5日目夜
修練をはじめてから早くも4時間が経過していた。研究室の窓からは月明かりがうっすらと見えていた。
「くそっ! 全然分身できん!」
俺は自分の能力の低さにイラついていた。
「焦るな焦るな。焦りは厳禁じゃ。まずは瞑想し精神を集中せい。それができんと話にならんぞ」
大魔法使いのブロイさんはその都度アドバイスをくれる。夜になっても場を離れることなく教えてくれる。本当にありがたい存在だ。
「はい、すみません。まずは精神集中を心がけます」
俺は目を瞑って心を整えるように集中した。
「瞑想し精神を集中させ、身体の中心に魔力を持ってくるのじゃ。そして魔力が身体の中心に溜まってきたら、その魔力を自分の分身だと思うことじゃ。そのあとはゆっくりと慎重に、その分身を自分の身体から引き離していくのじゃ。それで実体と分体に綺麗に分かれることができたら分身魔法の習得じゃ。まあ、この分身魔法を簡単に説明すると幽体離脱する感覚かのう」
「わかりました。ありがとうございます。あとその説明を聞いたのはこれで32回目です」
「おっほっほ。そんなに説明したかいのう。最近物忘れが激しくて激しくて……」
若干の不安を覚えつつ、俺は引き続き修練に励んだ。
時間は刻々と過ぎていく。
一日がとても短く感じた。
そうして、あっという間に夜が明けていった。




