ステータス
儀式。強いて言えばステータスの確認作業のようなものだ。
方法は至って簡単、指を針で刺して出た血液をこの世界ではプレートという長方形の透明なガラスに垂らすだけだ。聞いたところによると、これは自分のプレートに一度でも血液を垂らすと次回以降は任意で、ステータスを確認することができるらしい。なのでこの一度を乗り切れば後は、俺の異世界スローライフの始まりである......のだが! ラノベだと普通にこの作業をしているのを見たりする、だが実際にはそれなりに勇気がいる。予防接種とかと違って自分の手に針を刺すという行動自体が普通じゃない。薬中の奴らと違って俺は健全な高校生だ、だからこんなこと自体非日常的なんだよぉぉぉぉ!! と思ってクラスメイト達を見ると......すでに全員作業終わってたーー!
はいというわけで......。
「ふー、ふー、よし! ッ!」
とまあこんなもんだ、俺も本気を出せばこんなのヘッチャラさ、チョーヨユウ。
そしてプレートの上に垂らすとプレート全体から光が発生してその光が収まったのでプレートを見てみることにした。
名前:リンドウ ユウト
年齢:17歳
種族:人族
天職:暗黒魔術師
レベル:1
体力:100
攻撃:10
防御:50
俊敏:600
魔力:500
魔抗:500
知力:100
運:50
スキル:影牢 言語理解 鑑定
称号:異世界人
初見の感想は暗黒魔術師ってなんだよ、クンクンなんか中二臭いぞ(偏見)。
先ほど説明があったのだが、一般人の男性はだいたい全ステータスが平均して100だそうだ。
え? 俺のステータス、か・た・よ・り・す・ぎ。
これはまさかのテンプレかもしれない。つまり異世界無双してしまうのか!? ユウトフィーバーのオンパレードの時代到来か!?......いや、ちょっと待て落ち着くんだ、時代の申し子俺。
テンプレ主人公は彼女なし加えて鈍感野郎が相場、つまり彼女持ちの俺は関係ないはずだ。
「おぉぉぉぉぉ!!」
そんなふうにフラグとも認識できるものを立てている最中に、突然歓声のような声が聞こえてきた。
何だどうしたんだ? ワールドカップで推しチームが優勝でもしたのか? だからといって渋谷のスクランブル交差点で騒ぐんじゃねえぞ、そう思いながら近づいてみることにした。
「勇者、賢者、剣聖、拳聖、聖女の天職がでました!!」
その騒ぎの中心の中、お姫様が目をキラキラさせながら大きな声でそんなことを言っている。
それに対して俺の目からはキラキラ血の涙が......。
そんな彼女に呼応しているのか、周囲にいるローブを着ていた人達も浮き足立っていた。
それに呼応するかのように俺の天職と存在も浮いていた......えっ? 存在も!?
まあいいや、とにかく今聞こえてきた天職は異世界モノのテンプレものだからな。
誰かはもうだいたい予想できる。
名前:カミタニ コウキ
年齢:17歳
種族:人族
性別:男性
天職:勇者
レベル:1
体力:1000
攻撃:1000
防御:1000
俊敏:1000
魔力:1000
魔抗:1000
知力:1000
運:500
スキル:限界突破 光竜咆哮 言語理解 鑑定
称号:異世界人 光の勇者 女神の加護
名前:ハトバ ユイ
年齢:17歳
種族:人族
性別:女性
天職:賢者
レベル:1
体力:600
攻撃:500
防御:500
俊敏:500
魔力:2000
魔抗:1500
知力:1000
運:300
スキル:精霊魔法 言語理解 鑑定
称号:異世界人 女神の加護
名前:クロサキ シュン
年齢:17歳
種族:人族
性別:男性
天職:剣聖
レベル:1
体力:800
攻撃:1200
防御:800
俊敏:1000
魔力:600
魔抗:600
知力:1000
運:300
スキル:絶剣 瞬歩 言語理解 鑑定
称号:異世界人 女神の加護
名前:アカバネ リョウタ
年齢:17歳
種族:人族
性別:男性
天職:拳聖
レベル:1
体力:800
攻撃:700
防御:700
俊敏:700
魔力:700
魔抗:700
知力:1000
運:300
スキル:流星拳 言語理解 鑑定
称号:異世界人 女神の加護
名前:フユジマ ユキ
年齢:17歳
種族:人族
性別:女性
天職:聖女
レベル:1
体力:500
攻撃:400
防御:400
俊敏:400
魔力:2000
魔抗:1000
知力:1000
運:300
スキル:治癒魔法 言語理解 鑑定
称号:異世界人 女神の加護
......夢も希望もねえのかよ、この世界は。
仕方がないのでメンバーを紹介しよう。
賢者の鳩羽由衣と拳聖の赤羽諒太は神谷の仲間で彼がときどき発動するご都合主義のストッパーでもある。
加えて鳩羽は雪と親友かつ双璧をなすぐらいの美人さん。
赤羽は神谷の親友かつ身長でかくてガタイもよくて脳筋野郎だぜチェケラッチョッチョッチョ、デスヨッヨッヨッヨ、ぶっ飛ばしこーゼイゼイ、ぶっ飛ばしてゼイゼイ、ぶっ飛ばしていこおーゼイゼイゼゼ!
