白竜神の加護
「あの~大丈夫でしたか? 先ほどのはその......」
「いえ、氷柱君はもう大丈夫です。先ほどは騒がしくしてしまい、申し訳ありません」
氷柱君は儚い粉雪のようにその存在を消してしまったのだ......まあまた会えるけど! もう絶対に会いたくないな。
そして先ほどから俺の心配をするのはアスナ......ではなく若と呼ばれた男の妹であるエレナさんである。
あいつがこんなことで俺を心配したら滅亡級の災害が起きる(予言)。
そんなアスナと違って薄桃色の髪をした美人さんであるエレナさんはマジ天使。
「エレナさん、その人はいつもそんな感じなので気にしなくてもいいですよ」
「そうだぞエレナ。氷柱野郎の心配なんてしなくてもいいぞ」
アスナの言葉に続いたのは若であるギルだ。
てかいつの間にこいつら仲良くなったんだよ。
セスの時もこいつ、いつの間にか仲良くなってたし......。
「というかユウト様に敬語は似合いませし、普通に喋ってよろしいのでは?」
「いや、流石に初対面の人にタメ語で話すのは......」
「でもギルさんにはタメ語で喋っているではないですか」
それに賛同するギルが異議を申し立てるかのように小槌ではなく手で机を叩きながら、
「そうだぞ、俺には敬語で話さないか」
「お前は俺と同じ属性を持っているような気がするから無理だな」
下の者にあまり慕われないという属性を......。
そして現にその属性が発動しかけているしな。
「若、そろそろお戻りになさらないと......」
「なんだレイラか、今俺は忙しいんだ。後にしーー」
「親方様の伝言で、『すぐ来い、でないと殺す』だそうです」
はっや! コンマ一秒のスピードで外に出て行ったぞあいつ。
そんなに怖いのかその親方様って人は。
「はぁ~まったくあの人は、こうしないと急がないので大変ですよ......」
レイラと呼ばれた女性は溜息をしながら、入り口の方を見ている。
あね、噓の情報でギルを送り出してあげたってわけか......どこかの誰かさんに似ている気がする。
「お互い大変ですね、レイラさん」
「えぇ......そちらも大変そうですね。では私もそろそろお暇させてもらいますね」
誰かさんの意見に同意するかのようにレイラさんはチラッとこちらを見ると、そう言って帰って行った。
あれ? 俺とあの人って初対面だよね?
初めて会った時にアスナみたいなんだが......。
するとずっと黙っていたエレナさんが突然口を開く。
「あの! 敬語じゃなくてもいいです......あと名前も」
「で、ですが......」
するとエレナさんがもじもじし始める。
「そ、それはですね......」
ゴクン、これは......まさか......?
「敬語の人が増えると誰が喋っているか分からなくなるからです!」
その流れはまだ続いていたのか......。
「わ、分かったよ、エレナ」
俺は何とか頷いて彼女の名前を言うことに成功する。
アスナはアレだからすぐ呼べたが、彼女と違ってエレナは正に純粋な感じがするから何か名前を呼ぶのにも苦労を感じるな......まあすぐに慣れるだろ。
そしてアスナイズノットピュア!
