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彼女とクラスメイト達に裏切られた絶望者は異世界を夢想する  作者: 滝 清幹
第三章:堕落した神々との戦い:アルタイル編
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妖刀ムラサメ

「......えっ? あれ妖刀なの!? てかパンレスが妖刀なのか!?」


「あぁたった今思い出したんだよ。あれは仮の姿、本来はあの握られている刀だ」


 マジかよ、妖刀ってのはあんなのこともできんのかよ。それならあれか、俺はずっと妖刀に追いかけられていたのか? もしかして俺のア〇ルを鞘と勘違いして入れようとしていたのか、何だよ単なるうっかりさんかよ。まったく驚かせやがって、ちょっとPKしちまったじゃねえか。


 先ほどからこちらをジッと注視するかのようにして見ているパンレス改めムラサメを、同じく俺も注視しながらPKを直すことにした。


「ところで、あの出ている青い靄みたいなのは何なんだ?」


「あれは怨念だな。多分だが、ムラマサと引き離されたことが原因だな」


 先ほどのムラサメの言動から予想できたのだが、何となくムラサメが握っているムラサメから出ている青いドライアイスのような靄を指差しながら俺の右手に握られている彼に訊くと、予想通りの答えが返ってきた。といかなんかどっちもムラサメだから分かりにくいし、人形の方のムラサメはそのままで、妖刀の方のムラサメは妖刀という呼び方で統一するか。


 俺はムラサメの行動に注視しながら奴の握る妖刀を注意深く観察する。先ほどからその怨念の感情である青い靄は、湧き出すかのごとく絶え間なくその妖刀から溢れ出ている。これがムラサメの相棒であるムラマサを引き離されたことに対する奴自身の怨念の強さを現わしているのだろう。それを直視しているのと脳内にその感情が伝わっているのか、少しめまいがするような感じがしてきたな。


「あまりあの靄を直視してはいけないぞ、あれは精神に干渉するものだからな」


 そんな俺の様子を察したのか、彼は警戒心を含むような声で忠告してくる。


 たしか呪怨でもそんな感じだったな。つまりあの怨念は人に伝播するものと考えていいんだろうな......そういえば、アスナの師匠であるルイ師匠人が使用していたのはムラマサだったな。そんでその時は紫色の透明な蛇が彼の腕に巻き付いていたと言っていたような気がする。だとするとムラマサも同じ感情を抱いていたと考えていいかもな、つまり両想いってことかくそがっ! ......妖刀に嫉妬する俺って、一体......。


 というか肝心なことを訊いてなかったな。


「ところでどうやってムラサメを倒せばいいんだ?」


「う~ん、倒すというよりも......今の仮の姿を形成している彼女の力を、抑え込むという認識をした方がいいな」


 仮の姿ってことはあの日本人形のことだよな、それに倒すじゃなくて抑え込むってどういことだ? 卍固めでもすんのか? てかそもそも抑え込んだその先に光はあるのか? 


「それで抑え込んだらどうなるんだ?」


「それは勿論あの姿は解け、残るのは本体である彼女だけだ」


「あ~なるほど~」

 

 どうやら光はあったようだ。しかし問題は、「光になれええぇぇぇぇぇ!!」をするためにはどうすればいいのかっていう話だ。


「それで抑え込むにはどうすればいいんだ?」


「それならほら、君達が拾ったアイテム? と呼んでいた道具達を使うんだよ」


 ここで使うのかよ。まあ逆にここ以外で使わなかったらどこで使うんだ! っていう話だかな。


 そこで一旦俺は、ムラサメがまだ扉の前から動いていないのかどうか確認してみる......よし、空気を呼んでいるのかまだ動こうとする素振りも見せていないな、空気を読む子は誰からも好かれるぞ。俺はそういう奴は嫌いではない(だからといって好きでもない)からそのまま一生そうしていてくれ。


「てかなんであんなアイテムなんだ? 一瞬習字でも書くのかなあと思ったんだぞ」


「? 習字っていうのは何かね?」


「......えっ」

 

 こんなもん用意するもんだからな何かしらの理由でもあんのかあと思って訊いたのだが、若干会話が成り立っていないような気がする。どういうことだ?


「そもそもなんであんなアイテムを準備していたんだ?」


「あぁそれは私がモチーフになったこの刀が存在していた時代では、それらを日常的に使用していたという記憶があるからだ......それだけだな」


 それだけかよっ! もう少しストーリー展開図ろうぜ、設定が安直すぎるからマジ意味不だから。意味が分かると怖い話が存在するその意味がそもそも分からないっていうぐらいに。つまり俺が言いたいのは......こいつ(俺)何言ってんだ?