ノリに乗って、次行くぜ!
次の奴は、孤高の王子(笑)、上は黒崎、下は瞬くん、天職剣聖、顔はまあまあ、大体一人で、教室ぼっち、クールな奴だ。しかしときどき、こちらを見てくる、一度も会話は、したことないぞ、まさかホモか? ガチホモか!? とにかく俺が、言いたいことは、少し貞操、危機を感じる、みたいなことだ。先ほどから、ラッパーみたいに、韻を踏んでる、どうにかしないとな、うんオーケー
なんで神は、イケメン作った? 神が差別、いじめを作った、これがいわゆる、世の真理!
はい、というわけで最後に、えーみなさん静かにしてください。
ここで今日のヒロインの登場です! 僕の彼女であり聖女の冬島雪さんです!
あーそこ! カメラのフラシュはたかないで!
そんな風にプロラッパーとプロMC顔負けの完璧な紹介をしていると、
「おい! オタク野郎お前の天職なんだよ」
案の定にやにやしながら近づく奴がいる。
こいつの名前は須藤剛、金髪のDQN野郎であり、教室でのあの呟きもこいつである。
今更なのだが、こいつの顔って.....ゴリラだよな、いや別に貶しているわけではなくむしろ褒めているんだ。
考えてみろよあの顔、毛深くて勇ましいと思わないか? それにあの立派な腕、筋肉もりもり感謝祭だ、一体誰が感謝するか知らないけどな。
それと一つ訂正がある。それは正真正銘のゴリラに当てはまるのであって、目の前のゴリラさんにはまったく当てはまらない。
こいつの場合はなんか毛深い上に人間離れした顔だからな......こいつって社会で生きていけんのか? 裏社会ならワンチャンなくもないぞ、将来テレビに出る可能性があるからそういう就職先も考えていたほうがいいかもな。
だか、そんな可哀そうな風貌をしており、いつも陰口を言ってくる者に対しても俺は慈愛の心を持っているんのだ。
「はぁ~! うっせぇ! お前に教える筋合いはねえ! それとラノベや漫画は日本の文化だ。俺がオタクと呼ばれるのはおかしいだろ。てかお前も漫画読むだろ。だからお前もオタクと呼ばれるけどいいのかな? んんん?」
だから俺は煽るように親切にそのまま返してあげたのだ。
案の定ゴリラは顔を前田さんのように真っ赤にしている。
お? 泣くのか? 泣いちゃうのか? このヴィジュアルで泣くのはR指定されるんじゃないのか?
