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彼女とクラスメイト達に裏切られた絶望者は異世界を夢想する  作者: 滝 清幹
第三章:堕落した神々との戦い:アルタイル編
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メッセージ

 部屋を出た後俺達は、夕飯が準備してある部屋に向かった。


「随分遅かったな」


 部屋に入ると同時に、こちらを見ながらカルロスさんがそう言ってくる。彼もまた自分の妹だけでなく、更には自分の娘にまでその運命が捕まえられているのだ。だがそんなことを微塵も考えさせられないほどに表情を隠すのがうまいのだろう、今の彼からは悲しみを読み取ることはできない。


「えぇ最近の奉仕活動についてアスナと話していたので......」


 俺は少し誤魔化しながらそう言って座り、アスナも倣って俺の隣に座った。


「たしかにその活動の話はよく聞くね......特にユウト君の噂は耳にするよ」


 やっぱあれだけ活動したんだからな、今になってその努力が実を結んだようだ......不信感はまだ残っているが。


「特にガラナさんから」


 竜人族の困っている人を助けた中で、俺に教えてくれた人達の名前の中では聞いたことないな、と言ってもそのほとんどが年寄りばっかだという事実......ホントワロエナイ。


「そのガラナさんっていうのは誰のことですか?」


 ワロエナイ俺の疑問が不思議だったのか、カルロスさんは意外そうな顔をしている。


「まさか知らなかったのか......てっきりよく手伝っていると本人から聞いていたから、名前ぐらいは教えてもらっている思っていたよ。私が言っている人物は、果物を売っているばあさんのことだ」


 あのおばあちゃん、ガラナって言うのか。たしかに名前は教えてくれなかったからな、一応は年寄り代表として認知しているつもりだったんだけど。


「どんなことを言っていましたか?」


 まあ大方、「なんまいだ~なんまいだ~、ユウト様なんまいだ~なんまいだ~」みたいに感謝していたとかそんなことだろ......俺強制的に極楽浄土に送られそうになってるーー!


「ガラナさんが言うには、いいパシリになってくれているそうだ」


 あのババア! 極楽浄土まだしも、俺とパシリ呼ばわりとはいい度胸だ! 今度こっそり野いちごの中に蛇いちごを混ぜてやんよ! むっさ小物臭がすんな!


「そ、そうなんですか。自覚あってパシリさせていたんですね」


 俺はそれを表情に出さないで、かなり引き攣った笑い方をするほかなかったのだが、それを知らないカルロスさんは更に追加情報を教えてくれる。


「あのばあさんはこの里で一番の年寄りだからな。いろんなことを知っているそうだ」


 普通はパシリの方法なんてもの、ババア世代で知っている奴なんているわけがない......そんなことを話していると最後にギルが部屋に入ってきた。


「おやギルちゃん、お勤めご苦労様です」


 俺はまるで長年夢に見た息子ギルが、初仕事から帰って来たのを出迎える母親オレのように労いの言葉を掛けてあげた。ホントこの子は成長しましたよ、つい最近までパンパースと穿いていたと思ったら、いつの間にかライフリーを穿いているんだから。これは早尿ですねえぇ、まあ早尿はともかく初仕事の感想聞お母さんに聞かせてちょうだいな。


「なんだ、まだいたのか。氷柱野郎にやる飯はねえ。とっと失せろ」


 まるで職場の上司が性格が悪くて、それを母親オレに当たるかのように息子ギルがそんな失礼なことを口にした。もしかしてライフリーだけじゃ足りなかったのかしら!? そう言ってくれれば母さん、すぐにでも会社に着けに行こうと思ったのに! それに何ですかその口調は! 私はこんな子に育てたつもりはありませんよ!