 まあ設定はともかくだ、これにはそれだけの必要性がある。だから彼はこれを用意したのだろう、そう無理矢理自分に言い聞かせなんとかツッコまずに済んだ。


「そうか、それで使用方法は?」


「そのことなんだが......ほら、私が地下から出る時に渡した巻物があっただろ。あれに書いているんだが......」


 彼がそう言うように、あの地下室から出ようとした時に彼が自身の能力で作り出しのか、一本の巻物と俺に渡してきたのだ。もらった当初俺は、口寄せでもしようかなと思い、痛いから指じゃなくて鼻血でも出すかあと考えていた。だがその時彼は、「これはその時のために持っておいてくれ」と言ったので俺は渋々ながら諦めるしたのだが......遂にその時が来たのだろう、俺は覚悟を決めて次に続く「口寄せの術だ」が来るのを少しだけ期待していたのだが、何故か一向に喋り始めない。ムラサメを見ると、この説明会が終わるのを待ってくれているのだろう、ジッとこちらを見ている。お互い大変ですねえと心で労いの言葉をムラマサに掛ると同時に、再度黙り込んだ彼に少しの苛立ちを抱く。すでにどちらを敵を認識しているのか意味不な状況である。


「なんで黙るんだ。使用方法は簡単なんだろ?」


「......たしかに簡単だ......二人なら」


 なるほどなるほど、つまりマリオ(俺)&ルイージ(アスナ)RPGというわけか。なら俺のすることは一つだけだな。


「すぅぅぅ......」


 そこで一旦大きく息を吸う。


「アスナアアアァァァァァァ(ルイージイイイィィィィィ)!!」


 俺は異世界の中心で、弟ではないが相棒である彼女の名前を叫ぶかのようして呼んだのだ。だが一瞬兄自身も弟を呼んでいたような気がするが、まあいいや。とにかくアスナが押入れの中で気絶していないことを願いながら......もし気絶していたなかったら声のする方に来てくれることを願うしか今はできないな。


 なぜなら俺が大声を出したからなのか、今まで静観していたムラサメが自分自身である妖刀を構えている。どうやら合同説明会は終わりのようだ、そろそろ就活(血の七日間)が始まろうとしているってことか......って言う前に俺働いていたーー!! 加えてshatikuーー!!


「ムラサメの力は何なんだ?」


 なんか社畜って言うよりもshatikuって言った方がかっこいいなあ、とかなり場違いなことを考えながらもムラサメに倣い俺も妖刀を構えそんな妖刀である彼にそう尋ねた。


 この力次第で俺の今後の人生が変わってくるだろうからな。弱いなら無事脱出成功! 強いなら無事かどうかは知らないというよりも絶対あの妖刀で斬り掛かってくる、つまりかなりヤバイ状況になってしまうのだ。それに呼応するかのようにさっきから心ちゃんが、「ぽぎゃあああぁぁぁぁ!!」と泣き叫んでいる。


「彼女の力は浄化すると言ったものだ。戦闘向きの力ではないから気にしなくてもいい」


 それを聞いて心ちゃんは、「うひょほおおおぉぉぉぉ!!」と言っている。どうやら心ちゃん嬉し泣きだったようだ。それに戦闘向きじゃないなら安心だわ、一応ステータスも低下しているからそこんところ気にしていたからな。というか浄化って何だ? 綺麗にする方の意味だったらその力でこの穢れてしまった心を浄化してくんねえかな。


「分かった」


 一応安心することはできたのでそう呟いのだが、それが間違いだった。


 

 一瞬の気の緩みが戦闘を左右するなんてものは、ダンジョンを通して経験済みだ。



 なのに俺の油断してしまった。



 だから俺は、扉の前にいたムラサメの体がブレるように消えたことに気づいた。


 

 ヤバイ! そう思った時にはすでに目の前に刀が振り下ろさている光景が見える。


 

 その光景がスローモーションのように俺には見えた。



 だが俺の思考とは裏腹に、体はまったく動こうとしない、いや動けないのだ。


 

 ステータスの影響だろう。


 

 だから今の俺にはその迫りくる脅威を、自身に降りかかろうとしているその脅威をただ見ていることしかできない。


 

 そして妖刀がゆっくりと、だが確実に俺の頭に近づいてくる。



 とうとう妖刀との距離があと数十センチのところに迫る。







 だが俺は......






 自分の血も、走馬灯を見ることはなかった。

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