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異世界パン屋~赤眼の少女と機械じかけのパン職人~  作者: どるき
第三章 初恋の味

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食後の運動

 軽い昼食で糖分を補給しての昼下がりになると、わたしも少し眠気が出てきた。

 思い返せば朝の四時半に起床して昼過ぎまでパンを焼く作業に没頭、その後は昼食を挟んで休憩をしてから夕方まで店番という慌ただしい日々を過ごしてきたわたしとしては、何もない日が二日も続くなど久々なことだ。

 戸塚ブレッドでは週一回の休業日にはお休みをもらっていたし、月に三日ほどは骨休みの名目で休暇を与えられていた。

 地域の食卓を預かる者の責務として、年中無休で働くほどではなかったのだが、それでも妙にこの休日はこそばゆい。

 こういうときは趣味に耽るのにうってつけではあるのだが、あいにく娯楽道具はヨハネが買ってくれた本しかない。こうなったら後は運動しかないだろう。


「ねえヨハネ。一緒に運動でもしない?」

「いいね。食べて寝るだけではアマネの体にも良くない。でも何をしようか」

「無難にジョギングとかでもいいんだけれど……ヨハネは痛いのは大丈夫?」

「程度によるかな」

「だったら折角だし、プロレスごっこでもして遊びましょうか」


 思えばなんでこのときのわたしはフェイトちゃんとふたりで遊んでいるときのノリをヨハネにぶつけてしまったのだろうか。

 プロレスごっこと聞いたヨハネは赤面し、軽く咳き込む。


「ぷぷぷ?」

「まあ怪我をしない程度ならなんでもありな取っ組み合いだけれどね。昔から護身術を兼ねて友達に教わっていたのよ、こういうの」

「い、いいのかい? 僕が相手で」

「わたしから誘ったんだしいいに決まっているじゃない。あ、もしかして偶然を装ってイヤらしいところでも触る気なんだ。誘った手前もあるし、やれるものならちょっとくらいは触ってもいいわよ。というか、少しは乱暴にしないと運動にならないし」


 わたしとしてもラッキースケベの範疇くらいは許してあげるつもりで彼を誘っていた。なんでそこまで気を許していたのかは脇にどけるとしても、ヨハネに触られてもそれほど不快では無いのだろうという予感はこのとき既に感じていた。

 そんな見方によっては誘っているとしか思えない態度を取ってしまったわたしは、見事にヨハネを興奮させてしまったようだ。彼は途中から話を聞いていなかったようで、様子がおかしい。


「痛くしたらごめんね」

「ちょ、ちょっと!」


 興奮したヨハネはここがリビングだというのも忘れて飛びかかって来たのだ。流石に机もあるし危ないので避けるより他にないが、横を通りすぎたヨハネの振り向く顔がちょっと怖い。

 何を勘違いしたのか、いや勘違いさせたわたしが悪いのだが、どうやらヨハネはソファーにわたしを押し倒すつもりだったようだ。


「ここじゃ危ないわよ。汚れてもいい服に着替えて外でやりましょう」

「着衣で外がお好みだなんて、意外と好き者なんだね」

「へ?」

「わかった。僕はこのままでいいから、着替えてきてよ。外で待ってる」

「う、うん」


 このときのヨハネが何を頭に浮かべていたのか。

 それがどのような耽美な世界かは図りかねるが、彼の立場で後から考えてみると自画自賛ながらわたしが完全に悪かった。

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