異世界召喚
----拝啓、父さん、母さん、妹へ
今、息子(兄)は異世界にいます。
異世界はたっくさんの不思議でいっぱいです♪
魔法もあって、モンスターなんかもたくさんいます。
今の俺は不思議の国のアリスならぬ不思議の国のユウトに見えるかもしれません。
そして悲しいことですが俺の一生はこの世界で終え、またこの土地に骨を埋めることになるでしょう。
だけど俺という存在は、死んでも三人の心の中で生き続けます。だからどうか、竜胆悠斗という一人の人間がいたということを忘れないでください。
傍から見れば単純なように見えますが、俺にとってそれだけで十分です。
遅くなりましたが、父さん、母さん、17年間お世話になりました。
そして妹よ、彼氏を作るならこのような常識のあるこの兄のような人にしなさい。
最後になりますが、三人とも17年間ありがとうございました。
さようなら。
PS.俺の机の中にあるピンクの本は決して触れずそのまま忘れてくださいお願いします————。
心の中で家族への手紙(嘆願書)を書き終えた俺は、改めてて考えた。......俺ってもしかして常識ないのか、な? それによく考えると、本音がPSに一点集中しちゃってるし......。
でもなあ......マジで一瞬だけ家に帰れるなら本を処分したいわマジで(切実)。
そんな益体もないこと(本人は本気)を考えさせられるには理由があるのだ......てか、( )が多いな。
「家に帰りたいよぉーーー!」
「異世界召喚キターーー!」
「ママーーー!」
「俺の右手が疼くぜ......」
「俺の左手が疼くぜ......」
「受験勉強しないとやべっぞ!」
見なくても分かるぐらい、かなりカオスな状況であるからだ。
必ずクラスに一人はいる名言的言葉を叫ぶ女子生徒A。通称モブ美と主に俺から呼ばれているとかいないとか。
いつもは俺はオタクじゃありません系男子を装っている男子A。通称モブ男と俺から以下略。彼は周囲を気にせずに雄たけびを上げている。そのせいで周りから痛い目で見られている、だがこれは彼の長年の夢なのだ。だからそれを気にしていないのだろう、そんな様子を見た数人の男子は彼の行動に敬意を向けるかのよう、心臓を捧げるポーズを取っていた。
んでもってママママうるせえな、スネちゃま! 男の子が泣くんじゃありません!
同じセリフをそして左右逆の手からの漆黒のダークインフィニティ! を抑えようとしているのかそう呟いているが、確実に遠く離れた俺の位置のところまで聞こえるくらいの声量でそう言っているのは、ある意味クラスで俺の次に有名である影井兄弟である、加えて双子、さらに加えると中二病患者。
最後は......あれ? ここって吉本だっけ? 一人だけ年齢不詳の奴がいるぞ。
一度周囲を見回して、このクラスの個性的さに驚いてしまった......。すごいなーこのクラスー、ヒロアカならー(ブーメラン)。
しかし、クラスメイト達のこのような反応は正常なのだ。誰だって異世界召喚なんてされたら全裸で走り回ってもおかしくないくらいだ。
え? 俺? オレハゼンゼンドウヨウシテイマセン。
一応さっきの綺麗な女の人にお願いされた後、そのまま城の王様と謁見するような場所に連れてこられ、この世界について簡単に教えられたから少しは動揺が収まったのだよ。
この世界ーー通称アルタイルは人族、亜人族、魔族、天使族の四つの種族で構成されており、その割合は人族>亜人族>魔族>天使族、逆に一人当たりの戦力については人族<亜人族<魔族<天使族となるらしい。つまりは数が多いと弱く、数が少ないと強いという感じか。
そして、現在は人族は魔族と戦争をしており、簡単な話、魔大陸にいる魔族のトップである魔王にカチコミに行って倒してほしいらしいが、今現在停戦中であるそうだ。
ちなみに基本的に亜人族は樹海や火山、海、渓谷に、天使族は天空? で暮らしており、両者とも今回の戦争に参加していないということだ。
それに加えてクラスメイト全員が気になった地球への帰還方法だが、この世界が安定? したら神様達が帰してくれるらしい、という天啓が女神からあったそうだ。
その話を聞いた俺は、当たり前のように心の中で家族への手紙(嘆願書)を書き、クラスメイト達もこのような反応をしたのだよ諸君。
