初仕事
「へ~、意外と竜人の里って住んでいる人多いんだな」
「えぇ、たしか人口は千人ほどのはずです」
今、俺とエレナは竜人の里の中を歩いている。
アスナがいないのは、昨日俺がジャネットさんに料理の手ほどきを教えてもらうように頼んだので、今は彼らの家で修行しているだろう。
そして俺がこの里の中を散策している理由は、この里が今現在どのような状況なのか見たいとエレナに頼んでいるからだ。
先ほどから俺はその辺にいる大人や走り回って遊んでいる子供達は皆、厚手のモコモコした民族衣装を着ている。分かりやすい例えでは、ポッケ村の人々と同じ服装という認識でいい......伝わんのかこれ? まぁいいや。とにかくそんな彼らを観察して、1つ気づいたことがある。
「竜人族って体の表面がいつも鱗に覆われていると思ってたけど、全然見られないな」
イメージだと、体全体ではなくても一部は鱗か何かに覆われていると思っていたからだ。
「ユウトさんは兄と戦った時に見たと思いますが、基本的に私達は竜装化を使わない限り、人族と見た目は変わらないのです。それに竜装化はかなり実力者ではないと会得できないスキルでもあるのです」
そんな疑問にエレナが教師のような雰囲気を纏うと、人差し指を立てながらそう詳しく説明してくれた。
「へ~そんなもんなんだな」
あのシスコン野郎もかなり努力してるんだな......シスコンだけど(致命的)。
そこいらの店を見ると武器を整備しているところや野菜や肉などと言った食料販売店、診療所といった様々なものが見てとれる。
俺はこの世界に来てユーリシア国以外訪れたことはない。なので比較対象が住んでいた日本しかないのだが、
「結構自給自足してるんだな」
「この竜人の里は、他の亜人族の人達の生息範囲よりかなり外れたところにありますからね。なのでこのように生活しなければやっていけないのです」
なるほどな......だが。
「それなのになんで食料が不足しているんだ?」
何故聞いたのかは自分でも分からないが、俺はなんとなくだが訊かないといけないような気がした。
「それは......この時期は竜神様が目を覚めるので、そのことでいろいろと立て込んでいるのです」
俺の質問にエレナは言い淀んだが、それでも説明してくれた。
「なんだその竜神様ってのは?」
「この里より西の外れにある竜の寝床と呼ばれる洞窟に住んでいる巨大な竜のことです。」
そう言うエレナの顔が、それ以上は言いたくなさそうな表情だったので俺は本題に戻すことにした。
「そうか......ところでどんな食料を探しに行くんだ?」
エレナはすぐにいつもの表情に戻すと同時に顎を手でさする。
「そうですね......私が木の実などを採取している間、ユウトさんにアオシカと呼ばれるモンスターを狩ってもらいです」
「そのアオシカってどんな感じなんだ?」
「あ~見れば分かりますよ」
エレナは遠足に行く小学生のようなニコニコした笑顔でそう言うので、俺はそのモンスターを見ることにワクワクドキドキしながら、食料獲得のために山に向かった。
「よし、これぐらい狩っとけば十分だろ。」
俺はエレナの言われた通り、アオシカを百匹ほど狩ってしまった後、それらすべてを収納魔法を使い収納した。
ちなみにこの中には、ダンジョンで倒した様々なモンスター達が収納されている。
オーブリーから資金は貰えるからそれらを売ったりする機会は訪れないと思うけど。
そして俺は山に登る前にエレナが言っていたことを思い出して、収納された大量のアオシカを見る。
アオシカ......青い鹿......ネーミングセンスのかけらもねえな、このモンスターの名付け親はよ。どこかの誰かさんとそっくりだな。
......てか絶滅とかしないよな? それかレッドリストに載っている可能性もある。ワンチャン環境省に訴えられるかもしれんな。
そんなこと思っていると突然。
「キャー!」
エレナの悲鳴が聞こえたので俺はすぐに声の方に向かった。
彼女の元に駆け付けると少し離れたとことに一匹のモンスターがいる。
よく見るとどうやら青い森の青いクマさん襲われそうになっているようだ。
てかこの山青に染まりすぎだろ。地面の草以外の植物、動物は鳥、兎まで青いから目がチカチカしてくるな。
もしかすると青いクマさんは、白い貝殻の小さなイヤリングを拾って届けようとしていたかもしれないが、それを知らない俺は、そのことに気づく前に彼を斬首刑に処してしまったのだ。
「大丈夫だったかエレナ!?」
「えぇ......申し訳ありません。お手数をおかけしました」
刑を執行した俺は、すぐにエレナの傍に駆け寄ると、彼女は地面に座り込んでかなり動揺しているようだ。
「気にすんな。昨日も言っただろ、困っている人を助けに来たって」
「でも......」
言い淀むエレナに仕方がないので俺は最近貰ったのが、一度も使ったことのないある魔法を使った。
「創造魔法」
すると俺の手の平に光が集まり、一つのリング付きネックレスを創造することに成功する。
よし、うまくできたな。これならジュエリー職人も夢ではないってか夢増えてるーー。まだ幼稚園生の時の「僕、消防車になる!!」さえ叶ってないのにーー。
消防車はいいとして、なぜ俺がネックレスと言った洒落たものを作れるかというと、以前ジュエリーショップの前を通り過ぎる瞬間、それに気が付いた妹にせがまれて最終的には妹愛が勝って、その場にあった中でも一番高い奴を買わされたからだ。
そのせいでほしかった新刊のラノベを買えなくて、次回行ったらすでに完売されていた......コンチクショウー!
俺の考えとは裏腹にエレナはキラキラした瞳で俺が作ったネックレスを見ている。
だからもちろん。
「はい、エレナにプレゼント」
案の定目を大きくしながら驚くエレナ......可愛い。
「こんな高価な物受け取れません!」
大丈夫! メイドイン俺の魔力だから! ......なんか言い方汚ねぇなおい。
「気にするほど高価じゃない。それにこれはお守りと思ってくれればいいから」
そう言って優しく返すと渋々受け取りながらも、
「そうですか......なら肌身離さず大切にしますね!」
エレナは笑顔でそう言ってくれた。
その笑顔......一億万えーーん! ミスターリーンドウ!
俺が心の中で謎の一人コマーシャルをしていると。
「でも、救ってくださりありがとうございました」
これまで見た中で最上級の笑顔だった。
俺が浮遊霊だったら潔く成仏するな......絶対!
逆にこれならゴースト系モンスターを無双できるんじゃないのか? ......思いっ立ったら即行動の心構えの俺は、エレナにを勧誘しようと手を擦りながら口を開こうとする前に。
「そろそろ日が暮れるので、帰りましょか」
茜色した細長い雲が色づいた西空から覗く太陽に照らされる森の中で、一際その恩恵を受けるかのようにその夕焼け色に染まるエレナの顔を見て......俺の邪念は、綺麗さっぱり消え去ったのだ
「あ、あぁそうだな......帰るとするか」
以前の俺ならドキドキするが、今の俺はかなりひやひやした。
エレナ可愛すぎなんだよ、マジでアスナさんも見習ってほしいわ。
そんなことを考えながら俺達は帰路に着くのであった。




