは焼く度に魅力を増していく。

 商品名をつけるのならば「初恋の味」とでも言うべき酸味を持ったパンは、そのまま食べても美味しい。これならヨハネのパンとして自信を持って他人にもオススメできるものに仕上がっていく。

 だがこれだけで上手くいくのならば苦労はない。おそらく過去のパン屋もこの段階までは到達していたであろうと考えれば、これだけでは店としては成り立つ要素が薄いからだ。

 美味しいと言ってもやはりこのパンは人を選ぶのもまた事実。固定客さえ掴んでしまえば別なのだろうが、それでもなおこのパンだけでは戦えないことなど想像に難くない。

 せめてあと二つは目玉が欲しい。


「明日なんだけれど、また街まで行かない?」

「買い出しかい? ライ麦粉はたしかにもうないけれど、蕎麦粉ならばまだあるから、僕はもう少ししてからでも良いと思うけど」

「ヨハネのケチ。まあお金を出すのはそっちなんだから、無理にとは言えないけれど」

「ケチとは酷いじゃないか」


 気乗りしないヨハネへのちょっとした文句のつもりが、どうも彼を刺激してしまった。


「女の子にそんなことを言われたら、エドマエ男子の名が廃る。だから明日も諸々のことは僕に任せてくれたまえ」


 だが丁度いい発破だったようだ。わたしのお誘いに乗ってくれたヨハネと明日はデートに行けるのだから。


「エドマエって言うのがどの様なものかは聞かないでおくけれど、明日は楽しみにさせてもらうから」

「期待しておくれ」


 夕食を済ませたわたしは明日の準備という名目で、今夜は早めに床についた。

 明日の目的は食材の補充もあるが、それ以上に新しいパン作りのための刺激を得ることにある。部屋に閉じ籠ってシコシコと作業をしても、行き詰まったらどうしようもない。

 この力強いライ麦パンにたどり着いた時点で英気を使いすぎていたので、そろそろ他人からの刺激でそれを補うべきだとわたしは判断した。

 それにいざお店を始めることになったらヨハネの出不精はいただけない。それを治すための慣らしの意味でも、街には積極的に足を運びたかった。


「まるで恋人みたいね」


 まだキスのひとつもしたことがないのだが、お互いに支え合うヨハネとの関係をわたしはそう評価した。どちらかと言えば夫婦や兄妹と言った「家族」の方が近いのかもしれないが、なんとなく恋人という響きが彼氏など居たことがないわたしには魅力的だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 遊戯王の方なんだよなぁ…
[一言] 何処かの王子「へぇ〜?デートかよ。」
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