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彼女とクラスメイト達に裏切られた絶望者は異世界を夢想する  作者: 滝 清幹
第三章:堕落した神々との戦い:アルタイル編
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言い伝え

「あんたが知っているかどうかは知らないが、この里にはある言い伝えがあるだよ」


 涙を流し終えたおばあちゃんは、そう言って語り始めたのだ......この竜人の里にまつわる、ある言い伝えを......。




 私らが生まれるより遥か昔、この地域にある神がやって来たんだ。


 その名は竜神、その体はまるで金剛石のように固く、このアダム山脈に匹敵するほど大きかったと言われている。


 そんな竜神は、ここに来るとすぐにある場所に向かった。


 ここから西に向かった場所にある......私達が竜の寝床と呼ぶ洞窟に。


 そして数十年がった頃、ここにもある神様がお越しになったんだ。


 分かっていると思うが......白竜神様がだ。


 白竜神様はそこで子を宿し、我々竜人族の祖先達をお産みになさった。


 それから数百年は何事も無く、平和な時代が流れていった。


 ......ところがある日、神災級と呼ばれる災害が起こってしまった。


 私達の住むこの竜人の里は、その災害地よりもかなり離れていたからそれほどの被害は受けなかったが、里に残されていた記録によると三種族が壊滅しかけたということが記されていたよ。


 そんな世界に爪痕を残す災害が起こって数十年が経ったある日のことだ。


 この里の真上を人型のモンスターが西に飛び去って行ったそうだ。


 そんなもの普通は気づかないだろうが、ある竜人族の手記にはそれを虫の知らせだと書いてあった。


 そして間もなくして、この里の近くにある神が現れた。


 眠りから覚めた竜神がだ。


 当初は、かつての竜人の人々も稀に見ないモンスターと考え怯えたそうだ。


 しかしすぐに救世主達が現れなさった。


 数十年前の神災級の災害を止めたと言われる黒竜神様と白竜神様がだ。


 その三方は何やら話し合った後、黒竜神様がこう言ったそうだ。


「我々がここで争えばこの地が焦土と化す。そうさせないためにある決まりをここに設ける」


 一つ、これから先、この村に生まれる女にある印が現れる。その印が現れた者は、殿の巫女としてその身を竜神に捧げる。


 二つ、その期間は二十年に一度、周期的やって来る。


 そして最後に、もしその決まりが守れない場合......再度竜神がこの地を襲うと。


 そう言った時の黒竜神様のお顔は、ひどく辛そうに見えたらしい。


 その後竜神は、そのことに納得したのか竜の寝床に帰り、白竜神様と黒竜神様も天空に向かって飛んでいったそうだ。


 その決まりが設けられた翌日......里のある家族に一人の赤ん坊が生まれた。


 案の定その赤ん坊の胸元には、その印が刻まれていたそうだ。


 そして二十年後、その赤ん坊は殿の巫女になる。そして決まり通り、竜の寝床に向かったきり戻ってこなかった。


 




「そして今なお、その印を持って生まれてくる赤ん坊がいるんだ」


 そう言っておばあちゃんは、手に持つ杖で地面にその印を描き始め、それが終わったようなのでその印見てみるとその印は五体の竜が寄り添っている不思議な印だった。


「もしかして、今回のその殿の巫女って......」


「あぁ......エレナちゃんさ」


 この話を聞いて後ある適度予想しながらもあまり信じたくない気持ちでそう訊いたのだが、おばあちゃんは悲しそうにそう答えたのだ


「それってギル達の知っているんだよな? なんで何もしないんだ?」


「あの家族もどうにかしたいんだろうけど、それは無理な話さ」


「どうして!?」


 俺は口調が変わるのも気にせずに彼女に詰め寄るように訊き返した。


「竜神との決まりがある......それに、あの子の兄である彼の役割を知っているだろ? それが足枷になっているからだ」


「分かるけど、なんでそれが足枷になるんだ?」


 ギルの役割は『守り人』......それは里に迫る脅威と戦わなければならないものだ。それは竜神も含まるはずだ、なのに何故そいつと戦おうとしないんだ!?


「それは......残念だけど、私にも分からない。竜神を見た、彼らしか」


「......彼らってギルだけだろ? なんで複数形なんだ?」


「エレナちゃんの前の巫女は、彼女の父親であるカルロスの妹さんだからだよ」


 気になって訊いたのだが、まさかそんなことだとは夢にも思わなかった......それならカルロスさんは、自分の妹がそうなる運命だと知りながら行かせたということだ。


「なんでカルロスさんは竜神と戦おうとしなかったんだ!?」 


「別れの時、彼は思い悩んでいたようだ。どちらを選択するか......そして選択した結果が、今の現状なのさ」


 そう言いながら里の中を見回す仕草をしているが、その顔には悲痛にも似た感情を読み取ることができた。つまりこの里を守るために、自分にとって大事な人を死に送らせたということなのか......。


「それが彼らの役割、ある意味では彼らが一番辛いだろうね......」


 そんなの当たり前だ、大事な人が死ぬと分かっている上で送らせることを悲しまない奴なんているはずがない。


「とにかくあの家に戻ることにするよ」


「あぁそれがいい。エレナちゃんのこと、頼んだよ」


 俺はおばあちゃんのその言葉に頷いて、そのまま彼らの住む家に急いで帰ることにした。




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