宴会
シスコン野郎との決闘で無事勝利を得て俺の名前は再度昇格し終えた後、急遽宴会を開くことになり俺とアスナは竜神を倒してくれた上にエレナまで救ってくれたということで、一躍時の人となってしまい宴会の前で何故かスピーチなどをさせられてしまっている。
「ではなにか目標はありますか?」
竜人族の女性の人マイクを持っちながら、大勢の人の前でそう聞いてくる。
てかマイクとかあっていいのかこの世界?
仕方がないので俺は考えた......そして高校でもこんなことあったなあと思い出す。
忘れもしない、高校一年の初めての体育の時間。
グループで目標を立てろと言われたがあまり人間関係が出来ていおらず、全然目標が出て来なく気まずい雰囲気になったので、俺が面白いことを言って場を和まそうとして言った目標がある。
それがこれだ、ワン・ツー・スリー。
「全国出場ってのは?」
「......ふっ」
誰かが失笑したのが聞こえた。
そのせいで廊下を歩いているとよくこんな会話が聞こえてきたものだ。
『おい、何で全国代表がこんなとこにいんだよ?』
『あ? そんなの決まってんだろ。県予選で落ちて夢破れたからだ』
そもそもスポーツしたことねえーー、でもマリオゴルフ64ならしたことあるーー。
ちなみにこの時他のグループからこんな声が聞こえてきた。
「俺の目標は中二病でも恋をすることだ! そう思わないか弟者!」
「兄さん!? さすがに中二病でも恋はできないよ! 自覚あるなら一回でいいから二人で克服しよう! それとこれはグループ目標! 個人目標じゃない! それに体育と関係ない!」
だが彼らは克服できなかったのだろう......今も当時のまんまだからな。
そして俺は家に帰ると同時にソファーの上で丸まくなってしまう。
これは悶えの構えといって、これをすることで外界からの情報をシャットアウトできるのだ。
メリットはそれだ、そしてデメリットは......。
その時妹が家に帰って来て、この悶えの構えを見た妹が言った言葉がある。
それがこれだ、ワン・ツー・スリー。
「お母さん~家の中に巨大ダンゴムシが侵入してる」
どうらやデメリットはヴィジュアルだったようだな、そして俺はこの時から甲殻類にカテゴライズされていたのだ......。
「あの~目標はありませんか?」
これもいい思い出(黒歴史)だなあ~。
「あの!」
「......はい?」
周囲を見回す......現状理解! 目標設定! 設定完了! 選手宣誓!
「今の俺の目標はこの世界から、簡単言えば困っている人を救うことです。自分にとってそれは使命であり、自身で決めた道でもあるからです。なので、もし困ったことがあったらいつでもお呼びください。すぐに駆け付けますので!」
かっこよく決め顔で言い放ってやったぜ!
ただしパシリババァはノーカウント!
「なるほど~素晴らしい目標ですね......だそうだよエレナ」
何でエレナ? と思って彼女を見ると顔から湯気が湧き出したかのように真っ赤にしている。
「では次に一応相棒のアスナさんに目標を聞いてみましょう」
一応って......それってもうこの里の常識かなんかなのか? いや逆に考えるだ俺、つまりそれほどの存在だってことの証明になる。
「私の目標はユウト様に肩を貸すことです。彼の歩もうとしているのは過酷で、誰だってくじけそうになるほど大変な道です。彼一人ではどうしようもない状況に陥るかもしれない。そのために私は剣を握ります。それが私の決めた道だからです。」
一人自問自答していた俺は、突然そんなことを聞いてかなり驚いていた。
いつもなら100パーセント辛辣なことを言ってくるんだろうなあ~まあ最近言われ過ぎているので逆に言われないと注意してしまいそうだ......あぁこういうのをマインドコントロールって言うのか。
まあそれは事実としてだ、多分彼女が言っているのは堕落した神々との戦いについてのことだろう。
俺の表情を見たアスナが少し照れくさそうにしながら言う。
「こういう場所で言うことに意味があるでしょうし、自分の道の正しさを確立させたいからですかね」
......なんか難しいことを言っているかよく分からん。
「では英雄達の目標も聞けたことですし、もう一人の立役者でありこの里の守り人のギルさんに乾杯の音頭を取ってもらいましょう!」
司会者がギルにマイクを渡す。
一瞬だがギルがこちらをチラッと見てニヤリと笑った気がする。
いつか立てたフラグが今来たようだ。
「乾杯の音頭を取らせてもらう!」
そしてギルは高らかと大きな声で言い放ったのだ。
「氷柱野郎とアスナに乾杯!!」
「「「「「「乾杯!!」」」」」
よし! フラグ回収完了!