しかし不思議なことに、どのような状況に陥っても落ち着き払っている男子がいるのだ『*ただし俺ではない』。
「みんな一旦落ち着くんだ! 焦ってもしかたない!」
そう言ったのはこのクラスに委員長様である神谷光輝きゅんである。
彼のその一言でクラス全体が落ち着いた。
すっげー。俺と一部のクラスメイト以外すでに調教済みじゃん。カリスマ性とかそんな感じなのかは知らないが、そろそろ神谷教の教祖にでもなるのではないかと密かに俺は危惧している。
加えて容姿端麗、文武両道、多くのファンクラブも存在すると来たもんだ......なめとんのか。
「みんな、ありがとう」
そう言って彼が微笑むと一部の女子達が黄色い歓声を上げた。若干名男子が混ざっているのは目を瞑っておこう。ちなみに俺が微笑むと、人が死ぬ確率でブーイングがくる。いや100パーじゃん! おい誰だよ! この学校にいじめがないって言ったのはよ。回答:文科省です。
「俺は困っている人を捨ててはおけない......だからみんな......俺について来てきてくれ!」
謎の声から返答をもらっている最中、神谷変なこと口にした。クラスメイトであれば、間違いなら間違いだときっちり教えるべきだと常日頃から考えている俺は、勇猛果敢に切り出した。
「ちょっと待ちなーー」
「仕方ねえな! 光輝について行ってやるか!」
「まあー、神谷に付いていけば面白そうだしなー!」
「私も光輝くんに付いていくわ!」
「私も!」
うん.....どうやら俺という存在は掻き消されてしまったようだ。そもそもクラスメイトだったのかすら怪しいぐらいまである。
俺以外特に神谷の意見に反対する奴もいないようだし、この分だと神谷路線が敷かれるだろう。
まあ仕方がないといえば仕方がないが、まったくこういう奴らが後で何か起こったとき、クレームを言うクレーマーになるんだよ。ほんと後になって後悔でもしとけ(実例)。
早々にクラスメイト達に見切りをつけた俺の視線の端に、担任の小河原先生の姿が入った。彼女は、壁に寄りかかって俺達の話を聞いていた。多分だが、先生は俺達に判断を任せるのだと思う。この世界がどういう世界なのか今は詳しく知らないが、一人一人の生き方に口を挟むのは俺もどうかと思うしな。
すると先生は、静かに俺に近づき俺にだけ聞こえる声量で話しかけてきた。
「どうやら進路は決まったようだな」
「ですね......」
「ふむ。疑問を感じているなら、一言言えばいいだろう? クラスメイトなら」
この人絶対悪意込々で言ってんだろ......。
「いや無理でしょ。さっき俺の存在強制的に消されましたよ。それに今になって、「やーめーて!」
なんて言ったら、白い目で見られるでしょうが。あんた分かって言っているでしょ?」
しかし先生はそれには答えず、ただ一言。
「......まあそれもそうか」
そう言い残して元の位置に戻っていた。
やっぱ第三者から見ても俺クラスメイトじゃないんだ......。
俺が新事実に驚嘆している間も、神谷サクセスストーリーは進んでいた。
「王様、俺達は魔王を倒してみなさんを救います! しかし俺達にそこまでの力はありません」
唇を噛んで悔しそうに神谷がそう言っているが、いや、お前力が無いのに分かってて魔王を倒そうとしてたのかよ......お前の先祖ってアマゾネスかなんかなのか?
「うむ、分かった。勇者たちよ感謝する。だが安心してもらいたい。なんでも勇者たちは召喚されたと同時に女神であるアリアナ様から特別な力を授けられるのだ」
神谷の言葉を聞き安堵しながらも威厳ある態度でそう言うのは、王様=グラム・ユーリシア。髪もどっさり、髭も剃ってガタイもいいおっさんである。一連の流れを王座の椅子に座って見ていた感じか。
そしてあの姫様みたい人が娘のアリシア・ユーリシア。やはり肩書きはお姫様であった。にしてもお世辞抜きでもこの姫様むっちゃ綺麗。髪は金髪で、瞳はブルーサファイアのようだあり、顔立ちに至ってはファッション系雑誌に載っているハーフ系美少女のようだ。まあ、サファイア生で見たことねえけど。後これ雪に聞かれたら、白い目で見られるかもしれねえけど。
「それではみなさん。これから儀式を行いますので、私について来てください」
そう言うと彼女に引き連れられた俺達は、そのまま別室に案内された。