「あ? お前なめてんのかよ!?」
俺は一人であのアニメの例シーンを思いだしながらこいつの顔を見ていると、ヤンキーの決めゼリフを吐いてただ切れていたようだ様子だった。
なんだよ、泣かないのかよ。期待して損したわ、こいつの泣き顔見ごたえあると思うんだけどなぁ~、なあ野口さん。
俺がそう考えているのとは裏腹にゴリラは何か悪知恵が働いてのかニヤニヤし始める。ゴリラってにやけるとこんな感じなのか、その様子見て感心していると、
「そういえば......俺にはスキルがあるじゃないか。『鑑定』っと」
あっ! その手があったか。
だが、時すでに遅し。
「なになに......ぷっ! なんだよ暗黒魔術師って! それにステータスも低いしよ!」
いやお前も知らねえのにどこに笑えるポイントがあんだよ。
それともあれか、お前って笑いの秘孔が普通の人とは逆にある病気でも患っているのか? あぁそうっか、ゴリラだからそもそも人間基準で考えちゃいけないんだな。ごめん、一瞬人間に進化させちゃって。すぐに大好きなゴリラに戻してあげるよ。
「どうしたのですか勇者様?」
無駄に馬鹿でかい声と胸叩いている音なんて出すからお姫様が来たじゃねえか。
お姫様がそう尋ねたのでゴリラは、俺を指差して笑いながらその汚い口を開く。
「いやねえ、こいつの変な天職と低いステータスがおもろいから」
彼女は何を言っているか分からない様子で頭を捻っている。そりゃあそうだ、ゴリラ語なんてすぐに理解できるわけない。だから見てみろ彼女、ゴリラの指先を見てやっとそのことを理解したみたいだし。そして俺のステータスを見ると、何だこれ? といった感じで頭を抱える。
「う~んステータスは個々それぞれとしても、暗黒魔術師はあまり聞いたことがありませんね。もしかすると図書館にある古い文献には載っているかもしれませんが」
申し訳なさそうに言うのでこっちが逆に悪いように思えてしまう......不思議だ。
「はっ、オタクには変な天職がお似合いだ」
笑いながら歩いてくので、腹いせにゴリラのステータスを鑑定する。
名前:スドウ ツヨシ
年齢:17歳
種族:人族
性別:男性
天職:狂戦士
レベル:1
体力:800
攻撃:800
防御:800
俊敏:500
魔力:500
魔抗:500
知力:50
運:100
スキル:狂戦化 言語理解 鑑定
称号:異世界人 女神の加護
「はぁ~」
溜息が出た。
なんであんなのがこんないいステータスなんだよ。というか一番気になるのは種族だ。何であいつ人族なんだ? 霊長目ヒト科ゴリラ属(一応人族?)じゃないとおかしいだろ。
まあとにかく天職と知力については納得した......アレなら仕方ないからだ。
そうなふうに自分を持ち上げないと立てていられないほど俺の心(豆腐)は弱って(潰れかけ)いたのだ。
「悠斗、大丈夫か?」
親友である正人が心配そうに声を掛けてきた。
後ろには雪もいる。
どうやらさっきの映画のプロローグを見られてしまったようだ。
仕方ない......二人とも出演させるか。
「正人......天職......何?」
なけなしの気力を振り絞って片言で尋ねると、苦虫を嚙み潰したような顔をしてステータスを見せてくれたのだが......。
名前:ナリタ マサト
年齢:17歳
種族:人族
性別:男性
天職:聖騎士
レベル:1
体力:600
攻撃:600
防御:600
俊敏:600
魔力:600
魔抗:600
知力:600
運:200
スキル:光の雨 言語理解 鑑定
称号:異世界人 女神の加護
「ゴホッ!」
俺は役者モードに入って心臓を抑えて崩れ落ちた。
映画でも使われそうなくらいのワンシーンだ。
「悠斗!?」
「ユウ君!?」
二人が駆け寄り起こしてくれたが俺の精神面での体力1......瀕死の状態だった。
「二人とも......どうやら俺はここまでのようだ。......だから言わせてくれ。......いままで、こんなどうしようもない俺と、仲良くしてくれて......ありがとう!」
「馬鹿野郎こんなこと死ぬんじゃねえ! それにさっきは、はい元気です! って言ってたじゃねえか! あれは嘘だってのか!? ......でも、この状況でそのセリフはマジでしっくりくるよなあ~」
どうやら正人は俺の意思を理解してくれたようだ。
お前なら海賊王になれる......後元気なのはもう忘れくれマジで。
「ユウ君! 私が魔法をかける安心して!」
雪、治癒魔法じゃ身体の傷は治るけど心の傷は治らないんだぜ。
......どうやら時間が来たようだ。
薄れゆく意識の中で......遠くから二人の声が聞こえてきたが......俺は意識を手放した。
==========完===========
なわけあるか。