てか決闘の結果反映してねえじゃあねえか!
ついでに氷柱野郎=俺っていう認識がすでにこの集落では出来上がってしまっているようだ......。
無事フラグを回収し終えた俺は先ほどからいろいろな人から感謝の言葉を貰っている。
そして忘れてはいけない人が一人いる。
「あんたよくやってくれたよ! ありがとう!」
「いいよおばあちゃん気にしないで。元々助けるつもりだったから」
パシリが専門職のガロンさんだ。
あの時の馬鹿でかい声を出していた時とは雰囲気がかなり違う。
「お礼といってなんだけど、これをあげるよ」
そう言って彼女が果物入れの籠を差し出してくる。
「あ、ありがとう......もしかしてこれって店先に置いていた野いちご?」
「そうだよ、取ってきてまだそんなに日数が経っていないから新鮮だよ」
以前俺は宣言した通り、店先にあった野いちごの中に蛇いちごを入れておいたのだ。
「そ、そうなんだ。あ、後で食べるね」
誰が自分でこんな物を入れたのを知った上で食べるんだよ、すぐにこの世から消してやる!
「ここっで食べてくれないか? そのために持ってきたんだから」
くそっ! 逃げ道を塞がれしまった!
「分かったよ......食べるからその籠貸して」
「はい、『この場』で『全部』食べるんだよ」
全部!? あそこに置いてあったのだったら1籠大体1キロはあるだろ! 蛇いちごを約600グラム入れちまったじゃあねえか! 情熱を懸けるとこがおかしい!
何かがロンさんの表情も怪しいし......まさか知っているのか!?
しかしそんなことカミングアウトしたら俺の立ち位置が悪くなる。
困っている人をお前が生んでんじゃねえか! といった風に勘違いされてしまうからだ。
なので俺は諦めて籠の中を覗いてどれがハズレかを見つけることにした。
だが野いちごと蛇いちごって仲間みたいなもんだから見分けがつかないんだよな。
仕方がないので適当に取って口に入れてみることにする。
......何か、変な味するんだけど気のせいかな?
「う、うん。美味しかったよおばあちゃん。ありがとね」
「まだ残っているようだが......もしかして美味しくなかったのかい?」
籠の中にはまだミックスいちごが990グラムほど残っており、蛇いちごに至っては590グラムだ。
つまり先ほどのは蛇いちご! 我慢すれば食べれなくもない、それに見た目をまずそうではないからな。
俺は蛇いちごに命を捨てる覚悟で残りのいちごすべてを食したのだ。
「うっぷ! ......ほら言っただろ、このいちごは美味しいって」
「そうかいそうかい、なら良かったよ。それと......」
そう言うとガロンさんは俺に一瞬で近づき耳元で囁く。
「もう少し気配を消して入れないと、実際の戦闘ではあまり役に立たないからそこら辺は修行不足だよ」
今残像が見えたんだけど!
「ははははい!」
「うん、それじゃあね」
満足そうに頷くとガロンさんは人ごみの中に消えていったのだ......あの人がこの里の裏を仕切っているボスなんじゃねえの?
毎回思うが何かスゲー人だな、声馬鹿でかいし......あと名前で呼べてない。
「少しいいかねユウト君?」
俺がこの里と影のボスに驚いていると誰かが声を掛けてきたので、見てみるとかなり酔ったカルロスさんである。彼はそう言いって俺の隣の座ってきた。
酒くせぇな、少し離れてくれないかな。
「何か用ですか?」
俺は鼻をつまみながら尋ねてみた。
「君は......エレナのことどう思うかね?」
ん? 何でエレナなんだ?