「ユウト様?」
「ひっ!」
瞳が紫色になっている! ......あぁそういえば魔眼持ってたんだけ。
つまりアスナイズノットゴット! これで心置きなく堕落した神々と戦える。
戦闘中に守られていた背中から攻撃される心配がなくなったのだ。
「フフフ、そうだといいんですが......」
「ひぃぃぃぃぃ!」
ダラクシタカミガミ、ヨワイ......ツヨイノ、アスナダケ。
「あの~そろそろ昼食ができるのですが......」
「えっ? ご飯までご馳走してくれるのか?」
俺は、敵は本能寺ではなくアスナだ! と思っているとエレナからまさかの一言があったのでそちらに意識を移す。
「えぇこの後あれがあるだろうし......」
「あぁなるほど。ならご馳走になるよ」
俺に返事を聞くとエレナは俺達を連れてリビングと思われる部屋に連れて行ってくれた。
「そろそろ完成すると思うので取りに行ってきますね」
そう言って部屋から出て行き、数分すると両手に大きな皿を持って戻ってくる。
俺とアスナはエレナを手伝おうと思い、立ち上がろうとしたが彼女がそれに気が付く。
「大丈夫ですよ、いつも通りなので」
そして皿を机の上に置く。
「何......だと......?」
「久々に見ましたね......これほどの料理は」
俺とアスナはその風景に驚かざるを得ない。
それもそのはずベーコン、グラタン、緑と青を基調とした春野菜のサラダといったものが目の前にあるからだ。
それにダンジョンの中ではこれほど豪勢なものは食べれるどころか想像することさえできなかったからだ。
その一つ一つがテレビで出るような、高級料理店のような盛り付け方でさらに食欲をそそる。
「冷めないうちに頂いてください」
エレナのそう言った瞬間、俺はいただきますの言葉も忘れて目の前の料理に手を伸ばす。
華麗なる食レポでもしようかなとおもったのだが、如何せんこれほどの料理はユーリシア国ぐらいでしか食べてことがないからな。
「......マジでうまいなこの料理。あんなとこじゃこれほどの料理は食べれなかったしな」
そんなビギナー丸出しの感想しか出てこないのだが、それは目の前の料理に集中しているからである。
俺は目の前の料理をキラキラした目をして食べたところでやっと、一つ一つの料理について食レポできる余裕ができた。
まずベーコンからだ。かの者はほどよく焼けており、その身に少しの焦げを見せているところがそれを加速させている。箸で掴むとその焦げ具合が分かるのだ。俺はその後に起こることを予想しながら、3枚目のベーコンを口に入れてそれを噛んだ瞬間、そのカリカリ具合が歯を通して俺の全身に伝わっていくのを感じ取り、少し遅れて肉本来の味がごっめーん! 遅れちゃった♪ そんな感じて伝わってくるのだ。大丈夫! コンマ一秒でギリギリオーケー! 俺はベーコンちゃんと熱いハグ? をするとそのまま胃に送ってあげたのだ。バイビーベイビーサヨウナラ!
次にグラタンちゃんだ。その者は全身から俺は熱いぜ! 熱血だぜ! と主張するかのように自身の熱を俺に伝えてくるが、俺はそれを無視してフォークで一突き! その開いた小さな穴から湯気のようなものが出ている。なんとなくフォークの先を舐めてみる、ぺろりとあっつ! 馬鹿でも分かるぐらいの熱さだった。俺は気を取り直してグラタンの中にフォークを進めてみると、むむむ! 何かにヒットしたのでそれをぶっすり! 取り出して見るとそれは鶏肉のような感じのお肉ちゃん♪ いらっしゃい♪ 冷めないうちに先ほどのことを念頭に置いて口に入れる。初めにホワイトソースちゃんとチーズちゃんの共演により俺の口の中はヒートアップ! ケミカルライトをもった俺が数百人オタ芸をしている。それを最高潮にもっていくのがお肉ちゃん! すでにライブ会場である口の中は光の線が高速で動いている光景をみることができるほどのうまさだ。
最後は地味だが栄養満点! サラダちゃん。彼女は一言で言うと草食系に見えるが実は結構奥手なんです。その場その場に応じてその在り方を変えるのだが、今回は草食系で行くようだ。見た目は先ほど同様春野菜であるが、少しだけ地球で見ることはない青が少々ある。初めに青いレタス? みたいなものを口に入れて一噛み、その瞬間青レタのこれまでの人生が見ることができた......ような気がした。つまりシンプルイズベストである。俺はうさぎのような食べ方でむしゃむしゃ......しなかった。あれはうさぎがや可愛いあの子が! すると目の保養になるが、男がやるとうわぁってなるからな。俺は少し酸味の効いた少し赤っぽいドレッシングと一緒に口に放り込んだ......うまし!
今回の料理、星......三つです! そんな感じで料理を完食したのでエレナのほうを見ると、
「......」
なんかぼけーとしている。
「なんだ大丈夫か? アスナになんかされたか?」
「なんで私なんですか? ユウト様の独り言のせいですよ」
「......えっ? ウソ!? あれって聞こえてたの!?」
あれはすべて心の中で言っていたはずなのに......アンビリバボー! 信じらーれない!