 ......設定がなんかややこしいな。


「何だと!? この食料は俺が汗水流して取ってきたものなんだぞ! 後氷柱野郎はやめろ!」


 俺が鼻に氷柱君がやって来るのを覚悟して、あの絶対零度の山まで取りに行っているんだぞ。


 それにあの子来たらいちいち出生場所喋りだすから大変なんだぜ。


「何を言ってるんだ。そのために遥々この里まで来てくれたんだろ? それにこんな立派な名前になるんだ、慣れていた方がいいだろ」


 里の人達と同じように、もう少し感謝とかしてくれ......奉仕活動だが、感謝の言葉がないと俺の高野豆腐改が良い音だして爆散するんだぞ。


「そうですよユウ間違えた、氷柱野郎様の方が断然いいに決まってます」


 こいつとは部屋を出る前、エレナを助ける決意を一緒にしたはずなのに、あの決意は一体どこに行ってしまったんだ?


「おいアスナ! なんで俺の名前が間違えただ! というかそれ語呂が悪いからやめとけ!」


「たしかにそうですね......」


 これでアスナは抑えた、てか語呂が悪くなかったらそのままだったのか? つまり氷柱野郎様に救われたのか?


 そう思ったのもつかの間、


「訂正します。様は付けずに氷柱野郎とお呼びします」


「おいてめぇ! 様はどこに行ったんだ!?」


 最後の敬意だったはずのものまでどこか遠くの方に飛んでいってしまったのか、まったくもって敬意のない名前で呼ばれてしまった。


「私が忠誠を誓っていたのがユウト様と言うお名前だったので、今のあなたはただの氷柱野郎ですね」


 ......だがよく考えてもらいたい。


「ていうかお前俺に対して一度も忠誠とか誓ったことないよな?」


「......たしかにそうでしたね。ではやはりどちらにも敬意は払えないという方向性でお願いします」


 結果、ユウト様と氷柱野郎の両方に、敬意を払われない方向性で議会は可決された。

 

 そうだったのか......少しは忠誠、あると思ってたのに......泣いちゃおっかな、ここで......前田さんみたく。羞恥心など無視して実際にしちゃおっかなあ~と思っていると、その会話を聞いていたエレナが、


「フフフ」


 まるで微笑ましいものを見るかのように笑っている。


 いや、全然微笑ましくないからね......マジで。


「久々にエレナが笑ったのを見たな」


 カルロスさんが頬を緩めながらそう言うのであれば、やはりここ最近笑っていなかったようだな。


 理由も分かっていることだしな、ということで俺はそれとなく質問してみることにした。


「なんかここ最近この家で困ったこととかありませんか?」


「特にお前が来たことだな」


 ギル以外に言ったはずなのに、ギルノータイムでそう返した。


「あぁもうそういうのはいいから」


 こいつの場合、これが一種の愛情表現だと納得しないと流すことできない......えっ? 愛情持ってんの? 逆にヤバイ! ギルホモ説浮上か!?


 それにだ! こいつの相手をするときりがないし、相手にしていまうと人類最強の兵器の横やりが来るからここは流すのが吉だ。


「カルロスさんとかジャネットさんは?」


 俺は幻聴ギルを無視して二人に聞いてみると互いに顔を見合わせて、


「特にないな」


「えぇ」


 二人とも俺達に気遣っているのか、あのことについては触れなかった。


 そうか......なら仕方ない、問題のエレナに聞いてみるか。


「ならエレナはどうだ? 最近何か困ったことはあったか?」


 先ほどからの流れが自分に来ると分かっていたのか、彼女は初めは普段通りの表情をしていたが、


「いえ、困ったことはありません。ただ......」


 答えるうちに徐々に顔を下げ始め、声も小さくなってきた。


「ただ?」


 俺の問いかけに、彼女は顔を少し上げて今にも泣きそうな顔をしながら、


「......この楽しい時間が、続けばいいなとは思いました」


 今回はエレナのメッセージをしっかり受け取ることができた。


 だから、


「まあ俺達は、困った人がいなくなるまではこの里を離れるつもりはないがな」


「たしかにその通りですね」


 これが彼女の願いに対する、俺達の答えだ。


 しかし俺とアスナの言った言葉に、ギル達は俺達が何を言いたいを分からないのか、全員頭を傾けていた。


 その後、俺達は雑談をしながら夕食を終えた。






 そして次の日......一番懸念していたことが起きてしまった。


 

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