「あの、どう思うとはどういう意味でのことですか?」
「......エレナは可愛くて、料理も出来、加えて優しい」
突然カルロスさんが脈絡もないことを言い始める。
なんだよ、ただの親バカかよ。
それなら俺の妹もそうだよ......ただし兄に対しては優しくない。
「それで君はどう思う?」
「たしかにすべてにおいて当てはまると思いますが、それが?」
カルロスさんに同調するようにそう答えてみると、彼は少し遠い目をしてまるで過去を懐かしむかのような目で俺に語り掛けてくる。
「幼い頃のエレナは今も可愛いが、それ以上に可愛かった。しかし、そんなエレナも今年で20歳を迎えた。そろそろ考える時期ではないかと思っているんだ」
そういえば殿の巫女って20歳だったな、エレナは俺よりも年上だったのか......何かショック。
「何をですか?」
突然彼が俺の目を覗き込みながらその続きを言う。
「......結婚をだ」
彼の言いたいことは分かる。
俺も妹が変な奴を連れて来ないか頻繁に心配して嫌われているからな。
「まあエレナなら引く手あまただから、大丈夫ですよ」
なんとなくエレナの方を見ると、先ほどの司会者の女性となにかコソコソと話しており何やら楽しそうである。楽しそうだなあ~、僕も混ぜてほしいなあ~、親バカの人は結構だなあ~、そんな風に見ていると突然、司会の女性が俺の方を指差してそれに合わせてエレナがこちらを見て一瞬だが目が合ってしまった。
彼女の髪は薄桃色で背骨付近まで伸びており、それが太陽の光を受けて時々反射している現象を見てしまい、あぁあれが光の反射なのか、勉強になりました、そんなことを考えているほど綺麗な髪をしており、時々どこのコンディショナー使っているのかぁ~、気になるなあ~、と思うことがしばしばある。
気になる顔立ちについては、ななせまるみたいな感じでかな? ちなみにアスナは、ノゾミールみたいかな感じである......これで伝わるかな? 伝わるかどうかそっちの方が心配だ。
そんな感想を抱いているとすぐにエレナの方が目線をすごいスピードで逸らした。
そのスピードがあまりに早すぎのか、首を痛めたかのような仕草をして司会の女性に笑いながらからかわれている。
俺はカルロスさんの存在を思い出して彼の方を見ると、彼もエレナの方を見て微笑ましそうにしている。
「君の言う通りだ。だがこの里には娘を守れるだけの力を持った者は息子ぐらいしかいない」
「あいつの場合は通常の戦闘力に加護が付いてるおかげでもありますけどね」
加えてシスコンという特殊スキルがあるからな。
効果は妹に対する家族愛が大きいという、考え方次第じゃバットスキルだ。
するとカルロスさんがまるで獲物を見つけたかのような目で俺のことを見てくる。
「だが、最近一人見つけたんだ......娘を守れるだけの力を持つ人物に」
なんとなくだが嫌な予感がする。
俺はすぐにコップを持って何か飲み物を取りに行って絶対に戻ってこないようにしようと思い行動に移す。
「そうですかならエレナも安心ですね俺は喉が渇いたのでこれで」
俺は早口で言い終わると即刻立ち上がろうしたのだが、腕を握られ元の位置に戻されてしまう。
「まだ話は終わっとらん」
「......はい」
俺は渋々座り直すことにする。
「君も気づいているだろうが、その人物は君だ」
「はい、存じております」
俺はあれだけ派手なことをしたのに、また俺何かやっちゃいましたか? 主人公ではないのだよ。
それとそれに気が付かずハレームなんてものを作るラノベのクソ! 鈍感野郎だけだ。
毎回読むがイライラするんだよぉぉぉぉぉ! と思いながら毎回読んでいる自分がいる......。
俺は自分のしたことの大きさを知っているからこそ、それを認めるのだ。
「もう一度聞こう。君はエレナをどう思う?」
そしてカルロスさんは先ほど以上の真剣な様子で俺のことを見てくる。
「俺は......」
一度目を閉じてエレナの会った時から彼女を救った時までの記憶を辿る。
俺は決意を固めて再度カルロスさんの目を見て話そうと思い目を開いた。
その時彼は......。
「スースースー」
......寝ていた。
俺はそっと彼を横にならせて、ブランケットを掛けてあげた。
俺は思った。
俺の覚悟を返しやがれぇぇぇぇぇ!! と。
そんな変な感じで割とよく分からない宴会はお開きするのであった......。