「自覚ないんですね......それと擬人法の使い過ぎです。というか何故全員女性なんですか?」
アスナは納得していないようだな、仕方ない! アイディールにエクスプロネーションするか。
「いやそっちの方がコスパ的にグットだし、カスタマーといったメディアのエクスペクションにもこたえられている。そしてそれを前提としてインフルエンサーを起こし、プロパガンダするんだ。そのプロセスの中でヴァラエティのあるアイディアをルック&ユーズする。それなら互いにウィンウィンな関係を作ることができるだろ」
「「......」」
二人ともまるでUMAを見るかのような目つきでこちらを見ている。つまりUMAを見た大半の人がこうなるのだろう。
「どうしたんだ二人とも? なんでそんな変な目で見てくるんだ?」
「なんでいきなりビジネス用語を織り交ぜながら説明したのですか?」
「あぁすまん。なんかアイドル達のプロデューサーを意識してしまったんだ」
誰だって目の前にアイドルの卵がいたら、一緒にアイカツしようぜ! とサムズアップしながら勧めたくなる。
アスナの疑問にそう答えてると、エレナはよく分かってない様子だが一応は納得したのかそれ以上は何も言ってこなかったが、アスナはUMAからイリュージョンしてまるで宇宙人を見るかのような目つきに変わっている。つまり宇宙人を見た大半の人がこうなるんだろう。
「ゴホン、まあとにかくだ。このような豪勢な料理は久々に食べたのでとてもおいしい、そう言いたいんだ」
「......たしかにあそこには香辛料などといったものはありませんでしたからね」
俺の言いたいことに渋々ながらもアスナは心から賛同しているようだ。
そんな彼女の言うようにダンジョンには香辛料などはなかったので、倒して食べれそうなモンスターは焼いて食べていた。
その光景がまさにモンハンみたいだったので、アスナが見回りに言っている間は一人で鼻歌を歌いながら骨付き肉を焼いて完成すると同時に、上手に焼けました! と言っていたものだ。
「そう言ってもらえるうれしいわね」
俺達の会話にそう言いいながら現れたのは、三十代の綺麗な女性だ。
「たしかに母の料理はこの里で一番と呼ばれていますからね」
エレナの言うように、この女性が素晴らしい料理を振舞ってくれた、エレナの母親であるジャネットさんだ。
どうやらエレナの髪の色はジェネットさんから引き継いているように見えるな。
「「ご馳走さまでした」」
そんなことを考えながら、食べ終わった後俺とアスナは同時に二人に対して感謝の言葉を述べた。
「またいつでもこちらに来たらご馳走してあげるわ」
エレナは天使! ジャネットさんは大天使!
あっ! いい事思いついた。
「あの~ジャネットさんがよろしければ、うちのアスナに料理を教えてくれませんか?」
「私は構わないけど、このまま里に滞在するの?」
「一応この後ギルと決闘して勝てば滞在を許可すると彼が言っていたので......」
納得したジャネットさんだったが、
「でもあの子、この里で一番強いわよ」
「あの親方様と言う人が強いじゃないですか?」
あいつのあの反応の速さがその事実を如実に語っているしな。
「以前はあの人だったけど、継承の儀式をした後はギルが里一番よ」
へーあいつが一番なのか。
「その継承の儀式とは何ですか?」
彼女は少し考えると、
「ん~そうね、簡単に言うと、守り人の世代交代かしらね」
守り人というと、やはり里のか。
「どんな儀式を行うんですか?」
「白竜神様が祀られている白竜の洞窟で誓いを立てるの。そうすると白竜神の加護と呼ばれる称号が受け渡しされて、儀式が終了になるってわけ」
なるほどな、だからぱっと見あいつが一番強そうなのか。
そんなことを考えていると、
「今帰ったぞ」
そう言って現れたのは壮年のおっさんと、無駄にイケメンなギルだった。




