氷柱野郎
「ほらギルちゃん、俺のことはユウト君と呼びなさい」
「くそっ! なんでこんなことに!」
あの決闘が終わった後ギルが俺の名前を呼んでくれないので、俺は優しく言い聞かせているのだがこいつが頑なに勝利を、というか俺の名前を認めない......針千本飲ませるぞコラ。一応創れないこともねえんだからな。
「ギル、先ほどの決闘は勝利はユウト君だ。お前だって分かっているだろ?」
「分かってはいるが......」
カルロスさんがに促されて俺の顔を見る。
「こんな氷柱野郎に負けたなんて」
「てめぇなんで俺の顔を見て言ったんだ!? 顔は関係ないだろ! というかなぜその名前で呼ぶんだ!? 」
というかそれは名前じゃねえから! それに氷柱君と俺は同一ではない! なぜなら彼には意思があるのだから。
するとなぜか関係ないアスナが俺の顔を見て口を開く
「ユウト様、顔も十分凶器です。特にユウト様のお顔は」
最後に付け加えて強調しなくていいから。
「ところでなぜ君達はこの竜人の里を訪れたんだ?」
そんな話をしているとカルロスさんが横から口を挟んでくるが、まあそりゃ気になるわな......氷柱君作ってまでここにくる理由をよ。
「えっとですね......」
少し言い淀んでしまう。
なぜなら理由があれだからだ、関係ない人からすれば何じゃらほい、といった感じだからな。
しかしカルロスさんもギルもこちらを見ているので諦めることにする。
「ここを訪れた理由は、困っている人を助けるためなんですが......」
その場にいたカルロスさんとギルがなぜか俺達ではなく俺の顔だけを見て驚いている。
「それは本当なのか? そんなことの為に遥々人族の領地からこの竜人の里まで来たのか?」
普通はこの反応だ......普通の奴はな。
「やはり氷柱野郎の名は伊達じゃないな」
ギルが関心するかのようにそう納得して頷いた。
「おい! 俺の行動と氷柱野郎は関係ないだろ!? ていうかそろそろ俺の名前を覚えろよ!」
このまま行くと氷柱野郎って呼ばれるに不自然さを抱かなくなるのも時間の問題だぞ。
それにジブリよろしく名前が奪われたら、俺の存在意義が消えてゆく......。
その流れに乗るのがもちろんこの人。
「執行部から議題の提出です。いっその事改名するのはどうですか?」
いつの間にか執行部になったアスナが俺の名前を改名することを議題として提出してきた。
ここって議会場だったのか!?
「お前は相棒が氷柱野郎って呼ばれても構わないのか!? それと執行部っていつ決まったんだ!?」
俺は反問権を行使して執行部のアスナに問いただした。
どうやら彼女も相棒がそんな不名誉な名前で呼ばれるのが嫌なのか、少し考えて口を開く。
「......でもこれはユウト様にとって利益になることかと思いますが。最後の質問は黙秘権を行使します」
俺が一番気になった疑問でそれを行使したか......仕方ない。
「なら氷柱野郎のどこに利益があるのか言ってみろ」
「ユウト様のクラスメイト達をうまく誤魔化せるのではないでしょか?」
たしかに誤魔化すことは可能だろう、しかし逆に変な名前として認知されてしまう......主に世間に。
「ならいいんじゃんないか。変えてしまえ、氷柱野郎という立派な名前に」
第三者であるギルが議会に口を挟んできた。
「てめぇも参加すんじゃねえ! 余計ややこしくなるから!」
「副議長であるギルさんの意見も考慮しなければなりませんね」
ギルの意見を興味深そうにして聞くとおかしなことを口にしたのだが。
何故第三者から一気に昇格してギルは副議長となってしまったんだ!?
「なんでお前が副議長とか決めるんだよ! お前って執行部だよね!?」
「? はい執行部ですが......それが何か?」
俺の質問にアスナが不思議そうにしながら首を傾げた。
そこは認めんのかよ......最後まで貫き通せよ......。
「なら執行部はそんなこと決めれないんじゃないの? 議長ならまだしも......」
「いえ執行部のトップが議長を務めるのはおかしいことではありませんよ。それに株主総会の議長を執行部のトップである社長が務める会社もあるそうですし」
えっ? こいつって執行部のトップだったの? 部って言う割に役員お前しかいないけど......てかこいつ頭いいんだな、そんな知識、オリーブオイルと炭火焼きチキンが何故出会った並みに、知らんわ!
そんな俺の疑問に議長が答えてくれる。
「ちなみに他の執行役員はカルロスさんです」
「いや~照れるな~」
傍聴席からこちらの討論を聞いていたカルロスさんが一気に執行役員に昇格して、頬を緩ませてそう答える。
「あんた絶対理解してねえだろ...... 」
俺が諦観していると議長が慰めるかのようにこう言った。
「それと出会った理由とついでにメガネとおぎ〇はぎである理由は、それぞれ本人達に確認してください」
「あ......はい」
どうやら思考を読んでいたようだ......てかこの続き知っていると議長さんマジパないわ!
「それで議長、この議題は賛成一致ということで可決してもいいか?」
俺の返事に満足してのかのように議長が優しく頷いていると、それを見ていた副議長が議長にそう尋ねる。
さっきの優しさが議長の心に残っていれば、ワンチャン議題の棄却もあるかもしれないが......果たして......?
「えぇ構いません。執行役員も構いませんよね?」
何の躊躇いもなく、ノータイムでアグリーした......まあですよね! 知っていましたよえぇ!
「私は楽しそうなのでそれで構わないよ」
執行役員だけその場の感情に身を流している......いいのかこれ、意見まったく反映されてないぞ。
そう思って議長を見ると......一瞬ニヤリとして、視線を逸らす。
そして俺の存在も枯葉のごとく、その流れに身を任せ、どこかに運ばれて行くのだ......。
「なら決定ですね。たしか人族領ならどこでもできるので、着いたら即改名しましょう。異論反論は受け付けません。ではこれにて議会を終了します」
というわけで俺の名前を改名するという議題は3人によって議決されて議会は終了したのであった......。
えっ? これでマジでやんの!?




